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がんゲノム医療は進歩しています。
「がんゲノム医療」とは、がんの組織や血液の遺伝子を調べて、患者さんの遺伝子異常をみつけ、それに則した治療を行うことです。この遺伝子異常は現状では、基本的に発がんに関わる遺伝子です。
この発がんに関わる遺伝子異常は、以前はひとつひとつの遺伝子について異常の有無を調べていました(コンパニオン診断)。最近は、遺伝子異常を網羅的に調べる「がん遺伝子パネル検査」が普及しています。がん遺伝子パネル検査の正式名は「包括的がんゲノムプロファイリング検査」です。遺伝子には親から受け継いだ遺伝子異常と、環境要因で後天的に生じた遺伝子異常があります。
ヒトの遺伝子は約2万3000あると言われています。遺伝子はDNAとも呼ばれ、4種類の核酸(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)の連続で、一本鎖です。その核酸の3つが一組になって、ひとつのアミノ酸をコードしています。そしてアミノ酸の連続がタンパク質です。タンパク質も一本鎖です。ちなみに、第1の生命鎖はDNA,第2の生命鎖はタンパク質、そして第3の生命鎖は糖鎖です。糖鎖はDNAやタンパク質とは異なり一本鎖ではなく枝分かれしているので、20世紀には解析と研究がまったく進みませんでした。
全遺伝子の核酸配列を解読する「ヒト遺伝子計画」では、1人分の全遺伝子を読み取るのに約13年を要しました。しかし、次世代シークエンサーなどが開発され、遺伝子の読み取り速度は飛躍的に向上し、現在では1日以内に解析が可能になり、また費用も数十万円以内でヒトひとりの全遺伝子解析が可能になりました。
現在は標準治療が経済毒性も考慮すれば最良の治療とされています。確かにそうです。標準治療のほとんどは保険適用されているものです。本邦では保険適用されれば、最大でも個人負担は3割で、暦月あたりの上限も決まっています(高額療養費制度)。ですから、健康保険に加入していれば日本ではフリーアクセス(どの医療機関にもかかれる)で、かつ皆保険なのです。
そして親から子に受け継がれるいくつかの遺伝子の異常や、後天的に生じた遺伝子異常を保険適用で検査できる時代になりました。遺伝子異常があらかじめわかれば対処することもできます。
がん遺伝子パネル検査
がんゲノム医療中核拠点病院が全国に13施設あります。その下にがんゲノム医療拠点病院(32カ所)、がんゲノム医療連携病院(218カ所)があります(2024年2月1日現在)。がん遺伝子パネル検査はこれらの病院で受けることができます。
そして2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載されました。がん遺伝子パネル検査には、基本的にがんの検体を使用します。
以下の遺伝子パネル検査は56万円で保険適用されます。
- OncoGuide NCCオンコパネルシステム
- FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル
OncoGuide NCCオンコパネルシステムは、製造販売元はシスメックス株式会社で、対照遺伝子数は114,融合遺伝子数は12,MSI-highは測定しません。
FoundationOne CDxがんゲノムプロファイルは、製造販売元は中外製薬株式会社で、対照遺伝子数は324,融合遺伝子数は36,MSI-highも測定します。
私が選べるならFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルを選択します。
がん遺伝子パネル検査の流れ
まず患者さんが検査説明を受けて同意することが必須です。そしてゲノム解析用の検体を検査会社に送ります。解析結果が戻り次第、エキスパートパネルという専門家の集団がレポートを作成し、患者さんに説明が行われます。数週間から2ヶ月を要します。
がん遺伝子パネル検査の保険適用
標準治療に耐性になっているがんが主な対象です。手術が可能なら手術が選ばれるのです。以下が保険適用の要件になります。
標準治療がない固形がん(原発不明がん、希少がんなど)
局所進行もしくは転移があり(ステージ4)で、標準治療が終了した固形がん
また、患者申出療養制度を利用すると混合診療(自費診療と保険診療をともに行うこと)が可能になります。そして、遺伝子パネル検査で有効とわかった薬剤を患者申出療養制度で使用する場合は、がんゲノム医療中核拠点病院に限られます。
親から受け継ぐがん遺伝子として有名なBRCA1/2の検査をHBOC診断目的(本当に遺伝性疾患かの診断のため)として行う時は
- 45歳以下で診断された乳がん
- 60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
- 二つ以上の原発性乳がん
- 自分以外に第3度近親者に乳がんまたは卵巣がん患者(または経験者)がいる
- 男性乳がん
- 卵巣がん・卵管がん・腹膜がん
- です。
一方で、治療選択(コンパニオン診断)としての遺伝学的検査として行う時は
- HER2陰性の転移性・再発性乳がん
- 初発の進行卵巣がん
- 治癒切除不能な膵がん
- 転移性去勢抵抗性前立腺がん
- が疑われる時です。上記で遺伝子異常が判明すれば、抗がん剤であるオラパリブなどのPARP阻害剤の使用が可能になります。
遺伝子異常に応じた治療が可能に(個別化医療)
遺伝子異常に応じた薬剤が開発されています。分子標的薬と呼ばれるものです。がん遺伝子パネル検査で効果が期待される薬剤を投与できる時代になりました。「○○がんならこの治療」という臓器別、がん種別のプロトコールから、「○○遺伝子異常ならこの治療」という作戦で、薬剤選択が可能になります。臓器に拘らず、つまり臓器横断的に抗がん剤が使用できるようになるのです。
一方で、遺伝子パネル検査を行うと知りたくない情報も得られてしまいます。親から子に伝わる遺伝子異常のことで、「知らない方が良かった!」と思うこともありますので、あらかじめ遺伝子カウンセラーなどと相談しておいた方が安心できます。
放射線治療の選択に、がんゲノム医療は効果なし
