転移や浸潤のない1cm以下の甲状腺乳頭がんでは、すぐに手術をせず、定期的な検査で見守る経過観察も選べます。
この方法は、積極的経過観察(アクティブサーベイランス)と呼ばれます。日本では1993年に隈病院(神戸市)、1995年にがん研有明病院(当時は癌研究会附属病院、東京都)で始まり、30年分の成績が積み重なっています(Ito Y, et al. Endocr J 2024)。この記事では、選べる条件、経過観察中にがんが大きくなる割合、手術した場合の合併症、手術に切り替える目安と受診の間隔を、日本と海外の研究の数字で並べます。
この記事の内容
甲状腺がんの経過観察(アクティブサーベイランス)とは、どういう方法ですか?
がんがあるとわかったうえで手術をせず、超音波検査などで定期的に大きさや転移を確かめ、進んだときに手術に移る方法です。
何もしないで放っておくことではありません。決まった間隔で検査を受け、手術に移る目安を前もって決めておく点が、「様子を見る」との違いです。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、乳頭がんを超低リスク・低リスク・中リスク・高リスクに分け、超低リスクの場合は手術を行わず、定期的な検査(積極的経過観察)を行うことが勧められていると説明しています(がん情報サービス「甲状腺がん 治療」2026年8月21日更新)。
日本内分泌外科学会の甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024年版は、「成人の超低リスク乳頭癌には積極的経過観察が推奨される」としています。推奨の強さは「強」、エビデンスの確実性はBで、委員9人中8人(89%)の合意です(甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024 CQ3-1)。このガイドラインは、日本内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会が2010年に公開した版、2018年の改訂版に続く第3版にあたります。
甲状腺がんは、2023年に16,505例が新たに診断され、2024年に1,887人が亡くなっています。2018年に診断された人の5年相対生存率は94.3%です(国立がん研究センター がん統計「甲状腺」2026年7月22日更新)。
同じ「経過観察」でも、手術などの治療を終えたあとに再発を確かめる通院とは別物です。治療後の経過観察は、がんの経過観察は何年続くかの記事で整理しています。
経過観察を選べるのは、どんな甲状腺がんですか?
1cm以下の乳頭がんで、リンパ節や離れた臓器への転移がなく、気管や反回神経から離れている成人のがんです。
日本内分泌外科学会の作業部会がまとめた合意声明は、経過観察の対象を、成人のT1aN0M0の乳頭がんとしています(Sugitani I, et al. Thyroid 2021)。T1aは甲状腺の中にとどまる1cm以下のがん、N0はリンパ節転移なし、M0は遠隔転移なしを示します。ガイドライン2024年版では、このT1aN0M0を「超低リスク」と呼んでいます。
診断は、超音波で見ながら細い針で細胞を採る検査(穿刺吸引細胞診)で、乳頭がんと確かめたうえで行われてきました。隈病院の1,235人の研究も、細胞診で乳頭がんと診断された1cm以下の人を対象にしています(Ito Y, et al. Thyroid 2014)。
| がんの状態 | 合意声明での扱い |
| 1cm以下、転移なし、気管や反回神経から離れている | 経過観察の対象になりうる |
| 気管に接しているだけ | 経過観察の対象になりうる |
| 気管に癒着している、反回神経の通り道に沿っている | すぐの手術が勧められる |
| 気管の内側に向かって出っ張っている | すぐの手術が勧められる |
| 診察でわかるリンパ節転移、遠隔転移がある | すぐの手術が勧められる |
| 反回神経の麻痺がある | すぐの手術が勧められる |
| 細胞診で悪性度の高い型が疑われる | すぐの手術が勧められる(直接の根拠は乏しいと明記) |
出典:Sugitani I, et al. Thyroid 2021(日本内分泌外科学会の作業部会による合意声明)
反回神経は、甲状腺の背中側の近くを通る、声を出すための神経です。合意声明は、気管との角度が鈍い(気管に広く接する)1cm以下のがん51個のうち12個(24%)で、手術の際に気管の軟骨を削るか、気管の壁ごと切除する必要があったという隈病院の報告を引いています。気管や神経のそばのがんが対象から外されるのは、このためです。
年齢について、合意声明は、高齢の人ほど進みにくく経過観察に向いているとしつつ、20代でも対象になりうるとしています。一方で、20歳未満で経過観察が安全かどうかの根拠はないと書いています。
経過観察中に、がんはどのくらい大きくなりますか?
