神経内分泌腫瘍(NET)は、昔「カルチノイド」と呼ばれた悪性腫瘍で、ゆっくり進むものが多いものの転移もします。
神経内分泌腫瘍は、膵臓や胃腸、肺などにできるまれな腫瘍で、国立がん研究センターは希少がんの一つとしています(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍(NEN)」)。同じ名前でも、できた場所と悪性度で経過も治療も大きく違います。
この記事の内容
神経内分泌腫瘍(NET)とは、どんな腫瘍ですか?
ホルモンなどを分泌する神経内分泌細胞から生じる腫瘍です。多くはほかの悪性腫瘍よりゆっくり進みますが、悪性度には幅があります。
神経内分泌細胞は、ホルモンやペプチドを分泌する細胞で、全身に分布しています。この細胞から生じる腫瘍が神経内分泌腫瘍です(国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌腫瘍」2022年)。
国立がん研究センター東病院は、神経内分泌腫瘍は一般にほかの悪性腫瘍に比べてゆっくり進行し、細胞の分化度や増える力によって悪性度が異なると説明しています(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍」2026年7月14日更新)。
似た略語がいくつも出てくるため、先に整理しておきます。
- NEN(neuroendocrine neoplasm):神経内分泌細胞から生じる腫瘍の総称。日本語では「神経内分泌腫瘍」と呼ばれる
- NET(neuroendocrine tumor):NENのうち、細胞の形が正常に近い(よく分化した)もの。悪性度でG1・G2・G3に分かれる
- NEC(neuroendocrine carcinoma):NENのうち、分化度が低く、増えるのが速いもの。日本語では「神経内分泌がん」
- MiNEN:神経内分泌の成分と、それ以外の成分が混ざった腫瘍
NENの総称とNET・NECの区別は国立がん研究センター中央病院の説明、MiNENは日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)のガイドライン要約によります(Ito T, et al. J Gastroenterol 2021)。この記事では、NENの総称を「神経内分泌腫瘍」と書き、NETとNECを区別するときは略語を添えます。
「カルチノイド」という呼び名は、なぜ使われなくなったのですか?
「がんもどき」を思わせる名前でしたが、遠隔転移する例が多く、誤った印象を与えかねないためです。2000年に世界保健機関(WHO)が、消化管のカルチノイドをNETと呼ぶことにしました。
カルチノイドという名前は、1907年にオーベルンドルファーが付けました。比較的おとなしい性質から付いた名前で、「がんもどき」という意味です(国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌腫瘍」2022年)。
しかし、消化管のカルチノイドには遠隔転移する例が多くあり、名前が誤った印象を与えかねないことから、WHOは2000年に消化管のカルチノイドをNETと呼ぶことにしました(同)。消化管と膵臓では、カルチノイドという言葉は、ホルモンによって皮膚の紅潮や下痢が起こる「カルチノイド症候群」に残っています。
一方、肺と気管支では、今も細胞の形にもとづいて「定型カルチノイド」「非定型カルチノイド(異型カルチノイド)」という名前が使われています。肺の神経内分泌がんには、小細胞がんと大細胞神経内分泌がんがあります(同)。肺の神経内分泌がんの一つである小細胞肺がんは、別の記事で扱っています。
消化管と膵臓の分類は、その後も改訂が続いています。現在使われているWHO分類(2017年・2019年)では、NETがG1・G2・G3の3段階に分けられ、NECとは別に扱われています(国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」2024年10月11日更新)。
NETのG1・G2・G3は、何で分けられるのですか?
顕微鏡で数える核分裂像の数と、増えている細胞の割合を示すKi-67指数で分けます。G1、G2、G3の順に、増える力が強くなります。
Ki-67指数は、細胞が分裂するときに生じるタンパク質Ki-67に陽性を示す細胞の割合です。核分裂像は、顕微鏡の400倍で観察した10視野で見つかった、分裂中の細胞の合計数で評価します(国立がん研究センター東病院「病期(ステージ)」2026年7月14日更新)。Ki-67指数は、陽性の細胞が最も多い場所で500個の腫瘍細胞を数えて出すとされています(Ito T, et al. J Gastroenterol 2021)。
| 分類 | 細胞の形(分化度) | 核分裂像(10視野) | Ki-67指数 |
| NET G1 | よく分化している | 2個未満 | 3%未満 |
| NET G2 | よく分化している | 2〜20個 | 3〜20% |
| NET G3 | よく分化している | 20個を超える | 20%を超える |
| NEC | 分化度が低い | 20個を超える | 20%を超える |
出典:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「病期(ステージ)」(2026年7月14日更新、2019年のWHO分類にもとづく)をもとに作成
グレードは、ステージとは別のものです。ステージは腫瘍の大きさと広がり、リンパ節転移、遠隔転移の組み合わせで決まり、膵臓、胃、小腸、大腸・直腸などの場所ごとに分類が決まっています(国立がん研究センター東病院「病期(ステージ)」)。グレードを決める病理検査の流れは、病理検査の結果は何日で出るかの記事で説明しています。
「良性に近い」と言われるのは、どういう意味ですか?
