PSAが高くてもがんとは限らず、米国では、PSAが高くて生検を受けた人のうち前立腺がんが見つかるのは約25%です。
PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺でつくられるたんぱく質の一種で、血液検査で調べることができます(国立がん研究センター がん情報サービス「PSA」2025年1月31日更新)。前立腺がんの診断の手がかりになる一方で、がん以外の理由でも値が上がります。
この記事の内容
PSAの基準値は、いくつですか?
一般には4.0ng/mL以下です。年齢とともに上がるため、年齢ごとの基準値も推奨されています。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、PSAの基準値を一般的に4.0ng/mL以下としたうえで、年齢とともに上昇することを考えて、次の年齢別の基準値が推奨されていると説明しています(がん情報サービス「前立腺がん」2024年7月30日更新)。
| 年齢 | PSAの基準値 |
| 50〜64歳 | 3.0ng/mL以下 |
| 65〜69歳 | 3.5ng/mL以下 |
| 70歳以上 | 4.0ng/mL以下 |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」(2024年7月30日更新、前立腺癌診療ガイドライン2023年版に基づく)
同じ3.2ng/mLでも、60歳では基準値を超え、70歳では基準値の中に入ります。健診の結果用紙に書かれた基準値が、どちらの考え方によるものかで、「高い」と言われるかどうかが変わります。
同じページは、PSA値が100ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、すでに転移が起こっている可能性もあるとしています。基準値を少し超えた値と、100ng/mLを超える値とでは、意味がまったく違います。
がん以外で、PSAが上がることはありますか?
あります。前立腺肥大症や前立腺炎、前立腺の生検のあと、尿路の感染や器具を使う処置などでも上がります。
がん情報サービスは、PSA値は前立腺肥大症や前立腺炎など、がん以外の病気で上昇することもあるとしています(がん情報サービス 2024年)。同じセンターの用語集は、前立腺の組織が傷つくと、PSAが血液中に多く出てくるためと説明しています。
| 要因 | PSAへの影響 |
| 前立腺肥大症・前立腺炎 | がん以外でPSAが上がる病気として挙げられています |
| 前立腺の生検 | 生検のあと1〜2か月、PSAが上がることがあります |
| 尿路の感染、カテーテルなど器具を使う処置 | 一時的にPSAが上がる原因として挙げられています |
| 自転車などの激しい運動、射精 | 一時的に上がることがあるとする資料と、臨床的に重要な影響はないとする資料があります |
出典:がん情報サービス「前立腺がん」(2024年)、米国国立がん研究所(NCI)「PSA検査」(2025年1月31日更新)、NCI PDQ「前立腺がん検診(医療者向け)」(2025年)、米国泌尿器科学会・米国泌尿器腫瘍学会「前立腺がんの早期発見」ガイドライン(2023年、2026年改訂)
生検のあとの上昇と、運動・射精による一時的な上昇は、米国国立がん研究所(NCI)の一般向けの解説に書かれています(NCI「Prostate-Specific Antigen (PSA) Test」2025年1月31日更新)。尿路の感染と器具を使う処置による一時的な上昇は、米国泌尿器科学会などのガイドラインが挙げています(AUA/SUO「Early Detection of Prostate Cancer」2023年、2026年改訂)。
射精と直腸診については、資料によって書き方が違います。NCIの医療者向けの要約は、射精と直腸診がPSAに影響するという意見もあったが、その後の検討で臨床的に重要な影響はないとされたと書いています(NCI PDQ「Prostate Cancer Screening」2025年)。
PSAの値を下げる薬はありますか?
