末期がんとは?ステージ4との違いがわからない人へ

窓辺の花とカップとブランケット。末期がんとステージ4の違いを説明する記事

末期がんには、医学上の決まった定義がありません。ステージ4は、がんの広がりを表す分類で、末期とは別の言葉です。

「末期」は、日常の会話でも、医療の現場でも、役所の書類でも使われる言葉です。ところが、使う場面によって指している中身が少しずつ違います。この記事では、末期がんとステージ4の違い、国のガイドラインや介護保険・訪問看護の制度で「末期」がどう使われているか、時間がたつにつれて体に起こる変化、受けられるケアを、厚生労働省の資料と研究から整理します。

末期がんとは、どういう状態ですか?

一般に、がんを治すことを目指す治療が難しくなり、残された時間が限られていると見込まれる状態を指して使われます。ただし、決まった基準はありません。

ステージには、がんの種類ごとに決められた分類の規則があります。一方、「末期」には、何がそろえば末期と呼ぶかを定めた共通の規則がありません。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の解説は、人生の最終段階の例として「がんの末期のように、予後が数日から長くとも2-3ヶ月と予測が出来る場合」を挙げています。そのうえで、どのような状態が人生の最終段階かは、本人の状態を踏まえて医療・ケアチームが適切かつ妥当に判断すべき事柄だとしています(厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編」2018年改訂)。

つまり、国のガイドラインでも「末期」は例として挙げられているだけで、数字で線を引いて決めるものとはされていません。

末期がんとステージ4は、何が違いますか?

ステージ4は、がんがどこまで広がっているかを表す分類です。末期は、治療の見通しや残された時間についての言葉です。ステージ4でも、末期とは限りません。

比べる点 ステージ4 末期
何を表すか がんの広がり(多くのがんでは遠隔転移があること) 治すことを目指す治療が難しく、残された時間が限られていると見込まれること
決め方 がんの種類ごとの分類の規則に沿って決める 決まった規則はなく、医療者の判断による
いつ決まるか 主に診断のとき 病状の経過の中で使われる
治療との関係 治療方針を決める出発点 治療やケアの目標を見直すときに使われることが多い

出典:ステージの決まり方は公開済みの手引き「がんのステージはいくつまで?」、末期の判断は厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編」(2018年改訂)。

ステージ4と診断されたあとも、薬物療法などで長く治療を続ける人がいます。がんの種類によっては、転移した場所まで取り切れる場合などに、手術が検討されることもあります。その例外と理由は、ステージ4はなぜ手術できないのかを説明した記事で扱っています。ステージの数字そのものの意味は、がんのステージはいくつまでかを説明した記事にまとめています。

国の制度では、「末期」はどう使われていますか?

介護保険と医療保険の訪問看護で、「末期」は使える制度を決める言葉として使われています。どちらにも、余命が何か月以下という基準は書かれていません。

場面 書かれていること 何に使われるか
人生の最終段階の医療・ケアのガイドライン(2018年改訂) がんの末期のように、予後が数日から長くとも2〜3か月と予測できる場合(例として) 治療やケアの方針を本人・家族・医療チームで話し合う手順
介護保険の特定疾病 がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る) 40〜64歳の人が介護保険のサービスを申請するとき
介護保険の事務連絡(2019年) 申請書に「末期がん」と書かなくても、単に「がん」と書かれたもので受理してよい 申請しやすくするため
医療保険の訪問看護 厚生労働大臣が定める疾病等に「末期の悪性腫瘍」 介護保険の認定を受けていても、医療保険で訪問看護を受けられる

出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編」(2018年改訂)、「特定疾病の選定基準の考え方」、事務連絡「がん患者に係る要介護認定等の申請に当たっての特定疾病の記載等について」(2019年2月19日)、保医発0327第8号(2024年3月27日)。

介護保険の「末期」

介護保険では、65歳以上の人は要介護状態の原因を問いませんが、40歳から64歳までの人は、加齢と関係があるとされる「特定疾病」によって要介護状態になった場合に限ってサービスを受けられます(厚生労働省「要介護認定に係る法令」)。がんはその一つで、「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る」と定められています(厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」)。

この申請について、厚生労働省は2019年の事務連絡で、65歳未満のがん患者さんが申請するときに「末期がん」と書く必要があることが記入しづらく、利用が進まないという指摘があったと説明しています。そのうえで、単に「がん」と書かれたもので申請を受理して差し支えないこと、窓口では「末期がん」などの表現ではなく、介護保険サービスを利用しうる状態であることを主治医に確認したかどうかにとどめることを示しています(厚生労働省 事務連絡 2019年2月19日)。この事務連絡に、余命の長さの基準は書かれていません。

