がんの倦怠感(だるさ)はなぜ起こる?休み方と相談の目安

点滴スタンドのある外来治療室の椅子。がんの倦怠感の原因と休み方を説明する記事

がんの倦怠感は、動いた量に見合わない疲れが続く状態で原因が重なっていることが多く、0〜10で4以上のだるさが続くなら、我慢せず数字で伝えることが出発点です。

がんの倦怠感とは、どんな疲れですか?

動いた量に見合わない強い疲れが続き、ふだんの生活を送りにくくする状態です。

がん関連倦怠感(cancer-related fatigue)とは、がんやがん治療に関連して起こる、体・気持ち・頭の働きの疲れや消耗の感覚のことです。米国の総合がんセンターネットワーク(NCCN)の定義では、苦痛を伴い、持続し、本人が感じるもので、最近の活動量に見合わず、ふだんの機能を妨げるものとされています(米国国立がん研究所 PDQ「Fatigue」2024年更新)。

がん情報サービスは、体のだるさ、何もする気が起きない感覚、身の置き所のなさ、集中力の低下などを例に挙げています。原因によっては数カ月から数年続くことがあり、本人がつらくても周りに理解されにくいとも書いています(がん情報サービス「倦怠感(だるさ)」2026年)。

頻度は高い症状です。129件の研究、約7万人を統合したメタアナリシスでは、がん患者の倦怠感の有病率は49%(95%信頼区間45〜53)でした。治療中に限ると62%でした(Al Maqbali M ほか J Pain Symptom Manage 2021)。

がんの倦怠感はなぜ起こるのですか?

がんそのもの、治療、貧血、痛み、不眠、気分の落ち込みなど、いくつもの原因が重なって起こります。

倦怠感の仕組みは、すべてがわかっているわけではありません。ただ、原因のなかには検査で見つけて治せるものがあります。がん情報サービスと米国国立がん研究所のPDQが挙げる主な原因を、確かめ方とあわせて整理します。

原因 内容 確かめ方の例
貧血 倦怠感の大きな要因になりうる 血算などの血液検査
治療の副作用 抗がん剤、放射線治療、手術後の回復など 治療の日程とだるさの波を照らし合わせる
ホルモンの異常 甲状腺機能低下症など。免疫チェックポイント阻害薬の副作用で起こることがある 甲状腺ホルモンなどの血液検査
気分の落ち込み・不安 抑うつはがん患者の約15〜25%にみられる 気分や意欲の変化を医師・看護師に伝える
睡眠の問題 不眠、眠りすぎ、睡眠時無呼吸など 寝つき・夜中の目覚め・昼寝の時間を記録する
痛み 痛みと不眠と倦怠感は一緒に起こりやすい 痛みの強さを0〜10で伝える
体の状態の変化 感染症、脱水、電解質異常、栄養状態の変化、筋力低下、悪液質 体温・体重・食事量・水分量の記録、血液検査
ほかの薬 医療用麻薬、睡眠薬・抗不安薬、抗ヒスタミン薬などの眠気 飲んでいる薬をすべて医師・薬剤師に見せる

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「倦怠感(だるさ)」(2026年)、米国国立がん研究所 PDQ「Fatigue」(2024年更新)をもとに作成

抗がん剤によるだるさが出やすい時期は、抗がん剤の副作用はいつから出るかで一覧にしています。免疫チェックポイント阻害薬で起こるホルモンの異常は、がん免疫療法の副作用で扱っています。

体重と筋肉が落ちていく「悪液質」は、食べる量だけでは説明できない変化です。詳しくはがん悪液質とはで説明しています。痛みが眠りを妨げている場合は、がんの痛みの治療が倦怠感の手当てにもなります。

倦怠感の強さは、どう伝えればよいですか?

「0がまったくない、10が考えられる最悪」として数字で伝えると、医療者と共有しやすくなります。

PDQによると、倦怠感のふるい分けには0〜10の1項目の尺度が使われます。0〜3がなし〜軽度、4〜6が中等度、7〜10が重度です。4以上は臨床的に意味のある倦怠感とされ、原因を詳しく調べる対象になります。

がん情報サービスは、具体的な変化を伝えることも勧めています。たとえば「ぐっすり寝たのに疲れがとれない」「集中力が落ちた」「階段の上り下りで息切れがする」といった言い方です。1日のなかで強い時間帯と弱い時間帯があるかも、手がかりになります。

  • 1日のうち、いちばん強いときの数字(0〜10)
  • だるさが強くなる時間帯と、治療日との関係
  • できなくなった家事や仕事
  • 睡眠、食事量、体重、気分の変化
  • 発熱、息切れ、痛みなど、ほかの症状

がんの倦怠感があるとき、どう休めばよいですか?