あります。前立腺肥大症や男性型脱毛症(薄毛)の治療に使う5α還元酵素阻害薬は、PSAの値を下げます。
前立腺肥大症の薬デュタステリド(アボルブ)の電子添文は、前立腺がんがあっても、飲み始めて6か月後にPSA値を約50%減少させるとしています。そのため、6か月以上飲んでいる人のPSA値は、測定値を2倍した値を目安に基準値と比べることとされています(アボルブカプセル0.5mg 電子添文 2025年8月改訂 第2版)。
男性型脱毛症の薬フィナステリド(プロペシア)の電子添文には、国内の24〜50歳の男性型脱毛症の人でPSA濃度が約40%低下したこと、海外の試験で高年齢層の前立腺肥大症の人では約50%低下したことが書かれています。前立腺がんの診断のためにPSAを測る場合は、2倍した値を目安に評価することとされています(プロペシア錠 電子添文 2023年8月改訂 第4版)。
米国泌尿器科学会などのガイドラインは、2倍にするという考え方は古い研究にもとづくとし、5α還元酵素阻害薬を使った人のうち1年後にPSAが40〜60%下がったのは3分の1だったという試験を挙げて、PSAの下がり方は一様ではないとしています(AUA/SUO 2026年改訂)。
どちらの薬も、PSAの値を読む前提を変えます。
PSAが高いと、がんが見つかる割合はどのくらいですか?
米国の国立がん研究所によると、PSAが高くて生検を受けた人のうち、前立腺がんが見つかるのは約25%です。基準値の中でも、がんが見つかることがあります。
米国のNCIは、PSAが高いために生検を受けた人のうち、前立腺がんが見つかるのは約25%にとどまるとしています。日本で生検を受けた人の割合を示した数字ではありません。また、検診の1回ごとに、約6〜7%の人が偽陽性(がんがないのに陽性)になるとしています(NCI 2025年)。
がん情報サービスも、PSA値が10ng/mL以上でも前立腺がんが発見されないことがある一方で、基準値以下でも前立腺がんが発見されることがあると説明しています(がん情報サービス 2024年)。
基準値の中でも見つかることは、米国の試験で確かめられています。前立腺がん予防試験(PCPT)の偽薬群で、7年間ずっとPSAが4.0ng/mL以下で直腸診にも異常がなかった男性2,950人に、試験の終わりに生検を行ったところ、449人(15.2%)に前立腺がんが見つかりました(Thompson IM, et al. N Engl J Med 2004)。
| PSAの値(PCPTの対象者) | 生検で前立腺がんが見つかった割合 |
| 0.5ng/mL以下 | 6.6% |
| 3.1〜4.0ng/mL | 26.9% |
| 4.0ng/mL以下の全体(2,950人) | 15.2%(449人) |
出典:Thompson IM, et al. N Engl J Med 2004;350:2239-46(米国、55歳以上で登録、7年間PSA4.0ng/mL以下かつ直腸診で異常なし)。中間の値の割合はこの記事では確認できた範囲だけを載せています
見つかった449人のがんのうち、グリーソンスコア7〜9の悪性度の高いものは67人(14.9%)でした。基準値の中で見つかるがんの多くは、悪性度の低いものです。
基準値の内側にも、がんはある
PCPTの15.2%は、PSAが4.0ng/mL以下の人全員に生検をしたから見えた数字です。ふだんの診療では、基準値の中の人に生検は行いません。この数字は「4.0ng/mLで線を引けば、がんのある人とない人に分けられる」わけではないことを示していますが、見つかったがんの多くは悪性度が低く、そのすべてが治療を必要とするわけではありません。対象は米国の55歳以上の男性で、日本人にそのまま当てはまるとは限りません(Thompson IM, et al. N Engl J Med 2004)。
PSAが高いと言われたら、最初に何をしますか?
