目次
- 1 ステロイドは魔法の薬として登場しました。
- 2 ステロイドは悪魔の薬にもなります。
- 3 ステロイドは今でも魔法の薬です。
- 4 ステロイドには副作用があります。特に長期投与で!
- 5 ステロイドの副作用防止には漢方薬はほぼ無力です。
- 6 ステロイドは上手に使ってください。上手に離脱してください。
- 7 がん治療にもステロイド(抗がん剤副作用/浮腫対策/緩和医療)
- 8 ステロイドの減量には漢方薬や生薬は役に立ちます。
- 9 ステロイドによる免疫力の低下を補うには? がん予防にも
- 10 なんと生薬フアイアはステロイドが有効な疾患にも効きます。魔法の生薬なのです。
- 11 新見正則医院にご連絡ください。
- 12 ●内部リンク(当サイトで参考になる別記事)
- 13 執筆者略歴 新見正則
ステロイドは魔法の薬として登場しました。
私が医師になった当時、約40年前でも、難病・難症にはすでにステロイドが使われていました。ステロイドの歴史は実は古いのです。
1935年に体内ステロイドのひとつであるコルチゾンが分離されました。コルチゾンは副腎から分泌されるホルモンです。副腎は尿を作る左右の腎臓の上に載っている親指の先ぐらいの臓器です。
コルチゾンは1948年に製造可能になり、1949年、ヘンチらは合成したコルチゾンを関節リウマチ患者に投与して劇的な効果がありました。「魔法の薬」として登場したのです。1950年にヘンチらはノーベル賞に輝いています。日本での最初のステロイドの臨床報告は、1951年に梅原らによって行われました。
ステロイドホルモンはステロイドを基本骨格とするホルモンの総称です。ステロイド骨格は六員環3つと五員環ひとつからなります。副腎皮質と睾丸や精巣、卵巣、胎盤などの生殖腺で合成されます。コレステロールもステロイド骨格を持っており、ステロイドホルモンはコレステロールから合成されます。コレステロールからまずプレグネノロンが作られます。そしてプレグネノロンから鉱質コルチコイドであるアルドステロン、糖質コルチコイドであるコルチゾール、男性ホルモンであるテストステロンが合成されます。男性ホルモンからアロマターゼによって女性ホルモンが合成されます。
世の中で「ステロイド」と呼ばれているものの多くは糖質コルチコイドを示します。
天然のステロイドも魔法の薬なのですが、その作用を強めるために、化学合成する時にはいろいろな工夫がなされて、合成副腎皮質ホルモン剤という薬物になります。ステロイド骨格の一部を二重結合にしたり(プレドニゾロン)、メチル基を付加したり(メチルプレドニゾロン)、フッ素を加えたりして(トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン)、糖質ステロイドの作用を強めたり、鉱質ステロイドの作用を弱めたりしています。
ステロイドを全身に長期にわたり大量に使用すると、副腎機能が低下したり、糖尿病を悪化させたり、骨がもろくなったり、免疫力が低下(風邪などの感染症にかかりやすくなる、がんになりやすくなる)するといった全身的な副作用が生じます。
しかし、副作用を熟知した医師の指示に従って使用すれば、副作用よりも遙かに大きな御利益が得られます。ステロイドの長所や短所を理解して、ステロイドとは上手に付き合い、そして上手に利用し、症状に合わせて減量し、そして不要になればさっさと中止しましょう
ステロイドは悪魔の薬にもなります。
ステロイドのひとつであるアナボリックステロイドはドーピングに使用されました。そして今でも、一部で使用されています。外界から摂取した物質からタンパク質を作り出す(蛋白同化)作用を有するものです。その多くは男性ホルモン作用を持っています。1960年代頃からオリンピック選手らに使用されはじめ、1975年に国際オリンピック委員会によって、使用禁止薬物に認定されました。アナボリックステロイドを使うと、他のアスリートよりも少ない努力で同じ筋肉量を得られるのです。誰もが手を出したくなる「悪魔の薬」なのです。
私が趣味としているトライアスロンと自転車競技の英雄であったランス・アームストロングは7年連続でツール・ド・フランスを制覇しましたが、2012年にドーピング違反で全てのタイトルを剥奪され、そして永久追放されました。
