術後補助化学療法とは?手術で取り切れたのに抗がん剤が不安な人へ

術後補助化学療法とは?の見出しと、顕微鏡とスライドガラスの写真。胃がんII・III期の試験で再発や死亡を防げたのは100人のうちおよそ12人

術後補助化学療法は、検査では見えないほど小さながんの転移を相手に、再発の割合を下げるための治療です。

手術で「がんは取り切れました」と言われたあとに抗がん剤を勧められると、矛盾しているように聞こえます。この記事では、術後補助化学療法の目的、対象となるがんと病期、期間と受け方を、国立がん研究センターや学会の資料から整理します。そのうえで、実際の臨床試験で100人中何人の再発が防げたのか、効いたかどうかを本人が確かめられない理由まで説明します。

術後補助化学療法とは何ですか?

手術でがんを取り切ったあとに、再発を防ぐ目的で行う薬物療法です。

「補助」とあるのは、治療の主役が手術だからです。手術で取り切れたことが前提で、その効果を薬で後押しします。英語では adjuvant(アジュバント)と呼ばれ、「アジュバント療法」「術後薬物療法」と書かれることもあります。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、大腸がんの術後補助化学療法を「手術によりがんが取り切れた場合に、手術後の再発を防ぐ目的で行います」と説明しています(がん情報サービス「大腸がん 治療」2025年)。

名前に「化学療法」とありますが、使う薬は細胞障害性抗がん薬(いわゆる抗がん剤)だけではありません。がんの種類によって、次の薬が使われます(がん情報サービス「薬物療法」2025年)。

  • 細胞障害性抗がん薬:細胞が増える仕組みの一部を妨げて、がんを攻撃する
  • 分子標的薬:がんの増殖に関わる特定の分子を狙って、その働きを抑える
  • 内分泌療法薬(ホルモン療法薬):ホルモンの分泌や働きを妨げて、がんを攻撃する
  • 免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを外し、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする

分子標的薬の仕組みと検査は、分子標的薬とは何かを説明した記事で扱っています。

手術の前に行う薬物療法もあります。前後の違いは次のとおりです。

呼び方 行う時期 主な目的
術前補助化学療法(ネオアジュバント) 手術の前 がんを小さくしてから手術する。薬の効き方を確かめる
術後補助化学療法(アジュバント) 手術のあと 目に見えない転移を抑え、再発を防ぐ

呼び方はがん情報サービス「膵臓がん 治療」(2026年)、目的は同「乳がん 治療」(2025年)による。

手術で取り切れたのに、なぜ抗がん剤が必要なのですか?

「取り切れた」は、目で見て検査でわかる範囲のがんについての言葉で、見えないほど小さな転移が残っている可能性は残るからです。

がん情報サービスは、乳がんの術後薬物療法の目的を「検査では分からないほどの小さな転移(微小転移)や再発を抑え、完全にがんをなくすこと」と書いています(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)。

手術は、がんがある場所を切り取る局所の治療です。CTやPETで写らない大きさのがん細胞が、血液やリンパの流れに乗ってすでに別の場所へ移っていた場合、手術ではそこまで取れません。薬は血液に乗って全身に届くため、その見えない相手に働きかけることができます。

見えない転移が実際にどのくらいあるのかは、手術だけで経過をみた人の数字からうかがえます。胃がんⅡ・Ⅲ期の手術後に薬を加えなかった群では、5年間再発も死亡もなかった人の割合(5年無再発生存率)は53.1%でした(Sasako M, et al. J Clin Oncol. 2011)。残りの46.9%の人は、手術で取り切れたはずなのに、5年以内に再発したか亡くなっています。

術後補助化学療法は、どんながんで行われますか?