隈病院の報告では、10年で大きくなった人は8.0〜15.9%、新たにリンパ節転移が出た人は3.4〜3.8%で、経過観察中に甲状腺がんで亡くなった人は報告されていません。
研究では、超音波で測ったがんの最大径が3mm以上増えたときを「増大」と数えることが多く、ガイドライン2024年版もこの定義を勧めています。施設と時期ごとの数字を並べると、次のとおりです。
| 研究(施設・国) | 対象 | 大きくなった割合 | リンパ節転移が出た割合 |
| Ito 2010(隈病院) | 1993〜2004年の340人、平均74か月 | 5年6.4%、10年15.9% | 5年1.4%、10年3.4% |
| Ito 2014(隈病院) | 1993〜2011年の1,235人 | 5年4.9%、10年8.0% | 10年3.8% |
| Sugitani 2010(がん研) | 230人の300病変、平均5年 | 7% | 1% |
| Fukuoka 2016(がん研) | 384人の480病変、平均6.8年 | 6.0% | 記載なし |
| Tuttle 2017(米国 メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター) | 1.5cm以下の291人、中央値25か月 | 2年2.5%、5年12.1% | 出現なし |
大きくなった=最大径が3mm以上増えたもの(Fukuoka 2016は抄録に定義の記載なし)。出典:Ito Y, et al. World J Surg 2010、Ito Y, et al. Thyroid 2014、Sugitani I, et al. World J Surg 2010、Fukuoka O, et al. World J Surg 2016、Tuttle RM, et al. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2017
隈病院の最初の報告(Ito Y, et al. World J Surg 2010)と、人数と期間を広げた2014年の報告(Ito Y, et al. Thyroid 2014)では、10年で大きくなった割合が15.9%と8.0%と違います。同じ施設でも、観察した時期と人数で数字は動きます。がん研の報告はSugitani I, et al. World J Surg 2010とFukuoka O, et al. World J Surg 2016によります。
米国の報告は、1.5cm以下までを対象にしている点が日本の研究と違います。2年で2.5%、5年で12.1%が3mm以上大きくなり、リンパ節や離れた臓器への転移は出ていません(Tuttle RM, et al. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2017)。国が違っても、大きくなるのは一部にとどまるという方向は同じです。
隈病院で1993〜2019年に診断された5,646人をまとめた報告では、経過観察の群でも、すぐに手術した群でも、甲状腺がんで亡くなった人はいませんでした。肺への転移は、経過観察の群(のちに手術を受けた人)とすぐに手術した群で1人ずつでした(Miyauchi A, et al. Thyroid 2023)。
隈病院とがん研の数字が生まれた条件
経過観察と手術のどちらにするかは、くじではなく本人が選んでいます。もともと進みにくいがんの人が経過観察を選んでいた可能性は消せません(Miyauchi A. World J Surg 2016)。また、数字の多くは、甲状腺の超音波検査に慣れた2つの専門施設のものです。合意声明も、経験のある検査者による超音波検査を前提にしています。同じ間隔と精度で検査を受けられない場合に、同じ成績になるとは言い切れません。
年齢によって、進みやすさは違いますか?
