リンパ節転移と遠隔転移は、同じ「転移」でも生存率が大きく違います。どちらの転移かを確かめることが、数字を読む出発点です。
がん細胞は、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れに乗って別の場所に移動し、そこで増えます(国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「遠隔転移」2026年3月6日更新)。リンパ液の流れでリンパ節にたどり着いて増えたものが、リンパ転移(リンパ節転移)です。転移と浸潤・播種の区別は、転移と浸潤の違いの記事で説明しています。
この記事の内容
リンパ節転移と遠隔転移は、何が違うのですか?
リンパ節転移はがんの近くのリンパ節への転移、遠隔転移は離れた臓器や遠くのリンパ節への転移です。

がんの進み具合を表すTNM分類では、T(最初に発生したがんの大きさや広がり)、N(リンパ節への転移と広がり)、M(離れた臓器に転移しているかどうか)の3つを評価します(がん情報サービス 用語集「TNM分類」2024年12月27日更新)。リンパ節転移はN、遠隔転移はMで表されます。
がん登録の分類では、がんができた臓器の「所属リンパ節」への転移と、遠隔臓器や「遠隔リンパ節」への転移を分けています(がん情報サービス 用語集「臨床進行度」2021年)。同じリンパ節でも、遠くのリンパ節への転移は遠隔転移に入ります。
| 項目 | リンパ節転移 | 遠隔転移 |
| 転移する場所 | がんができた臓器の近くのリンパ節(所属リンパ節・領域リンパ節) | 肝臓・肺・骨・脳などの離れた臓器、遠くのリンパ節 |
| TNM分類 | N | M |
| がん登録の進行度 | 所属リンパ節転移(隣接臓器浸潤と合わせて「領域」) | 遠隔転移 |
| 治療の考え方 | 手術でがんと一緒にリンパ節を切除し、手術後に薬物療法を加えることがある | 全身に届く薬物療法が原則。切除できる転移は手術を検討することがある |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「TNM分類」「遠隔転移」「臨床進行度」、同「大腸がん 治療」「乳がん 治療」をもとに作成
転移があると、ステージはどう決まりますか?
遠隔転移があればⅣ期です。リンパ節転移が何期に入るかは、がんの種類によって違います。
大腸がんでは、Ⅲ期は「がんが領域リンパ節(主リンパ節、中間リンパ節、腸管傍リンパ節)に転移している」状態です。Ⅳ期は、肝転移や肺転移などの血行性転移、腹膜播種、領域リンパ節以外のリンパ節への転移がある状態です(国立がん研究センター がんの冊子「大腸がん」2025年7月 第6版第2刷)。
乳がんでは、わきの下の腋窩リンパ節に転移していて、そのリンパ節が固定されずに動く場合、しこりが2cm以下ならⅡA期、2cmを超えて5cm以下ならⅡB期、5cmを超えるとⅢA期に入ります。Ⅳ期は、骨、肝臓、肺、脳など他の臓器への遠隔転移がある場合で、しこりの大きさやリンパ節転移にかかわらずⅣ期になります(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年6月19日更新)。
同じリンパ節転移でも、大腸がんではⅢ期、乳がんではⅡ期になることがあります。リンパ節転移があると言われたときは、どのリンパ節に、いくつ転移しているかで分類が変わります。
ステージの数字の決まり方と、Ⅳ期より先がない理由は、がんのステージはいくつまでかの記事で説明しています。
リンパ節転移と遠隔転移で、5年生存率はどれくらい違いますか?
