がんで転院するときは、主治医に紹介状(診療情報提供書)を書いてもらい、画像データや病理の記録と一緒に転院先へ渡すのが基本の手順です。
紹介状の作成は保険診療で250点、3割負担なら窓口で750円です。紹介状を頼まずに大きな病院を初診すると特別の料金が7,000円以上かかり、自分で診療記録の開示を請求すると開示決定まで約3〜4週間かかる病院もあります(国立がん研究センター東病院の例)。
この記事の内容
がんの治療中でも転院はできますか?
できる場合があります。ただし、治療の途中や経過観察中の転院を受け入れていない診療科や病院もあります。
転院とは、治療を受ける病院そのものを移すことです。がん情報サービスは、治療経過をみていくために同じ病院で治療を続けることが望ましいとしたうえで、治療内容や地域の事情、転居などによっては転院できることもある、と説明しています(がん情報サービス「病院選びQ&A」2025年6月2日更新)。
転院を考える理由として、同じページは、主治医と十分にコミュニケーションがとれない、期待していた医師ではなかった、といった例を挙げています。転居や通院の負担のように、治療の中身とは別の事情で転院する人もいます。
どの理由でも、最初にすることは同じです。受け入れてもらえるかを確かめる前に今の病院との関係を切らないこと、そして主治医に相談することです。
転院とセカンドオピニオンはどう違いますか?
セカンドオピニオンは今の病院で治療を続ける前提で意見を聞くこと、転院は治療する病院を移すことです。
がん情報サービスは、セカンドオピニオンを、主治医とは別の医師に診断や治療選択について意見を求めることで、現在の主治医のもとで治療を受けることを前提に利用するもの、としています(がん情報サービス「セカンドオピニオン」)。
| 項目 | セカンドオピニオン | 転院 |
| 目的 | 別の医師の意見を聞く | 治療を受ける病院を移す |
| 治療を行う病院 | 今の病院のまま | 転院先の病院 |
| 紹介状と資料 | 原則必要 | 必要 |
| 公的医療保険 | 使えない(全額自己負担) | 転院先での診療は保険診療 |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「セカンドオピニオン」「病院選びQ&A」
がん情報サービスは、セカンドオピニオンの結果を受けて転院を考える場合も、まず転院できるかを確認し、主治医に希望を伝えて紹介状などをあらためて用意してもらう流れを示しています。迷っている段階なら、先にセカンドオピニオンを受けるという順番もあります。手順と費用はセカンドオピニオンは紹介状なしで受けられるかにまとめています。
転院はどんな手順で進めますか?
主治医に相談し、紹介状を作ってもらい、候補の病院に受け入れを相談してから予約する、という順番です。
がん情報サービスの説明を手順に並べると、次のようになります(がん情報サービス「病院選びQ&A」、同「病院選びを考えるときに」2025年6月2日更新)。
- 主治医に転院を考えていることを相談する
- 候補の病院を探す(主治医、かかりつけ医、がん相談支援センターに相談できる)
- 主治医に紹介状(診療情報提供書)を作成してもらう
- 画像検査の結果を記録したCD-ROMなどを、紹介状とあわせて用意する
- 候補の病院に転院を相談し、受診方法と持ち物を確認して予約する
多くの病院では初診に予約が必要で、病院のウェブサイトで持ち物や受診の流れを確認できます。病院や地域によっては、今かかっている医療機関を通して転院先の予約を取る仕組みもあります。
治療が途切れないようにするには、転院先で最初の診察を受けられる日が決まってから、今の病院での予定を調整するのが安全です。拠点病院と地域の医療機関が治療計画を共有して役割を分ける仕組みも、がん治療連携計画策定料として診療報酬に組み込まれています(厚生労働省 令和8年度 医科診療報酬点数表)。遠方の病院と近くの病院を組み合わせる方法がないかも、主治医に聞いてみてください。
紹介状(診療情報提供書)には何が書かれていますか?
これまでの症状、診断、治療の経過のまとめと、紹介する目的が書かれています。
紹介状は、患者が別の医療機関を受診するときに、それまで担当していた医師が患者を紹介するために発行する書類です。診療情報提供書ともいい、セカンドオピニオン、転院、介護サービスの利用の際に発行されます(がん情報サービス 用語集「紹介状」2024年7月2日更新)。
がん情報サービスは、紹介状には既往歴、病状、検査結果などが記載され、治療を受ける病院と紹介元の医療機関が連携するうえで大切なものだとしています(がん情報サービス「病院選びを考えるときに」)。転院先は、この経過のまとめをもとに治療を引き継ぎます。
画像や検査データは、どうやって引き継ぎますか?