違います。若い人ほど進みやすく、高齢の人ほど進みにくいことが、隈病院の研究で示されています。
隈病院の1,235人の研究では、腫瘍が12mm以上になるか、新たにリンパ節転移が出た「臨床的な進行」は、10年で60歳以上2.5%、40〜59歳4.9%、40歳未満22.5%でした。新たなリンパ節転移に限ると、10年で60歳以上0.5%、40歳未満16.1%です(Ito Y, et al. Thyroid 2014)。
| 年齢 | 10年で大きくなった割合 | 10年でリンパ節転移が出た割合 | 10年で臨床的に進行した割合 |
| 40歳未満 | 12.1% | 16.1% | 22.5% |
| 40〜59歳 | 9.1% | 2.3% | 4.9% |
| 60歳以上 | 4.0% | 0.5% | 2.5% |
臨床的な進行=腫瘍が12mm以上になる、または新たにリンパ節転移が出ること。出典:Ito Y, et al. Thyroid 2014(隈病院、1,235人)
隈病院は、この数字から、一生のうちにがんが大きくなる確率(生涯の腫瘍増大の確率)も見積もっています。合意声明によると、経過観察を20代で始めた場合は48.6%、70代で始めた場合は3.5%です(Sugitani I, et al. Thyroid 2021)。ガイドライン2024年版は、20代でも48.6%「にとどまる」と書いています。半分近いと読むか、半分に届かないと読むかで、受け止め方は変わります。
妊娠については、経過観察中に妊娠した50人のうち、4人(8%)でがんが大きくなったという隈病院の報告が、合意声明に引かれています。
手術した場合の合併症は、どのくらいですか?
すぐに手術した974人では、一時的な声のかすれが4.1%、一時的な副甲状腺機能低下が16.7%、ずっと続く副甲状腺機能低下が1.6%でした。
がん情報サービスは、甲状腺の手術の合併症として、甲状腺機能の低下、副甲状腺機能の低下(血液中のカルシウムの不足)、反回神経の麻痺を挙げ、切除する範囲が大きいほどリスクが高くなるとしています(がん情報サービス 2026年)。
- 反回神経の麻痺:声が出しにくくなったり、かすれたりします。神経が残されていれば、多くは6か月ほどで回復します
- 副甲状腺機能の低下:血液中のカルシウムが減り、手足がしびれることがあります。ビタミンD製剤やカルシウム剤を飲むことがあります
- 甲状腺機能の低下:甲状腺をすべて取った場合は、一生、甲状腺ホルモン薬を飲みます。半分以上残れば、飲まなくてよいことが多いとされています
隈病院では、2005年2月〜2013年8月に1cm以下の低リスクの乳頭がんと診断された2,153人のうち、974人がすぐの手術を、1,179人が経過観察を選びました。経過観察の群の合併症は、のちに手術に移った人に起きたものです(Oda H, et al. Thyroid 2016)。
| 合併症 | すぐに手術した974人 | 経過観察を選んだ1,179人 |
| 一時的な声帯麻痺(声のかすれ) | 4.1% | 0.6% |
| ずっと続く声帯麻痺 | 0.2%(2人) | 0% |
| 一時的な副甲状腺機能低下 | 16.7% | 2.8% |
| ずっと続く副甲状腺機能低下 | 1.6% | 0.08% |
ずっと続く声帯麻痺の差は統計的に有意ではなかった。それ以外の3項目は有意な差。出典:Oda H, et al. Thyroid 2016(隈病院)
手術そのものの負担や合併症の一般的な考え方は、がんの手術のメリットとデメリットの記事で説明しています。
合併症が少ない理由
経過観察の群で合併症が少ないのは、手術を受けた人が少ないためです。経過観察のあとに手術を受けた人と、すぐに手術を受けた人とでは、ずっと続く声帯麻痺や副甲状腺機能低下などの重い合併症の頻度に有意な差はなかったと報告されています(Ito Y, et al. Endocr J 2024)。手術を先に延ばすと手術が安全になる、という意味ではありません。
経過観察から手術に切り替えるのは、どんなときですか?
