悪性リンパ腫はリンパ球ががん化する病気の総称で、100種類以上ある病型ごとに、進み方も治療も違います。
悪性リンパ腫は、血液のがんの一つです。同じ「悪性リンパ腫」という名前でも、年の単位でゆっくり進むものから、週の単位で進むものまであり、治療をすぐに始めるのか、経過を見るのかも病型で変わります。この記事では、病型の分け方、症状、検査、ステージ、治療、生存率の読み方を、国立がん研究センターのがん情報サービス、医薬品医療機器総合機構の資料、臨床試験の論文から整理します。
この記事の内容
悪性リンパ腫とは、どんな病気ですか?
白血球のうちリンパ球ががん化する病気です。100種類以上の病型があり、大きくB細胞リンパ腫、T細胞・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫に分けられます。
がん情報サービスは、B細胞リンパ腫とT細胞・NK細胞リンパ腫をあわせて非ホジキンリンパ腫と呼ぶこともあるとしています(がん情報サービス「悪性リンパ腫」2023年)。ホジキンリンパ腫は、日本で発生する悪性リンパ腫全体の約5%です(がん情報サービス「ホジキンリンパ腫」2023年)。
国内で2023年に悪性リンパ腫と診断されたのは37,601人(男性20,073人、女性17,528人)、2024年に悪性リンパ腫で亡くなったのは13,920人でした(国立がん研究センター がん統計「悪性リンパ腫」2026年)。
主な病型は次のとおりです。
| 病型 | 進み方 | 年間に診断される数 |
| びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | 月の単位で進む(アグレッシブ) | 記載なし |
| 濾胞性リンパ腫 | 年の単位でゆっくり進むことが多い(インドレント) | 約9,000例 |
| MALTリンパ腫 | ゆっくり進む(インドレント) | 記載なし |
| バーキットリンパ腫 | 進行が極めて速い(高度アグレッシブ) | 記載なし |
| ホジキンリンパ腫 | — | 約1,500例 |
出典:がん情報サービス「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」「濾胞性リンパ腫」「MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など」「ホジキンリンパ腫」(2023年11〜12月更新)。
進み方の速さで、何が変わるのですか?
治療をすぐに始めるのか、症状が出るまで経過を見るのかが変わります。悪性リンパ腫では、病型ごとに進み方の時間の単位が違います。
がん情報サービスは、リンパ腫を進み方の速さで3つに分けています(がん情報サービス「T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫」2023年)。
| 分類 | 進み方の時間の単位 | 例 |
| インドレントリンパ腫 | 年の単位 | 濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫 |
| アグレッシブリンパ腫 | 月の単位 | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 |
| 高度アグレッシブリンパ腫 | 週の単位 | バーキットリンパ腫 |
出典:がん情報サービス「T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫」「MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」(2023年)。
濾胞性リンパ腫では、症状がなく体に問題が起きていない場合、治療をせずに注意深く経過を見る「無治療経過観察」を選ぶことがあります(がん情報サービス「濾胞性リンパ腫」2023年)。一方、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は月の単位で進みますが、薬物療法の効果が期待できるとされています(がん情報サービス「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」2023年)。
インドレントリンパ腫は、経過の途中で、より速く進むアグレッシブリンパ腫に変わる場合があります。その場合は、より強い薬物療法に切り替えます(がん情報サービス「濾胞性リンパ腫」2023年)。経過観察を選んだあとも、定期的な診察が続くのはこのためです。
「悪性リンパ腫だから急ぐ」「悪性リンパ腫だから待てる」は、どちらも成り立たない
同じ悪性リンパ腫でも、年の単位で進む病型と週の単位で進む病型があります。経過観察を勧められたのか、すぐの治療を勧められたのかは、病型の診断から出てくる判断です。説明を受けるときは、まず自分の病型の名前を確かめることが出発点になります。
悪性リンパ腫の症状は?
