遺伝性がんに漢方薬や生薬は?

ご本人またはご家族が遺伝性がんなんですね。治療は進歩しました。

代表的な遺伝性がんは遺伝性乳がん卵巣がん、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、多発性内分泌腫瘍症1型・2型、遺伝性網膜芽細胞腫、リー・フラウメニ症候群などです。以下本稿では遺伝子はイタリックで記載します。

私が医師になった当時、約40年前は、がんが遺伝するとはなんとなく知っていても、まさかそんな遺伝子が発見されるとは思っていませんでした。

1991年にそもそも外科医であった中村祐輔先生が家族性大腸腺腫症(FAP)の原因遺伝子としてAPC遺伝子の単離・同定に世界で初めて成功した論文を見て、本当にびっくりしたことを思い出します。外科医出身の人がサイエンスをやっていることが本当に羨ましく思えました。中村祐輔先生を見て、僕もサイエンスをやりたくなったのです。そして1993年に移植免疫学の勉強をゼロからやるためにオックスフォード大学大学院に留学しました。そして5年間をイギリスで過ごしました。

1911年にニワトリのがん細胞をすりつぶした液(濾過液)を正常なニワトリに注射することで肉腫(がん)ができることがわかりました。この濾過液の中に病原体が存在すると推測され、その病原体は後にラウス肉腫ウイルスと名付けられました。このウイルスをニワトリの培養細胞に感染させるとがん細胞に変化することが確認され、この発がんウイルスの発見は1966年のノーベル賞に輝きました。このラウス肉腫ウイルスが発がんを引き起こす遺伝子は4個の核酸であることも証明されました。そしてその遺伝子は1976年にSrcと名付けられました。そしてこの遺伝子がニワトリに限らず哺乳類でも確認されました。その後、がん化に関わるいろいろながん遺伝子が発見されます。

全遺伝子の核酸配列を解読する「ヒト遺伝子計画」の時には、1人分の全遺伝子を読み取るのに約13年を要しました。しかし、次世代シークエンサーなどが開発され、遺伝子の読み取り速度は飛躍的に向上し、現在では1日以内に解析が可能になり、また費用も数十万円以内で人ひとりの全遺伝子解析が可能になりました。

そして親から子に受け継がれるいくつかの遺伝子の異常が保険適用で検査できる時代になりました。遺伝子異常があらかじめわかれば対処することもできます。

がん遺伝子を保有している時に発がんする割合も、年齢も実は幅があります。その理由のひとつは免疫力が発がん遺伝子によってがん化された細胞を退治しているからです。現在の医療ではがん遺伝子をすべての体を構成する細胞から除去することはできません。またそのがん遺伝子を無力化するように、全細胞に細工をすることもできません。しかし、免疫力をアップして、発がんの機会を減らしたり、発がんの時期を延ばすことは可能です。

遺伝子を扱う技術も進歩し、また免疫システムの解析も進んでいます。いろいろな治療方法が開発され、そして保険適用されて、遺伝性がんは不治の病から、長生きできる可能性があるがんになりました。

遺伝性乳がん卵巣がん (BRCA1, BRCA2)

遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer, HBOC)は、アンジェリーナ・ジョリーさんがこの遺伝子を保有しており、がんが発症する前に、リスク低減のために両側の乳房切除と、卵巣切除を行ったことで、多くの人が知る病気になりました。

2020年4月から以下の条件でBRCA遺伝子の検査が保険適用になりました。

1. 45才以下の乳がん。
2. 60才以下のトリプルネガテイブ乳がん。
3. 2個以上の原発性乳がん(同時性、異時性は問わない)。
4. 第3度の近親者内に乳がんまたは卵巣がんの家族歴を有する。
5. 男性乳がん。
6. 卵巣がん、卵管がん、腹膜がんの患者さん
7. 乳がん、膵臓がん、前立腺がんで、PARP阻害薬オラパリブに対するコンパニオン診断の適格基準を満たす場合