疲れ切る前にこまめに休み、だるさが軽い時間に大事な用事を回して、活動と休息のつり合いをとります。

がん情報サービスは、本人と周りの人ができる工夫として次のようなものを挙げています。

  • だるさが強い時間帯と弱い時間帯のパターンをつかむ
  • だるさが弱いときに、優先度の高い用事をする
  • つらいときは、家族などに手伝ってもらう
  • 楽な姿勢で、こまめに休む
  • 寝つきが悪いときは、睡眠薬や抗不安薬について医師に相談する
  • 深呼吸、音楽、マッサージなどで、気持ちをゆるめる時間をつくる

仕事を続けている人は、だるさの波に合わせて働き方を調整する方法があります。がんでも仕事は続けられるかで、確かめる順番を説明しています。

運動は倦怠感を軽くしますか?

軽くします。体調が許す範囲の運動は、治療中も治療後も、いまある方法のなかで根拠がいちばん厚い手段です。

113件のランダム化比較試験、1万1,525人を統合したメタアナリシスがあります(Mustian KM ほか JAMA Oncol 2017)。倦怠感の重さを改善する効果の大きさ(重み付け効果量)は、運動0.30、心理療法0.27、運動と心理療法の組み合わせ0.26でした。薬物療法は0.09で、統計的に有意な改善を示しませんでした。

効果量は、改善の幅を個人差の大きさで割った値です。統計の慣例では0.2が小、0.5が中の目安とされます。0.30は「小から中の間」で、運動で倦怠感がなくなるという意味ではありません。

ASCOの2024年の指針が勧めるもの

米国臨床腫瘍学会(ASCO)と統合腫瘍学会(SIO)は、2024年に成人のがん関連倦怠感の指針を改訂しました(Bower JE ほか J Clin Oncol 2024)。2013〜2023年に出た113件のランダム化比較試験をもとにしています。根拠の確かさは、どの方法も「低〜中」と評価されています。

時期 勧められる 勧めてもよい
治療中 運動、認知行動療法、マインドフルネス、太極拳・気功 心理教育、アメリカニンジン
治療後 運動、認知行動療法、マインドフルネス ヨガ、指圧、お灸
人生の最終段階 (強い推奨はなし) 認知行動療法、副腎皮質ステロイド

出典:Bower JE ほか「Management of Fatigue in Adult Survivors of Cancer: ASCO-Society for Integrative Oncology Guideline Update」J Clin Oncol 2024;42(20):2456-2487

がん情報サービスも、ウォーキング、ヨガ、体操などの有酸素運動やストレッチを、体調が許す範囲で行うことを挙げています。どの程度の運動まで行えるかは病状によって違うため、担当の医師に確かめます。

倦怠感に効く薬はありますか?

倦怠感そのものに確立した薬はなく、まず貧血や痛み、不眠など原因の治療をします。

がん情報サービスは、倦怠感そのものへの有効な治療法は十分に確立されていないとしています。そのため治療の中心は、痛み、貧血、不安、不眠などの原因に対するものになります。病状によっては完全に取り除くのが難しく、つらさを軽くして付き合っていくことが目標になる場合もあります。

ステロイドは短期間・慎重に使う

進行がんの患者84人を対象にした二重盲検のランダム化比較試験があります(Yennurajalingam S ほか J Clin Oncol 2013)。デキサメタゾン4mgを1日2回、14日間飲んだ群では、15日目の倦怠感の尺度(FACIT-F)の改善が平均9点でした。偽薬の群は3.1点でした。がん情報サービスは、ステロイドには感染症や不眠などの副作用があるため、医師が慎重に判断するとしています。

勧められていないもの

ASCOの2024年の指針は、倦怠感に対して、L-カルニチン、抗うつ薬、覚醒を促す薬を勧めるべきではないとしています。精神刺激薬も、決まりごととして勧めるべきではないとしました。アメリカニンジン以外のサプリメントは、治療中も治療後も倦怠感を改善しなかったとまとめています。