NETの多くはゆっくり進みますが、良性腫瘍ではありません。2016年の全国がん登録で膵臓・消化管の神経内分泌腫瘍と届け出られた6,735人を調べた研究では、診断の時点で遠隔転移があったのは膵臓の神経内分泌腫瘍で23.2%でした(Masui T, et al. BMC Cancer 2020)。この23.2%には、NECも含まれています。
同じ研究で、十二指腸、虫垂、直腸の神経内分泌腫瘍は70%以上が、診断の時点で最初の場所にとどまっていました。食道の神経内分泌腫瘍は、およそ半数で遠隔転移がありました。どこにできたかで、見つかったときの広がりは大きく違います。
日本神経内分泌腫瘍研究会は、2026年2月に「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン2026年【第3版】」を刊行しました(金原出版 書籍情報 2026年)。この版は、原発巣に加えて転移巣からも組織を採ってグレードを確かめるか、再発したときに肝転移から組織を採り直すかを、臨床上の問いとして取り上げています(金原出版 がん情報シェア 2026年6月3日)。
G1は、その組織を調べた時点の分類
グレードを決めるのは、生検や手術で採った組織の一部です。ガイドライン2026年版は、転移巣からも組織を採るかどうかや、再発時に採り直すかどうかを、問いとして取り上げています。G1という結果は、その組織を調べた時点の分類で、その後の経過までを約束するものではありません。経過観察の間隔や、再発したときに組織を採り直すかどうかは、主治医に確かめておくと見通しが立ちます。
NETと神経内分泌がん(NEC)は、何が違うのですか?
細胞の形と性質が違います。NECは増えるのが速く、早い時期に転移や再発をしやすい、悪性度の高いがんです。
国立がん研究センター希少がんセンターは、NECは名前がNETと似ていても性質が違い、非常にまれながんだと説明しています(希少がんセンター「神経内分泌がん」2024年)。国立がん研究センター東病院も、NETとNECでは遺伝子のパターンや病理の所見が異なるとしています。
| 比べる点 | NET(G1〜G3) | NEC(神経内分泌がん) |
| 細胞の形 | 正常に近い(よく分化している) | 分化度が低い(正常の細胞の形から離れている) |
| Ki-67指数 | G1は3%未満、G3は20%を超える | 20%を超える。多くは50%を超える |
| ホルモンによる症状 | G1・G2ではしばしばみられる | まれ |
| ソマトスタチン受容体 | 検査で確かめ、薬の選択に使う | 発現していないことが多い |
| 主な薬物療法 | ソマトスタチンアナログ、分子標的薬、PRRTなど | プラチナ製剤を使う抗がん剤の組み合わせ |
出典:国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」(2024年)、国立がん研究センター東病院「神経内分泌腫瘍」「検査・診断」(2026年)、Ito T, et al. J Gastroenterol 2021
NET G3とNECは、どちらもKi-67指数が20%を超えます。この2つを分けるのは、顕微鏡で見た細胞の形(分化度)です。国立がん研究センター希少がんセンターは、NECとNET G1・G2・G3の区別は治療方針を大きく左右するとしています。ガイドライン2026年版も、NET G3とNECの鑑別のポイントを、病理の項目の背景疑問(BQ)として取り上げています(金原出版 がん情報シェア 2026年)。
神経内分泌腫瘍は、体のどこにできますか?