日をおいて、もう一度PSAを測ります。1回だけ高かった値は、次の検査で基準値の中に戻ることが少なくありません。

米国で、検診を受けていない男性972人(年齢の中央値62歳)から4年間に5回採血した研究では、PSAが4.0ng/mLを超えた154人のうち68人(44%)が、その後の検査で少なくとも1回は4.0ng/mL以下に戻りました。著者らは、1回だけの上昇は数週間後に確かめてから、生検などに進むべきだと結論しています(Eastham JA, et al. JAMA 2003)。
米国泌尿器科学会などのガイドラインも、新たにPSAが上がった人には、追加の血液・尿の検査、画像検査、生検の前に、PSAを測り直すよう求めています。この項目は、試験の結果ではなく専門家の意見として位置づけられています(AUA/SUO 2026年改訂)。
腫瘍マーカー全般について、1回の値より同じ人の推移のほうが情報を持つ理由は、腫瘍マーカーとは何かを説明した記事で扱っています。自治体の検診でPSAが基準を超え、「要精密検査」と通知された場合の受け方は、がん検診で要精密検査と言われたときの記事にまとめています。
再検査でも高いとき、生検の前にどんな検査をしますか?
直腸診、PSAの関連指標(F/T比・PSA密度)、MRIなどを組み合わせて、生検が必要かを考えます。
直腸診は、医師が肛門から指を入れて前立腺の状態を確かめる検査です。前立腺の表面に凹凸があったり、左右が非対称だったりすると、前立腺がんを疑います(がん情報サービス 2024年)。
F/T比(遊離PSAの割合)
PSAのうち、遊離型(フリーPSA)と呼ばれるものがPSA全体に占める割合を、F/T比(遊離PSAの割合)と呼びます。米国の7つの大学病院で、直腸診で異常がなくPSAが4.0〜10.0ng/mLだった50〜75歳の773人を調べた研究では、遊離PSAの割合が低いほど、がんの可能性が高くなりました。一人ひとりのがんの可能性は8〜56%と幅があり、25%以下を目安にすると、がんの95%を見つけながら、不要な生検の20%を避けられたとしています(Catalona WJ, et al. JAMA 1998)。
PSAが4〜10ng/mLの範囲は、がんの人とがんでない人の値が重なりやすいため「グレーゾーン」と呼ばれます。8〜56%という幅は、同じグレーゾーンの中でも、がんの可能性が人によって大きく違うことを示しています。
PSA密度
PSA密度は、PSAの値を前立腺の体積で割ったものです。前立腺肥大症で前立腺が大きいと、がんがなくてもPSAは上がるため、体積あたりで見直します。米国泌尿器科学会などのガイドラインは、生検の判断に使う指標の中で、PSA密度が最も多く研究されているとしています(AUA/SUO 2026年改訂)。がん情報サービスは、すぐに治療せず経過を見る監視療法が向くかどうかの条件の1つにも、PSA密度を挙げています。
MRI(PI-RADS)
MRIは、がんの有無や場所、前立腺の外への広がり、リンパ節などへの転移を調べるために行います。生検で出血するとMRIの診断の精度が下がるため、生検のあとに撮る場合は間隔をあけます(がん情報サービス 2024年)。
前立腺のMRIの所見は、PI-RADS(パイラッズ)という1〜5の点数で表されます。米国泌尿器科学会などのガイドラインは、3〜5を異常なMRIとしています。23の研究をまとめた同ガイドラインの集計では、点数ごとに見つかったがんの割合は次のとおりでした。
| PI-RADS | 前立腺がん(すべて) | 臨床的に意味のあるがん |
| 1または2 | 15% | 7% |
| 3 | 25% | 11% |
| 4 | 58% | 37% |
| 5 | 85% | 70% |
臨床的に意味のあるがん=グレードグループ2以上。出典:AUA/SUO「Early Detection of Prostate Cancer」(2023年、2026年改訂)表5(23研究の統合、PI-RADS 第1.0版〜第2.1版)
生検を受けたことのない500人を、先にMRIを撮って疑わしい所見があれば狙って生検する群と、従来の系統的な生検(10〜12か所)の群に分けた多施設の試験(PRECISION)があります。MRIの群では28%がMRIで疑わしい所見がなく、生検を受けませんでした。臨床的に意味のあるがんが見つかったのは、MRIの群で38%、従来の生検の群で26%でした(調整後の差12ポイント、95%信頼区間4〜20)。悪性度の低いがんの診断は、MRIの群で少なくなりました(PRECISION Study Group. N Engl J Med 2018)。
一方で、MRIで疑わしい所見がなくても、がんがないとは言い切れません。同じガイドラインは、生検を受けたことのない人でMRIの所見がない場合に、臨床的に意味のあるがんがない確率(陰性的中率)を91%としています。言いかえると、9%ではがんが見つかったことになります(上の表の7%とは、もとにした研究の集め方が違います)。そのため、MRIの所見がなくても、ほかの情報からがんのリスクが高い人には系統的な生検を行うよう勧めています(AUA/SUO 2026年改訂、中等度の推奨)。
MRIとCTの仕組みや被ばく、造影剤の違いは、CTとMRIの違いの記事で整理しています。
前立腺生検は、どのように行いますか?
