再発後の治療は、目標が「治す」から「進行を抑える」に変わることが多い一方、再発の場所と数によっては根治をめざせます。
再発とは、治療がうまくいったように見えても、目に見えない小さながんが残っていて、再び現れることです。最初とは別の場所に同じがんが出てくることも、再発に含まれます(国立がん研究センター 冊子「もしも、がんが再発したら」2012年)。
この記事では、再発がわかったあとに何が変わり、次の治療をどう決めていくかを順に整理します。再発を見つけるための術後の通院と検査は、がんの経過観察は何年かの記事で扱っています。
この記事の内容
がんの再発には、どんな種類がありますか?
最初と同じ場所の局所再発、近くのリンパ節などの領域再発、離れた臓器の遠隔再発の3つに分けられます。
国立がん研究センターの冊子は、再発を現れる場所で3つに分けています(「もしも、がんが再発したら」2012年)。どこに出たかで、次に選べる治療が変わります。
| 種類 | 現れる場所 |
| 局所再発 | 最初のがんと同じ場所、またはごく近く |
| 領域再発 | 最初のがんの近くのリンパ節や組織 |
| 遠隔(全身)再発 | 最初のがんから離れた臓器や組織。転移と同じ状態 |
出典:国立がん研究センター がん対策情報センター編「もしも、がんが再発したら」(2012年)をもとに作成
「転移」と「浸潤」「播種」の言葉の区別は、転移と浸潤の違いの記事で説明しています。
再発すると、最初の治療と何が変わりますか?
いちばん大きく変わるのは治療の目標です。多くの場合、進行を抑えることと、症状を和らげることが目標になります。
冊子は、再発や転移したがんでも根治をめざせる場合があるとしています。そのうえで、ほとんどの場合は根治が難しいと書いています。その場合は「がんの進行を抑える」ことと「がんによる症状を和らげる」ことが治療の目標になります(「もしも、がんが再発したら」)。
| 項目 | 最初の治療 | 再発後の治療 |
| 治療の目標 | 多くは根治をめざす | 根治をめざせる場合もあるが、多くは進行を抑えることと症状を和らげること |
| 局所再発のとき | — | 手術など、根治をめざす治療を検討できることがある |
| 遠隔再発のとき | — | 全身に届く薬物療法が中心になる |
| 治療の選び方 | 標準治療を基本に決める | 標準治療を基本に、がんの状態、体の状態、本人の希望を合わせて医師と決める |
出典:国立がん研究センター がん対策情報センター編「もしも、がんが再発したら」(2012年)をもとに作成
治療の目標が変わると、同じ薬物療法でも続け方が変わります。効果と副作用を見ながら、薬を替えたり休んだりして長く付き合う形になります。
緩和ケアは、病状や時期にかかわらず受けられると冊子は説明しています。受け始める時期の目安は、緩和ケアはいつから受けられるかの記事にまとめています。
再発しても、根治をめざせるのはどんなときですか?
再発が局所にとどまり切除できるときや、転移が少数(オリゴ転移)のときに、根治をめざす治療が検討されます。
局所再発では、手術で根治をめざせることがあります(「もしも、がんが再発したら」)。遠隔再発でも、転移が数個にとどまる状態をオリゴ転移と呼び、転移を手術や放射線で治療する考え方があります。
国際的なSABR-COMET試験は、原発のがんが抑えられていて、転移が1〜5個の99人を対象にしました。標準的な緩和目的の治療だけの群と、すべての転移に定位放射線治療を加えた群を、1対2の割合で比べています(Palma DA, et al. J Clin Oncol 2020)。
5年全生存率は、標準治療の群で17.7%、定位放射線治療を加えた群で42.3%でした。一方、定位放射線治療を加えた群では、治療に関連した死亡が3人(4.5%)ありました。
乳がんに限った米国・カナダのNRG-BR002試験では、結果が分かれました。47施設で、転移が4個以下の125人を対象に、薬物療法だけの群と、すべての転移に定位放射線か手術を加えた群を比べています。無増悪生存期間の中央値は、薬物療法だけの群で23.0か月、治療を加えた群で19.5か月でした。追跡を延ばした解析でも23.0か月と29.5か月で、全生存期間とあわせて統計的な差は出ませんでした(Chmura SJ, et al. J Clin Oncol 2026)。
少数の転移を治療する効果は、まだ固まっていない
SABR-COMETは99人の第Ⅱ相試験で、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんなど、がんの種類が混ざっています。どのがんで、転移がいくつまでなら効果があるのかは、この人数からは分けて言えません。乳がんだけを対象にした試験では、転移への治療を加えても生存期間は延びませんでした(Chmura SJ, et al. J Clin Oncol 2026)。オリゴ転移への治療が向くかどうかは、がんの種類と転移の場所によって違います。
大腸がんの肝転移・肺転移を切除するかどうかの考え方は、大腸がんステージ4の余命と治療の記事で扱っています。
次の治療は、どうやって決めますか?