実は、現在もアナボリックステロイドはトーピング検査がない一般人に使用されています。筋肉ムキムキ志望の人が使っているようです。アナボリックステロイドですこしの努力でムキムキになりますが、突然死のリスクは相当上昇します。「悪魔の薬」です。隠語でドーピングをしていない人を「ナチュラル」、トーピングをしている人を「ユーザー」と称するそうです。
ステロイドは今でも魔法の薬です。
医師になって2年目の病院で、他科の外来患者さんが抗生物質の点滴後に、突然の呼吸困難となり廊下で意識不明になりました。そこで直ぐに私が呼ばれ、気管内挿管を試みましたが、喉頭がむくんでまったく、気管が見えません。そこで、外来の廊下で局所麻酔を行って、のどぼとけの下の皮膚を切開して、気管にチューブを入れました。そして意識が戻りました。もちろん入院となりましたが、ステロイドの注射後に、あっと言う間にむくみが取れ、元気になりました。ステロイドの抗炎症、抗アレルギー作用を体感した瞬間でした。経験をたくさん積んだ今なら、気管切開をしなくても一番太い注射針を何本か刺せばもっとお互い楽に救命できたと思います。しかし、当時は必死で救命しました。
ステロイドは今でも魔法の薬なのです。PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)からはいろいろな添付文書を検索またはダウンロードできますが、その中にある「プレドニン錠5mg(商品名)」の添付文書内を見ると、日本薬局方の基準名(一般名)は「プレドニゾロン錠」で、発売開始日は1956年3月となっています。
そして効能・効果は以下で、ほぼすべての領域で、多数の疾患や症状が載っています。これを見るだけでステロイド剤が「魔法の薬」として今でも使用可能である、そして使用されていることがわかります。使用量は1日に60mgまでで、例外として悪性リンパ腫に対して抗悪性腫瘍剤との併用で100mg/m2(体表面積)まで使用できます。
〇 内科・小児科領域
(1)内分泌疾患:慢性副腎皮質機能不全(原発性、続発性、下垂体性、医原性)、急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)、副腎性器症候群、亜急性甲状腺炎、甲状腺中毒症〔甲状腺(中毒性)クリーゼ〕、甲状腺疾患に伴う悪性眼球突出症、ACTH単独欠損症
(2)リウマチ疾患:関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スチル病を含む)、リウマチ熱(リウマチ性心炎を含む)、リウマチ性多発筋痛
(3)膠原病:エリテマトーデス(全身性及び慢性円板状)、全身性血管炎(高安動脈炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を含む)、多発性筋炎(皮膚筋炎)、強皮症
(4)川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)さ
(5)腎疾患:ネフローゼ及びネフローゼ症候群
(6)心疾患:うっ血性心不全
(7)アレルギー性疾患:気管支喘息、喘息性気管支炎(小児喘息性気管支炎を含む)、薬剤その他の化学物質によるアレルギー・中毒(薬疹、中毒疹を含む)、血清病
(8)重症感染症:重症感染症(化学療法と併用する)
(9)血液疾患:溶血性貧血(免疫性又は免疫性機序の疑われるもの)、白血病(急性白血病、慢性骨髄性白血病の急性転化、慢性リンパ性白血病)(皮膚白血病を含む)、顆粒球減少症(本態性、続発性)、紫斑病(血小板減少性及び血小板非減少性)、再生不良性貧血、凝固因子の障害による出血性素因
(10)消化器疾患:限局性腸炎、潰瘍性大腸炎
(11)重症消耗性疾患:重症消耗性疾患の全身状態の改善(癌末期、スプルーを含む)
(12)肝疾患:劇症肝炎(臨床的に重症とみなされるものを含む)、胆汁うっ滞型急性肝炎、慢性肝炎(活動型、急性再燃型、胆汁うっ滞型)(但し、一般的治療に反応せず肝機能の著しい異常が持続する難治性のものに限る)、肝硬変(活動型、難治性腹水を伴うもの、胆汁うっ滞を伴うもの)
(13)肺疾患:サルコイドーシス(但し、両側肺門リンパ節腫脹のみの場合を除く)、びまん性間質性肺炎(肺線維症)(放射線肺臓炎を含む)
(14)結核性疾患(抗結核剤と併用する)