日本の膵臓・消化管の神経内分泌腫瘍では、直腸が最も多く、膵臓、胃、十二指腸と続きます。肺や気管支にもできます。
2016年の全国がん登録で届け出られた膵臓・消化管の神経内分泌腫瘍は6,735人で、1985年の日本の人口で年齢を調整した罹患率は、人口10万人あたり3.53人でした。内訳は、膵臓が0.70人、消化管が2.84人です(Masui T, et al. BMC Cancer 2020)。
| できた場所 | 人数(2016年) | 特徴 |
| 直腸 | 3,173人 | 90%以上がよく分化したNET。70%以上が診断時に最初の場所にとどまる |
| 膵臓 | 1,336人 | 20.4%がNEC(混合型を含む)。23.2%が診断時に遠隔転移あり |
| 胃 | 1,042人 | およそ半数がNEC |
| 十二指腸 | 442人 | 90%以上がよく分化したNET |
| 結腸 | 278人 | およそ半数がNEC |
| 食道 | 262人 | ほとんどがNEC。およそ半数が診断時に遠隔転移あり |
| 虫垂 | 105人 | 90%以上がよく分化したNET |
| 空腸・回腸(小腸) | 97人 | 回腸では90%以上がよく分化したNET |
出典:Masui T, et al. BMC Cancer 2020(2016年の全国がん登録、膵臓・消化管の神経内分泌腫瘍6,735人)
国立がん研究センター希少がんセンターは、神経内分泌腫瘍全体では消化管が約60%、肺・気管支が約30%を占めるとしています(希少がんセンター「神経内分泌腫瘍」2022年)。国立がん研究センター東病院は、できやすい場所には民族の間で差がみられるとしています(東病院「病気の原因」2026年)。
多くは原因がわかっていませんが、一部は遺伝する病気に伴って起こります。東病院は、副甲状腺や下垂体などにも腫瘍ができやすい多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)と、脳や脊髄、網膜、副腎、腎臓などにも腫瘍ができやすいフォン・ヒッペル・リンドウ病を挙げています(同)。遺伝するがん全般の考え方は、がんは遺伝するかの記事で整理しています。
できる場所の幅が広く、数の少ないがんであることは、骨や筋肉から生じる肉腫と共通しています。
神経内分泌腫瘍では、どんな症状が出ますか?
ホルモンによる症状が出る「機能性」と、出ない「非機能性」に分かれます。非機能性では特徴的な症状が少なく、腹痛やおなかの張りが多くみられます。
神経内分泌腫瘍は、ときにさまざまなホルモンをつくります。その症状があるかどうかで、機能性NETと非機能性NETに分けられます(国立がん研究センター東病院「症状」2026年7月14日更新)。
| 種類 | つくるホルモンなど | 主な症状 |
| カルチノイド症候群 | セロトニンなど | 皮膚の紅潮、下痢、むくみ、喘息、心不全など |
| インスリノーマ | インスリン | 冷や汗、動悸、意識障害などの低血糖症状 |
| ガストリノーマ | ガストリン | 胃・十二指腸潰瘍、慢性の下痢、腹痛、胸焼け、体重減少など |
| グルカゴノーマ | グルカゴン | 壊死性遊走性紅斑と呼ばれる発疹、体重減少、高血糖など |
| ソマトスタチノーマ | ソマトスタチン | 腹痛、体重減少、高血糖、胆石症、脂肪便、下痢など |
| VIPオーマ | VIP | 下痢、低カリウム血症(脱力や不整脈など)、胃酸分泌の低下など |
出典:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「症状」(2026年7月14日更新)、同中央病院「神経内分泌腫瘍(NEN)」
国立がん研究センター中央病院は、カルチノイド症候群は主に小腸のNETで起こるとしています。非機能性の腫瘍はホルモンの症状がないため、ほかの目的の検査で偶然見つかることが多いとされます。腫瘍が大きくなると、腹痛、おなかの張り、しこり、黄疸、食欲不振、体重減少、吐血や下血が出ることがあります(中央病院「神経内分泌腫瘍(NEN)」)。
神経内分泌腫瘍は、どんな検査で診断しますか?
造影CTやMRI、内視鏡などで場所と広がりを調べ、採った組織の病理検査で、NETかNECか、グレードはいくつかを決めます。
- 血液・尿の検査:クロモグラニンAや、セロトニン、ガストリン、インスリンなどのホルモンを測る
- 造影CT・造影MRI:腫瘍の場所、大きさ、広がり、転移を調べる。治療の効果を見るときにも使う
- 内視鏡・超音波内視鏡(EUS):消化管や膵臓の腫瘍を観察する。膵臓では、針で組織を採ることもある(EUS-FNA)
- ソマトスタチン受容体を写す核医学検査:受容体があるかを調べ、ソマトスタチンアナログやPRRTを使えるかの判断に役立てる
- 病理検査:分化度、核分裂像、Ki-67指数を調べ、NETかNECかとグレードを決める
出典は国立がん研究センター中央病院「神経内分泌腫瘍(NEN)」、同東病院「検査・診断」(2026年7月14日更新)、同希少がんセンター「神経内分泌がん」です。
ソマトスタチン受容体を写す検査には、ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(オクトレオスキャン)があります。日本では2015年に、神経内分泌腫瘍の診断で保険適用になりました(Ito T, et al. J Gastroenterol 2021)。国立がん研究センター中央病院は、受容体を写すPET/CT(Ga-DOTATOC PET/CT)も挙げています。
NECでは、ソマトスタチン受容体を発現していないことが多いため、ソマトスタチン受容体シンチグラフィは勧められていません(国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」2024年)。
神経内分泌腫瘍の治療は、どう決まりますか?
