卵巣がんの早期発見はなぜ難しい?症状と検査の限界が不安な人へ

子宮と左右の卵巣の透過イラストで、片方の卵巣にできた腫瘍

卵巣がんは初期の症状がほとんどなく、検診で早く見つけても、亡くなる人が減ることは確かめられていません。

卵巣は、子宮の両脇に1つずつある親指大の臓器です。卵巣がんは卵巣にできるがんで、もとになる組織によって、主に上皮性腫瘍、胚細胞腫瘍、性索間質性腫瘍の3つに分けられます(国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」2026年3月17日更新)。卵巣がんのうち最も多いのは上皮性のがんで、約9割を占めます(日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」2025年1月30日更新)。

卵巣がんの早期発見は、なぜ難しいのですか?

おなかの奥にあって初期の症状がほとんどなく、手術をしないと確定しにくく、国の指針で定められた検診もないためです。

  • 卵巣や卵管はおなかの奥深いところにあり、初期の段階では自覚症状がほとんどない
  • 皮膚から針を刺して組織を採ることが容易ではなく、多くはまず手術で病変を採って診断する
  • 腫瘍マーカーのCA125の値だけでは、がんと診断できない
  • 国の指針で定められた卵巣がんの検診がない

国立がん研究センターは、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんについて「初期の段階では症状が出にくいため、見つかったときには進行していることが多いがん」と説明しています(がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」2026年)。日本産科婦人科学会も、半数以上の患者が進行がんで見つかることもあって、子宮頸がんや子宮体がんに比べて治る見込みの低いがんだとしています(日本産科婦人科学会 2025年)。

卵巣がんには、どんな症状がありますか?

初期にはほとんどありません。服のウエストがきつい、下腹部のしこり、食欲がないといった変化がきっかけになることがあります。

国立がん研究センターは、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんの自覚症状は、初期の段階ではほとんどないとしています。日本産科婦人科学会も、初期の卵巣腫瘍は気づかれにくく、多くの女性が無症状で過ごしていると説明しています。

症状 どんなときに出るか
服のウエストがきつくなる これをきっかけに受診し、卵巣がんとわかる場合があります
下腹部にしこりが触れる・下腹部の痛み しこりがきっかけで見つかる場合があります。進行すると下腹部が痛むことがあります
食欲がなくなる これをきっかけに受診し、卵巣がんとわかる場合があります
おなかが張って苦しい(腹部膨満感) 進行すると出てきます
頻尿・便秘 がんが大きくなり、膀胱や直腸が圧迫されると起こることがあります
足のむくみ がんが大きくなると起こることがあります
おなかが大きく前に突き出る 進行して腹水がたまると起こることがあります

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」(2026年3月17日更新)、日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」(2025年1月30日更新)をもとに作成

表の症状に気づいたときは、早めに婦人科を受診するよう、国立がん研究センターは案内しています。

卵巣がんは、どんな検査で調べますか?

内診、経腟超音波、腫瘍マーカー(CA125など)、MRI、CTで調べ、多くは手術で採った組織の病理検査で確定します。

卵巣や卵管にできる腫瘍には、がんである悪性腫瘍のほかに、浸潤や転移をしない良性腫瘍と、良性と悪性の中間の性質をもつ境界悪性腫瘍があります(がん情報サービス 2026年)。検査は、見つかった腫瘍がどれにあたるかを見分けるために組み合わせて行います。

検査 何を見るか・注意点
触診・内診・直腸診 おなかを触る触診、腟から指を入れる内診、肛門から指を入れる直腸診で、子宮や卵巣、直腸の周りの状態を確かめます
経腟超音波(エコー) 腟の中から超音波をあて、子宮や卵巣を近い位置から観察します。腫瘍の性質や大きさ、周りの臓器との位置関係を見ます
腫瘍マーカー(CA125など) 血液中のCA125などを測ります。診断の補助や経過観察、治療の効果判定に使いますが、値だけではがんと診断できません
MRI 骨盤の内部を詳しく調べ、腫瘍の内部の状態やリンパ節の腫れを見ます
CT リンパ節への転移や、離れた臓器への転移(遠隔転移)を調べます
病理検査 多くはまず手術で病変を採り、顕微鏡で調べて診断します。最終的な結果が出るまでに3〜4週間かかります

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」(2026年3月17日更新)をもとに作成

超音波で見た腫瘍が、液体のたまった袋のような嚢胞性であれば良性のことが多く、中身の詰まった充実性の部分があれば、悪性か境界悪性の可能性を疑います(日本産科婦人科学会 2025年)。

それでも、卵巣や卵管はおなかの奥深いところにあるため、皮膚から針を刺して組織を採ることは容易ではありません。がんの広がりも、手術で切除した卵巣や卵管を調べないと正確には評価できないため、進行期は手術のあとに決まります(がん情報サービス 2026年)。

CA125などの数値の読み方は腫瘍マーカーとは、画像検査の違いはCTとMRIの違いの記事で整理しています。

卵巣がんになりやすいのは、どんな人ですか?

