がんでも仕事は続けられる?辞めようか迷ったときに確かめる順番

がんと診断されても、その場で仕事を辞めると決める必要はありません。
国立がん研究センターも、早まって辞めないよう呼びかけています。

この記事では、がんと診断された人がどれくらい仕事を続けているのか、辞めた人はいつ辞めているのかを、国の調査の数字で示します。そのうえで、仕事を続けるために何をどの順番で確かめるか、会社に伝えるか、休む間の収入、解雇の心配、辞めると決めたときの確認事項、相談先を整理します。

がんと診断された人は、どれくらい仕事を続けていますか?

診断時に収入のある仕事をしていた人のうち、がん治療のために退職・廃業した人は19.4%でした。休職・休業はしたが辞めなかった人は53.4%です。

国立がん研究センターが厚生労働省の委託で行った「患者体験調査」の結果です。2021年にがんと診断された18歳以上の人に、2023年12月から2024年1月にかけて調査票を送り、11,169人の回答を集計しています。回答者の偏りを補正し、全国のがん患者さんを代表する値になるよう計算されています(国立がん研究センター 令和5年度患者体験調査 2025年)。

項目 割合
がんと診断されたとき、収入のある仕事をしていた 44.1%
がん治療のため、休職・休業はしたが、退職・廃業はしなかった 53.4%
がん治療のため、退職・廃業した 19.4%
職場や仕事上の関係者に、がんと診断されたことを話した 89.0%
治療と仕事を両方続けられるような勤務上の配慮を受けられた 74.5%
治療を始める前に、病院の医療スタッフから就労の継続について話があった 44.0%

2行目以降は、診断時に収入のある仕事をしていた人の中での割合です(国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査」2025年)。

休みを取りながら仕事を続けた人が、辞めた人より多いということです。一方で、治療を始める前に医療スタッフから仕事の話があった人は、半分に届いていません。

仕事を辞めた人は、いつ辞めていますか?

いちばん多いのは「がん診断直後」でした。辞めた人の58.3%は、治療が始まる前に辞めています。

がんで仕事を辞めた人が辞めた時期。がん診断直後が30.4%で最も多く、治療開始前に辞めた人が半数を超える
辞めた時期で最も多いのは、治療がまだ始まっていない「がん診断直後」だった。
出典:国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査(速報版)」問41(3)。無回答を含む全体を100%とした補正値

同じ調査で、がん治療のために退職・廃業した人に、辞めた時期を尋ねています。答えの内訳は、「がん診断直後」30.4%、「診断後、初回治療を待っている間」16.7%、「初回治療中」11.2%、「初回治療後から当初予定していた復職までの間」11.1%、「一度復職したのち」9.2%、「がんの疑いがあり診断が確定する前」8.7%でした(患者体験調査報告書 令和5年度調査(速報版))。

最終版の報告書は、無回答を除いて集計し、退職・廃業のタイミングが治療開始前だった人を58.3%としています(患者体験調査報告書 令和5年度調査(最終版)2025年)。

治療が始まる前には、まだ分かっていないことがいくつもあります。治療にどれくらいの期間がかかるのか、入院か通院か、副作用がどの程度出るのか、今の仕事のどこまでを続けられるのか。国立がん研究センターのがん情報サービスが、主治医に確かめるよう挙げている項目です(がん情報サービス「がんと仕事:働き方を考える」2026年)。辞めた人の半数以上は、治療が実際に始まる前に決めていたことになります。

がん情報サービスは、診断後に仕事のことで悩む人に向けて「ここで早まって仕事を辞めることを決断しないようにしましょう」と書いています(同)。

この数字が答えていないこと

調査は、辞めた時期を尋ねています。辞めた理由、自分から辞めたのか勧められたのか、辞めたことをあとでどう感じているかは、この数字からは分かりません。診断直後に辞めることが誤りだという意味でもありません。ここから言えるのは、多くの人が治療の見通しが立つ前に決めている、ということまでです。

58.3%

がん治療のために仕事を辞めた人のうち、治療が始まる前に辞めていた人の割合。
治療の期間も副作用も、まだ分からない時期です。

国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査(最終版)」2025年

仕事を続けるために、何をどの順番で確かめればいいですか?