画像検査で再発の場所と広がりを確かめ、必要に応じて再発した部分の組織や遺伝子を調べ直して決めます。
冊子は、画像検査や腫瘍マーカーの結果を見ながら次の検査を決めていく流れを説明しています。あわせて、決めるまでにどれくらい時間があるかを医師に確かめ、急がないことを勧めています(「もしも、がんが再発したら」)。
再発した部分の組織を、もう一度調べる理由
再発したがんは、最初のがんと性質が変わっていることがあります。乳がんでは、39の研究をまとめた解析があります。最初のがんでエストロゲン受容体が陽性だった人のうち、22.5%が遠隔転移では陰性になっていました(Schrijver WAME, et al. J Natl Cancer Inst 2018)。
同じ解析で、HER2が陽性から陰性に変わった割合は21.3%、陰性から陽性に変わった割合は9.5%でした。受容体やHER2は使える薬を決める目印です。変わっていれば、選ぶ薬も変わります。
乳がんの再発の時期や場所、見つかり方は、乳がんの再発の記事にまとめています。
遺伝子パネル検査の対象になるか
国立がん研究センター東病院は、保険で受けるがん遺伝子パネル検査の対象を説明しています。標準治療がない、または局所進行や転移があり標準治療が終了した(終了が見込まれる)固形がんの人です(国立がん研究センター東病院 遺伝子診療部門 よくある質問 2025年5月21日更新)。
同じページは、結果にもとづく治療を実際に受けた人は全体の1割程度としています。検査の流れと、薬が見つからない理由は、がんゲノム医療の遺伝子パネル検査の記事で説明しています。
再発と言われたら、医師に何を聞いておけばよいですか?
再発の場所と広がり、治療の目標、選べる治療とその効果・副作用、決めるまでの時間を確かめます。
再発を告げられた直後は、説明を一度で覚えきれないことがあります。次の項目をメモにして持っていくと、聞き漏らしを減らせます。
- 再発は局所・領域・遠隔のどれで、どこに、いくつあるか
- 治療の目標は根治か、進行を抑えることか
- 選べる治療と、それぞれの効果・副作用・通院の頻度
- 再発した部分の生検や、遺伝子の検査は必要か
- 参加できる臨床試験はあるか
- 保険が使えるか、費用はどのくらいか
- 決めるまでに、どれくらい時間があるか
国立がん研究センターの「がんになったら手にとるガイド」(2025年12月発刊)には、別冊「わたしの療養手帳」がついています。医療者やがん相談支援センターへの質問リストを書き込めます(がん情報サービス 2025年12月12日掲載)。
再発したら、セカンドオピニオンを受けたほうがよいですか?
受けるかどうかは本人が決めます。治療の目標が変わる再発後は、別の医師の意見を聞く人が少なくありません。
冊子は、セカンドオピニオンを受けることは医療関係者の常識になっていると書いています。今の主治医のもとで治療を続けながら、別の医師の意見を聞く仕組みで、病院を移ることが前提ではありません(「もしも、がんが再発したら」)。
紹介状と検査結果を持っていくと、意見を聞ける範囲が広がります。紹介状なしで受けられるかと、主治医への切り出し方は、セカンドオピニオンは紹介状なしで受けられるかの記事で扱っています。
再発したがんで、臨床試験に参加できますか?
がんの種類や病状、これまでの治療などの条件が合えば参加できます。
臨床試験は、新しい治療法や診断法を評価するための方法です。効果がまだ確かめられていない治療を試すもので、費用の一部に保険が使えないこともあります(「もしも、がんが再発したら」)。
試験の探し方、参加の条件、費用の扱いは、がんの治験に参加するにはの記事にまとめています。
再発がわかったときの気持ちは、どうなりますか?
衝撃、不安、悲しみ、怒り、自分を責める気持ちは、多くの人に起こります。つらさが続くときは専門家に相談できます。
冊子は「がんの再発は、計り知れない衝撃です」と書き出しています。続く章で、消えない不安、悲しみ、怒り、自分を責める気持ち、孤独感を、再発を経験した人に起こることとして取り上げています(「もしも、がんが再発したら」)。
最初の診断のときと違い、再発では「あれだけ治療したのに」という思いが加わります。冊子は、自分を責める必要はないこと、日常の中の楽しみや、これまでに得たものに目を向けることにも章を割いています。
国立がん研究センターは、再発・転移を含めてどの状況でも心のケアが必要としています。気持ちのつらさは、主治医や看護師、ソーシャルワーカーにまず相談できます。精神腫瘍科や心療内科などの医師、心理士による心のケアも役に立つとされています(がん情報サービス「がんと上手につき合うための工夫」2023年4月5日更新)。
眠れない、食べられないといった状態が続くときの受診の目安は、がんと告知されたショックと心のケアの記事で説明しています。
保険診療以外の選択肢はありますか?