多くのがんで行われますが、勧められるのは手術だけでは再発の危険が一定以上ある病期の人です。

主ながんの対象と使う薬の種類を並べます。

がん 主な対象 使う薬の種類
大腸がん Ⅲ期で体の状態がよい人。再発の危険が高いⅡ期も検討 細胞障害性抗がん薬(飲み薬と点滴を組み合わせることもある)
胃がん 手術でわかった病期(pStage)がⅡ・Ⅲ期の人 Ⅱ期は飲み薬のS-1を1年間。Ⅲ期は2種類の薬の併用
非小細胞肺がん 最大径2cmを超えるⅠA期からⅢB期(N3を除く) 飲み薬または点滴の細胞障害性抗がん薬。遺伝子の変化により分子標的薬、検査結果により免疫チェックポイント阻害薬
乳がん がんの性質(サブタイプ)と再発の危険で決める ホルモン受容体陽性はホルモン療法薬、HER2陽性は抗HER2薬と細胞障害性抗がん薬、トリプルネガティブは細胞障害性抗がん薬
膵臓がん 手術で切除できる人(0期を除く) 有効性が確認されたレジメン(薬の組み合わせと期間を定めた計画)

出典:がん情報サービス「大腸がん 治療」(2025年)、「非小細胞肺がん 治療」(2026年)、「乳がん 治療」(2025年)、「膵臓がん 治療」(2026年)、日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン 医師用 第6版」(2021年)

同じがんでも、病期で扱いが分かれます。非小細胞肺がんでは、ⅠA期のうち腫瘍の最大径が2cm以下の場合は経過観察となります(がん情報サービス「非小細胞肺がん 治療」2026年)。胃がんでも、日本胃癌学会のガイドラインが術後補助化学療法を推奨しているのはpStageⅡ・Ⅲ期です(日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン 第6版」補助化学療法)。

病期で線が引かれる理由は、次の節の数字を見るとわかります。

術後補助化学療法で、どのくらい再発が減るのですか?

試験では再発や死亡がはっきり減っています。ただし、薬を加えたことで助かる人は、受けた人の一部です。

術後補助化学療法を受けた100人の5年後の内訳を示す図。胃がんⅡ・Ⅲ期の試験で、手術だけでも再発しなかった人53人、薬を加えたことで再発や死亡を防げた人12人、薬を加えても再発したか亡くなった人35人
胃がんⅡ・Ⅲ期の5年無再発生存率(S-1群65.4%/手術のみ群53.1%)を100人に置き換えた概数。
出典:Sasako M, et al. J Clin Oncol. 2011;29(33):4387-4393

胃がんの試験では

日本で行われた試験(ACTS-GC)では、胃がんⅡ・Ⅲ期の手術後に、飲み薬のS-1を1年間飲む群と、手術だけの群を比べました。5年後の結果は次のとおりです(Sasako M, et al. J Clin Oncol. 2011)。

項目 S-1を加えた群 手術だけの群
5年生存率 71.7% 61.1%
5年無再発生存率(再発も死亡もない割合) 65.4% 53.1%

死亡の危険の比(ハザード比)は0.669(95%信頼区間0.540〜0.828)。出典:Sasako M, et al. J Clin Oncol. 2011;29(33):4387-4393

図は、この5年無再発生存率を100人に置き換えたものです。S-1を飲んだ100人のうち、およそ53人は手術だけでも5年間再発しなかった人です。薬で再発や死亡を防げたのは、差の12.3ポイント、およそ12人分です。残るおよそ35人は、薬を飲んでも再発したか亡くなっています。

肺がんの試験をまとめると

非小細胞肺がんでは、手術後にシスプラチンという抗がん剤を含む治療を行った5つの大きな試験、合計4,584人のデータをまとめた解析(LACE)があります。死亡のハザード比は0.89(95%信頼区間0.82〜0.96)で、5年後に生きている人の割合は、薬を加えた群で5.4ポイント高くなりました(Pignon JP, et al. J Clin Oncol. 2008)。

「死亡の危険を11%下げる」と「100人のうち5年後に生きている人が5.4人増える」は、同じ結果の別の言い方です。前者は割合の比(相対的な効果)、後者は人数の差(絶対的な効果)です。説明を受けるときは、両方を聞くと見通しが立てやすくなります。

同じ薬でも、ステージで効果が変わるのですか?

