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放射線治療の歴史は古く、そしてどんどん進化しています。
私が医師になった当時、約40年前は、がんは不治の病でした。当時の抗がん剤はほぼ無効で、手術治療のみが一縷の望みを繋ぐ手段でした。そして拡大手術が行われ、手術のみで5年生存する患者さんがボツボツと登場する時代でした。外科的がん治療の幕開けの時代だったのです。
当時は、放射線科を希望する同級生はいましたが、放射線診断科の志望で、放射線治療科を希望した同級生はいなかったと記憶しています。1985年に大学を卒業しましたが、当時の放射線治療はまったく魅力を感じない領域でした。私も放射線治療科の選択肢はまったく思いも付きませんでした。
私が若い外科医の頃は、膵臓がんの手術中に膵臓に放射線照射をする試みが行われていました。麻酔をしたまま、移動する麻酔器と患者さんは一緒に、手術室から地下にある放射線治療室に移動して、放射線治療を行うという段取りでした。しかし、大変に面倒なこの試みを行っても予後は改善せず、長くは行われませんでした。
放射線治療の歴史は実は相当古いのです。放射線治療は1895年レントゲンによるX線の発見の1ヶ月後に始まりました。 癌治療としては、1896年には手術不能の咽頭癌に第一例が行われ、疼痛緩和を得ることに成功しました。 そして1899年にスウェーデンのステンベックによる皮膚癌の治療が世界初の放射線治療による癌の根治例となりました。その後も、いろいろながんへの治療が試みられましたが、第二次世界大戦以後は従来型の殺細胞性抗がん剤の開発が進み、殺細胞性抗がん剤の使用方法と組合せが工夫され、1980年代は放射線治療よりも抗がん剤の治療に多くの医師は興味を持っていました。
放射線は細胞のDNAに障害を与えることができます。腫瘍細胞だけにダメージを与えることは高線量を照射すれば簡単ですが、周囲の正常組織へのダメージを減らすことがもっとも注意を要する点です。がんは周囲に浸潤しますから、その浸潤部位への治療を行わないのか、放射線で浸潤部位の治療をするのかで、実は作戦が相当異なります。現状は浸潤が疑われる部位へも放射線治療を行っています。また遠隔転移が疑われる部位(がん細胞があるかないかわからない部位)にも放射線治療が行われています。この正常組織とがん組織が入り交じるグレーの部分では、正常組織は生き残って、がん細胞が死滅する照射方法が工夫されてきました。そのために、1日2グレイを週5回、そして数週間の照射が一般的になりました。この照射方法だと腫瘍組織は壊死して、正常組織は回復するのです。
腫瘍だけにダメージを与えられる粒子線ではがんの種類によっては1回で治療が終わることもあります。
放射線治療の利点は形態も残り、機能も残ることです。そして体へのダメージは抗がん剤や外科治療よりは少ないので、高齢者のがんにはまず放射線治療が考慮されるべきと思っています。高齢者のがんを扱う施設には放射線治療施設と、それを扱える医師を含めたスタッフはMUSTです。
私が卒業した当時の、放射線治療科がもっとも不遇であった時代から、放射線治療はものすごく進歩しています。放射線を、単純X線による指標(ガイド)で精一杯腫瘍に照射していた時代(私には相当適当な照射であったと思えます)から、CTガイドを使用し1mm単位で狂いなく照射できる時代になりました。強度変調放射線治療(IMRT)などで自由に照射野を形作れるようになりました。しかし、強度変調放射線治療では残念ながら周囲の正常組織へのある程度の被曝は避けられず、5年から10年以降の正常組織からの二次発がんが問題となることがあります。その点、陽子線や重粒子線治療では、強度変調放射線治療に比べて、周囲の正常組織への暴露は激減しています。
私が描く未来のがん治療
以下は私が描く未来の治療で、私の妄想も入っていますが、このストーリーが理想的と思っています。
がんの主病巣はステージによらず、陽子線治療で腫瘍のボリュームを減らします。浸潤している部分は照射野から外します。正常組織は必ず温存します。浸潤部分や転移部分のがんを退治するのは抗がん剤の仕事です。ですから、ステージ4のがんでも陽子線治療の対象になります。
現状の抗がん剤は残念ながら冴えません。抗生物質が相当進行した感染症でも治療可能なのとは対照的です。本当に素晴らしい抗がん剤が開発されれば、がんの早期発見は不要になり、ある程度の大きさになってからでも、遠隔転移があっても、治療できるようになるはずです。そして免疫チェックポイント阻害剤を併用して、患者さん自身の免疫力を上げて、がん細胞を退治する作戦です。
放射線治療で腫瘍のボリュームを減らすことも大切ですが、放射線で破壊された腫瘍から放出される腫瘍抗原を樹状細胞が認識して(抗原提示して)、そして自分の免疫力をますます活性化してがんを退治できるようになります。
外科の役目は、放射線治療では明らかに合併症が生じる場合の腫瘍のボリュームリダクションや、放射線治療で生じた狭窄や変形などへの対応、そして合併症が起こったときの対処だと思っています。
陽子線や重粒子線の未来
がんの治療にはますます陽子線や重粒子線治療が行われるようになるでしょう。陽子線や重粒子線を持たない施設では、「当院にある放射線治療の装置で、陽子線や重粒子線と同じ効果を出せます!」と主張するでしょうが、正常部位へのダメージを考慮すると、陽子線や重粒子線にはまったくかないません。私には設備を持たないものの言い訳としか思えません。ロボット支援手術の設備を持たない病院が、「ロボット支援手術がなくても、同じ結果を出せますよ!」と声高に叫んでいるのと同じに思えます。
陽子線の保険適用の歴史は以下です。
2016年
小児腫瘍(限局性の固形悪性腫瘍)
2018年
限局性の骨軟部腫瘍(手術による根治的な治療が困難なもの)
頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)
限局性及び局所進行性前立腺癌(転移を有するものを除く)
2022年
肝細胞癌(長径4cm以上)
肝内胆管癌
局所進行性膵癌
局所大腸癌(手術後の再発)
重粒子線では小児腫瘍への適用がなく、代わりに局所進行性子宮頚部腺癌が載っています。
すべての放射線治療が陽子線や重粒子線治療に代わってもいいのではと私は思っていますが、費用面で高額なので厚生労働省がどこまで認めるかはわかりません。標準治療が最良の治療ではない良い例です。
放射線の外部照射とは?