しかし、本人が発症していない時は自費診療になります。

BRCA1またはBRCA2の遺伝子異常があると、乳がん、卵巣がんの発症リスクが高くなります。BRCA1またはBRCA2の遺伝子はがん抑制遺伝子ですから、異常があると抑制が効かなくなり発がんしやすくなります。BRCA2に遺伝子の変化がある場合には、乳がんや卵巣がんに加え、膵臓がん、前立腺がん、男性乳がん、悪性黒色腫などのリスクが高くなります。

乳がんを発症している患者さんが対側の乳房や両側の卵巣を摘出する手術は保険収載されました。また、卵巣がんを発症している患者さんが両側の乳房切除を行う場合も保険適用されます。しかし、アンジェリーナ・ジョリーさんのように発症前の手術は自費診療になります。

リンチ症候群 (MLH1, MSH2, MSH6, PMS2)

リンチ症候群は、大腸がん、子宮体がんの発症リスクが高くなる遺伝性腫瘍です。以前は、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(hereditary non-polyposis colorectal cancer, HNPCC)と呼ばれていました。
原因遺伝子は、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2という4種類のがん抑制遺伝子です。いずれかの遺伝子に異常がある場合にリンチ症候群と診断されます。大腸がん、子宮体がん以外では、卵巣がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、小腸がん、胃がんなどの発症リスクが高くなることが知られています。

リンチ症候群の人ががんを発症したときにはがん組織の遺伝子を調べるマイクロサテライト不安定性(MSI)検査は保険適用です。

家族性大腸腺腫症(APC)

家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis, FAP)は、大腸に100から1000個以上の多数のポリープ(腺腫)ができる遺伝性腫瘍です。10代から大腸にポリープができはじめ、年齢とともにポリープ数が増え、その後がん化します。原因遺伝子のAPCはがん抑制遺伝子です。40歳までに約50%、60歳までにほぼ100%がん化するので、早い時期での大腸全摘手術が勧められます。大腸を残すと残存大腸ががん化するのですべての大腸切除が必要です。

僕が慶應義塾大学の派遣病院である栃木県の病院で働いている時に、家族性大腸腺腫症の患者さんを担当しました。40歳前後のご婦人で、無限とも思えるポリープ群の中に大きな大腸がんが複数見つかり、そして腸閉塞となり発症から短時間で亡くなりました。その病院で病理解剖が行われ、その患者さんの病理解剖を僕が行ったのが先日のようです。そして娘さんと息子さんには家族性大腸腺腫症であることをお話して、大腸全摘術を行いました。

多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)・2型(RET)

多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1, MEN1)は、副甲状腺、下垂体、膵臓など複数の内分泌臓器(ホルモンを作る臓器)に良性や悪性の腫瘍ができる病気です。原因遺伝子はMEN1というがん抑制遺伝子です。2020年度よりMEN1の遺伝子検査が保険適用になりました。

多発性内分泌腫瘍症2型(multiple endocrine neoplasia type 2, MEN2)は、甲状腺髄様がん、副甲状腺過形成、褐色細胞腫などを生じる遺伝性腫瘍です。原因遺伝子はRETというがん抑制遺伝子です。RETの遺伝子検査は2016年度から保険適用になりました。

大学で教鞭を取っていた頃は、血管外科の他、消化器外科、そして内分泌外科の手術にも参加していました。副甲状腺腫ではいつも多発性内分泌腫瘍症1型を疑い、甲状腺髄様がんではいつも多発性内分泌腫瘍症2型を疑っていました。

遺伝性網膜芽細胞腫 (RB1)

網膜芽細胞腫は、子どもの網膜にできる悪性腫瘍(がん)です。約1/3が両眼性で、約2/3が片眼性です。両眼性の場合は全て、片眼性の場合は約1割が遺伝性といわれています。原因遺伝子はRB1というがん抑制遺伝子です。2016年度よりRB1の遺伝子検査が保険適用になりました。

リー・フラウメニ症候群 (TP53)

リー・フラウメニ症候群は、肉腫、副腎皮質腫瘍、脳腫瘍、白血病、閉経前乳がんなどを発症しやすいことが特徴の遺伝性腫瘍です。原因遺伝子はTP53というがん抑制遺伝子です。