NETは、切除できるなら手術が基本です。切除が難しいときは、ソマトスタチンアナログ、分子標的薬、PRRTなどを使います。NECは抗がん剤が中心です。
転移がない場合や、転移があっても数が限られる場合など、完全に切除できると考えられるときは手術が行われます(国立がん研究センター東病院「NETに対する治療」2026年7月14日更新)。肝転移には、ラジオ波焼灼療法や肝動脈塞栓療法も使われます。
小さな腫瘍では、すぐに切除しない選択肢もあります。JNETSのガイドライン第2版の要約は、偶然見つかった症状のない10mm未満の膵臓のNETで、画像で転移や浸潤がない場合、説明と同意のうえで6〜12か月ごとに経過を見ることも選択肢になりうるとしています(Ito T, et al. J Gastroenterol 2021)。2026年版は、20mm以下で局所にとどまる非機能性の膵臓のNETに経過観察を行うことが推奨されるかを、臨床上の問い(CQ)として取り上げています(金原出版 がん情報シェア 2026年)。
| 薬 | どんな薬か | 主な対象 |
| ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド、ランレオチド) | ホルモンを抑える薬。4週に1度の皮下注射または筋肉注射。NETの治療の基本とされる | 機能性NETの症状、膵臓・消化管のNET |
| エベロリムス | mTORという分子を標的とする分子標的薬 | 膵臓・消化管・肺のよく分化したNET |
| スニチニブ | VEGFを標的とする分子標的薬 | 膵臓のNET |
| ストレプトゾシン | 細胞障害性抗がん薬。5-FUと組み合わせることが多い | 膵臓・消化管のNET |
| PRRT(ルテチウムオキソドトレオチド、商品名ルタテラ) | ソマトスタチン受容体に結びつく薬に、放射線を出すルテチウム177を付けた点滴 | ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍 |
出典:国立がん研究センター東病院「NETに対する治療」(2026年)、同中央病院「神経内分泌腫瘍(NEN)」、Ito T, et al. J Gastroenterol 2021、PMDA ルタテラ静注 添付文書(2026年10月改訂)
東病院は、エベロリムスにソマトスタチンアナログ(ランレオチド)を組み合わせると上乗せの効果が得られることが示されているとし、細胞の増殖が活発な病変や、肝臓への転移が広い範囲にみられる病変に、この併用を積極的に用いているとしています。分子標的薬の仕組みと副作用の全体像は、分子標的薬とはの記事で扱っています。
PRRT(ペプチド受容体放射性核種療法)の薬、ルタテラ静注は、2021年に日本で承認され、同年9月に販売が始まりました(PMDA 審査報告書 2021年、PMDA 添付文書 2026年10月改訂)。1回7.4GBqを30分かけて、8週間の間隔で最大4回点滴します。承認時(2021年)には、国内の治験の症例が極めて限られていたため、一定数のデータが集まるまで全症例を対象にした使用成績調査が条件とされました。現行の電子添文(2026年10月改訂)の承認条件は、医薬品リスク管理計画を策定のうえ適切に実施すること、の1項目です。ガイドライン2026年版は、PRRTを新たな治療として加えました(金原出版 がん情報シェア 2026年)。
承認の根拠になったNETTER-1試験は、ソマトスタチン受容体が陽性で、標準量のオクトレオチド長時間作用型で進行した、小腸などの中腸のNETの人を対象にした試験です。ルタテラにオクトレオチドを加えたグループは、オクトレオチドを増量したグループに比べて、無増悪生存期間が延びました。ハザード比は0.177(95%信頼区間0.108〜0.289)で、無増悪生存期間の中央値は、比べたグループで8.5か月、ルタテラのグループでは解析の時点で中央値に達していませんでした(PMDA 添付文書)。
同じ試験の最終解析では、231人の全生存期間の中央値は、ルタテラのグループで48.0か月、比べたグループで36.3か月でした。ハザード比は0.84(95%信頼区間0.60〜1.17)で、統計的に意味のある差ではありませんでした(Strosberg JR, et al. Lancet Oncol 2021)。比べたグループの36%は、病気が進んだあとにPRRTを受けています。
延びたのは、進行するまでの期間
NETTER-1で確かめられたのは、病気が進行するまでの期間(無増悪生存期間)が延びたことです。全生存期間のハザード比0.84の95%信頼区間は0.60〜1.17で、死亡を4割減らした可能性から、逆に17%増やした可能性まで含んでいます。比べたグループの36%は後からPRRTを受けており、全生存期間はその影響も含んだ数字です。対象は、標準量のオクトレオチドで進行した中腸のNETで、膵臓のNETやNECの人にそのまま当てはめられる結果ではありません。
NECでは、手術で切除できる人は多くありません。切除が難しい場合や再発した場合は、エトポシドとシスプラチン(EP療法)、またはイリノテカンとシスプラチン(IP療法)などの抗がん剤を使います。消化器のNECを対象にしたランダム化試験では、EP療法とIP療法の成績に大きな差はありませんでした(国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」2024年)。
漢方薬や生薬との関係は、ブログ記事「神経内分泌腫瘍(カルチノイド/神経内分泌がん)に漢方薬や生薬は?」で扱っています。
神経内分泌腫瘍と言われたら、できた場所、NETかNECか、グレード、転移があるかの4つを確かめると、どの治療が候補になるのかを主治医と話しやすくなります。
20%
Ki-67指数がこの値を超えると、NETはG3に入ります。神経内分泌がん(NEC)も20%を超えます。
20%を超えたという数字だけでは、NET G3かNECかは決まりません。分けるのは、顕微鏡で見た細胞の形です。
出典:国立がん研究センター東病院「病期(ステージ)」2026年(2019年のWHO分類)、国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」2024年