現在がんの治療でもっとも多く使われている放射線治療は外部照射です。X線を照射する方法がもっとも多く行われています。
X線の外部照射を単一方向のみで行うと、体の表面近くで放射線量が最大となり、それより奥では徐々に減少します。がん病巣より浅いところにある正常細胞に腫瘍より大きなダメージを与えることになります。そこで、多方向から弱い線量をがん病巣にあてて周囲の正常な細胞のダメージを減らし、がんに十分な線量が照射されるように工夫しています。現状では、がん放射線治療のほとんどがX線です。
リニアックとはX線を発生させる直線加速器のことです。本邦ではもっとも普及しているX線照射装置です。1963年に初めて国立がんセンターにリニアックが導入されました。その後、リニアックは順次改良され、リニアックとCT、MRI、PETなどの画像診断装置を組み合わせて強度変調放射線治療(IMRT)が行えるようにしたもののひとつがトモテラピーです。
定位放射線治療とは、病巣に対し多方向から放射線を集中させる方法です。定位放射線治療で用いられる装置の1つはガンマナイフです。約200個のコバルト線源から出るγ線がコリメーターによって細いビームとされ病巣に集中するように照射することができます。ガンマナイフは、主に脳腫瘍の治療に用いられます。また小型のリニアックをロボットに取り付けたものがサイバーナイフで、X線による定位照射が行え、また強度変調放射線治療(IMRT)も可能です。
粒子線治療とは、陽子や重粒子(本邦では炭素イオン)などの粒子線を病巣に照射する放射線治療法です。粒子線はX線とは異なり、体内に入っても表面近くではエネルギーをあまり放出せず、停止する直前にエネルギーを放出します(ブラッグ・ピーク)。陽子線治療では、陽子(水素の原子核で正の電荷を持つもの)や約12倍重い炭素イオンを光速の約70%まで加速して照射します。加速装置は体育館の大きさが必要で費用も維持費も高額ですから、設置されている施設は限られています。
照射位置を適切にするためにがん病巣に小さな金属製のマーカーを埋め込む場合もあります。また、正常組織とがん病巣の距離を保つためにスペーサーを挿入することもあります。
内照射 密封線源(小線源治療)
X線や陽子線、そして重粒子線治療は外から線源を当てるので外照射と呼ばれます。一方で内照射は魅力的な治療です。子宮体がんや前立腺がんなどで、γ線を出す核種を密封容器に入れたもの(通常は直径1mmで長さ5mmぐらい)を直接患部に留置するのです。これは直接にがんの部分に放射線が届くので有効性が高いのです。埋め込む数は50個から100個程度です。刺入された線源からでる放射線が周囲に影響がない程度になるまで、数日間ぐらい隔離されることもあります。子宮体がんでは腫瘍に線源を刺すのではなく、子宮の腔内に放射線源を留置します(腔内照射)。
内照射のひとつ 非密封照射(内用療法)
内照射のもうひとつは、非密封照射です。甲状腺がんの治療に、β線を出す核種を含んだヨードを利用するのです。甲状腺がんの転移があるときに、甲状腺を全摘して、その後にβ線を出すヨードを内服すると、そのヨードが転移巣を含めたがんに摂取されます。そしてβ線の影響でその腫瘍細胞が壊死するという理屈です。
同じように、あるがん細胞に特異的に発現している物質に対する抗体を作成し、そこにα線やβ線を放出する核種を結合させて投与することも行われています。α線は紙を通過できません。β線はアクリル板を通過できません。ですから、他の人には影響がないのです。しかし、尿や便、汗から排出されますから、一両日は特殊な部屋で過ごします(監禁されます)。去勢抵抗性前立腺がんの骨転移やソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍、褐色細胞腫・パラガングリオーマなどに対してこの治療が行われています。
化学放射線療法
食道がんは、昔は手術が治療の王道でした。ところが、抗がん剤が進歩し、そして放射線治療が進歩し、抗がん剤と放射線治療を合わせた化学放射線療法が外科手術とほぼ遜色ないとの結果がでました。食道がんのガイドラインに載っています。正確には少々外科治療の方が化学放射線療法よりも成績はよいのですが、手術の大変さを考慮すると、化学放射線療法を選択する患者さんは少なくないと思います。若い頃に食道外科医を志していた私にとっては青天の霹靂です。こんな時代が来るとはまったく予想していませんでした。
手術や抗がん剤の補助療法として
放射線治療は侵襲が少ないので、いろいろな抗がん剤治療や手術の補助療法としての可能性が広がっています。手術不可能ながんが、術前の放射線治療で手術が可能になることもあります。放射線照射の精度が上がったことが最大の理由と思っています。
緩和医療に放射線治療を
がんの緩和医療では、骨転移に対して放射線治療はしばしば使用されます。転移しているがんを退治するほどの線量ではなく、痛みを和らげる線量に設定して照射するので、副作用が軽いのです。