首や腋の下、足の付け根などのリンパ節が腫れ、しこりとして気づくことが多く、多くは痛みを伴いません。
急速に大きくなる場合は痛むことがあり、発熱、発疹、皮膚の腫瘤などがみられることもあります(がん情報サービス「悪性リンパ腫」2023年)。胸やおなかの中のリンパ節に生じた場合は症状が少なく、CTなどの画像検査で見つかることもあります(がん情報サービス「濾胞性リンパ腫」2023年)。
進行したときに出る次の3つの症状は「B症状」と呼ばれます(がん情報サービス「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」2023年)。
- 発熱
- 体重減少
- 盗汗(大量の寝汗)
腫れたリンパ節が尿管や静脈、脊髄などを圧迫すると、水腎症、むくみ、まひが起こることがあり、緊急の治療が必要になる場合もあります(同)。
悪性リンパ腫の原因は、わかっていますか?
一部の病型では、ウイルスや細菌との関係がわかっています。
成人T細胞白血病リンパ腫は、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)の感染が原因で起こります。HTLV-1に感染している人は全国で約108万人で、一生のうちに発症する確率は2〜5%とされています。主な感染経路は母乳による母子感染です(がん情報サービス「成人T細胞白血病リンパ腫」2023年)。
胃にできるMALTリンパ腫では、ピロリ菌を除菌する治療に効果があることが多いとされています(がん情報サービス「MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など」2023年)。
どんな検査で診断しますか?
多くの場合、腫れたリンパ節などの組織を取る生検を行い、顕微鏡や遺伝子の検査で病型を確定します。
生検で取った組織は、顕微鏡での観察に加え、細胞の性質の検査、染色体検査、遺伝子検査などで調べます。病気の広がりはCTやPET-CTなどの画像検査で調べ、必要に応じて内視鏡検査や、腰の骨(腸骨)から骨髄を採る骨髄検査を行います(がん情報サービス「悪性リンパ腫」2023年)。
病型を確定するための検査は多く、結果が出るまでに時間がかかることがあります。日数の目安は、病理検査の結果が何日で出るかを説明した記事で扱っています。PET検査で何がわかり、何がわからないかは、この記事の最後に案内している記事にまとめています。
悪性リンパ腫のステージは、どう決まりますか?
リンパ節の病変が横隔膜の片側にとどまるか、両側にあるか、リンパ節以外の臓器に広がっているかで、Ⅰ期からⅣ期に分けます。
国際的に使われているルガノ分類(2014年)のステージは、次のとおりです。
| ステージ | 広がり |
| Ⅰ期 | 1つのリンパ節か、隣り合うリンパ節のまとまり。またはリンパ節に病変がなく、リンパ節以外に1か所だけ |
| Ⅱ期 | 横隔膜の同じ側にある、2つ以上のリンパ節のまとまり |
| Ⅲ期 | 横隔膜の両側のリンパ節。または横隔膜より上のリンパ節と脾臓 |
| Ⅳ期 | リンパ節から離れたところにある、リンパ節以外の臓器への病変 |
ルガノ分類は、ブドウ糖を多く取り込む病型では、PET-CTでステージを決めるとしています。ホジキンリンパ腫では、PET-CTを行えば、ステージを決めるための骨髄生検は通常は必要ないとしました。また、B症状の有無を表すA・Bの記号は、ホジキンリンパ腫では治療の判断に使う一方、非ホジキンリンパ腫ではつけなくてよいとしています。ホジキンリンパ腫では、10cm以上か胸の横幅の3分の1を超える大きな塊を「バルキー」と呼び、治療の判断に使います(Cheson BD, et al. 2014)。
がんのステージ全般の考え方は、がんのステージがいくつまであるかを説明した記事で書いています。悪性リンパ腫では、ステージに加えて、病型と進み方の速さが治療を決める大きな要素になります。
悪性リンパ腫は、どう治療しますか?