遺伝的な要因があり、特にBRCA1・BRCA2遺伝子に変化がある女性では、卵巣がんのリスクが高いことがわかっています。

国立がん研究センターは、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんの発生要因の1つに遺伝的要因を挙げています。BRCA1遺伝子かBRCA2遺伝子に変化がある女性(遺伝性乳がん卵巣がん、HBOC)では、卵巣がんや乳がんを発症するリスクが高いことがわかっています。ただし、変化があるからといって必ずがんになるとは限りません。気になる場合は、遺伝医学の専門家がいる施設で遺伝カウンセリングを受けることが勧められています(がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 予防・検診」2026年3月17日更新)。

BRCA1・BRCA2に変化がある女性では、がんができる前に卵管と卵巣を切除する手術(リスク低減卵管卵巣摘出術)を、遺伝カウンセリングの体制がある施設で検討することもあります(同)。

この手術が保険で受けられるのは、乳がんか卵巣がんになったことがあり、BRCA1かBRCA2に変化がある人です(がん情報サービス「遺伝性腫瘍」2026年)。検査を含む保険の条件は、がんは遺伝するのかを説明した記事で整理しています。

日本産科婦人科学会は、子宮内膜症の病変が卵巣に入り込んで液体をためる卵巣チョコレート嚢胞について、約1%が悪性化してがんになると言われているとしています(日本産科婦人科学会 2025年)。

一方で、国立がん研究センターは、卵巣がん・卵管がん・腹膜がん全般については、現在のところ特有の予防法は確立されていないとしています(がん情報サービス 予防・検診 2026年)。

卵巣がんは、どの段階で見つかっていますか?

日本の院内がん登録では、Ⅰ期で見つかった人が最も多い一方、Ⅲ期とⅣ期の人も合わせて4割を超えます。

全国のがん診療連携拠点病院などが集めた院内がん登録では、2014〜2015年に卵巣がんと診断された10,021人のうち、Ⅰ期は4,686人、Ⅱ期は905人、Ⅲ期は2,860人、Ⅳ期は1,270人でした。Ⅰ〜Ⅳ期を足すと9,721人で、全体の10,021人には病期が不明などの人も含まれます。Ⅲ期とⅣ期を合わせた4,130人は、病期不明などを含む全体の41.2%にあたります(国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム)。

病期 がんの広がり 人数 5年生存率(ネット・サバイバル)
Ⅰ期 がんが卵巣あるいは卵管の中にとどまっている 4,686人 90.6%
Ⅱ期 がんが片側か両側の卵巣・卵管にあり、子宮や反対側の卵巣など骨盤の中の臓器に広がっている 905人 76.6%
Ⅲ期 腹腔内への転移(腹膜播種)か、後腹膜リンパ節への転移が、細胞診か組織診で確認されている 2,860人 46.2%
Ⅳ期 腹腔内への転移以外の遠隔転移がある 1,270人 27.8%

出典:病期の定義は国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」(2026年3月17日更新)、人数と生存率は国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム(2014〜2015年診断、5年生存率)

同じ集計で、全体の平均年齢は58.0歳、全体の5年生存率(ネット・サバイバル)は64.5%でした。

全国がん登録では、2023年に卵巣がんと診断されたのは12,926例、2024年に卵巣がんで亡くなったのは5,116人です。2018年に診断された人の5年相対生存率は59.9%でした(国立がん研究センター がん統計「卵巣」2026年7月22日確認)。生存率の種類と読み方は、がんの生存率の記事で説明しています。

卵巣がんの検診はありますか?

国の指針で定められた卵巣がんの検診はありません。

がん検診は、症状のない人を対象に行うものです。症状があって受ける検査や、治療のあとの経過観察の検査は、検診にはあたりません。卵巣がん・卵管がん・腹膜がんについては、現在、指針として定められているがん検診はありません(がん情報サービス 予防・検診 2026年)。

国立がん研究センターは、気になる症状がある場合には、検診を待たずに医療機関を早めに受診するよう案内しています(同)。

検診で早く見つければ、卵巣がんで亡くなる人は減りますか?

英国と米国の大規模な比較試験では、検診を受けた群で卵巣がんで亡くなる人は減りませんでした。英国の試験では、早い病期で見つかる人は増えていました。

英国のUKCTOCSは、閉経後の50〜74歳の女性202,638人を、くじ引きで3つの群に分けた試験です。毎年CA125を測る群(値の推移をROCAという計算法で判定し、必要なら6週間後にCA125の再検査と経腟超音波を行う)、毎年経腟超音波を行う群、検診をしない群に、1対1対2の割合で分け、中央値で16.3年追跡しました(Menon U, et al. Ovarian cancer population screening and mortality after long-term follow-up in the UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening (UKCTOCS). Lancet 2021)。