「効いた」と感じても、薬の効果とは限りません

倦怠感は、本人の感じ方を質問票で測る症状です。そのため偽薬でも改善が出やすく、試験で差を示すのが難しい分野です。偽薬を使った29件の試験、3,758人を統合した研究(Aguiar Junior PN ほか Support Care Cancer 2020)では、偽薬の群でも29%の人がはっきりした改善を報告しました。実際の治療を受けた群は36%でした。体験談で楽になったと聞いても、それだけでは偽薬で起こる改善と区別できません。

29%

倦怠感の試験で、偽薬を飲んだ人のうち、はっきりした改善を報告した割合。
実際の治療を受けた群は36%で、差は7ポイントでした。

出典:Aguiar Junior PN ほか Support Care Cancer 2020;28(4):1755-1764

がんの倦怠感は、どんなときに相談すればよいですか?

だるさが続くときは、我慢せず担当の医師や看護師に伝えます。急に強くなったときや、ほかの症状を伴うときは早めに連絡します。

  • 0〜10で4以上のだるさが続いている
  • だるさが急に強くなった
  • 階段や着替えなど、ふだんの動作で息切れがする
  • 発熱を伴っている
  • 免疫チェックポイント阻害薬の治療中、または治療後に、だるさが出てきた
  • 気分の落ち込みや、眠れない日が続いている

抗がん剤の治療中に熱が出た場合は、白血球が減って感染症を起こしている可能性があります。連絡の目安は抗がん剤で免疫力が下がったときの感染症で説明しています。

倦怠感を含むつらさを和らげる医療を受けられる時期は、緩和ケアはいつから受けられるかで説明しています。誰に相談すればよいかわからないときは、がん相談支援センターも窓口になります。

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

Qがんの倦怠感はいつまで続きますか?

原因によって違います。がん情報サービスは、数カ月から数年続くこともあるとしています。がん患者の倦怠感の有病率は、研究全体で49%、治療中に限ると62%というメタアナリシスがあり、治療が終わってからも続くことがあります。

Qがんの倦怠感と普通の疲れはどう違いますか?

がんの倦怠感は、最近の活動量に見合わない強さで続き、ふだんの生活を妨げる点が違います。ぐっすり寝ても疲れがとれない、ふだんの動作で息切れがする、といった変化があれば担当の医師や看護師に伝えます。

Q抗がん剤のだるさは寝ていれば治りますか?

休息は必要ですが、休むだけでなく動くことも大切とされています。がん情報サービスは、活動と休息のつり合いをとり、体調が許せば運動することを勧めています。運動は治療中の倦怠感を軽くする方法として、ASCOの2024年の指針でも勧められています。

Qがんの倦怠感にサプリメントは効きますか?

ASCOの2024年の指針は、治療中のアメリカニンジンは勧めてもよいとする一方、それ以外のサプリメントは倦怠感を改善しなかったとしています。L-カルニチンは勧めるべきではないとされました。飲む場合は、治療薬との飲み合わせを担当の医師か薬剤師に確認します。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「倦怠感(だるさ)」(2026年1月23日更新)
    https://ganjoho.jp/public/support/condition/fatigue/index.html
  2. National Cancer Institute. Fatigue (PDQ) – Health Professional Version(2024年11月6日更新)
    https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/fatigue/fatigue-hp-pdq
  3. Al Maqbali M, et al. Prevalence of Fatigue in Patients With Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Pain Symptom Manage. 2021;61(1):167-189.
    https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2020.07.037
  4. Mustian KM, et al. Comparison of Pharmaceutical, Psychological, and Exercise Treatments for Cancer-Related Fatigue: A Meta-analysis. JAMA Oncol. 2017;3(7):961-968.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28253393/
  5. Bower JE, et al. Management of Fatigue in Adult Survivors of Cancer: ASCO-Society for Integrative Oncology Guideline Update. J Clin Oncol. 2024;42(20):2456-2487.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38754041/
  6. Yennurajalingam S, et al. Reduction of cancer-related fatigue with dexamethasone: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial in patients with advanced cancer. J Clin Oncol. 2013;31(25):3076-3082.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23897970/
  7. Aguiar Junior PN, et al. The efficacy of placebo for the treatment of cancer-related fatigue: a systematic review and meta-analysis. Support Care Cancer. 2020;28(4):1755-1764.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31302766/

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