骨転移の痛みがつらい。放射線で消える?急いで受診すべき症状は

骨転移の痛みは、痛み止めと放射線治療で和らげられることが多い症状です。
ただし、背中の痛みに手足のしびれや力の入りにくさが加わったら、急いで受診が必要です。

この記事では、骨転移とは何か、どんながんで起こりやすいか、痛みの特徴と痛み以外の症状、検査、治療(痛み止め・放射線・骨を守る薬・手術)を、日本臨床腫瘍学会の「骨転移診療ガイドライン」などをもとに整理します。放射線治療については、「痛みが和らぐ」と「痛みが消える」が別の数字であることも確かめます。

骨転移とは何ですか?

骨転移とは、ほかの臓器にできたがんが骨に移り、そこで増えている状態です。

骨にできたがんでも、もとは乳がんや肺がんなど別の臓器のがんです。治療の方針は、もとのがん(原発巣)の種類と、骨の病変の状態の両方で決まります。

転移しやすい場所は、背骨(脊椎)が最も多く、次いで太ももの骨(大腿骨)、骨盤、肋骨です(日本臨床腫瘍学会「骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)」2022年)。

骨転移があっても、初めのうちは症状がないことが少なくありません。同ガイドラインは、骨転移の初回診断時に27〜60%が無症状だったという報告を紹介しています。

骨転移はどんながんで起こりやすいですか?

前立腺がんと乳がんで特に多く、腎がん、肺がんが続きます。

骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)は、2010〜2016年の米国のがん登録(SEER)を使った研究を引いています。がん患者2,470,634人のうち、骨転移があったのは113,317人(4.6%)でした。転移のあるがんに限ってがんの種類別に見ると、骨転移の頻度は次のとおりです。

がんの種類 転移のあるがんのうち骨転移がある割合
前立腺がん 88.7%
乳がん 53.7%
腎がん 38.7%
肺腺がん 36.9%
婦人科がん 36.0%
肺小細胞がん 34.6%
食道がん 8.0%
胃がん 4.5%
膵がん 3.8%
結腸がん 1.2%

米国のデータで、分母は「すでに転移のある人」です。がんと診断された人全体のうち骨転移が起こる割合ではありません。

骨転移の痛みは、どんな痛みですか?

骨そのものから来る痛みと、骨のまわりの神経が巻き込まれて起こる痛みがあります。

日本緩和医療学会のガイドラインは、骨転移の痛みを「影響を受けた骨に由来する痛み」と「巻き込まれた周辺の神経の痛み」に大別しています。痛みが起こるしくみは、十分には解明されていないとも書いています(日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版)」Ⅱ章8)。

痛み方では、じっとしていても痛む「安静時痛」と、体を動かしたときに出る、または強まる「体動時痛」を分けて考えます。骨転移診療ガイドラインは、この2つでは適した薬物療法が異なるとしています。どんなときに痛むかを医師に伝えることが、薬を選ぶ手がかりになります。

背骨や関節の痛み、しびれは、年齢による変化(変性)でも起こります。同ガイドラインは、骨転移の症状がそうした症状と似ていて、見分けが難しいことがあるとしています。がんの治療中や治療後に、同じ場所の痛みが続く、強くなるといった変化があれば、「いつもの腰痛」と決めずに主治医に伝えてください。

痛み以外に、どんな症状が起こりますか?

骨が折れる、背骨の神経が圧迫されてまひが出る、血液中のカルシウムが高くなる、といったことが起こりえます。

骨転移によって起こるこうした出来事を、まとめて「骨関連事象(SRE)」と呼びます。研究では、病的骨折、脊髄圧迫、骨への放射線治療や手術、高カルシウム血症などを数えます(Kitagawa Y, et al. J Nippon Med Sch. 2019;86:159-164)。

状態 何が起こっているか 出てくる症状
病的骨折 がんで弱くなった骨が、小さな力で折れる 折れた場所によって異なる
脊髄圧迫 背骨の転移や骨折が、背骨の中を通る神経(脊髄)を押す まひ、感覚の障害、尿や便が出にくいなどの膀胱直腸障害
高カルシウム血症 血液中のカルシウム濃度が高くなる 水をたくさん飲む、尿が多い、食欲不振、嘔吐、活動性の低下