合意声明は、がんが10mmを少し超えて大きくなったとき(例として13mm)、新たなリンパ節転移が出たとき、本人が手術を望んだときなどを目安にしています。
- がんの最大径が10mmを少し超えて大きくなったとき(例として13mm)
- 新たにリンパ節転移が見つかったとき
- 本人の希望が手術に変わったとき
- 甲状腺や副甲状腺に、手術が必要な別の病気が出たとき
合意声明は、最大径が10mmを超えたら、すぐに手術が必要とは限らないとしています(Sugitani I, et al. Thyroid 2021)。ガイドライン2024年版も、少し大きくなったからといってすぐに手術に踏み切るのは早計と考えられる、と書いています。
実際に手術に移った人の割合は、報告によって違います。隈病院の1,235人では191人(16%)が、がんの進行のほか、甲状腺腫やバセドウ病、本人の希望などの理由で手術を受けました(Ito Y, et al. Thyroid 2014)。1993〜2019年の報告では、経過観察の群の12.2%(394人)が手術に移り、その多くは本人や医師の希望によるもので、がんに変化があった人は3分の1未満でした(Miyauchi A, et al. Thyroid 2023)。
手術に移ったあとの経過について、1,235人の研究では、手術後に甲状腺がんで亡くなった人はいませんでした。甲状腺の一部を切除した93人のうち、残した甲状腺に再発したのは1人です。
経過観察中は、どのくらいの間隔で受診しますか?
合意声明は、始めてから1〜2年は6か月ごと、その後は進行がなければ年1回の超音波検査を勧めています。
合意声明は、経験のある検査者による超音波検査を、経過観察を始めてから1〜2年は6か月ごとに、進行が見られなければその後は年1回行うことを勧めています(Sugitani I, et al. Thyroid 2021)。がん研の報告では、進まないと考えられる型の微小がんを、6か月または12か月ごとの超音波検査で見ています(Sugitani I, et al. World J Surg 2010)。
終わりの時期は決まっていません。ガイドライン2024年版は、高齢の人でも、基本的には生涯の経過観察が求められるとしています。経過観察を選ぶことは、手術を受けない代わりに、年1回の通院をずっと続けることでもあります。
通院が途切れると、大きくなったことやリンパ節転移に気づく機会がなくなります。
経過観察と手術では、生活や費用にどんな違いがありますか?
体の面の生活の質は経過観察のほうがよいという報告が多い一方、不安などの心の面は研究によって結果が分かれています。
隈病院の30年の経験をまとめた総説は、経過観察とすぐの手術の生活の質を比べた研究で、不安などの心の面の結果は一致していないとしています。費用は、2017年の日本で、10年間の医療費の合計がすぐの手術では経過観察の4.1倍でした(Ito Y, et al. Endocr J 2024)。ガイドライン2024年版も、体の面の生活の質は経過観察のほうが良好という報告が多いとしています。
経過観察では、手術の傷や、手術による服薬は生じません。その代わり、がんが体に残っていることと付き合い続けます。手術では、がんを取り除いたという区切りがつく代わりに、合併症の可能性と、切除の範囲によっては一生の服薬を引き受けます。
甲状腺がんは、なぜ見つけすぎが起こるのですか?
一生、命や生活に影響しない小さな甲状腺がんを、検査で見つけて診断し、治療につなげてしまうことです。
甲状腺には、気づかれないまま一生を終えるがんが少なくありません。亡くなった人の甲状腺を調べた15の研究をまとめると、乳頭がんが見つかった割合は平均12%で、研究によって1〜36%の幅がありました(米国国立がん研究所 PDQ「甲状腺がん検診(医療者向け)」2025年5月13日更新)。
よく知られているのが韓国の例です。韓国では1999年に無料の国のがん検診が始まり、それに合わせて甲状腺の超音波検査が広まりました。米国国立がん研究所の要約によると、韓国の甲状腺がんの罹患率は1993年から2011年で15倍になった一方、甲状腺がんの死亡率は変わりませんでした(NCI PDQ 2025年)。
この増加を報告した論文は、手術を受けた人の11%が副甲状腺機能低下症に、2%が声帯麻痺になったと指摘しています(Ahn HS, et al. N Engl J Med 2014)。見つかる数が増えても亡くなる人は減らず、手術による合併症を負う人は出た、という点が過剰診断の議論の中心です。
日本のガイドライン2024年版は、家族歴や小児期の首への被ばく歴などの特別なリスクがない、症状のない成人に対して、超音波検査による甲状腺がん検診を行わないことを推奨しています(推奨の強さは「弱」、エビデンスの確実性B。甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024 CQ2-1)。
経過観察と手術、どちらを選ぶかはどう考えますか?
