フアイア処方に漢方診療は不要!中国では「抗がん新薬」

「フアイアは生薬だけど、漢方薬の処方時に行われる漢方的診察は不要なのですか?」とのご意見を頂きました。

フアイアは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜きました。約1000人の肝臓がん手術後の患者さんを対象に、フアイアの内服群と非内服群をクジ引きで選んで(ランダム化して)、そしてフアイアは生存率の向上に明らかに有効でした。この大規模臨床試験の過程で漢方診療は一切行われていません。つまり漢方診療を行わなくてもフアイアの有効性は問題ないと言う結論になります。

1992年に中国ではフアイアは抗がん新薬として認可されています。そして、フアイアは中国では使用医師の9割以上が西洋医です。実は中国の漢方医(中医)は1割以下なのです。中国では西洋医と同じく中医も5年間みっちり特別な勉強をします。中国ではフアイアは漢方薬としてではなく西洋医学的薬剤として利用されているのです。

漢方診療は漢方薬の証を決めるために行います。証とは「副作用が発生せず、効果を期待できる群」、つまり西洋医学的にはレスポンダーという意味合いです。漢方薬では虚弱な人に、麻黄を含む漢方薬を与えると交感神経刺激作用が生じ、ムカムカ(胃腸障害)、ドキドキ(心臓への影響)、尿が出ない(泌尿器症状)、眠れない(精神的な興奮)などが起きるのです。ですからそんな副作用を生じないように漢方的に実証の人に麻黄を含む漢方薬は投与し、漢方的に虚証の人には麻黄を含む漢方薬は控える傾向にあるのです。ザックリと実証とは筋肉質で消化機能が強い人です。一方で虚証は筋肉量が少なく消化機能が弱い人です。

また地黄なども胃腸障害が起こります。附子はムカムカ、ドキドキ、そして舌のしびれなども生じます。甘草は西洋医学的に偽アルドステロン症という病態を長期投与で引き起こすことがあります。偽アルドステロン症とは血圧が上がって、全身がむくんで、そして血液中のカリウムが減少します。そんな副作用が漢方薬では希に起こるので漢方診察を行うのです。ところがフアイアの副作用は希に起こる軽度の下痢症状だけです。そしてこれは漢方的診療を行っても防ぐことはできません。また防がなくても、下痢を起こした方が良い体質の場合に下痢が生じると僕は考えています。そしてこの下痢は腸内環境が正しい状態になると落ち着きます。そんな事情もあってフアイアには漢方的診察は不要なのです。

そして、そもそも漢方薬の選択に実は漢方的診療は不要なのかもしれません。もちろん、来院されれば昔から行っている漢方診療は建前として施行している医師が多いと思います。なぜ建前かというと、以前は「漢方診療が必須!」と声高に語っていた施設や医師が、コロナ禍の中で遠隔診療を始めたからです。遠隔診療では漢方的診察は舌診しかできません。漢方医の中にも過去の呪縛に縛られない人が自ずと増えてきたと僕は思っています。

一方で、フアイアのレスポンダーを探す努力は実は必要かもしれません。フアイアがとても効く人と、あまり効かない人を探す努力です。しかし、フアイアのように明らかに生存率の向上に、免疫力のアップに有効なエビデンスを有している生薬が複数あれば、その複数の選択肢からフアイアを選ぶ作戦が必要です。

ところがフアイアのような副作用が軽い下痢のみで、明らかに生存率に寄与する生薬は現状では他に皆無です。ですからオートマチックにフアイアを内服して問題ありません。現在の治療にフアイアを併用した方がいいのです。

西洋医学的な抗がん剤は21世紀になってラインアップが増えました。その中から適切な抗がん剤を選ぶ努力が行われています。アメリカ大統領であったバラク・オバマ氏は、それをプレシジョンメディシン(Precision Medicine)と呼びました。日本語訳は個別化医療です。たくさんの患者さんを総じて論じれば、有効な抗がん剤は多数登場しています。

患者さんの質問は「この薬剤は本当に私に効くのですか?」という質問なのです。医療サイドの答えは「多くの患者さんで行った臨床試験で確かに有効性が確認されました」というものなのです。つまり1年間を通して勝率が上がる作戦はわかりました。でも今日の試合の勝ち負けは実は解っていないのです。

フアイアは幸い免疫力を亢進します。免疫のブレーキを外す西洋医学的薬剤は2018年に本庶佑先生がノーベル賞に輝いた免疫チェックポイント阻害剤です。それまでは「免疫力」は怪しい言葉でした。僕がテレビ東京の「主治医が見つかる診療所」に初回から8年間レギュラー出演していた当時はむしろ「免疫力」は禁句でした。

その「免疫力」という言葉をNHKが堂々と使用するようになりました。フアイアは免疫チェックポイント阻害剤と同じく免疫力を上げると思われています。そして免疫チェックポイント阻害剤にある致死的な副作用はフアイアには皆無です。ですから、フアイアは免疫力を上げたい患者さん、つまりがん、感染症、老化などを恐れている人には最良の選択肢なのです。

フアイアの使用にあたって漢方的診察は不要です。ですから電話診療でも来院とまったく遜色なく対応可能です。フアイアを内服するためにわざわざ飯田橋の新見正則医院に来て頂く必要はありません。遠方の方はその時間が無駄です。1日でも早くフアイアを内服するには電話診療で必要十分です。もちろん、僕とリアルで会っていろいろな相談をしたい方は是非とも新見正則医院にお越し下さい。お待ちしています。

内部リンク(当サイト内でご参考になる記事)

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執筆者略歴 新見正則

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。

新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通(新興医学出版社)
新見正則オフィシャルサイトはこちら

 

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