放射線の種類
放射線とは、空間や物質中を波の形や粒子としてエネルギーを伝播するものの総称です。放射線は電磁放射線(電磁波)と粒子放射線(粒子線)の二つに大きく分類されます。電磁波にはX線とγ線、粒子線にはα線、β線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線などがあります。
放射線治療の単位
Gy(グレイ)は放射線が物質(人体も含む)にあたったときにどれくらいのエネルギーが吸収されたかを表す単位。
Sv(シーベルト)は放射線が人間にあたったときにどれだけ健康被害があるかを評価するために使う単位。
Bq(ベクレル)は放射能(放射線を発する能力)の量を表す単位。
いろいろな治療を組み合わせましょう
がんの放射線治療は進化しています。高齢者でも利用可能です。しかし、放射線治療は外科治療と同じく、局所療法です。体全体には効きません。
ある年齢を超えるとがんは1日数千個のがんの芽が発生していると言われています。そのがんの芽を摘んでいるのは各人の免疫力です。
ですから免疫力を上げる努力を積み重ねましょう。明らかな抗がんエビデンスがないことでも良さそうで、経済毒性(過度な費用負担)がないことは積み上げましょう。①散歩(適度な運動)、②日光浴、③バランスのよい食事(タンパク質を多く)、④適度な睡眠、⑤安心と希望(ストレスを減らす)などなどです。明らかな抗がんエビデンスとは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験です。ランダム化とはクジ引きのことで、1000例規模の大規模臨床試験を勝ち抜くと明らかな抗がんエビデンスがあるとされ、通常は保険収載されます。明らかな抗がんエビデンスがなくても経済毒性を含めた副作用がないものは加えましょう。
そして多成分系の薬剤である漢方薬や生薬が嫌いでなければ、生薬フアイアを是非とも治療に加えてください。
なんと生薬フアイアは明らかな抗がんエビデンスがあります。
生薬フアイアはなんと、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いています。約1000例の肝臓がん手術後の患者さんをクジ引きでフアイアの内服群と内服しない群に分けて、生存率で内服群は非内服群を96週後に約14%も上まわりました。この結果は超一流英文誌「GUT」に掲載されました。
今でも難治性のがんに分類される肝臓がんの結果ですから、多くのがんの芽を摘むためにも有効であると推論可能です。がんの放射線治療を行っている方は、生薬や漢方薬に抵抗がなければ、または抵抗があってもフアイアの有効性に納得できれば、是非ともフアイアの内服を行ってください。
どんな治療にも併用可能です。
フアイアは生薬ですから漢方薬と同じく多成分系の薬剤です。残念ながら、フアイア以外の生薬や漢方薬には明らかな抗がんエビデンスを有するものはありません。そして単一成分由来の西洋薬とは異なり、フアイアにはいろいろと不思議なことが起こります。フアイアはオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同じように免疫力をアップさせますが、オプジーボなどとは異なり免疫が上がりすぎて起こる副作用を生じません。その理由は多成分系の解析技術が未だに発展途上である現在、まだまだ解明されていません。ただただ、生薬フアイアを他の治療に加えると、または単独で使用しても、有効性を体感できることが多いという事実が多数存在します。そんな多成分系で、かつ明らかな抗がんエビデンスがあるフアイアを是非とも治療の選択肢に加えてください。
新見正則医院にご連絡ください。
フアイアは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜きましたが、保険収載されていません。少々経済毒性があります。しかし経済毒性以外の副作用はなく(まれに起こる下痢のみ)、またどの治療とも併用可能なため、機会損失(他の治療が行えない)もありません。
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●内部リンク(当サイト内でご参考になる記事)
がんの例え話「雑草と土壌」
がんの例え話「雑草と土壌」2
がんの例え話「雑草と土壌」3
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生薬フアイア概説
まずフアイアを試したいときには
執筆者略歴 新見正則
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。
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