CTやMRIなどの画像は、CD-ROMなどの媒体に記録して紹介状と一緒に持参するのが一般的です。
がん情報サービスは、画像検査を受けている場合は検査結果を記録したCD-ROMなどを紹介状とあわせて持参する、としています(がん情報サービス「病院選びを考えるときに」)。血液検査の結果や治療の記録は、紹介状に記載されるか、写しが添えられます。
患者に渡す画像の媒体には、医療機関どうしの取り決めがあります。医療情報標準化協議会のレポートは、2011年の合意事項を引いて、次のような運用を示しています(医療情報標準化協議会「連携用医用情報(PDI)およびその運用指針」2022年3月)。
- 画像はDICOM形式で、圧縮しない
- CD-R1枚には患者1人分だけを入れる
- 同梱する閲覧ソフトの自動起動は禁止
- 媒体の表面に、患者氏名、提供元の医療機関名、問い合わせ先を書く
受け取る側の病院は、この媒体から画像を自院のシステムに取り込んで読影します。転院先によっては形式や媒体の種類を指定していることがあるため、予約のときに確認しておくと、作り直しを避けられます。
紙や媒体ではなく電子的に情報を送る方法もあります。令和8年度の診療報酬点数表には、紹介の際に検査結果や画像情報などを電子的に閲覧できる形で提供した場合の検査・画像情報提供加算が設けられています。
病理標本はどうやって引き継ぎますか?
病理標本は、病院が保管する実物を期間を決めて貸し出し、使用後に返却する扱いをとる病院があります。
病理標本とは、手術や生検で取った組織を薄く切ってガラスに載せたスライド(プレパラート)と、その元になるパラフィンで固めた組織(ブロック)です。病理診断の報告書は記録の写しを渡せますが、標本は病院が保管している実物です。
徳島県立中央病院の院外貸し出しの書式では、貸し出しの対象をスライド標本とパラフィンブロックとし、貸出期間は原則2週間、使用後は必ず返却し、輸送には書留など追跡できる方法をとるよう求めています(徳島県立中央病院「病理標本・病理検体の院外貸し出し申請書」)。
病理診断を別の病院で見直してもらう場合には、求められる資料がさらに増えます。国立がん研究センター中央病院の病理相談では、紹介状、病理レポート、前の病院で作ったすべての病理標本スライド、未染色のプレパラート10〜20枚または標本ブロック、画像検査の結果を求めており、病理診断の結果が出るまで2週間程度かかるとしています(国立がん研究センター中央病院「病理相談」)。
転院先が標本を必要とするかどうかは、病理診断を自院でやり直すかどうかで変わります。必要な場合は、転院先から前の病院へ依頼が出る形になることもあるので、どちらが手配するかを確認してください。
転院にかかる費用はいくらですか?
紹介状は保険診療の点数で250点、3割負担なら窓口では750円です。紹介状がない場合や、自分で記録の開示を求める場合は、別に費用がかかります。
紹介状の作成は、診療報酬の診療情報提供料(Ⅰ)にあたり、250点です。紹介先の医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定されます(厚生労働省 令和8年度 医科診療報酬点数表 B009)。1点は10円なので2,500円、窓口ではその1〜3割です。
| 引き継ぎの方法 | 費用 | かかる時間など |
| 主治医の紹介状(診療情報提供書) | 250点(2,500円)の1〜3割 | 病院ごとに異なる |
| 紹介状なしで大きな病院を初診 | 保険診療の自己負担に加えて、特別の料金が医科初診7,000円以上 | 検査や資料の取り寄せが別に必要になることがある |
| 自分で診療記録の開示を請求(国立がん研究センター東病院の例) | 申請手数料1件3,000円、画像DVD-R1枚1,000円など(税抜) | 申請から開示決定の通知まで約3〜4週間 |
出典:厚生労働省 令和8年度医科診療報酬点数表、同「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」、国立がん研究センター東病院「診療記録の開示」(2023年9月1日更新)
紹介状なしの特別の料金は、特定機能病院と、一般病床200床以上の地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関が対象で、医科の初診で7,000円、再診で3,000円とされ、2026年度の改定では変更なしとされています(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」)。金額は病院が定める額の下限で、2022年10月の見直しで「7,000円以上」とされたものです(厚生労働省 2022年10月の見直し)。
転院しても、高額療養費の回数は続きますか?
高額療養費の多数回該当は、同じ保険者での療養に適用されます。病院を変えても、加入している健康保険が変わらなければ月数は通算されます(全国健康保険協会「高額療養費」)。
ただし、自己負担額は医療機関ごとに計算します。70歳未満の人は、1つの医療機関の自己負担が21,000円以上の月だけ合算できるため、転院した月に前の病院と転院先の両方にかかると、上限に届きにくくなることがあります。治療費の全体はがんの治療費と高額療養費で説明しています。
紹介状を頼まずに転院先を受診すると、どうなりますか?