肛門から入れた超音波の器具で前立腺を見ながら、細い針で複数か所の組織を採ります。針を刺す経路は、直腸からと会陰からの2通りです。
がん情報サービスによると、前立腺生検の方法には、肛門から針を刺す経直腸生検と、肛門と陰嚢の間の皮膚から針を刺す経会陰生検があります。合併症には出血、感染、排尿困難などがあり、多いのは血尿、血便、精液に血が混じる血精液症です(がん情報サービス 2024年)。
| 項目 | 経直腸生検 | 経会陰生検 |
| 針を刺す場所 | 直腸の中から | 肛門と陰嚢の間の皮膚から |
| PREVENT試験での感染 | 1.4%(4人) | 0人 |
| 臨床的に意味のあるがんが見つかった割合 | 50% | 53% |
| 処置のときの痛み | 基準 | 0〜10の尺度で0.6強い |
出典:がん情報サービス「前立腺がん」(2024年)、Hu JC, et al. Eur Urol 2024;86(1):61-68(PREVENT試験、658人を無作為に割り付け)
658人を2つの方法に無作為に分けたPREVENT試験では、生検による感染は経会陰で0人、経直腸で4人(1.4%)でした。差は−1.4ポイント(95%信頼区間−3.2〜0.3)で、経会陰のほうが3.2ポイント少ない可能性から0.3ポイント多い可能性までを含み、統計的に差があるとまでは言えませんでした。臨床的に意味のあるがんが見つかる割合は同程度で、経会陰では処置のときの痛みがやや強くなりました(Hu JC, et al. Eur Urol 2024)。
米国泌尿器科学会などのガイドラインは、どちらの経路で生検を行ってもよいとしています(AUA/SUO 2026年改訂、条件付きの推奨)。
生検で採った組織は、顕微鏡で調べる病理診断にまわされます。がんが見つかった場合、がんの広がりはMRIなどで調べ、すぐに治療を始める必要がないと判断されたがんでは、あえて治療をせずに経過を見る監視療法が選ばれることもあります(がん情報サービス 2024年)。
PSA検診の効果は、試験によってなぜ違うのですか?