2010年の事務連絡は、末期がんなどの人は心身の状況に応じて迅速に介護サービスが必要になる場合があるとして、認定の結果が出る前から暫定のケアプランでサービスを始められることや、申請の当日に認定調査を行っている例を示しています(厚生労働省 事務連絡「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」2010年4月30日)。

訪問看護の「末期の悪性腫瘍」

介護保険の認定を受けている人の訪問看護は、原則として介護保険から給付されます。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に当たる人は、医療保険で訪問看護を受けられます。その疾病等の最初に挙げられているのが「末期の悪性腫瘍」です(厚生労働省 保医発0327第8号 2024年3月27日)。

2〜3か月

国のガイドラインの解説が「がんの末期」の例として挙げる見通しは、予後が数日から長くとも2〜3か月。ただし、どの状態がそれに当たるかは、本人の状態を踏まえて医療・ケアチームが判断するとされ、数字で線を引くものではありません。

出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編」(2018年改訂)

同じ「末期」でも、書類ごとに意味が違う

介護保険の申請で医師が「回復の見込みがない状態」と判断して書類を書くことと、医師が「あと何か月」と見通しを伝えることは、別のことです。介護保険の書類は、サービスを使えるようにするための判断で、厚生労働省は「末期がん」と書かなくてよいとしています。書類に「末期」とあっても、それだけで余命を告げられたことにはなりません。

末期には、体にどんな変化が起こりますか?

だるさ、食欲の低下、眠気、息切れが強くなり、身の回りのことができる程度が少しずつ下がります。変化は亡くなる前の1か月ほどで速くなることが多いと報告されています。

カナダのオンタリオ州で、がんで亡くなった人の最後の6か月を調べた研究があります。症状の記録がある10,752人、全身の状態の記録がある7,882人を対象にしています(Seow H, et al. J Clin Oncol 2011)。

変化 研究で見られたこと
身の回りのことができる程度(PPSという物差し) 平均で約70から約40へ、6か月かけてゆっくり下がり、最後の1か月で下がり方が速くなった
強くなっていった症状 息切れ、眠気、全体的な調子の悪さ、食欲の低下、だるさ。とくに亡くなる前の1か月
あまり変わらなかった症状 痛み、吐き気、不安、気分の落ち込み
最後の1か月 多くの症状で、3人に1人以上が中くらい以上の強さ

出典:Seow H, et al. J Clin Oncol 2011;29(9):1151-1158。

痛みや吐き気が「あまり変わらなかった」のは、平均すると強さが大きく動かなかったという意味で、症状がなかったという意味ではありません。カナダの、症状を記録する仕組みのある医療機関で記録が残った人のデータです。

がんの痛みの和らげ方はがんの痛みについて説明した記事で、体重が減る仕組みはがん悪液質について説明した記事で扱っています。

末期でも、受けられる治療やケアはありますか?

あります。がんを小さくする治療をやめたあとも、痛みや息苦しさを和らげる治療、家で過ごすための訪問診療や訪問看護、介護保険のサービスを受けられます。

受けられるものを、目的ごとに並べると次のようになります。

  • 苦痛を和らげる:緩和ケア(痛み、息苦しさ、吐き気、気持ちのつらさへの対応)
  • 過ごす場所を選ぶ:自宅(訪問診療・訪問看護)、緩和ケア病棟、病院
  • 暮らしを支える:介護保険のサービス(40〜64歳でも、がんで申請できる)、医療保険の訪問看護
  • 決めておく:受けたい医療・受けたくない医療(人工呼吸、点滴など)を、本人・家族・医療チームで話し合う
  • 相談する:がん相談支援センター

緩和ケアは、がんを小さくする治療をやめてから始めるものではありません。始める時期は、この記事の最後の「次に読む」で紹介する記事で、人工呼吸や胃ろうなどの選び方は延命治療とは何かを説明した記事で扱っています。どこに相談すればよいかわからないときは、がん相談支援センターを説明した記事を見てください。

「あとどのくらい」という余命の数字が、どう作られ、どこまで当たるのかは、余命宣告はいつされるかを説明した記事で扱っています。

「末期」と言われたら、何を確かめればよいですか?

