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ここでの「抗がん剤」とは
「副作用のない抗がん剤はあるの？」という質問を患者さんから受けることがあります。まず「抗がん剤」の定義をしましょう。抗がん剤に求めることは命を長らえることですから、腫瘍が小さくなるとか、腫瘍マーカーが正常化するとかではなく、予後が伸びることとします。そして生命予後が伸びることを1000例規模のランダム化された大規模臨床試験で確認されているものをここでは「抗がん剤」と定義します。
1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜くと米国腫瘍学会のエビデンスレベルでもトップのものになります。ランダム化とはクジ引きのことで薬剤の使用群と非使用群を本人の希望ではなくクジ引きで割り付けるということです。症例報告でがんが消えたとかはエビデンスレベルがとても低いのです。他の治療も行っているでしょうし、実はがんが自然に消退することもあるからです。
殺細胞性抗がん剤の副作用
1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜くと通常は保険収載されます。殺細胞性抗がん剤の副作用として有名なものは脱毛、吐き気、口内炎、皮膚の発疹やかゆみ、手足のしびれ、白血球の減少などがあります。従来型の殺細胞性抗がん剤は正常の細胞にも少なからず影響を及ぼすからです。特に新陳代謝の激しい（分裂の早い）細胞がダメージを被ります。ですから殺細胞性抗がん剤では副作用は避けようがありません。副作用軽減の薬剤がいろいろと開発されています。
分子標的薬の副作用
21世紀初頭にある特定の分子をターゲットにする分子標的薬が多数登場しました。2002年に登場したイレッサ（一般名ゲフィチニブ）はがん細胞だけを狙い撃ちするので副作用は稀と思われましたが、間質性肺炎という重篤な副作用が生じました。
免疫チェックポイント阻害剤の副作用
また、2018年に本庶佑先生がノーベル賞に輝いた免疫チェックポイント阻害剤は免疫のブレーキを外すので副作用は稀と思われていましたが、免疫の異常亢進による副作用がいろいろと生じることがわかりました。その免疫の暴走で命に関わることも少なからず生じています。
抗ホルモン剤の副作用
乳がんに使用される抗ホルモン剤は命に関わる副作用は稀ですが、更年期障害を意図的に作るので、ながく不調に苦しめられている人は少なくありません。
漢方薬はがんに効かない
漢方薬は副作用が西洋薬に比べて少ないと思われますが、日本の保険適用漢方エキス製剤は臨床試験を経ることなく超法規的に保険適用されています。日本の漢方エキス製剤でがんの生命予後改善をエンドポイントにして、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いたものはありません。
副作用のない「抗がん成分」がある！
では1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いた抗がん剤で副作用がないものは存在しないのでしょうか？ 僕が知る限り本邦で使用できるものではひとつだけが該当します。それは生薬フアイアというものです。生薬フアイアは中国では1992年から抗がん新薬として認められていますが、本邦では「専ら食品」の生薬として輸入されています。フアイアはエンジュの老木に生える数百種類のキノコのなかのひとつです。現在は乱獲され、天然品はほぼ存在せず、菌糸体から工場内で培養精製されています。ですから、生薬では避けることができない品質のバラツキはほとんどありません。重金属や農薬の心配もありません。そしてこのフアイアが2018年に肝臓がん手術後の患者さん約1000人を集めたランダム化された大規模臨床試験を生存率で勝ち抜きました。
そして副作用は軽い下痢が生じるのみで、他にもその大規模臨床試験中にも報告されず、また僕の使用経験からも今に至るまで重篤な副作用はまったくありません。
フアイアの併用は必須
1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を生存率で勝ち抜いた正真正銘の抗がん成分で、なんと副作用がないものが存在しているのです。しかし、生薬フアイアだけでがんを消滅させることは稀です。ですから標準治療との併用がお勧めです。また西洋医学的治療で為す術がないときはフアイアが絶対適応になります。
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執筆者略歴 新見正則
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 （Doctor of Philosophy）。外科医 ｘ サイエンティスト ｘ 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 （外科学、移植免疫学、東洋医学）。2013年イグノーベル医学賞受賞 （脳と免疫）。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方ＪＰ主宰者。
新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通（新興医学出版社）
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