どちらにも利点と限界があり、年齢、がんの位置、通院を続けられるか、がんが体に残ることをどう感じるかで、選ぶ人によって答えが変わります。
| 経過観察 | すぐの手術 | |
| がんで亡くなった人 | 隈病院の5,646人の報告でいずれも0人 | 隈病院の5,646人の報告でいずれも0人 |
| 主な利点 | 手術の合併症を避けられる。首に傷が残らない。10年の医療費はすぐの手術の4.1分の1(2017年の日本) | がんを取り除ける |
| 主な限界 | 隈病院の報告で10年に8.0〜15.9%が大きくなる。40歳未満では10年で22.5%が臨床的に進行。通院を生涯続ける | 一時的な副甲状腺機能低下16.7%、一時的な声帯麻痺4.1%、ずっと続く副甲状腺機能低下1.6% |
| 向いているとされる人 | 合意声明では高齢の人。気管や反回神経から離れたがん | 経過観察の条件から外れるがん(転移・浸潤・気管や神経のそば・悪性度の高い型) |
出典:Miyauchi A, et al. Thyroid 2023、Ito Y, et al. Thyroid 2014、Oda H, et al. Thyroid 2016、Ito Y, et al. Endocr J 2024、Sugitani I, et al. Thyroid 2021
合意声明が、手術に切り替える目安の1つに本人の希望の変化を挙げているとおり、経過観察を選んだあとに手術を選び直すこともできます。
主治医に確かめておくと判断の材料になるのは、がんの大きさと気管・反回神経との位置関係、細胞診の結果、次の超音波検査の時期、どこまで大きくなったら手術を考えるか、の4つです。
ほかの医師の意見を聞きたいときの手順は、セカンドオピニオンの受け方の記事で説明しています。
22.5%
40歳未満で経過観察を始めた人のうち、10年のあいだに腫瘍が12mm以上になるか、新たにリンパ節転移が出た人の割合です。
60歳以上では2.5%で、同じ経過観察でも、始める年齢によって進む割合は約9倍違います。
出典:Ito Y, et al. Thyroid 2014(隈病院、1993〜2011年に経過観察を選んだ1,235人)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
次に読む
経過観察を選んだあと、その期間をどう過ごすかを考える人もいます。
がんの経過観察(アクティブサーベイランス)とフアイア
当院で実施するトラローム療法(高用量フアイア顆粒内服療法)で用いる生薬フアイアは、1,000例規模のランダム化大規模臨床試験を生存率で勝ち抜き、米国臨床腫瘍学会が定めるエビデンスレベル最高位の抗がんエビデンスを獲得しました。乳がん・肺がん・胃がん・大腸がんなどでも大規模臨床試験が進み、IgA腎症・喘息・アトピー・乾癬など免疫が過剰に働く病気でも有効性が報告されています。このブログでは、経過観察(アクティブサーベイランス)の期間にフアイアを飲むという選択肢を、外科医としての経験から書いています。
よくある質問
Q甲状腺がんの経過観察は、何年続けるのですか?
終わりの時期は決まっていません。日本内分泌外科学会の甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024年版は、高齢の人でも、基本的には生涯の経過観察が求められるとしています。合意声明では、始めてから1〜2年は6か月ごと、その後は進行がなければ年1回の超音波検査が勧められています。
Q経過観察中に甲状腺がんが大きくなったら、手遅れになりますか?
隈病院の1,235人の研究では、経過観察のあとに手術を受けた人で甲状腺がんで亡くなった人はおらず、甲状腺の一部を切除した93人のうち再発は1人でした。合意声明は、がんが10mmを少し超えて大きくなったとき(例として13mm)や新たなリンパ節転移が出たときを、手術に切り替える目安にしています。
Q経過観察を勧められたのに、手術を選んでもいいのですか?
選べます。日本の合意声明も、手術に切り替える目安の1つに本人の希望の変化を挙げています。すぐに手術した974人では、一時的な副甲状腺機能低下が16.7%、ずっと続く副甲状腺機能低下が1.6%あったという数字も、選ぶときの材料になります。
Q甲状腺がんは、検診で見つけないほうがいいのですか?