主治医に治療の見通しを聞き、会社の制度を確かめ、会社に申し出て働き方を相談する。この順番です。退職は、そのあとに残る選択肢の一つです。

がん情報サービスの説明と、厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」が示す流れを並べると、次のようになります。

順番 確かめること 相手
1 治療の期間・予定、入院か通院か、副作用、今の仕事を続けられるか 主治医・看護師
2 休暇・休職、時短勤務、時間単位の有給、テレワークなどの制度 就業規則、人事・総務
3 支援の申し出、働き方の相談、両立支援プラン 上司・人事、産業医
4 休む・働き方を変える・辞める、のどれにするか 本人(家族)

1. 主治医に治療の見通しを聞く

がん情報サービスは、治療の期間とスケジュール、入院か通院か、副作用、そして今の仕事内容について主治医の考えを聞いておくよう勧めています。どんな仕事なら続けられるかも、確かめる項目に入っています(がん情報サービス 2026年)。

後で触れる厚生労働省の指針の流れでも、本人が仕事の内容をまとめた勤務情報を主治医に渡します。デスクワークか、立ち仕事か、運転や夜勤があるか。仕事の内容を伝えておくと、どの仕事なら続けられるかを主治医と話しやすくなります。

2. 会社の制度を確かめる

休職は、法律で定められた制度ではありません。採用するかどうか、内容や期間をどうするかは会社が決め、通常は就業規則で運用されています(国立がん研究センター「がんと仕事のQ&A」第3版)。同じがんでも、勤め先によって休める期間が違うということです。

10人以上が働く職場では、就業規則を作ることが義務づけられています。人事や総務に問い合わせて確認できます(がん情報サービス 2026年)。確かめておきたい制度は次のとおりです。

  • 病気休暇・休職の有無と、休める期間
  • 時短勤務、時差出勤、フレックスタイム
  • 時間単位で取れる有給休暇
  • テレワーク
  • 休職後に段階的に戻る、試し出勤(リハビリ出勤)

年次有給休暇は労働者の権利なので、申請するときに理由を伝える必要は本来ありません(「がんと仕事のQ&A」第3版)。

3. 会社に申し出て、働き方を相談する

2026年4月1日から、病気を抱える労働者の治療と就業の両立を支援することが、事業主の努力義務になりました。改正された労働施策総合推進法にもとづくもので、厚生労働省は「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)を定めています(厚生労働省「治療と就業の両立支援指針(概要)」2026年)。

ここで知っておきたいのは、仕組みの起点です。指針は、両立支援を労働者本人の申出を端緒として取り組むことを基本にしています。事業主の努力義務になっても、流れの最初に置かれているのは本人の申し出です。

指針が示す流れは次のとおりです(同)。

  1. 本人が、支援を求めて会社に申し出る
  2. 本人が、仕事の内容をまとめた勤務情報を主治医に渡す
  3. 主治医が意見書を書き、本人が会社に出す
  4. 会社が、産業医などの意見を聞き、本人と十分に話し合ったうえで、仕事を続けられるか、どんな配慮をするかを決める
  5. 両立支援プランを作って実行し、治療の経過に合わせて見直す

指針は事業主に対し、病気を理由に安易に就業を禁止せず、配置転換や勤務時間の短縮などで、仕事を失わずに済むよう努めることを求めています(同)。

4. 休む・働き方を変える・辞める、を選ぶ

1から3を確かめると、選べる道が見えてきます。治療の期間だけ休む。時短やテレワークで働きながら通院する。配置を変えてもらう。それでも合わなければ、辞める。辞めることも選択肢の一つです。ただ、休職や時短といった会社の制度は、在職しているあいだにしか使えません。

会社には、がんのことを伝えなければいけませんか?