肺結核(粟粒結核、重症結核に限る)、結核性髄膜炎、結核性胸膜炎、結核性腹膜炎、結核性心のう炎
(15)神経疾患:脳脊髄炎(脳炎、脊髄炎を含む)(但し、一次性脳炎の場合は頭蓋内圧亢進症状がみられ、かつ他剤で効果が不十分なときに短期間用いること)、末梢神経炎(ギランバレー症候群を含む)、筋強直症、重症筋無力症、多発性硬化症(視束脊髄炎を含む)、小舞踏病、顔面神経麻痺、脊髄蜘網膜炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
(16)悪性腫瘍:悪性リンパ腫及び類似疾患(近縁疾患)、多発性骨髄腫、好酸性肉芽腫、乳癌の再発転移
(17)その他の内科的疾患:特発性低血糖症、原因不明の発熱
〇 外科領域
副腎摘除、臓器・組織移植、侵襲後肺水腫、副腎皮質機能不全患者に対する外科的侵襲、蛇毒・昆虫毒(重症の虫さされを含む)
〇 整形外科領域
強直性脊椎炎(リウマチ性脊椎炎)
〇 産婦人科領域
卵管整形術後の癒着防止、副腎皮質機能障害による排卵障害
〇 泌尿器科領域
前立腺癌(他の療法が無効な場合)、陰茎硬結
〇 皮膚科領域
△印の付されている効能・効果に対しては、外用剤を用いても効果が不十分な場合あるいは十分な効果を期待し得ないと推定される場合にのみ用いること
△湿疹・皮膚炎群(急性湿疹、亜急性湿疹、慢性湿疹、接触皮膚炎、貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎、アトピー皮膚炎、乳・幼・小児湿疹、ビダール苔癬、その他の神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、進行性指掌角皮症、その他の手指の皮膚炎、陰部あるいは肛門湿疹、耳介及び外耳道の湿疹・皮膚炎、鼻前庭及び鼻翼周辺の湿疹・皮膚炎など)(但し、重症例以外は極力投与しないこと)、△痒疹群(小児ストロフルス、蕁麻疹様苔癬、固定蕁麻疹を含む)(但し、重症例に限る。また、固定蕁麻疹は局注が望ましい)、蕁麻疹(慢性例を除く)(重症例に限る)、△乾癬及び類症〔尋常性乾癬(重症例)、乾癬性関節炎、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、稽留性肢端皮膚炎、疱疹状膿痂疹、ライター症候群〕、△掌蹠膿疱症(重症例に限る)、△毛孔性紅色粃糠疹(重症例に限る)、△扁平苔癬(重症例に限る)、成年性浮腫性硬化症、紅斑症(△多形滲出性紅斑、結節性紅斑)(但し、多形滲出性紅斑の場合は重症例に限る)、IgA血管炎(重症例に限る)、ウェーバークリスチャン病、粘膜皮膚眼症候群〔開口部びらん性外皮症、スチブンス・ジョンソン病、皮膚口内炎、フックス症候群、ベーチェット病(眼症状のない場合)、リップシュッツ急性陰門潰瘍〕、レイノー病、△円形脱毛症(悪性型に限る)、天疱瘡群(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、Senear-Usher症候群、増殖性天疱瘡)、デューリング疱疹状皮膚炎(類天疱瘡、妊娠性疱疹を含む)、先天性表皮水疱症、帯状疱疹(重症例に限る)、△紅皮症(ヘブラ紅色粃糠疹を含む)、顔面播種状粟粒性狼瘡(重症例に限る)、アレルギー性血管炎及びその類症(急性痘瘡様苔癬状粃糠疹を含む)、潰瘍性慢性膿皮症、新生児スクレレーマ
〇 眼科領域
内眼・視神経・眼窩・眼筋の炎症性疾患の対症療法(ブドウ膜炎、網脈絡膜炎、網膜血管炎、視神経炎、眼窩炎性偽腫瘍、眼窩漏斗尖端部症候群、眼筋麻痺)、外眼部及び前眼部の炎症性疾患の対症療法で点眼が不適当又は不十分な場合(眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、虹彩毛様体炎)、眼科領域の術後炎症
〇 耳鼻咽喉科領域
急性・慢性中耳炎、滲出性中耳炎・耳管狭窄症、メニエル病及びメニエル症候群、急性感音性難聴、血管運動(神経)性鼻炎、アレルギー性鼻炎、花粉症(枯草熱)、副鼻腔炎・鼻茸、進行性壊疽性鼻炎、喉頭炎・喉頭浮腫、食道の炎症(腐蝕性食道炎、直達鏡使用後)及び食道拡張術後、耳鼻咽喉科領域の手術後の後療法、難治性口内炎及び舌炎(局所療法で治癒しないもの)、嗅覚障害、急性・慢性(反復性)唾液腺炎
ステロイドには副作用があります。特に長期投与で!