全部位では、限局92.4%、リンパ節転移・隣接臓器浸潤(領域)58.1%、遠隔転移15.7%でした。
地域がん登録の全国推計で、2009〜2011年に診断された591,778症例(22地域)を集計した5年相対生存率です(国立がん研究センター プレスリリース 2020年4月15日)。部位ごとの数字は次のとおりです。
| 部位 | 限局 | 領域(リンパ節転移・隣接臓器浸潤) | 遠隔転移 | 診断時に遠隔転移だった人の割合 |
| 全部位 | 92.4% | 58.1% | 15.7% | 18.5% |
| 胃 | 96.7% | 51.9% | 6.6% | 18.3% |
| 大腸 | 97.3% | 75.3% | 17.3% | 19.5% |
| 肝および肝内胆管 | 51.6% | 15.4% | 3.1% | 9.7% |
| 肺 | 83.5% | 31.1% | 6.4% | 38.1% |
| 乳房(女性) | 99.3% | 90.0% | 39.3% | 5.0% |
| 子宮頸部 | 95.7% | 66.8% | 22.5% | 9.5% |
| 前立腺 | 100.0% | 99.2% | 53.4% | 10.6% |
出典:松田智大ほか「目標モニタリング項目収集による2009年(平成22年)〜2011年(平成24年)5年生存率の推計」厚生労働科学研究費補助金 分担研究報告書(2019年度)。5年相対生存率、男女計、22地域
全部位では、診断時に限局だった人が44.1%、領域が25.2%、遠隔転移が18.5%、進行度が不明な人が12.3%でした(松田智大ほか 分担研究報告書 2019年度)。胃・大腸・乳房・子宮頸部・前立腺では、限局と領域の差より、領域と遠隔転移の差のほうが大きくなっています。肝臓と肺では逆に、限局と領域の差のほうが大きくなっています。
相対生存率やネット・サバイバルなど、生存率の種類と読み方はがんの生存率の記事で説明しています。
「領域」の58.1%に入っている人
「領域」は、所属リンパ節への転移と、隣の臓器への直接の浸潤を合わせた区分です。リンパ節転移だけがある人の数字ではありません。また、2009〜2011年に診断された人を5年間追った集計で、今の治療成績とは違う可能性があります。進行度が不明な人が全部位で12.3%いて、この人たちは3つの区分のどれにも入っていません。
遠隔転移の生存率は、がんの種類で違いますか?
大きく違います。2016年に診断された人では、遠隔転移の年齢調整5年純生存率は前立腺53.0%、女性乳房40.1%、肺9.4%、肝臓2.5%でした。
全国がん登録で2016年に診断された人の年齢調整5年純生存率を、診断時の進展度別に見た数字です(厚生労働省「2016年全国がん登録生存率報告」2026年1月14日)。
| 部位 | 限局 | 遠隔転移 |
| 胃 | 90.8% | 6.0% |
| 大腸(結腸・直腸) | 91.6% | 17.0% |
| 肝および肝内胆管 | 51.1% | 2.5% |
| 肺 | 77.4% | 9.4% |
| 女性乳房 | 98.4% | 40.1% |
| 子宮 | 93.9% | 21.0% |
| 前立腺 | 105.3% | 53.0% |
出典:厚生労働省「平成28年 全国がん登録 5年生存率 報告」(2026年1月公表)表4。年齢調整5年純生存率。報告書には100%を超える理由の説明がありません。別の集計(地域がん登録、2012〜2015年診断の5年純生存率)について、国立がん研究センターは、前立腺など生存率の高いがんでは一般の集団より健康に留意し医療機関を受診することなどから100%以上になることがある、と注記しています(2025年11月19日公表資料)
遠隔転移の段階で比べると、前立腺と肝臓では20倍以上の差があります。肺がんは、2009〜2011年の集計で、診断時にすでに遠隔転移があった人が38.1%と、ほかの部位より多くなっています。「転移したら生存率は何%か」という問いには、がんの種類を決めないと答えられません。
転移した場所ごとの症状と治療は、骨転移の痛み、脳転移とは、腹膜播種とはの記事で整理しています。
リンパ節転移があれば、生存率は低くなるのですか?