脊髄圧迫の症状は日本放射線腫瘍学会の「放射線治療計画ガイドライン 2012年版」から、高カルシウム血症の症状は岐阜大学医学部附属病院 内科のテキスト(2026年)から作成しました。

悪性腫瘍では約30%の症例で高カルシウム血症がみられるとされています。原因は骨転移だけではなく、がんが出す物質によって起こるものもあります(骨転移診療ガイドライン 改訂第2版、2022年)。

骨関連事象は珍しくありません。同ガイドラインが引く2000年の報告では、骨転移のある乳がんの患者さんの50〜60%が2年以内に、80%が5年以内に骨関連事象を起こしていました。

しびれは、抗がん剤によるしびれとして手足の先に出ることもあります。原因によって対処が違うため、しびれの場所や広がり方が変わったら主治医に伝えてください。

すぐに受診すべきなのは、どんなときですか?

足に力が入らない、感覚がおかしい、尿や便が出にくいといった、まひを疑う症状が出たときです。次の診察日を待たずに連絡してください。

骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)は、緊急に対応が必要な骨転移の状態として、脊髄圧迫、高カルシウム血症、切迫骨折(折れかけている状態)、病的骨折を挙げています。

なかでも時間が勝負になるのが脊髄圧迫です。同ガイドラインは、脊髄まひは発症から原則48時間以内の緊急手術が必要であり、放射線治療でも、まひが出ている場合は来院後48時間以内程度のできるだけ早い開始が望まれるとしています。

日本放射線腫瘍学会のガイドラインによると、悪性腫瘍による脊髄圧迫はがん患者さんの5〜10%で起こります。症状が出てから7日以内に照射を始めた群では歩ける力が80%程度で保たれたのに対し、14日以上たってからの群では30%程度に下がったという報告があります(日本放射線腫瘍学会「放射線治療計画ガイドライン 2012年版」緩和)。

脊髄圧迫の最初の症状は背中の痛みであることが多く、症状が出る場所と圧迫されている高さが一致しないことも多いとされています(日本緩和医療学会 2014年版)。背中の痛みが続いている人は、そこに足のしびれや力の入りにくさが加わったときが、受診を急ぐ合図になります。

骨転移は、どんな検査で見つけますか?

X線、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PET-CTといった画像検査を組み合わせて調べます。

それぞれ得意なことが違います。骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)によると、MRIは骨転移を見つける感度が高い一方、骨の外側の硬い部分(骨皮質)を写す力はX線やCTに劣ります。骨シンチグラフィーは、がんではない骨の変化でも陽性になる(偽陽性)ため、CTなどの形を見る検査と組み合わせるのが一般的です。

血液や尿で骨の代謝を調べる「骨代謝マーカー」は、診断に必須ではないとされています。日本では、乳がん・肺がん・前立腺がんと確定診断された後、骨転移の診断を目的に保険で測れる項目があります(同)。

骨転移の痛みには、どんな治療がありますか?

痛み止め、放射線治療、骨を守る薬(骨修飾薬)、手術を組み合わせます。もとのがんに対する薬物療法も並行します。

治療 主な目的
痛み止め(医療用麻薬を含む) 痛みを抑える
放射線治療 痛みのある骨転移の痛みを和らげる。脊髄圧迫の治療
骨修飾薬(ゾレドロン酸、デノスマブなど) 骨関連事象(骨折・まひなど)を減らす
手術 動ける力を保つ。骨折やまひへの対応・予防

表は骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)の総説から作成しました。同ガイドラインは、全身の病状、骨の病変の状態、本人の意向を、腫瘍内科・放射線治療・整形外科などが集まる「骨転移キャンサーボード」で共有して方針を決める体制が望ましいとしています。一方で、施設ごとの体制や医師による方針の違いは大きいとも書いています。

痛み止めの種類や、医療用麻薬への不安については、がんの痛みと医療用麻薬の記事にまとめています。

放射線治療で、痛みはどのくらい取れますか?