中心は薬物療法で、病型に応じて放射線治療や造血幹細胞移植を組み合わせます。インドレントリンパ腫では、無治療経過観察を選ぶこともあります。
がん情報サービスは、悪性リンパ腫を、薬物療法の効果が特に高く、薬物療法だけで治療することがあるがんの一つに挙げています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。病型ごとの治療の骨組みは次のとおりです。
| 病型 | 初回の治療 | 効果が不十分なとき・再発したとき |
| びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | 分子標的薬と細胞障害性抗がん薬などを組み合わせた薬物療法。そのあと放射線治療を行うこともある | 造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法 |
| 濾胞性リンパ腫 | 分子標的薬だけ、または分子標的薬と細胞障害性抗がん薬の組み合わせ。放射線治療。症状がなければ無治療経過観察 | 通常の治療で治すことが難しい場合に造血幹細胞移植 |
| ホジキンリンパ腫(古典的) | 複数の細胞障害性抗がん薬、または分子標的薬と抗がん薬の併用。放射線治療を組み合わせることもある | 造血幹細胞移植 |
出典:がん情報サービス「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」「濾胞性リンパ腫」「ホジキンリンパ腫」(2023年)。
分子標的薬がどんな薬かは、分子標的薬とは何かを説明した記事で扱っています。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療の比較試験
初回の治療で、標準的な組み合わせ(R-CHOP療法)の一部の薬を、抗体に抗がん薬をつないだポラツズマブ ベドチンに置き換えたPola-R-CHP療法と比べた比較試験があります。879人を分け、2年無増悪生存率はPola-R-CHPで76.7%、R-CHOPで70.2%、ハザード比は0.73でした。2年全生存率は88.7%と88.6%、全生存のハザード比は0.94で、この時点で生存期間にははっきりした差は出ていません(Tilly H, et al. N Engl J Med 2022)。
再発や悪化を防いだ期間の差と、長く生きられるかどうかの差は、同じ試験でも別々に評価されます。
再発したときの、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体
CAR-T細胞療法は、患者さん自身のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけて攻撃する受容体を遺伝子操作で組み込んでから体に戻す治療です。国内では、次の製品が、再発または治療が効かない悪性リンパ腫に使えます(医薬品医療機器総合機構「使用上の注意の改訂について」2024年)。
| 製品(一般名) | 対象(いずれも再発又は難治性で、条件付き) |
| キムリア(チサゲンレクルユーセル) | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫 |
| イエスカルタ(アキシカブタゲン シロルユーセル) | 大細胞型B細胞リンパ腫 |
| ブレヤンジ(リソカブタゲン マラルユーセル) | 大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫 |
出典:医薬品医療機器総合機構「アキシカブタゲン シロルユーセル、イデカブタゲン ビクルユーセル、チサゲンレクルユーセル及びリソカブタゲン マラルユーセルの『使用上の注意』の改訂について」(2024年3月28日)。
二重特異性抗体は、リンパ腫の細胞の目印と、がんを攻撃するT細胞の両方に結合する薬です。エプコリタマブは、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫を対象に2023年9月25日に、モスネツズマブは、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫を対象に2024年12月27日に国内で承認されました(医薬品医療機器総合機構「新医薬品の承認品目一覧 2023年4月〜2024年3月」、同 2024年4月〜2025年3月)。
どちらの治療も、使える病院と対象になる条件が決められています。自分が対象になるかは、主治医に確かめます。新しい治療を臨床試験で受ける方法は、がんの治験に参加する方法で説明しています。
悪性リンパ腫の生存率は?
2018年に診断された人の5年相対生存率は67.5%(男性66.7%、女性68.4%)でした。ただし、この数字には100種類以上の病型がまとめて入っています。
この数字は全国がん登録によるもので、国立がん研究センターのがん統計には、病期ごとの生存率のデータはありません(国立がん研究センター がん統計「悪性リンパ腫」2026年)。
年の単位で進む病型と週の単位で進む病型が1つの数字にまとまっているため、自分の見通しを考える材料としては粗すぎます。病型ごとに、見通しを見積もる別の物差しが使われています。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、年齢、血液中のLDHの値、全身状態、ステージ、リンパ節以外の病変の数を点数にした予後指標が使われます。R-CHOP療法を受けた人で調べた研究では、この点数で3つに分けた4年全生存率は、94%、79%、55%でした(Sehn LH, et al. Blood 2007)。カナダのブリティッシュコロンビア州で治療を受けた人の数字で、日本のいまの治療成績をそのまま表すものではありません。
67.5%
2018年に診断された悪性リンパ腫の5年相対生存率。100種類以上の病型、年の単位で進むものから週の単位で進むものまでを、1つにまとめた数字です。
出典:国立がん研究センター がん統計「悪性リンパ腫」(全国がん登録、2018年診断例)
自分の病型の名前と、それがインドレントかアグレッシブかがわかると、経過観察と言われた理由も、すぐに治療を始めると言われた理由も、同じ物差しの上で理解できるようになります。
日の単位で急速に悪化する悪性腫瘍は、急性白血病の一部やバーキットリンパ腫などです。多くのがんはそれらの中間です。
その一方で、定期的な経過観察をしていれば放置してもOKながんもあるのです。
決して慌てる必要はありません。まず、落ちついてください。
監修者
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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よくある質問
Q悪性リンパ腫は治りますか?