転移したリンパ節の個数や場所で幅があり、リンパ節転移があっても、転移のない段階より数字が高いことがあります。
大腸がんでは、転移したリンパ節の個数と場所で分類が細かく分かれます。腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が3個以下ならN1、4個以上ならN2、主リンパ節に転移があればN3です(国立がん研究センター中央病院 大腸外科「大腸がんのステージ(病期)について」)。大腸癌取扱い規約 第9版では、Ⅲ期はさらにⅢa・Ⅲb・Ⅲcに分けられています。
大腸癌研究会の全国登録で、2008〜2013年の患者の累積5年生存率は次のとおりでした(Kinugasa Y, et al. JSCCR guidelines 2024 for the treatment of colorectal cancer. Int J Clin Oncol 2025)。
| ステージ | リンパ節転移 | 累積5年生存率 | 人数 |
| Ⅰ | なし | 93.1% | 8,081人 |
| Ⅱa | なし | 88.3% | 7,520人 |
| Ⅱc | なし | 76.4% | 642人 |
| Ⅲa | あり | 91.5% | 1,250人 |
| Ⅲb | あり | 80.6% | 5,079人 |
| Ⅲc | あり | 65.8% | 1,891人 |
| Ⅳ | 遠隔転移あり | 26.7% | 5,511人 |
出典:大腸癌研究会 全国登録(2008〜2013年の患者)。大腸癌治療ガイドライン2024年版(英語版、Int J Clin Oncol 2025)表8。病期は大腸癌取扱い規約 第9版。Ⅱbは原表の全部位の値に誤記があるため省略
リンパ節転移があるⅢaは91.5%で、リンパ節転移のないⅡcの76.4%より高くなっています。Ⅱcは、がんが腸の壁を越えて、ほかの臓器や組織にまで直接浸潤している段階(T4b)です(大腸癌研究会 大腸癌取扱い規約 英語版第3版 2019)。Ⅲ期の中でも、Ⅲaの91.5%からⅢcの65.8%まで差があります。ステージの番号の順に生存率が並ぶとは限らず、「リンパ節転移がある」という一言だけでは、数字は決まりません。
リンパ節転移があると、治療はどう変わりますか?
手術でリンパ節も一緒に切除し、手術後に再発を防ぐための薬物療法を加えることが多くなります。
- 結腸がん:がんの周りのリンパ節を一緒に切除するため、がんから口側と肛門側にそれぞれ10cmほど離して腸管を切除します
- 胃がん:胃のすぐそばのリンパ節と、少し離れたリンパ節を合わせて切除するD2リンパ節郭清が標準的に行われます
- 乳がん:手術の途中でセンチネルリンパ節を調べ、腋窩リンパ節への転移が確認された場合に腋窩リンパ節郭清を行います。転移がない、またはわずかな場合は郭清を行わないことがあります
手術のあとの薬物療法(術後補助化学療法)は、大腸がんではⅢ期で体の状態がよい場合に行うことが推奨されています(がん情報サービス「大腸がん 治療」2025年)。胃がんでは、手術後の病理分類でステージⅡまたはⅢの場合に推奨されています(がん情報サービス「胃がん 治療」2026年1月13日更新)。
胃がんの推奨が「手術後の病理分類」で決まるように、リンパ節転移の有無や個数は、手術で切除したリンパ節を調べた結果にもとづいて判断されます。
遠隔転移があると、治療はどう変わりますか?
全身に届く薬物療法が中心になります。がんの種類と転移の状態によっては、転移を切除することもあります。
乳がんでは、がんができた場所から離れた臓器に転移がある場合は、薬物療法を行うのが原則です。痛みなどの症状がある場合は、転移した臓器への治療をあわせて行うことがあります(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)。
大腸がんでは、遠隔転移巣と原発巣のどちらも切除できる場合は、原発巣を切除し、遠隔転移巣の切除を検討します(がん情報サービス「大腸がん 治療」2025年)。大腸癌治療ガイドライン2024年版の英語版は、肝転移を切除したあとの5年生存率を35〜58%とし、日本の多施設研究では585例の5年生存率が39.2%だったと記載しています(Kinugasa Y, et al. Int J Clin Oncol 2025)。
35〜58%は、切除できた人だけの成績
35〜58%や39.2%は、切除できる状態で、実際に切除を受けた人の成績です。遠隔転移がある大腸がんの人全体の数字ではなく、切除しなかった人とくじ引きで比べた数字でもありません。大腸癌研究会の登録では、Ⅳ期全体の累積5年生存率は26.7%でした。
91.5%
リンパ節転移がある大腸がんⅢaの累積5年生存率です。
リンパ節転移はないものの他の臓器まで浸潤したⅡc(T4b)の76.4%より高く、「リンパ節転移があるかどうか」だけでは生存率は決まりません。
出典:大腸癌研究会 全国登録(2008〜2013年の患者、Ⅲa 1,250人・Ⅱc 642人)、Kinugasa Y, et al. Int J Clin Oncol 2025。病期の定義は大腸癌取扱い規約 英語版第3版(2019)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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よくある質問
Qリンパ節転移があると、もう治らないのですか?