変わります。同じLACEの解析で、病期ごとのハザード比は次のようになりました(Pignon JP, et al. 2008)。

病期 ハザード比 95%信頼区間
ⅠA期 1.40 0.95〜2.06
ⅠB期 0.93 0.78〜1.10
Ⅱ期 0.83 0.73〜0.95
Ⅲ期 0.83 0.72〜0.94

出典:Pignon JP, et al. J Clin Oncol. 2008(LACE、5試験4,584人の統合解析)

ハザード比は1より小さいほど、薬を加えた群で死亡が少なかったことを示します。Ⅱ期とⅢ期では信頼区間全体が1を下回り、効果がはっきり出ています。ⅠB期でははっきりせず、ⅠA期では1を上回りました。ⅠA期の信頼区間は1をまたいでいるため、害があったとまでは言えませんが、利益は示されていません。

手術だけで治る人が多い早い病期では、薬で上乗せできる人数が少なく、副作用の負担のほうが前に出やすくなります。ガイドラインが病期で線を引くのは、この釣り合いのためです。この解析は、シスプラチンを含む点滴治療についてのものです。日本でⅠA期(2cm超)からⅠB期に使われる飲み薬の治療は、別の試験にもとづいています。

試験の数字が教えてくれないこと

図の「12人」に誰が入るのかは、治療を始める前にはわかりません。試験の数字は、その試験に参加した人たち全体の平均です。体の状態がよいことなど、参加の条件を満たした人の結果であり、持病の多い人や高齢の人にそのまま当てはまるとは限りません。

5.4ポイント

肺がんの手術後にシスプラチンを含む治療を加えたとき、5年後に生きている人が増えた割合。100人あたり5.4人。
4,584人を集めた5つの試験の統合解析

Pignon JP, et al. J Clin Oncol. 2008

効いたかどうかは、どうやってわかるのですか?

本人にはわかりません。相手が検査で見えない転移なので、薬で消えたかどうかを確かめる手段が今はないからです。

進行がんの治療では、CTで腫瘍の大きさを測り、縮んだかどうかで効果を判定します。その考え方は奏効率とは何かを説明した記事で扱っています。術後補助化学療法には、測るべき腫瘍がもともと写っていません。

そのため、治療を終えて再発しなかったとしても、それが薬のおかげなのか、手術だけでも再発しなかったのかは区別できません。図でいえば、濃い色の53人と黄色の12人は、本人の側からは見分けがつきません。効果は、多くの人を比べた試験の中でしか示せないのです。

血液検査で「見えないがん」を見つける研究

手術のあとに、血液中に流れ出たがん由来のDNA(ctDNA)を調べる研究が進んでいます。日本の大腸がんの研究(CIRCULATE-Japan GALAXY試験、2,240人)では、手術後2〜10週にctDNAが陽性だった人は、陰性だった人に比べて再発の危険が約12倍高く、2年後に再発していない人の割合は陽性で20.6%、陰性で85.1%でした(国立がん研究センター プレスリリース 2024年9月)。

同じ発表は、ctDNA陰性の人では術後補助化学療法の効果がはっきりしないとしています。ただし、ctDNAの結果で補助化学療法をするかどうかを決める方法は、まだ標準治療ではありません。陽性の人を対象にしたALTAIR試験、陰性の人を対象にしたVEGA試験という2つのランダム化比較試験で検証が続いています。

誰に薬が必要で、誰には要らないのか。ここから先は、まだわかっていません。

期間はどのくらいで、どうやって受けるのですか?

がんの種類と薬で違います。大腸がんは6か月が一般的で3か月のこともあり、胃がんⅡ期は飲み薬を1年間です。

大腸がんについて、がん情報サービスは「治療期間は6カ月が一般的ですが、がんの状態や用いる薬の種類によっては3カ月のこともあります」としています(がん情報サービス「大腸がん 治療」2025年)。

3か月でよい人がいるかどうかは、Ⅲ期の結腸がんの12,834人を集めた国際的な統合解析(IDEA)で調べられました(Grothey A, et al. N Engl J Med. 2018)。結果は薬の組み合わせと再発の危険で分かれました。

グループ 3か月と6か月の比較
全体 3か月が6か月に劣らないとは示せなかった(ハザード比1.07)
CAPOX(飲み薬と点滴の組み合わせ) 3か月で劣らないことが示された(ハザード比0.95)
FOLFOX(点滴の組み合わせ) 劣らないとは示せなかった(ハザード比1.16)
再発の危険が比較的低い群(T1〜T3かつN1) 3年無病生存率 3か月83.1%、6か月83.3%
再発の危険が高い群(T4またはN2) 3年無病生存率 3か月62.7%、6か月64.4%。6か月のほうが良かった

T(深さ)とN(リンパ節転移)は病期を決める要素。出典:Grothey A, et al. N Engl J Med. 2018;378(13):1177-1188

胃がんⅡ期では、S-1を半年に短くする方法と比べた試験(JCOG1104)の結果を受けて、1年間が推奨されています(日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン 第6版」2021年)。

入院が必要ですか?