受診はできても、大きな病院では特別の料金がかかり、これまでの経過を一から確認し直すことになります。
がん情報サービスは、大きな病院(200床以上)では紹介状がないと初診時の費用が高くなる、としています。費用だけでなく、転院先の医師は前の病院での診断や治療の経過を知らない状態から始めることになります。
紹介状の代わりに、自分で診療記録の開示を求める方法もあります。厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は、患者が診療記録の開示を求めた場合、医療従事者等は原則としてこれに応じなければならないとし、開示に要する費用は医療機関が徴収できるとしています(厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」)。
ただし、開示された記録は、主治医が転院先にあてて経過と判断をまとめた紹介状とは別のものです。開示の手続きには時間がかかり、記録を受け取っても、転院先がそれで受け付けるかは病院によります。
開示で手に入るのは記録、紹介状は判断のまとめです
開示請求の手続きや料金は、指針が全国一律に定めているわけではなく、病院ごとに違います。この記事の料金と期間は国立がん研究センター東病院の例で、ほかの病院にそのまま当てはまるものではありません。開示の申請をする前に、その病院の窓口で確認してください。
3〜4週間
国立がん研究センター東病院で、診療記録の開示を申請してから開示決定の通知が届くまでの目安。
紹介状を頼まずに記録を集めると、治療の空白がこの分だけ延びる可能性があります。
国立がん研究センター東病院「診療記録の開示」2023年9月1日更新
主治医に転院を言い出しにくいときは、どうすればいいですか?
看護師や医療ソーシャルワーカーなど主治医以外の医療者や、がん相談支援センターに先に相談できます。
がん情報サービスは、主治医との関係に違和感があるときは、看護師や医療ソーシャルワーカーなどの医療者や、がん相談支援センターに早めに相談するよう勧めています(がん情報サービス「病院選びQ&A」)。
がん相談支援センターは、その病院を受診していなくても、誰でも無料・匿名で相談できます。相談したからといって、その病院での受診や転院をしなければならないわけではありません(がん情報サービス「病院選びを考えるときに」)。
主治医に伝えるときは、次の点を整理しておくと、紹介状の依頼まで一度で進みやすくなります。
- 転院を考えている理由(転居、通院の負担、治療方針についての希望など)
- 転院先の候補と、受け入れの相談をしたかどうか
- 転院先が求めている資料と画像の形式
- 今の治療をいつまで続け、どこで切り替えるか
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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転院を決めきれないうちは、病院を移す前に別の医師の意見を聞くという方法があります。必要な紹介状と資料は、転院のときとほぼ同じです。
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8病院の案内を確認した結果と、セカンドオピニオン外来・一般外来・がん相談支援センターの違い、費用、5つの手順、主治医に伝える内容をまとめています。
よくある質問
Qがんの治療中に転院はできますか?
できる場合があります。がん情報サービスは、同じ病院で続けることが望ましいとしつつ、治療内容や地域の事情、転居などによっては転院できることもあるとしています。治療途中の転院を受け入れない診療科もあるため、まず主治医に相談してください。
Q転院の紹介状の費用はいくらですか?
診療情報提供料(Ⅰ)として250点で、1点10円なので2,500円です。窓口ではその1〜3割を払い、3割負担なら750円です。
Q転院のとき画像データはどうやって渡しますか?
CTやMRIの画像はCD-ROMなどに記録してもらい、紹介状と一緒に持参するのが一般的です。転院先が形式や媒体を指定していることがあるため、予約のときに確認してください。
Q病理標本は転院先に渡せますか?
病院が保管する実物を、期間を決めて貸し出す扱いをとる病院があります。例として徳島県立中央病院は、スライド標本とパラフィンブロックの貸出期間を原則2週間とし、使用後の返却を求めています。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「病院選びQ&A」2025年6月2日更新
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/anatani_shitte_hoshiikoto/choose_hospital_qa.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「病院選びを考えるときに」2025年6月2日更新
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/anatani_shitte_hoshiikoto/choose_hospital.html - 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「紹介状」2024年7月2日更新
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/shokaijo.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「セカンドオピニオン」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html - 厚生労働省「令和8年度 医科診療報酬点数表」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001662535.pdf - 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf - 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html - 国立がん研究センター東病院「診療記録の開示」2023年9月1日更新
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/d001/consultation/Medical_record/index.html - 国立がん研究センター中央病院「病理相談」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/d001/secondopinion/byorisodan.html - 徳島県立中央病院「病理標本・病理検体の院外貸し出し申請書」
https://tph.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/949957.pdf - 医療情報標準化協議会「連携用医用情報(PDI)およびその運用指針」2022年3月
https://square.umin.ac.jp/helics/files/HSxxx/HELICSReport_PDI.pdf - 全国健康保険協会「高額療養費」(2026年10月閲覧)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/