そうとは限りません。2009〜2011年に診断された人の集計では、リンパ節転移または隣接臓器浸潤(領域)の段階で見つかった人の5年相対生存率は、全部位で58.1%でした。大腸癌研究会の登録では、リンパ節転移があるⅢ期の累積5年生存率は、Ⅲaで91.5%、Ⅲcで65.8%です。
Qリンパ節転移と遠隔転移では、どちらが生存率に影響しますか?
統計では、遠隔転移のほうが生存率は低くなります。全部位の5年相対生存率は、領域58.1%、遠隔転移15.7%でした(2009〜2011年診断)。ただし、遠隔転移の生存率もがんの種類で大きく違い、2016年診断の年齢調整5年純生存率は前立腺53.0%、肝臓2.5%です。
Q遠くのリンパ節に転移したら、ステージ4ですか?
大腸がんでは、領域リンパ節以外のリンパ節への転移はⅣ期に分類されます。がん登録でも、遠隔リンパ節への転移は遠隔転移として扱われます。どのリンパ節までが近くのリンパ節に入るかは、がんの種類ごとに決まっています。
Q乳がんでわきの下のリンパ節に転移したら、何期ですか?
国立がん研究センターの分類では、腋窩リンパ節に転移していて、そのリンパ節が固定されずに動く場合、しこりが2cm以下ならⅡA期、2cmを超えて5cm以下ならⅡB期、5cmを超えるとⅢA期に入ります。骨、肝臓、肺、脳など他の臓器への遠隔転移がある場合は、しこりの大きさやリンパ節転移にかかわらずⅣ期です。
Qリンパ節転移があると、手術のあとに抗がん剤を使いますか?
使うことが多くなります。大腸がんではⅢ期で体の状態がよい場合に、胃がんでは手術後の病理分類でステージⅡまたはⅢの場合に、手術後の薬物療法が推奨されています。目的は、手術で切除できたあとの再発を防ぐことです。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「TNM分類」(2024年12月27日更新)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/TNM_bunrui.html - 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「遠隔転移」(2026年3月6日更新)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/enkakuteni.html - 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「臨床進行度」(2021年1月14日更新)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/rinshoshinkodo.html - 国立がん研究センター がんの冊子 各種がんシリーズ「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」(2025年7月 第6版第2刷)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/103.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」(2025年)
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 治療」(2026年1月13日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(2025年6月19日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html - 国立がん研究センター プレスリリース「地域がん登録 全国がん罹患モニタリング集計 2009年から2011年診断症例 5年相対生存率 最新全国推計公表」(2020年4月15日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0415/index.html - 松田智大ほか「目標モニタリング項目収集による2009年(平成22年)〜2011年(平成24年)5年生存率の推計」厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 分担研究報告書(2019年度)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192021/201908015A_upload/201908015A0004.pdf - 厚生労働省「2016年全国がん登録生存率報告」の結果について(2026年1月14日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68515.html - 厚生労働省「平成28年 全国がん登録 5年生存率 報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001630334.pdf - 国立がん研究センター「2012-2015年の4年間に診断された がんの5年生存率を公表」資料(2025年11月19日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/1119/2012-2015_5_MCIJ.pdf - 国立がん研究センター中央病院 大腸外科「大腸がんのステージ(病期)について」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/160/index.html - Kinugasa Y, et al. Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR) guidelines 2024 for the treatment of colorectal cancer. Int J Clin Oncol. 2025;30(12):2410-2463. doi:10.1007/s10147-025-02899-8
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41186794/ - Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum. Japanese Classification of Colorectal, Appendiceal, and Anal Carcinoma: the 3d English Edition. J Anus Rectum Colon. 2019;3(4):175-195. doi:10.23922/jarc.2019-018
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6845287/