多くは通院で受けられます。がん情報サービスは、どちらで治療するかは体調やレジメンを考えて決めるとしたうえで、近年は外来治療が多くなっていると書いています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。飲み薬だけの治療もあれば、点滴を2〜3週ごとに受ける治療もあります。

いつから始めるのですか?

手術の傷や体力が回復してから始めます。大腸がんでは、術後合併症から回復していることや、全身の状態がよいことが条件に挙げられています(がん情報サービス「大腸がん 治療」2025年)。始める時期は、担当医が回復の具合を見て決めます。

副作用がつらいときは、どうすればよいですか?

我慢せず担当医に伝えます。薬の量やスケジュールは、一人ひとりの状態に合わせて調整されることがあります。

がん情報サービスは、標準的なスケジュールや薬の量は定められているものの、ひとりひとりの状態にあわせて調整することもあると説明しています。治療前と明らかに違う症状が出たときは、ためらわずに病院に連絡するよう勧めています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。

術後補助化学療法でとくに相談が多い副作用は、次の記事で扱っています。

術後補助化学療法は、目の前に見えるがんを相手にしていません。そのため、副作用の重さと、見込める上乗せの大きさを比べる視点が、進行がんの治療以上に大切になります。

受けない選択や、手術の前に行う方法はありますか?

受けるかどうかは本人が決められます。手術の前に薬物療法を行う方法が選ばれるがんもあります。

術後補助化学療法は、再発の危険を下げるための上乗せの治療です。図のとおり、受けなくても再発しない人がおり、受けても再発する人がいます。どの程度の上乗せを、どの程度の副作用と引き換えに求めるかは、病期、年齢、持病、仕事や生活の事情で変わります。

手術の前に薬を使う方法は、がんによって位置づけが違います。

  • 乳がん:細胞障害性抗がん薬と分子標的薬は、手術の前に行っても後に行っても、再発率や生存率は同じであるといわれています(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)
  • 非小細胞肺がん:Ⅱ期または一部のⅢ期で、手術前の治療(術前導入療法)を行う場合があります(がん情報サービス「非小細胞肺がん 治療」2026年)
  • 膵臓がん:手術の前や後に、それぞれ有効性が確認された異なるレジメンで薬物療法を行うことがあります(がん情報サービス「膵臓がん 治療」2026年)

手術・放射線・薬を組み合わせて治療を組み立てる考え方は、集学的治療とは何かを説明した記事で扱っています。迷ったときは、ほかの医師の意見を聞くこともできます。手順はセカンドオピニオンの受け方の記事にまとめました。

説明を受けるとき、何を聞けばよいですか?

手術だけの場合の見通しと、薬を加えたときの上乗せを、人数で聞くことです。

説明の場では、次の点を確かめておくと、あとで考え直すときの材料になります。

  • 手術でわかった病期と、手術だけの場合の再発の見込み
  • 薬を加えると、100人あたり何人の再発や死亡が減ると見込まれるか
  • 使う薬の名前、期間、通院の頻度、飲み薬か点滴か
  • 起こりやすい副作用と、どの症状が出たら連絡すればよいか
  • 副作用が強いときに、量を減らしたり期間を短くしたりできるか

仕事との両立はがんと仕事の記事、費用はがんの治療費の記事で扱っています。

家族ができるのは、説明に同席して数字と期間を書き留めることです。本人は手術直後で体力も気力も落ちていることが多く、その場で全部を覚えるのは難しいからです。

治療を終えたあとの定期検査は、補助化学療法とは別に続きます。期間と検査の中身はがんの経過観察の記事で説明しています。

手術で取り切れたことと、再発しないことは、同じではありません。術後補助化学療法は、その差の一部を薬で埋めようとする治療で、どれだけ埋まるかはがんの種類と病期によって違います。

「再発を半分に」という説明を、僕はこう読んでいます

追加の化学療法なしで5年の生存率が90%のがんに、抗がん剤治療を行うと生存率が95%になる試験があるとしましょう。100人中10人の再発が5人に減るので「50%の再発防止効果」になります。しかし、実際は100人中5人に御利益があるのみです。