その「末期」が何を指しているのか、です。治すことを目指す治療が難しいという意味か、時間の見通しの話か、書類のための言葉かで、次に考えることが変わります。

担当医に確かめる項目は次のとおりです。

  • 「末期」は、どういう意味で使ったのか(治療の見通しか、時間の見通しか)
  • いまのステージと、それが診断のときから変わったか
  • がんを小さくする治療で、まだ選べるものはあるか。ない場合、その理由
  • 症状を和らげる治療として、いま何ができるか
  • 介護保険の申請、訪問看護、訪問診療を使えるか
  • 自宅、緩和ケア病棟、病院のどこで過ごせるか

「末期」という言葉は、聞いた人に強い印象を残します。けれど、国のガイドラインでも決まった基準はなく、介護保険の書類では書かなくてもよい言葉になりました。言葉の重さに引きずられず、その言葉がいま何を指しているのかを、医療チームに一つずつ確かめていくことができます。

僕は、進行がんの方に「遺言」の話をします

進行がんの患者さんには、明るい声で「では、遺言を書いてくださいね!」と話しています。

「ごくごくまれですが、今晩他の病気や事故で死ぬかもしれませんよ。そしてあなたは今進行がんと共存しているので、もしかすると早晩天国に逝く時が来るかもしれません」と言って、遺言書の記載を勧めるのです。これは死を見据えてくださいという意味合いもあります。

どう死にたいか(どう生き抜きたいか)で治療の選択肢も変わるのです。ただただ長生きしたいのか、何かやりたいことがあるのか、何かやり残したことがあるのかなどなどで、実は治療の選択肢は変わるのです。人生観を共有するために「遺言」という言葉が大切なのです。

新見正則医院院長 新見正則

監修者

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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「末期」と言われる前から、苦痛を和らげる治療は受けられます。いつから、どこで受けられるのかを知っておくと、選べることが増えます。

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よくある質問

Q末期がんとはどういう状態ですか?

一般に、がんを治すことを目指す治療が難しくなり、残された時間が限られていると見込まれる状態を指して使われます。医学上の決まった定義はありません。厚生労働省のガイドラインの解説は、がんの末期を「予後が数日から長くとも2-3ヶ月と予測が出来る場合」と例示していますが、どの状態がそれに当たるかは医療・ケアチームが判断するとしています。

Qステージ4は末期がんですか?

同じではありません。ステージ4は、がんの広がり(多くのがんでは遠隔転移があること)を表す分類で、主に診断のときに決まります。末期は治療の見通しや残された時間についての言葉です。ステージ4と診断されたあとも、薬物療法などで長く治療を続ける人がいます。

Q末期がんの人は介護保険を使えますか?

使えます。65歳以上の人は原因を問わず申請できます。40〜64歳の人は、がんが特定疾病に当たり、医師が「回復の見込みがない状態に至った」と判断した場合に申請できます。厚生労働省は2019年に、申請書に「末期がん」と書かなくても、単に「がん」と書かれたもので受理してよいとしています。

Q末期がんの訪問看護は医療保険ですか、介護保険ですか?

介護保険の認定を受けている人の訪問看護は原則として介護保険ですが、「末期の悪性腫瘍」は厚生労働大臣が定める疾病等に入っているため、医療保険で訪問看護を受けられます。

Q末期がんになると、どんな症状が出ますか?

亡くなった人の最後の6か月を調べたカナダの研究(症状の記録がある10,752人)では、だるさ、食欲の低下、眠気、息切れが強くなり、とくに最後の1か月で変化が速くなりました。痛み、吐き気、不安、気分の落ち込みは、平均すると強さが大きく変わりませんでした。

参考文献

  1. 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編」(2018年3月改訂。令和5年度厚生労働省委託事業 相談員研修会資料に収載/2026年10月25日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/001251707.pdf
  2. 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」(2026年10月25日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
  3. 厚生労働省老健局老人保健課 事務連絡「がん患者に係る要介護認定等の申請に当たっての特定疾病の記載等について」(2019年2月19日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000480885.pdf
  4. 厚生労働省老健局老人保健課 事務連絡「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」(2010年4月30日)
    https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dl/tp101027-01i.pdf
  5. 厚生労働省 老老発0327第1号・保医発0327第8号「「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について」(2024年3月27日)
    https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/000427433.pdf
  6. 厚生労働省「要介護認定に係る法令」(2026年10月25日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo4.html
  7. Seow H, Barbera L, Sutradhar R, et al. Trajectory of Performance Status and Symptom Scores for Patients With Cancer During the Last Six Months of Life. J Clin Oncol. 2011;29(9):1151-1158.
    https://doi.org/10.1200/JCO.2010.30.7173

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