がん治療の3本柱は外科治療、放射線治療、そして抗がん剤です。がんゲノム医療は放射線治療の選択には現状は有益な結論は出しません。現在のがん遺伝子パネル検査の結果は、発がんに関わる遺伝子の異常を調べているので、放射線が有効ながんなのか、放射線が無効ながんなのか、または放射線に耐性ができやすいがんなのかなどはわからないのです。
漢方薬や生薬の選択に、がんゲノム医療は効果なし
保険適用の漢方薬や生薬で明らかな抗がんエビデンスを有するものはありません。がんの副作用の防止などの補助療法として保険適用漢方薬は利用されています。漢方薬は証(しょう)に沿って使う必要があると古典的漢方医は主張します。しかし彼らが導き出した証に沿った漢方薬が、古典的な証とは無関係に(フローチャート的に)処方された漢方薬よりも優れているという論文や臨床試験は皆無です。
証は西洋医学的にはレスポンダーのことですが、現在の発がんに関わる遺伝子パネル検査を利用しても、漢方薬のレスポンダーを導くことはできません。将来的に、漢方薬のレスポンダーがわかる遺伝子などが解明されると、漢方薬の証(レスポンダー)という概念も少しはサイエンス的に理解可能になります。
がんゲノム医療が導入されても、がんは難治
がん遺伝子パネル検査が導入されましたが、効果が期待される薬剤を利用できる確率は10%前後と言われます。その中で保険適用薬は約半数で、残りは治験として利用可能です。利用できる薬剤が見つからなかった約9割の患者さんにとっては、がん遺伝子パネル検査の御利益は届かないのです。ですから、まだまだがんは難治なのです。これから分子標的薬が開発されるに従って、がん遺伝子パネル検査で御利益を得られる患者さんが増えることが予想されます。
現在のゲノム医療は緒に就いたばかりです。発がんに関わる遺伝子を探している段階です。本来のがんゲノム医療は、遺伝子に合わせてがんになりにくい体質を作ることが最終目的に思えます。
いろいろな治療を組み合わせましょう
がん治療は日々進歩しています。がん遺伝子パネル検査も始まったばかりです。いろいろな治療を組み合わせましょう。
有効な薬剤を利用できる患者さんは10%前後ですから、遺伝子パネル検査を希望しないという選択肢もOKです。また、遺伝子パネル検査を希望する方は、がんの初期治療から行いたいと思うでしょうが、それは標準治療がある場合には現時点では保険適用としては認められません。
遺伝子パネル検査を受けるにしろ、受けないにしろ、まずは、免疫力を上げることを行いましょう。
明らかな抗がんエビデンスがないことでも良さそうで、経済毒性(過度な費用負担)がないことは積み上げましょう。①散歩(適度な運動)、②日光浴、③バランスのよい食事(タンパク質を多く)、④適度な睡眠、⑤安心と希望(ストレスを減らす)などなどです。
明らかな抗がんエビデンスとは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験です。ランダム化とはクジ引きのことで、1000例規模の大規模臨床試験を勝ち抜くと明らかな抗がんエビデンスがあるとされ、通常は保険収載されます。明らかな抗がんエビデンスがなくても経済毒性を含めた副作用がないものは加えましょう。
そして多成分系の薬剤である漢方薬や生薬が嫌いでなければ、生薬フアイアを是非とも治療に加えてください。
なんと生薬フアイアは明らかな抗がんエビデンスがあります。
生薬フアイアはなんと、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いています。約1000例の肝臓がん手術後の患者さんをクジ引きでフアイアの内服群と内服しない群に分けて、生存率で内服群は非内服群を96週後に約14%も上まわりました。この結果は超一流英文誌「GUT」に掲載されました。
肝臓がんの結果ですが、どのがんにも有効だと推論が可能です。そして実際に新見正則医院でも(超)高齢を理由に「がん放置療法」を選んだ患者さんが、その後のフアイアの内服で、主治医が予想したよりも遙かに長く生きている人、生きた人が少なからずいます。
どんな治療にも併用可能です。
フアイアは生薬ですから漢方薬と同じく多成分系の薬剤です。残念ながら、フアイア以外の生薬や漢方薬には明らかな抗がんエビデンスを有するものはありません。そして単一成分由来の西洋薬とは異なり、フアイアにはいろいろと不思議なことが起こります。フアイアはオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同じように免疫力をアップさせますが、オプジーボなどとは異なり免疫が上がりすぎて起こる副作用を生じません。その理由は多成分系の解析技術が未だに発展途上である現在、まだまだ解明されていません。ただただ、生薬フアイアを他の治療に加えると、または単独で使用しても、有効性を体感できることが多いという事実が多数存在します。そんな多成分系で、かつ明らかな抗がんエビデンスがあるフアイアを是非とも治療の選択肢に加えてください。
新見正則医院にご連絡ください。
フアイアは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜きましたが、保険収載されていません。少々経済毒性があります。しかし経済毒性以外の副作用はなく(まれに起こる下痢のみ)、またどの治療とも併用可能なため、機会損失(他の治療が行えない)もありません。
フアイアのお試し希望の方は以下を参考にして下さい。1ヶ月分30包が3万3000円(税込、送料無料)です。電話対応の場合は、初診料は不要です。
●内部リンク(当サイト内でご参考になる記事)
がんの例え話「雑草と土壌」
がんの例え話「雑草と土壌」2
がんの例え話「雑草と土壌」3
がんの例え話「雑草と土壌」4
生薬フアイア概説
まずフアイアを試したいときには
執筆者略歴 新見正則
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。
新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通(新興医学出版社)
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