日本のガイドライン2024年版は、特別なリスクのない症状のない成人に、超音波検査による甲状腺がん検診を行わないことを推奨しています(推奨の強さは弱)。韓国では超音波検査が広まったあと、甲状腺がんの罹患率が1993年から2011年で15倍になりましたが、死亡率は変わりませんでした。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「甲状腺がん 治療」(2026年8月21日更新、甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024年版・頭頸部癌診療ガイドライン2025年版に基づく)
https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html - 国立がん研究センター がん統計「甲状腺」(2026年7月22日更新・確認)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/24_thyroid.html - 日本内分泌外科学会 甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会編.甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024.日本内分泌外科学会雑誌 41巻 増刊号,2024年4月25日
https://jaes.umin.jp/info/files/guideline2024.pdf - Sugitani I, Ito Y, Takeuchi D, et al. Indications and strategy for active surveillance of adult low-risk papillary thyroid microcarcinoma: consensus statements from the Japan Association of Endocrine Surgery Task Force on Management for Papillary Thyroid Microcarcinoma. Thyroid. 2021;31(2):183-192. doi:10.1089/thy.2020.0330
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33023426/ - Ito Y, Miyauchi A, Inoue H, et al. An observational trial for papillary thyroid microcarcinoma in Japanese patients. World J Surg. 2010;34(1). doi:10.1007/s00268-009-0303-0
https://doi.org/10.1007/s00268-009-0303-0 - Ito Y, Miyauchi A, Kihara M, et al. Patient age is significantly related to the progression of papillary microcarcinoma of the thyroid under observation. Thyroid. 2014;24(1):27-34. doi:10.1089/thy.2013.0367
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24001104/ - Sugitani I, Toda K, Yamada K, et al. Three distinctly different kinds of papillary thyroid microcarcinoma should be recognized: our treatment strategies and outcomes. World J Surg. 2010;34(6):1222-1231. doi:10.1007/s00268-009-0359-x
https://doi.org/10.1007/s00268-009-0359-x - Fukuoka O, Sugitani I, Ebina A, et al. Natural history of asymptomatic papillary thyroid microcarcinoma: time-dependent changes in calcification and vascularity during active surveillance. World J Surg. 2016;40(3):529-537. doi:10.1007/s00268-015-3349-1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26581368/ - Tuttle RM, Fagin JA, Minkowitz G, et al. Natural history and tumor volume kinetics of papillary thyroid cancers during active surveillance. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;143(10):1015-1020. doi:10.1001/jamaoto.2017.1442
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28859191/ - Oda H, Miyauchi A, Ito Y, et al. Incidences of unfavorable events in the management of low-risk papillary microcarcinoma of the thyroid by active surveillance versus immediate surgery. Thyroid. 2016;26(1):150-155. doi:10.1089/thy.2015.0313
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26426735/ - Miyauchi A. Clinical trials of active surveillance of papillary microcarcinoma of the thyroid. World J Surg. 2016;40:516-522. doi:10.1007/s00268-015-3392-y
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26744340/ - Miyauchi A, et al. Long-term outcomes of active surveillance and immediate surgery for adult patients with low-risk papillary thyroid microcarcinoma: 30-year experience. Thyroid. 2023
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37166389/ - Ito Y, Miyauchi A, Fujishima M, et al. Active surveillance for adult low-risk papillary thyroid microcarcinoma: a review focused on the 30-year experience of Kuma Hospital. Endocr J. 2024;71(1):7-21. doi:10.1507/endocrj.EJ23-0395
https://doi.org/10.1507/endocrj.EJ23-0395 - Ahn HS, Kim HJ, Welch HG. Korea’s thyroid-cancer “epidemic”–screening and overdiagnosis. N Engl J Med. 2014;371(19):1765-1767. doi:10.1056/NEJMp1409841
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372084/ - National Cancer Institute. Thyroid Cancer Screening (PDQ®)–Health Professional Version.(2025年5月13日更新)
https://www.cancer.gov/types/thyroid/hp/thyroid-screening-pdq