国立がん研究センターの「がんと仕事のQ&A」は、伝えることを義務ではなく、望ましいこととして扱っています。

同書は、長期的には職場関係者に病気の状況を正確に伝え、適切な配慮を得ることが望ましいとしています(「がんと仕事のQ&A」第3版)。患者体験調査では、仕事をしていた人の89.0%が、職場や仕事上の関係者にがんと診断されたことを話していました(患者体験調査 令和5年度)。

伝えるかどうかは、上で書いた仕組みとつながっています。指針が示す両立支援の流れは、本人の申し出から始まります。時短や配置の配慮を会社に検討してもらうには、病気のことを伝えることが前提になります。

伝える範囲は選べます。誰に、どこまで話すかを、先に人事や上司と決めておく方法があります。指針も、個人情報の保護を含めた社内のルールと体制を整えることが重要だとしています(厚生労働省 2026年)。

休んでいる間の収入はどうなりますか?

会社の健康保険に入っている人は、給与が出ない期間に傷病手当金を受け取れる場合があります。

対象になる条件、支給額の計算、通算1年6か月の数え方は、傷病手当金はがんでも使えるかの記事にまとめています。

休むときは、有給休暇や欠勤の取り扱いを人事部や総務部に確認しておくよう勧められています(「がんと仕事のQ&A」第3版)。自営業の人も、がん相談支援センターで仕事やお金の相談ができます(がん情報サービス 2026年)。

がんで休むと、解雇されることはありますか?

会社は自由に解雇できるわけではありません。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇はできないと、法律で決まっています。

労働契約法第16条の定めです。解雇する場合も、少なくとも30日前に予告するか、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」)。

解雇と退職勧奨は別のものです。退職勧奨は、会社が「辞めてはどうか」と勧めることで、応じるかどうかは本人が決めます。本人の自由な意思決定を妨げるような勧め方は、違法な権利侵害にあたる場合があります。退職勧奨に応じて辞めた場合は、自己都合の退職にはなりません(同)。

一方で、休職できる期間は就業規則で決まっています(「がんと仕事のQ&A」第3版)。長い治療が見込まれるときは、休職の期間と、治療の予定とを並べて見ておくと、どこで話し合いが必要になるかが分かります。

それでも辞めると決めたら、何を確かめておけばいいですか?

退職後に受けられる給付の条件を、辞める前に確かめておくことです。退職日の状態で決まるものがあります。

確かめること 内容
傷病手当金が退職後も続くか 退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も続く(協会けんぽの場合)
雇用保険の失業給付をいつ受けるか 基本手当は、働く意思と能力があることが条件。病気で引き続き30日以上働けない場合は、受給期間を延長できる(延長は最大3年)
退職の形 会社の退職勧奨に応じた退職は、自己都合退職として扱われない

傷病手当金の継続給付の条件は全国健康保険協会の規定です(全国健康保険協会「傷病手当金」)。健康保険組合に加入している人は、その組合に確かめてください。

雇用保険の受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。治療で働けない期間がこの1年に重なると、受け取れる期間が過ぎてしまうことがあります。延長の申請は、働けない状態が始まったら早めに行うのが原則で、延長後の受給期間の最後の日までなら申請できます(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。

治療が落ち着いてから仕事を探すときは、ハローワークでの職業相談・紹介を利用できます。本人が同意すれば、ハローワークとがん相談支援センターが情報を共有して支援する仕組みもあります(がん情報サービス 2026年)。

仕事のことは、誰に相談すればいいですか?