ステロイドは症状を楽にするための「魔法の薬」なのです。しかし、根本治療(原因療法)となることは稀です。ステロイドで急場をしのいで、しっかりと根本治療を行いましょう。ステロイドの副作用には以下のようなものがあります。
●易感染性
ステロイド剤は免疫抑制剤です。ですから移植された臓器が拒絶されることを防ぐために使われます。免疫力を落とせば、いろいろな感染症に罹りやすくなり、また長期に亘って免疫力が落ちれば発がんリスクは増加します。
●骨がもろくなる
ステロイドの長期内服は、骨粗鬆症を招きます。圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などが起こりやすくなります。
●糖尿病
ステロイドには糖を合成する働きがあるため、血糖値が上がります。
●消化性潰瘍
消化管粘膜が弱くなるため、また胃酸分泌が増すため潰瘍ができやすくなります。
●血栓症
血小板機能が亢進し、血栓ができやすくなります。特に静脈内に血栓ができやすくなり、深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)のリスクが高くなります。
●精神症状
うつ状態になることがあります。一方で興奮して不眠になることもあります。ですから、夕食後や就寝前の内服は避けて、朝と昼に内服することもあります。
●満月様顔貌、中心性肥満
脂肪代謝の障害が原因で、顔が丸くなり(ムーンフェイス)、また体幹が肥ります。クッシング症候群とも呼ばれます。
●動脈硬化、脂質代謝異常
動脈硬化や脂質代謝異常を招くことがあります。
●高血圧症、むくみ
ステロイド剤には糖質コルチコイド作用のほか、鉱質コルチコイド作用を多少とも含みます。その場合、ナトリウムが蓄積し、高血圧になり、そして全身がむくみます。
●眼症状
白内障や緑内障が生じます。原因は不明です。
●その他
にきび(痤瘡)や皮膚が薄くなる、筋力低下、無菌性大腿骨頭壊死、増毛、脱毛、不整脈、生理不順、膵炎、手の震えなども生じます。
ステロイドの副作用防止には漢方薬はほぼ無力です。
ステロイドによる副作用を漢方薬で防止することはほぼ不可能です。骨粗鬆症に漢方薬は効きません。糖尿病にも漢方薬は無効です。消化性潰瘍には六君子湯が有効なことがありますが、H2ブロッカーやPPI(プロトンポンプ阻害剤)が最優先です。血栓症に漢方は無力です。精神症状には加味帰脾湯が効くことがあります。脂質代謝異常による満月様顔貌や中心性肥満には漢方薬は無効です。動脈硬化症や脂質代謝異常には大柴胡湯がまれに効くことがあります。高血圧やむくみには五苓散が効くことがあります。眼症状には基本的に漢方薬は無効です。白内障に八味地黄丸、緑内障に釣藤散などを昔は処方しましたが効果は判然としません。にきびなどには清上防風湯が効くことがあります。
ステロイドによる副作用には西洋薬優先で対応してください。漢方薬は西洋薬で対応できないときの手段としては有効なことがあります。
不要なステロイドの長期使用は控えましょう。
ステロイドは上手に使ってください。上手に離脱してください。
ステロイドホルモン剤は「魔法の薬」です。症状は楽になります。しかし、根本的な治療になることは稀です。ですから、使用量に注意しましょう。
ステロイドホルモンはプレドニゾロン換算で、2.5〜5mg程度が副腎皮質から生理的に分泌されています。外から「魔法の薬」である合成副腎皮質ホルモン剤を投与すると、副腎は自分でホルモン分泌をすることを怠るようになります。それが長期に亘ると、ほとんど自分では副腎からステロイドホルモンを分泌しなくなるのです。ステロイドホルモンは生理的に必要で、かつ必要量が分泌されないと命に関わることもあります。これを副腎不全(ステロイド離脱症候群)といいます。倦怠感、吐き気、下痢、頭痛、低血糖、血圧低下などが前兆です。ですから、ステロイドを止めるときは、ステロイド離脱症候群を避けるために徐々に時間をかけて減量します。
がん治療にもステロイド(抗がん剤副作用/浮腫対策/緩和医療)
ステロイドはがん治療には必須です。まず、抗がん剤の副作用である吐き気に対して、あらかじめ抗がん剤投与のレシピに入っています。倦怠感にも有効です。そして抗がん剤による間質性肺炎、肝障害、皮疹にはステロイドを使用します。また脳転移や脳への放射線治療で脳浮腫がある時に、または脳浮腫の予防に使います。気管支の浮腫にもステロイドは有効です。そして緩和医療に使用します。ステロイドはがんの悪液質対策、がん性疼痛、呼吸困難にも使用され、また終末期(最期の1ヶ月は避けることが多い)にも有効です。
ステロイドの減量には漢方薬や生薬は役に立ちます。
アトピー性皮膚炎では温清飲、喘息では柴朴湯、などの使用で、症状が楽になるひとは少なからずいます。また、皮膚疾患の難症には荊芥連翹湯を長期投与して、治った人もいます。漢方薬で病気が根本から治れば、ステロイドは減薬(または脱ステ)できます。
また、ステロイドの使用者から「ステロイドの代わりになる漢方薬はありませんか?」と質問されると、「試しに柴苓湯を飲んではいかがですか?」と答えていました。何人かの患者さんは柴苓湯の併用で、主治医の予想よりも早くステロイドから離脱できています。柴苓湯が免疫制御細胞をアップさせることは私が以下の論文で発表しています。
Transplantation . 2009 Jun 27;87(12):1787-91.
