新見正則医院はがんの漢方治療専門クリニックです。患者さんの9割近くががんの患者さんです。難症の患者さんの最後の砦にもなっていますが、コロナ後遺症が落ち着いた現在では、難症の患者さんは約1割です。難症は①西洋医学的治療でなおらない症状や病気、②漢方医学的治療では治らない症状や病気、③保険診療では治らない症状や病気です。がんが西洋医学的治療では完璧に治療できない現在、がんも実は難症に含まれます。
漢方は処方の根拠を過去に、伝統に求めます。しかし、漢方薬ではがんと梅毒と脚気は治せませんでした。華岡青洲は江戸時代の漢方の名医ですが、漢方薬で乳がんを治すことができないので、1804年にチョウセンアサガオを含む漢方薬を用いて世界初の全身麻酔を行いました。漢方の過去にがん治療の根拠を求めても解決しないのです。また、杉田玄白は1000人の患者のうち、7から8割は梅毒であったと記載しています。梅毒が漢方で治ればこんなことにはなりません。梅毒は世界初の抗生物質であるペニシンが今でも特効薬です。そして脚気は江戸患いと称され、明治になってもたくさんの死者を出しました。日露戦争の兵士の死亡原因は戦死よりも脚気が多かったと言われています。脚気は現代医学的にはビタミンB1の投与で治ります。そして玄米を食すれば自然と治ります。江戸時代の漢方医も過去の呪縛に囚われていたので、生薬玄米の治療効果にまったく気がつきませんでした。
漢方薬は生薬の足し算で、多成分系の薬剤で、そして複雑系です。20世紀にはその解析技術が開発されていませんでした。第一の生命鎖と呼ばれるのはDNAで、4種類の核酸の連続です。3つの核酸がひとつのアミノ酸をコード(命令)しています。アミノ酸の連続がタンパク質です。これを第二の生命鎖と称します。第三の生命鎖は糖鎖で、これが漢方薬や免疫などの複雑系のヒントになる可能性があります。糖の連続ですが、第一の生命鎖であるDNAと第二の生命鎖であるタンパク質との違いは、DNAとタンパク質は直線の鎖ですが、糖鎖は途中で枝分かれをして分枝する鎖なのです。分枝するからこそ解析が難しく、また合成は困難です。
そんな多成分系で複雑系の漢方薬には未来があります。西洋薬は単一成分で、そしてわかりやすいストーリーです。漢方薬の複雑系システムに未来があるのです。漢方の過去をいくら勉強しても、極めても、伝統に則してもがんは漢方では治せません。西洋医学的治療の副作用に対する補完的治療の役割と、気力・体力・食欲を増す程度の仕事しかできません。過去の漢方薬にがん本体の治療効果を望むことは残念ながら不可能です。
将来を見据えた漢方治療が必要です。私は、漢方の過去の呪縛に囚われない漢方薬の処方選択の方法をモダン・カンポウと称して、その啓発普及にこの十数年間励んできました。漢方診療や漢方理論、古典の読破などは不要という立ち位置です。そしてフローチャート漢方薬シリーズとして20冊近くを上梓してきました。多くの西洋医師がこのフローチャート漢方薬シリーズを実臨床で使って、多くの患者さんの治療が可能になり、そして患者さんの症状や訴えに対応可能になりました。
過去に囚われない漢方薬の使用はモダン・カンポウとして西洋医に相当浸透しました。いよいよ次のステップです。今までの漢方薬ではまったく太刀打ちできなかったがん本体への漢方治療です。そんな副作用がなく明らかな生存率を上げる生薬を探してきました。
そして以前から私が実臨床で使っている生薬フアイアに相当の抗がん作用の可能性があると感じていました。実際に生薬フアイアは1992年には中国では抗がん新薬として認められています。しかし、西洋薬剤に必須とされるランダム化された大規模臨床試験がフアイアにはなかったので胸を張って啓蒙普及することは避けていました。ところが2018年に肝臓がん手術後の患者さん約1000人を集めたランダム化された大規模臨床試験を、生薬フアイアはエンドポイントを生存率として勝ち抜きました。
そこで、日本フアイア研究会を立ち上げ、またその後多くのがん患者さんを救いたく自費診療の新見正則医院を飯田橋で開業しました。過去の呪縛に囚われない新しい漢方薬の登場です。現在、仲間を募集中です。過去に囚われずに未来を見据えて、西洋医学的がん治療との両輪となれるような漢方医学的、多成分系薬剤の開発です。生薬フアイアの有効成分のひとつは糖鎖のTPG1であることを示す論文が出ています。
生薬フアイアは、免疫力をあげる免疫チェックポイント阻害剤と同じイメージです。殺細胞性抗がん剤や分子標的薬のようにがん本体に直接作用するのではなく、体の免疫力を上げてがんを退治するイメージです。免疫チェックポイント阻害剤と異なることは、免疫チェックポイント阻害剤には免疫が亢進しすぎて生じる自己免疫疾患類似の副作用が生じ、時には命に関わります。ところが多成分系薬剤であるフアイアは免疫を中庸(低下してればアップ、亢進していればダウン)にする作用があります。ですからほとんどの場合に安心して他の薬剤と併用可能なのです。
新見正則医院では世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアに漢方薬を加えた治療を行っています。そして生薬フアイアと同じような、またはそれ以上に抗がん作用のある生薬を探索中です。多成分系に注目していますので、生薬+西洋薬という組合せも探究しています。21世紀は多成分系薬剤、そして複雑系のシステムが医療に貢献する時代と思っています。そんな時代の一翼を担えるようながんの漢方治療専門クリニックが新見正則医院です。
●内部リンク(当サイト内でご参考になる記事)
世界初の抗がんエビデンスを取得したフアイアは漢方薬なのか
フアイア概説
がんの例え話「雑草と土壌」
がんの例え話「雑草と土壌」2
がんの例え話「雑草と土壌」3
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執筆者略歴 新見正則
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得 (Doctor of Philosophy)。外科医 x サイエンティスト x 漢方医としてレアな存在で活躍中。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授 (外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞 (脳と免疫)。現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。漢方JP主宰者。
新見正則の生き方論は以下の書籍も参考にしてください。
しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通(新興医学出版社)
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