米国のPLCO試験では前立腺がんによる死亡に統計的な差が出ず、欧州のERSPCでは検診を勧めた群で死亡が減りました。PLCOでは、比べる群でもPSA検査を受けた人が多かったことがわかっています。
日本では、2023年に前立腺がんと診断されたのは102,094例、2024年に前立腺がんで亡くなったのは13,670人でした。2018年に診断された人の5年相対生存率は95.7%です(国立がん研究センター がん統計「前立腺」2026年7月22日更新・確認)。診断される人の数に比べて、亡くなる人の数は少ないがんです。
米国のPLCO試験は、55〜74歳の男性76,683人を、毎年のPSA検査(6回)と直腸診(4回)の群と、ふだんの診療の群に分けました。追跡期間の中央値約17年で、前立腺がんによる死亡の比は0.93(95%信頼区間0.81〜1.08)でした(Pinsky PF, et al. BJU Int 2018)。死亡が19%減っていた可能性から、8%増えていた可能性までを含み、統計的な差はありません。ただしPLCOでは、ふだんの診療の群でも毎年PSA検査を受けた人が、検診期間の終わりには最大で52%と見積もられています(NCI PDQ 2025年)。検診の群とふだんの診療の群のどちらでもPSA検査が行われていたことになり、2つの群の違いは計画より小さかったことになります。
一方、欧州8か国で行われたERSPC(欧州前立腺がん検診無作為化試験)は、55〜69歳の男性約16万人を、PSA検査を繰り返し勧める群と勧めない群に分けて追跡しました。最初の報告(追跡期間の中央値9年)で、前立腺がんによる死亡の比は0.80(95%信頼区間0.65〜0.98)でした(Schröder FH, et al. N Engl J Med 2009)。13年の時点では0.79(0.69〜0.91)(Schröder FH, et al. Lancet 2014)、23年の時点では0.87(0.80〜0.95)で、死亡は13%少なく、絶対的な差は0.22ポイント(0.10〜0.34)でした(Roobol MJ, et al. N Engl J Med 2025)。
| 試験(追跡期間) | 前立腺がんによる死亡の比(95%信頼区間) | 1人の死亡を防ぐのに必要な人数(数え方) |
| PLCO(中央値約17年) | 0.93(0.81〜1.08) | 統計的な差なし |
| ERSPC(中央値9年) | 0.80(0.65〜0.98) | 検診を受けた人で1,410人、追加で治療した人で48人 |
| ERSPC(13年) | 0.79(0.69〜0.91) | 検診に招いた人で781人、追加で診断した人で27人 |
| ERSPC(中央値23年) | 0.87(0.80〜0.95) | 検診に招いた人で456人、追加で診断した人で12人 |
比が1より小さいほど、検診の群で死亡が少ないことを示す。ERSPCの9年の報告は検診を受けた人と追加で治療した人、13年と23年の報告は検診に招いた人と追加で診断した人で数えており、数え方が違う。出典:Pinsky PF, et al. BJU Int 2018、Schröder FH, et al. N Engl J Med 2009、Schröder FH, et al. Lancet 2014、Roobol MJ, et al. N Engl J Med 2025
前立腺がんの検診は、国が指針で定めて市区町村などに勧めているがん検診には含まれていません(がん情報サービス「がん検診について」2026年4月1日更新)。
PSA検診の過剰診断とは、どういうことですか?
治療をしなくても命を脅かさないがんを、検診で見つけてしまうことです。PSA検診では、この不利益が大きいとされています。
がん情報サービスは、過剰診断を、成長が極めて遅いなどの理由で治療をしなくても命を脅かさないがんを検診で発見することと定義しています(がん情報サービス 2026年)。ERSPCの最初の報告も、PSA検診は前立腺がんによる死亡を20%減らしたが、過剰診断のリスクが高いと結論しています(Schröder FH, et al. 2009)。
NCIは、米国予防医学専門委員会(USPSTF)の見積もりとして、55〜69歳の男性1,000人が13年間検診を受けた場合の内訳を示しています(NCI 2025年)。
| 1,000人のうち | 人数 |
| PSA検査で陽性になる | 240人 |
| 前立腺がんと診断される | 100人 |
| 治療を受ける(すぐに、または監視療法のあとで) | 80人 |
| 治療のあとに性機能の障害が出る | 50人 |
| 治療のあとに尿失禁が出る | 15人 |
| 前立腺がんによる死亡を避けられる | 約1.3人(その後の試験のデータでは最大2人) |
| 検診・診断・治療を受けても前立腺がんで亡くなる | 5人 |
出典:NCI「Prostate-Specific Antigen (PSA) Test」(2025年1月31日更新)。USPSTFによる、55〜69歳が13年間検診を受けた場合の見積もり