50%の再発防止効果と説明されれば、多くの患者さんはその治療を選択するでしょう。同じ結果をどう説明するかで、受け取り方が正反対になります。エビデンスがあるということは、2群間に統計的有意差があることを示しているだけで、御利益の程度は論じていません。

イギリスの乳がんの予後予測サイト(Predict)でいろいろなケースを試してみると、結構手術だけでも効果があることがわかります。また、どんなに頑張ってもハズレ玉があることもわかります。

ある程度の進行がんで手術で取り切れたと思われたときでも、現在は念のため抗がん剤で再発防止を図っています。しかし、手術後のリキッドバイオプシーで陰性となれば、追加の抗がん剤の投与が必要ないと判断できる日も近いと思っています。

新見正則医院院長 新見正則

監修者

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

次に読む

術後補助化学療法は、大規模な臨床試験の結果をもとに決められた標準治療です。では、試験の証拠がそろわない場面では、何を拠り所に治療を選べばよいのでしょうか。

がんの標準治療後の医療・エビデンスの有無は大事か

標準治療が1,000例規模の臨床試験をもとに作られていること、希少がんや再発ではそうした証拠がそろいにくく、医師の判断と経験で治療が選ばれることを書いたブログです。エビデンスのない治療をどう考えるかについて、監修者の考えを書いています。

この記事を読む

よくある質問

Q術後補助化学療法をしないとどうなりますか?

必ず再発するわけではありません。胃がんⅡ・Ⅲ期の試験(ACTS-GC)では、手術だけの群でも53.1%の人が5年間再発も死亡もありませんでした。一方、S-1を加えた群ではこの割合が65.4%で、薬を加えないと、その差の分の再発を防ぐ機会を逃すことになります(Sasako M, et al. 2011)。

Q術後補助化学療法の期間はどのくらいですか?

がんの種類と薬によります。大腸がんは6か月が一般的で、がんの状態や薬の種類によっては3か月のこともあります(がん情報サービス 2025年)。胃がんⅡ期では飲み薬のS-1を1年間飲むことが推奨されています(胃癌治療ガイドライン 第6版)。

Q術後補助化学療法が効いているかは検査でわかりますか?

わかりません。相手が検査で写らない小さな転移のため、腫瘍の縮み具合で判定することができないからです。手術後の血液中のがん由来DNA(ctDNA)で再発の危険を見分ける研究が進んでいますが、治療を決める方法としてはまだ標準治療ではありません。

Q術後補助化学療法は入院が必要ですか?

多くは通院で受けられます。がん情報サービスは、近年は外来での薬物療法が多くなっていると説明しています。入院か通院かは、体調とレジメン(薬の組み合わせと期間の計画)で決まります。

Q肺がんでは早期でも術後補助化学療法をしますか?

ⅠA期のうち腫瘍の最大径が2cm以下の場合は、経過観察となります(がん情報サービス 2026年)。シスプラチンを含む治療の統合解析(LACE、2008年)では、効果がはっきり出たのはⅡ期とⅢ期で、ⅠA期では利益が示されませんでした。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」(2025年3月24日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(2025年6月19日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「非小細胞肺がん 治療」(2026年8月26日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_nsclc.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 治療」(2026年3月19日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/treatment.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法」(2025年3月11日更新)
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt01.html
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(2025年3月11日更新)
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
  7. 日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂 第6版」Ⅱ章 D 補助化学療法
    https://www.jgca.jp/guideline/sixth/002_04.html
  8. Sasako M, et al. Five-year outcomes of a randomized phase III trial comparing adjuvant chemotherapy with S-1 versus surgery alone in stage II or III gastric cancer. J Clin Oncol. 2011;29(33):4387-4393.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22010012/
  9. Pignon JP, et al. Lung adjuvant cisplatin evaluation: a pooled analysis by the LACE Collaborative Group. J Clin Oncol. 2008.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18506026/
  10. Grothey A, et al. Duration of adjuvant chemotherapy for stage III colon cancer. N Engl J Med. 2018;378(13):1177-1188.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa1713709
  11. 国立がん研究センター プレスリリース「CIRCULATE-Japan GALAXY試験」Nature Medicine掲載(2024年9月17日)
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0917_1/index.html

PAGE TOP