痛みが和らぐ人は72〜74%、痛みが消える人は28〜30%です。2つは別の数字です。

骨転移の痛みに対する放射線治療で、痛みが和らぐ割合72〜74%と痛みが消える割合28〜30%の違い、効果が出るまでの期間を示した図
「和らぐ」と「消える」の間には、40ポイント以上の開きがある。効果が出るまでには中央値で3〜4週間かかる。
出典:日本放射線腫瘍学会「放射線治療計画ガイドライン 2012年版」(Chow E, et al. Clin Oncol. 2012 の系統的レビューを引用)

骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)は、放射線治療を、痛みのある骨転移に対して、少ない有害事象と短い治療期間で高い確率で痛みを和らげられる、薬以外の治療の中心と位置づけています。痛みのある骨転移はすべて対象になりうるとしています。

その「高い確率」の中身を、日本放射線腫瘍学会のガイドラインは2012年の系統的レビューをもとに、疼痛緩和率72〜74%、疼痛消失率28〜30%と書いています(放射線治療計画ガイドライン 2012年版)。「痛みが軽くなった」人と「痛みがなくなった」人は、同じ割合ではありません。

28〜30%

放射線治療で、照射した骨の痛みが消えた人の割合(疼痛消失率)。
痛みが和らいだ人(72〜74%)の半分に届きません。

日本放射線腫瘍学会「放射線治療計画ガイドライン 2012年版」(Chow E, et al. Clin Oncol. 2012 を引用)

効果はいつ出ますか?

すぐには出ません。同ガイドラインによると、放射線治療を始めてから痛みが和らぐまでの期間は、中央値で3〜4週間です。照射を始めて数日のうちに、一時的に痛みが強くなる「フレア現象」が起こることもあります。そのあいだは痛み止めで支えることになります。

1回だけの照射と、何回にも分ける照射は違いますか?

痛みを和らげる効果は同じと考えられています。同ガイドラインは、8Gyを1回だけ当てる単回照射で、30Gyを10回(2週間)、20Gyを5回(1週間)に分ける照射と同等の効果が期待できるとしています。通院の回数は大きく違います。

一方、単回照射では、あとで同じ場所にもう一度照射する割合が高いことが報告されています。同ガイドラインはこれを、照射の方法そのものの差ではなく、選択バイアスによるものと解釈しています。どの人に再照射が選ばれたかという偏りが、数字に混じっているという意味です。照射後の病的骨折は単回照射で多い傾向はなく、脊髄圧迫は統計学的な差はないものの単回照射で多い傾向がみられたとしています。

初回の照射のあとに痛みがぶり返した場合や、和らぎ方が足りなかった場合は、同じ場所への再照射も検討に値するとされています(骨転移診療ガイドライン 改訂第2版)。

この数字が示していないこと

72〜74%と28〜30%は、照射した骨の痛みについての数字です。ほかの場所の骨転移の痛みや、神経の痛みまで消えることを示すものではありません。また、日本緩和医療学会の2014年版は同じ外照射について「60〜90%の症例で痛みの緩和が得られる」と別の幅で書いており、数字は何を「和らいだ」と数えるかで動きます。もとになっているのは2012年の系統的レビューです。2022年の骨転移診療ガイドラインでは、痛みのある背骨の転移に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)も、検討すべき問いとして取り上げられています。

骨を守る薬には、どんな注意点がありますか?

最も知っておきたい副作用は顎骨壊死(あごの骨の壊死)です。使い始める前に歯科を受診し、口の中を清潔に保つことが勧められています。

骨修飾薬には、ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸など)と、抗RANKL抗体薬のデノスマブがあります。日本では、ゾレドロン酸が2005年、デノスマブが2012年に保険承認されました。骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)は、骨修飾薬が骨関連事象を有意に抑えることが、複数の第Ⅲ相試験で証明されているとしています。

同ガイドラインが挙げる副作用は、発熱、低カルシウム血症、腎障害、顎骨壊死です。至適な投与期間は確立しておらず、投与期間が長くなると顎骨壊死が増えるという報告があります。口の中が不衛生であることがリスク因子として知られ、治療を始める前の歯科治療と口腔ケアが勧められています。

頻度については、日本口腔外科学会などがまとめたポジションペーパーが、次のように報告しています(顎骨壊死検討委員会「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:ポジションペーパー2023」)。

薬 顎骨壊死の頻度 もとになった研究
ゾレドロン酸(高用量) 1.6〜12.4% 日本のコホート研究
デノスマブ(がん患者さん) 1〜2% メタアナリシス

研究の種類も対象も違う数字なので、2つの薬を直接比べたものではありません。同じポジションペーパーには、デノスマブでもコホート研究では3.6〜33.3%という報告があると書かれています。

骨修飾薬を使っている間に抜歯などが必要になったら、自己判断で薬を止めずに、主治医と歯科医の両方に相談してください。同ポジションペーパーは抜歯時に休薬しないことを弱く推奨する一方、高用量で使っている人では抜歯を避けられる方法がないかをまず検討するとしています。

手術が必要になるのは、どんなときですか?