最初の窓口は、がん相談支援センターです。その病院にかかっていなくても利用できます。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに置かれています。会社員の人も自営業の人も、仕事のことを相談できます(がん情報サービス 2026年)。相談先は、困りごとによって分かれます。

相談先 相談できること
がん相談支援センター 仕事とお金の相談全般。病院によっては社会保険労務士につないでもらえる
主治医・看護師・ソーシャルワーカー 治療の見通し、診断書や意見書の内容
両立支援コーディネーター 本人・医療機関・会社の間の連絡と調整。病院の窓口、産業保健総合支援センター、会社の人事部門などにいる
産業医・人事・総務 社内の制度、働き方の調整
都道府県の社会保険労務士会の総合労働相談所 休職、復職、転職などの労務の相談
ハローワーク 職業相談・職業紹介

表はがん情報サービス「がんと仕事:働き方を考える」(2026年6月2日更新)から作成しました。

診断を受けた日に、仕事のことまで決めなければならないわけではありません。主治医に聞く、就業規則を確かめる、会社に申し出る。会社の制度を使えるのは在職しているあいだなので、この3つは、辞めるかどうかを決める前に置いておく手順です。

監修

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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仕事を続けるかどうかは、どの治療を選ぶかとも結びついています。そもそも治療は何のために受けるのか、そこから考え直したい人へ。

がん患者さんが求めていること (ドリルではなくて穴)

「4分の1インチのドリルを買う顧客が本当に欲しいものは、4分の1インチの穴である」という言葉を引き、患者が求めているのは治療手段ではなく、生活の質が担保された長生きだと述べています。抗がん剤に求めるべき根拠は腫瘍の縮小や腫瘍マーカーの正常化ではなく、長生きと、長らえた時間の充実だ、と医師の立場から主張するブログです。

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よくある質問

がんになったら仕事は辞めたほうがいいですか?

すぐに決める必要はありません。国立がん研究センターのがん情報サービスは、診断後に早まって仕事を辞めると決断しないよう呼びかけています。治療の見通しを主治医に聞き、会社の制度を確かめてから判断する方法があります。

がんで仕事を辞める人はどれくらいいますか?

国立がん研究センターの令和5年度患者体験調査では、診断時に収入のある仕事をしていた人のうち19.4%が、がん治療のために退職・廃業していました。辞めた人の58.3%は、治療開始前に辞めています。

がんで休職できる期間は決まっていますか?

法律では決まっていません。休職は法律で定められた制度ではなく、会社が就業規則で内容や期間を決めています。勤め先の就業規則を確認するか、人事・総務に問い合わせてください。

会社にがんであることを言わないといけませんか?

国立がん研究センターの「がんと仕事のQ&A」は、義務ではなく望ましいこととして扱っています。厚生労働省の指針が示す両立支援の流れは本人の申し出から始まるため、時短や配置などの配慮を検討してもらうには、伝えることが前提になります。

がんと仕事の両立は会社の義務ですか?

2026年4月1日から、病気を抱える労働者の治療と就業の両立支援は、事業主の努力義務になりました。厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」にもとづき、本人の申出を起点に、主治医の意見を踏まえて会社が配慮の内容を決めます。

参考文献

  1. 国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査(最終版)」2025年5月
    https://pod.ncc.go.jp/jp/icc/policy-evaluation/project/010/2023/R5_all.pdf
  2. 国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査(速報版)」
    https://www.ncc.go.jp/jp/icc/health-serv/project/R5index/R5pes_sokuho_allv2.pdf
  3. 国立がん研究センター プレスリリース「患者体験調査(令和5年度調査)の結果を公表」2025年7月3日
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0703_1/index.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと仕事:働き方を考える」2026年6月2日更新
    https://ganjoho.jp/public/support/work_care/index.html
  5. 国立がん研究センター がん対策情報センター「がんと仕事のQ&A」第3版
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/cancer-work.pdf
  6. 厚生労働省「治療と就業の両立支援指針(概要)」(令和8年厚生労働省告示第28号)2026年
    https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001666828.pdf
  7. 厚生労働省「治療と仕事の両立について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html
  8. 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html
  9. ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
    https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
  10. 全国健康保険協会「傷病手当金」
    https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html

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