その他

カウデン症候群は、皮膚・粘膜、消化管、乳腺、甲状腺、中枢神経、泌尿生殖器などに良性の過誤腫性病変が多発する常染色体優性遺伝性疾患で原因遺伝子はPTENです。遺伝性びまん型胃がんの原因遺伝子はCDH1です。

遺伝性がんは今でも難治のものがある

遺伝性がんにはいろいろな種類があります。カウデン症候群のようにほぼ良性のものから、家族性大腸腺腫症のように早晩ほぼ全員ががん化するものまで様々です。

がん化する時期とがん化する割合、そしてリスク低減手術後のデメリットなどを考慮して、そして自分の人生観を大切にして治療を選択してください。

いろいろな治療を組み合わせましょう

リスク低減手術が可能で、自分の人生観で受け入れられるなら、手術でリスクを取り除く努力をしましょう。

手術を慌てて決める必要はありません。十分に熟慮して決めて下さい。そして、免疫力を上げる努力を積み重ねましょう。発がん頻度や発がん時期に幅があるのは、免疫力が発がんを抑えている証拠です。免疫力を上げると発がん時期を後ろに移動させることができます。天命を全うするまで延ばせれば、そんな選択肢もOKです。

明らかな抗がんエビデンスがないことでも良さそうで、経済毒性(過度な費用負担)がないことは積み上げましょう。①散歩(適度な運動)、②日光浴、③バランスのよい食事(タンパク質を多く)、④適度な睡眠、⑤安心と希望(ストレスを減らす)などなどです。明らかな抗がんエビデンスとは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験です。ランダム化とはクジ引きのことで、1000例規模の大規模臨床試験を勝ち抜くと明らかな抗がんエビデンスがあるとされ、通常は保険収載されます。明らかな抗がんエビデンスがなくても経済毒性を含めた副作用がないものは加えましょう。

そして多成分系の薬剤である漢方薬や生薬が嫌いでなければ、生薬フアイアを是非とも治療に加えてください。

なんと生薬フアイアは明らかな抗がんエビデンスがあります。

生薬フアイアはなんと、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いています。約1000例の肝臓がん手術後の患者さんをクジ引きでフアイアの内服群と内服しない群に分けて、生存率で内服群は非内服群を96週後に約14%も上まわりました。この結果は超一流英文誌「GUT」に掲載されました。

肝臓がんの結果ですが、遺伝性がんにも有効だと推論が可能です。そして実際に新見正則医院でも幾人かの遺伝性がん患者さんが生薬フアイアを治療に加えて健在です。

どんな治療にも併用可能です。

フアイアは生薬ですから漢方薬と同じく多成分系の薬剤です。残念ながら、フアイア以外の生薬や漢方薬には明らかな抗がんエビデンスを有するものはありません。そして単一成分由来の西洋薬とは異なり、フアイアにはいろいろと不思議なことが起こります。フアイアはオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同じように免疫力をアップさせますが、オプジーボなどとは異なり免疫が上がりすぎて起こる副作用を生じません。その理由は多成分系の解析技術が未だに発展途上である現在、まだまだ解明されていません。ただただ、生薬フアイアを他の治療に加えると、または単独で使用しても、有効性を体感できることが多いという事実が多数存在します。そんな多成分系で、かつ明らかな抗がんエビデンスがあるフアイアを是非とも治療の選択肢に加えてください。

新見正則医院にご連絡ください。

フアイアは1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜きましたが、保険収載されていません。少々経済毒性があります。しかし経済毒性以外の副作用はなく(まれに起こる下痢のみ)、またどの治療とも併用可能なため、機会損失(他の治療が行えない)もありません。

フアイアのお試し希望の方は以下を参考にして下さい。1ヶ月分30包が3万3000円(税込、送料無料)です。電話対応の場合は、初診料は不要です。

内部リンク(当サイト内でご参考になる記事)


がんの例え話「雑草と土壌」
がんの例え話「雑草と土壌」2
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生薬フアイア概説
まずフアイアを試したいときには

執筆者略歴 新見正則

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。

新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通(新興医学出版社)
新見正則オフィシャルサイトはこちら

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