脊髄圧迫でまひが出たとき、骨が折れたとき、折れる危険が高いときです。

骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)は、整形外科的な治療の第一の目的を、移動する力を保ち、高めることに置いています。脊髄まひは原則48時間以内の緊急手術、病的骨折もできるだけ早い手術が必要としています。手術を行う骨転移のもとのがんは、肺がんと乳がんで4〜5割を占めます。

まだ折れていなくても、手術を考えることがあります。腕や脚の長い骨で、骨の外側が3cm以上、または50%以上壊されている場合は、骨折の危険が高いとして、予防のための固定術を行ったうえで照射することが推奨されています(放射線治療計画ガイドライン 2012年版)。

手術ができるかどうか、どの方法を選ぶかは、全身の状態と見通しで変わります。同ガイドラインは、予後を予測する点数表(スコアリング)を使って判断するのが現実的としています。

骨転移の痛みは、原因が骨なのか神経なのか、じっとしていても痛むのか動くと痛むのかで、効く手立てが変わります。放射線で痛みが消える人は28〜30%で、効くまでに中央値で3〜4週間かかるという数字も、痛み止めを減らす時期を医師と相談する材料になります。

監修者

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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よくある質問

骨転移の痛みはどんな痛みですか?

骨そのものから来る痛みと、骨のまわりの神経が巻き込まれて起こる痛みがあります。じっとしていても痛む安静時痛と、動くと出る・強まる体動時痛では、適した薬物療法が異なるとされています。

骨転移の痛みに放射線治療は効きますか?

日本放射線腫瘍学会のガイドライン(2012年版)は、疼痛緩和率を72〜74%、疼痛消失率を28〜30%としています。痛みが和らぐまでの期間は中央値で3〜4週間で、8Gyを1回当てる照射でも分割照射と同等の効果が期待できるとされています。

骨転移で急いで受診すべき症状は何ですか?

足に力が入らない、感覚がおかしい、尿や便が出にくいといった脊髄圧迫を疑う症状です。骨転移診療ガイドラインは、脊髄まひは発症から原則48時間以内の緊急手術が必要としています。

骨転移しやすいがんは何ですか?

米国のがん登録(2010〜2016年)では、転移のあるがんのうち骨転移がある割合は、前立腺がん88.7%、乳がん53.7%、腎がん38.7%、肺腺がん36.9%でした。骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)が引いている数字です。

骨転移の薬で顎骨壊死はどのくらい起こりますか?

顎骨壊死検討委員会のポジションペーパー2023は、高用量のゾレドロン酸で1.6〜12.4%(日本のコホート研究)、がん患者さんのデノスマブで1〜2%(メタアナリシス)と報告しています。使い始める前の歯科受診と口腔ケアが勧められています。

参考文献

  1. 日本臨床腫瘍学会 編『骨転移診療ガイドライン(改訂第2版)』南江堂、2022年(Minds掲載)
    https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00756/
  2. 日本放射線腫瘍学会『放射線治療計画ガイドライン 2012年版』緩和(骨転移・脊髄圧迫)
    https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/guideline/10palliative_care.pdf
  3. 日本緩和医療学会『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版)』Ⅱ章8「薬物療法以外の痛み治療法」
    https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2014/02_08.pdf
  4. 顎骨壊死検討委員会「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」2023年
    https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/2023/0217_1.pdf
  5. Kitagawa Y, Ito T, Mizuno Y, et al. Symptoms Related to Moderate Skeletal-Related Events as Clues for the Diagnosis of Bone Metastasis. J Nippon Med Sch. 2019;86:159-164.
    https://www.nms.ac.jp/sh/jnms/2019/086030159.html
  6. 岐阜大学医学部附属病院 内科「高カルシウム血症」2026年7月21日改訂
    https://www1.gifu-u.ac.jp/~naikahp/textbook/hypercalcemia.pdf

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