過剰診断の大きさは、試験の施設によっても見積もりが違います。NCIの医療者向けの要約は、ERSPCのフィンランドの施設で過剰診断が30%と見積もられたことを紹介しています(NCI PDQ 2025年)。
過剰診断の不利益を小さくする方法の1つが、監視療法です。がん情報サービスは、T2以下、グリーソンスコアが7以下で、PSA値とPSA密度が一定の基準を満たす場合に適しているとし、PSAを最初の2年は3か月ごと、その後は6か月ごとに測るとしています(がん情報サービス 2024年)。
1人の死亡を防ぐ数の裏で
ERSPCでは、前立腺がんによる死亡を1人防ぐあいだに、13年の時点で27人、23年の時点で12人が、検診の群で余分に前立腺がんと診断されていました(Schröder FH, et al. Lancet 2014、Roobol MJ, et al. N Engl J Med 2025)。追跡が長くなるほどこの数は小さくなりましたが、ゼロにはなっていません。また、米国のPLCOでは死亡の差が確認されておらず、欧州の結果だけで検診の利益を言い切ることはできません。
44%
PSAが4.0ng/mLを超えた154人のうち、その後の検査で少なくとも1回は4.0ng/mL以下に戻った人の割合です。
1回の値だけでは、生検に進むかどうかは決まりません。
出典:Eastham JA, et al. JAMA 2003(米国、検診を受けていない972人に4年間で5回採血)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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よくある質問
QPSAが4を超えたら、すぐに生検を受けるのですか?
すぐに生検とは限りません。1回だけの上昇は、次の検査で基準値の中に戻ることが少なくなく、米国の研究ではPSAが4.0ng/mLを超えた人の44%が、その後の検査で4.0ng/mL以下に戻りました。まず日をおいて測り直し、直腸診やMRIなどとあわせて、生検が必要かを考えます。
QPSAが高いのは、前立腺肥大症のせいかもしれませんか?
その可能性はあります。PSAは前立腺肥大症や前立腺炎など、がん以外の病気でも上がります。PSAの値だけではどちらによるものかは決まらないため、PSA密度やMRI、必要に応じて生検で調べます。
QPSA検査の前に、自転車や射精は避けたほうがいいですか?
資料によって書き方が違います。米国国立がん研究所の一般向けの解説は、自転車などの激しい運動や射精で一時的にPSAが上がることがあるとし、検査の前の2日間はPSAを上げうる行動を避けることが一般に勧められると書いています。一方、同研究所の医療者向けの要約は、射精と直腸診にはPSAへの臨床的に重要な影響はないとしています。
Q薄毛の薬を飲んでいると、PSAの値は変わりますか?
変わります。男性型脱毛症の薬フィナステリドの電子添文には、国内の24〜50歳の人でPSA濃度が約40%低下したと書かれており、前立腺がんの診断のためにPSAを測るときは、2倍した値を目安に評価することとされています。前立腺肥大症の薬デュタステリドも、6か月後にPSA値を約50%減少させます。
QPSAが基準値以下なら、前立腺がんはないと言えますか?
言えません。がん情報サービスは、基準値以下でも前立腺がんが発見されることがあるとしています。米国の試験では、PSAが4.0ng/mL以下で直腸診にも異常のなかった男性の15.2%に、生検で前立腺がんが見つかりました。ただし、その多くは悪性度の低いがんでした。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「PSA」(用語集、2025年1月31日更新)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/PSA.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 全ページ」(2024年7月30日更新、前立腺癌診療ガイドライン2023年版に基づく)
https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/print.html - 国立がん研究センター がん統計「前立腺」(2026年7月22日更新・確認)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/20_prostate.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」(2026年4月1日更新・確認)
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html - National Cancer Institute. Prostate-Specific Antigen (PSA) Test.(2025年1月31日更新)
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