保険診療と組み合わせて受ける患者申出療養などの制度と、全額が自己負担になる自由診療があります。
患者申出療養は、国内で承認されていない薬などを、保険診療と組み合わせて使えるようにする制度です。2016年4月に始まり、患者からの申出を起点に、臨床研究中核病院が作成する書類を添えて国に申し出ます(厚生労働省 保険外併用療養費制度の資料 2016年)。
自由診療は、治療費の全額が自己負担になります。費用だけでなく、その治療がどんな人を対象に、何人規模の試験で、何を比べて確かめられたかを確認することが判断の材料になります。考え方はがんの補完代替療法の判断のしかたの記事で整理しています。
当院で実施するトラローム療法(高用量フアイア顆粒内服療法)で用いる生薬フアイアは、がんの根治切除を受けた1,044人を対象にした試験で調べられています。
高用量フアイア顆粒は、米国臨床腫瘍学会が定めるエビデンスレベル最高位の大規模ランダム化比較試験で、手術から約2年(96週)後の無再発・生存率を14%アップさせました(62.39%と49.05%)。トラローム療法は、本邦では保険診療の対象外です(Chen Q, et al. Gut 2018)。
17.3%
SABR-COMET試験で、すべての転移に定位放射線治療を加えた群のうち、5年たって再び進行していなかった人の割合です。
全生存率は上がった一方、転移を治療しても多くの人でがんは再び進みました。
出典:Palma DA, et al. J Clin Oncol 2020(転移1〜5個、99人の第Ⅱ相ランダム化試験)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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保険診療の外にある治療を考えるときは、論文と試験の登録情報を自分で確かめる方法を知っておくと判断しやすくなります。
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よくある質問
Qがんが再発したら、もう治らないのですか?
治らないとは限りません。局所再発で切除できる場合などは、根治をめざす治療が検討されます。ただし、国立がん研究センターの冊子は、ほとんどの場合は根治が難しく、進行を抑えることと症状を和らげることが治療の目標になると説明しています。
Q再発したがんの治療は、最初の治療とどう違いますか?
いちばん大きな違いは治療の目標です。遠隔再発では全身に届く薬物療法が中心になり、効果と副作用を見ながら薬を替えたり休んだりして続けます。再発した部分の組織や遺伝子を調べ直して、薬を選び直すこともあります。
Q再発したら、遺伝子パネル検査は保険で受けられますか?
標準治療がない、または局所進行や転移があり標準治療が終了した(終了が見込まれる)固形がんの人が、保険診療の対象とされています。全身状態などから、検査のあとに薬物療法を受けられる可能性が高いと主治医が判断することも条件です。
Q再発したとき、セカンドオピニオンは受けたほうがいいですか?
受けるかどうかは本人が決めます。セカンドオピニオンは、今の主治医のもとで治療を続けながら別の医師の意見を聞く仕組みで、病院を移ることが前提ではありません。紹介状と検査結果を持っていくと、意見を聞ける範囲が広がります。
Qがんの再発がわかって、気持ちが落ち込むのは普通ですか?
多くの人に起こる反応です。国立がん研究センターの冊子は、衝撃、不安、悲しみ、怒り、自分を責める気持ちを、再発を経験した人に起こることとして取り上げています。つらさが続くときは、主治医や看護師、がん相談支援センター、精神腫瘍科などに相談できます。
参考文献
- 国立がん研究センター がん対策情報センター編「もしも、がんが再発したら 本人と家族に伝えたいこと(患者必携)」英治出版、2012年
https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/public/pdf/Saihatsu_all.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「国立がん研究センターのがんになったら手にとるガイド」(2025年12月12日掲載)
https://ganjoho.jp/public/support/saihatsu/chapter1.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと上手につき合うための工夫」(2023年4月5日更新)
https://ganjoho.jp/public/support/mental_care/pdf/mc03.pdf - 国立がん研究センター東病院 遺伝子診療部門「よくある質問」(2025年5月21日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/genetic_medicine_services/050/faq/index.html - 厚生労働省「保険外併用療養費制度について(患者申出療養)」参考資料(2016年9月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/0000137315.pdf - Palma DA, et al. Stereotactic Ablative Radiotherapy for the Comprehensive Treatment of Oligometastatic Cancers: Long-Term Results of the SABR-COMET Phase II Randomized Trial. J Clin Oncol. 2020;38(25):2830-2838. doi:10.1200/JCO.20.00818
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32484754/ - Chmura SJ, et al. NRG-BR002(オリゴ転移の乳がんに対する転移巣治療のランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験). J Clin Oncol. 2026(2026年10月7日オンライン公開). doi:10.1200/JCO-26-00201
https://doi.org/10.1200/JCO-26-00201 - Schrijver WAME, et al. Receptor Conversion in Distant Breast Cancer Metastases: A Systematic Review and Meta-analysis. J Natl Cancer Inst. 2018;110(6):568-580. doi:10.1093/jnci/djx273
https://doi.org/10.1093/jnci/djx273 - Chen Q, et al. Gut. 2018;67(11):2006-2016. doi:10.1136/gutjnl-2018-315983
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29802174/