Prolonged survival of fully mismatched cardiac allografts and generation of regulatory cells by Sairei-to, a Japanese herbal medicine
ステロイドによる免疫力の低下を補うには? がん予防にも
ステロイドは免疫力を低下させます。感染症にも罹りやすくなりますが、長期投与では発がんが心配です。ある年齢を超えると1日数千個のがんの芽が発生していると言われています。そのがんの芽を摘んでいるのは各人の免疫力なのです。その免疫力がステロイドの内服では低下します。
ですからステロイド内服中は免疫力を上げる努力を積み重ねましょう。明らかな抗がんエビデンスがないことでも良さそうで、経済毒性(過度な費用負担)がないことは積み上げましょう。①散歩(適度な運動)、②日光浴、③バランスのよい食事(タンパク質を多く)、④適度な睡眠、⑤安心と希望(ストレスを減らす)などなどです。明らかなエビデンスとは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験です。ランダム化とはクジ引きのことで、1000例規模の大規模臨床試験を勝ち抜くと明らかなエビデンスがあるとされ、通常は保険収載されます。明らかなエビデンスがなくても経済毒性を含めた副作用がないものは加えましょう。
そして多成分系の薬剤である漢方薬や生薬が嫌いでなければ、生薬フアイアを是非とも治療に加えてください。
なんと生薬フアイアは明らかな抗がんエビデンスがあります。
生薬フアイアはなんと、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いています。約1000例の肝臓がん手術後の患者さんをクジ引きでフアイアの内服群と内服しない群に分けて、生存率で内服群は非内服群を96週後に約14%も上まわりました。この結果は超一流英文誌「GUT」に掲載されました。
今でも難治性のがんに分類される肝臓がんの結果ですから、多くのがんの芽を摘むためにも有効であると推論可能です。ステロイドによって免疫力が低下していてもフアイアは有効です。
なんと生薬フアイアはステロイドが有効な疾患にも効きます。魔法の生薬なのです。
フアイアが免疫力をアップすることには明らかなエビデンスがありますが、同じくステロイドが有効な疾患である喘息、アトピー、IgA腎症、乾癬(皮膚の難病)などにも有効とする臨床試験があります。ステロイドが有効な疾患とは、免疫力が上がりすぎている病気ということです。免疫力が下がっている時はアップし、上がりすぎている時はダウンさせるという芸当がフアイアでは可能です。免疫システムはそれぞれのタンパク質に対して作動しているので、多成分系の生薬であるフアイアには、あるタンパク質に対する免疫はダウンさせて、他のタンパク質に対する免疫はアップさせることが可能なのです。実際に新見正則医院ではがん治療目的でフアイアを内服して、同時にアトピーや喘息、腎疾患、皮膚疾患が軽快した人が多数います。
フアイアは生薬ですから漢方薬と同じく多成分系の薬剤です。残念ながら、フアイア以外の生薬や漢方薬には明らかな抗がんエビデンスを有するものはありません。そして単一成分由来の西洋薬とは異なり、フアイアにはいろいろと不思議なことが起こります。フアイアはオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同じように免疫力をアップさせますが、オプジーボなどとは異なり免疫が上がりすぎて起こる副作用を生じません。その理由は多成分系の解析技術が未だに発展途上である現在、まだまだ解明されていません。ただただ、生薬フアイアを他の治療に加えると、または単独で使用しても、有効性を体感できることが多いという事実が多数存在します。そんな多成分系で、かつ明らかな抗がんエビデンスがあるフアイアを是非とも治療の選択肢に加えてください。
新見正則医院にご連絡ください。
フアイアは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜きましたが、保険収載されていません。少々経済毒性があります。しかし経済毒性以外の副作用はなく(まれに起こる下痢のみ)、またどの治療とも併用可能なため、機会損失(他の治療が行えない)もありません。
フアイアのお試し希望の方は以下を参考にして下さい。1ヶ月分30包が3万3000円(税込、送料無料)です。電話対応の場合は、初診料は不要です。
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執筆者略歴 新見正則
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。
新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通(新興医学出版社)
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