病型によって大きく違います。がん情報サービスは、悪性リンパ腫を、薬物療法の効果が特に高く、薬物療法だけで治療することがあるがんの一つに挙げています。一方で、年の単位でゆっくり進む濾胞性リンパ腫などでは、症状がなければ治療をせずに経過を見ることもあります。自分の病型の名前を確かめることが、見通しを考える出発点になります。
Q悪性リンパ腫の5年生存率はどのくらいですか?
国立がん研究センターのがん統計では、2018年に診断された人の5年相対生存率は67.5%(男性66.7%、女性68.4%)でした。この数字には100種類以上の病型がまとめて入っており、病期ごとの数字はありません。
Qリンパ節が腫れたら、悪性リンパ腫ですか?
リンパ節の腫れだけでは決まりません。悪性リンパ腫かどうかと病型は、多くの場合、組織を取る生検で確定します。悪性リンパ腫のリンパ節の腫れは、多くは痛みを伴わず、首や腋の下、足の付け根などに出ます。
Q悪性リンパ腫で治療をせずに様子を見ることはありますか?
あります。濾胞性リンパ腫などのインドレントリンパ腫では、症状がなく体に問題が起きていない場合、無治療経過観察を選ぶことがあります。経過の途中で速く進む型に変わることがあるため、定期的に診察を受けます。
Q悪性リンパ腫にCAR-T細胞療法は使えますか?
再発または治療が効かない場合に、条件を満たせば保険で使えます。国内では、キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジが大細胞型B細胞リンパ腫などを、キムリアとブレヤンジは濾胞性リンパ腫も対象にしています。使える病院は限られています。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」(2023年11月28日更新・確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/index.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「濾胞性リンパ腫」「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」「ホジキンリンパ腫」(2023年11〜12月更新・確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/follicular_lymphoma/index.html - 国立がん研究センター がん統計「悪性リンパ腫」(2026年7月22日更新)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/25_ml.html - Cheson BD, Fisher RI, Barrington SF, et al. Recommendations for Initial Evaluation, Staging, and Response Assessment of Hodgkin and Non-Hodgkin Lymphoma: The Lugano Classification. J Clin Oncol. 2014;32(27):3059-3068.
https://doi.org/10.1200/JCO.2013.54.8800 - Tilly H, Morschhauser F, Sehn LH, et al. Polatuzumab Vedotin in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma. N Engl J Med. 2022;386(4):351-363.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2115304 - Sehn LH, Berry B, Chhanabhai M, et al. The revised International Prognostic Index (R-IPI) is a better predictor of outcome than the standard IPI for patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with R-CHOP. Blood. 2007.
https://doi.org/10.1182/blood-2006-08-038257 - 医薬品医療機器総合機構「アキシカブタゲン シロルユーセル、イデカブタゲン ビクルユーセル、チサゲンレクルユーセル及びリソカブタゲン マラルユーセルの『使用上の注意』の改訂について」(2024年3月28日)
https://www.pmda.go.jp/files/000267649.pdf - 医薬品医療機器総合機構「新医薬品の承認品目一覧(2023年4月〜2024年3月)」「同(2024年4月〜2025年3月)」(2026年10月25日確認)
https://www.pmda.go.jp/files/000252453.pdf