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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よくある質問
Q神経内分泌腫瘍はがんですか?
悪性腫瘍の一つで、希少がんとされています。多くはほかのがんよりゆっくり進みますが、転移することもあります。2016年の全国がん登録の研究では、膵臓の神経内分泌腫瘍の23.2%が、診断の時点で遠隔転移していました(Masui, BMC Cancer 2020)。
Qカルチノイドと神経内分泌腫瘍は同じですか?
消化管と膵臓では、昔カルチノイドと呼ばれていた腫瘍が、今の神経内分泌腫瘍(NET)にあたります。WHOは2000年に、消化管のカルチノイドをNETと呼ぶことにしました。肺と気管支では、今もカルチノイドという名前が使われています。
Q神経内分泌腫瘍のG1・G2・G3とは何ですか?
増える力の強さによる分類です。Ki-67指数が3%未満ならG1、3〜20%ならG2、20%を超えるとG3で、核分裂像の数とあわせて決めます。G1、G2、G3の順に増える力が強くなります。
Q神経内分泌腫瘍と神経内分泌がんの違いは何ですか?
神経内分泌腫瘍(NET)は細胞の形が正常に近く、多くはゆっくり進みます。神経内分泌がん(NEC)は分化度が低く、増えるのが速く、早い時期に転移や再発をしやすいがんです。治療も、NECでは抗がん剤が中心になります。
Q神経内分泌腫瘍はどこにできますか?
膵臓、胃、十二指腸、小腸、直腸などの消化管と、肺・気管支に多くできます。日本の2016年の全国がん登録の研究では、膵臓・消化管の神経内分泌腫瘍6,735人のうち、直腸が3,173人で最も多く、膵臓が1,336人でした。
参考文献
- 国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌腫瘍」希少がんリーフレット(ver.1.2、2022年3月)
https://pod.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor/no1shinkeinai.pdf - 国立がん研究センター希少がんセンター「神経内分泌がん」(2024年10月11日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/rcc/about/neuroendocrine_carcinoma/index.html - 国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍(NEN)」(2026年10月29日確認)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_neoplasm/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍 病気の原因」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/020/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍 症状」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/030/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍 検査・診断」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/040/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍 病期(ステージ)」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/050/index.html - 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科「神経内分泌腫瘍 NETに対する治療」(2026年7月14日更新)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/hepatobiliary_oncology/neuroendocrine_tumor/060/index.html - 日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)編「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン2026年【第3版】」金原出版、2026年2月10日(書籍情報)
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307204989 - 金原出版 がん情報シェア「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン 2026年【第3版】―6年半ぶりに大改訂された希少がんの診療ガイドライン」(2026年6月3日)
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/ganjohoshare/from-the-clinical-practice-guidelines-for-gep-nen-2026 - Ito T, Masui T, Komoto I, et al. JNETS clinical practice guidelines for gastroenteropancreatic neuroendocrine neoplasms: diagnosis, treatment, and follow-up: a synopsis. J Gastroenterol. 2021;56(11):1033-1044. doi:10.1007/s00535-021-01827-7
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