項目 CA125の検診群 経腟超音波の検診群 検診なしの群
解析した人数 50,625人 50,623人 101,314人
卵巣がん・卵管がんと診断 522人(1.0%) 517人(1.0%) 1,016人(1.0%)
卵巣がん・卵管がんで死亡 296人(0.6%) 291人(0.6%) 619人(0.6%)

出典:Menon U, et al. Lancet 2021;397(10290):2182-2193(UKCTOCS、追跡期間の中央値16.3年)

CA125の検診群では、検診なしの群に比べて、Ⅰ期かⅡ期で見つかる人が39.2%多くなりました(95%信頼区間16.1〜66.9%多い)。Ⅳ期で見つかる人は24.5%少なくなりました(95%信頼区間41.8%少ない〜2.0%少ない)。Ⅲ期かⅣ期で見つかる人は10.2%少なかったものの、95%信頼区間は21.3%少ない〜2.4%多いまでの幅があり、減ったとは言い切れない結果でした。

それでも、卵巣がん・卵管がんで亡くなる人は、CA125の検診群(p=0.58)でも経腟超音波の検診群(p=0.36)でも、検診なしの群と比べて統計的に意味のある差で減りませんでした。著者らは、CA125の検診群でⅢ期・Ⅳ期が少なかったことは亡くなる人の減少につながらなかったとし、一般の女性を対象にした卵巣がん検診は勧められないと結論しています。

米国のPLCO試験

米国のPLCO試験は、55〜74歳の女性78,216人を、毎年の検診を受ける群(CA125を6年間、経腟超音波を4年間)39,105人と、通常の診療を受ける群39,111人にくじ引きで分けました。卵巣がんと診断されたのは検診群212人、通常診療群176人で、卵巣がんで亡くなったのは118人と100人でした。検診群の死亡の率比は1.18(95%信頼区間0.82〜1.71)で、検診群で18%少ない側から71%多い側までの幅に収まり、検診で死亡が減ったとはいえない結果でした(Buys SS, et al. Effect of screening on ovarian cancer mortality: the PLCO Cancer Screening Randomized Controlled Trial. JAMA 2011)。

この試験では、がんではないのに異常と判定された人(偽陽性)が3,285人いて、そのうち1,080人が確かめるための手術を受け、163人(15%)に少なくとも1つの重い合併症が起こりました(Buys SS, et al. JAMA 2011)。

Ⅰ期90.6%とⅣ期27.8%は、同じ人の「もしも」ではない

院内がん登録のⅠ期とⅣ期の生存率の差は、Ⅰ期で見つかった人とⅣ期で見つかった人という、別の人たちを比べた数字です。Ⅳ期で見つかった人が、もっと早く見つかっていればⅠ期の側の生存率に入れたかどうかは、この数字からはわかりません。それを確かめる方法が、検診を受ける人と受けない人をくじ引きで分けて、亡くなった人の数を比べる試験で、UKCTOCSとPLCOはその試験でした。UKCTOCSの対象は英国の閉経後の50〜74歳の女性で、日本の女性やBRCA1・BRCA2に変化がある女性にそのまま当てはまるとは限りません。

0.6%

英国の試験で、16.3年(中央値)のあいだに卵巣がん・卵管がんで亡くなった人の割合です。CA125の検診群でも、検診なしの群でも同じでした。
検診群ではⅠ期・Ⅱ期で見つかる人が39.2%増えましたが、亡くなる人は減りませんでした。

出典:Menon U, et al. Lancet 2021(UKCTOCS、英国の閉経後50〜74歳の女性202,638人)

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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よくある質問

Q卵巣がんは早期発見できますか?

卵巣がんは初期の段階では自覚症状がほとんどなく、国の指針で定められた検診もありません。英国の女性202,638人の試験では、CA125による毎年の検診でⅠ期・Ⅱ期で見つかる人は増えましたが、卵巣がん・卵管がんで亡くなる人は減りませんでした。

Q卵巣がんの初期症状は何ですか?

初期にはほとんどありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなるといった変化をきっかけに見つかることがあります。がんが大きくなると、頻尿や便秘、足のむくみが起こることもあります。国立がん研究センターは、こうした変化に気づいたときは早めに婦人科を受診するよう案内しています。

QCA125の検査で卵巣がんは見つかりますか?

CA125は卵巣がんで測られる腫瘍マーカーですが、値だけではがんと診断できません。英国の試験では、CA125の値の推移で判定する毎年の検診でも、卵巣がん・卵管がんで亡くなる人は減りませんでした。

Q経腟超音波で卵巣がんは見つかりますか?

経腟超音波は、卵巣の腫瘍の性質や大きさを見る検査です。ただし、がんかどうかの確定には、多くの場合、手術で採った組織の病理検査が必要です。英国の試験では、毎年の経腟超音波による検診で、卵巣がん・卵管がんで亡くなる人は減りませんでした。

Q卵巣がんは遺伝しますか?

遺伝的な要因があり、BRCA1・BRCA2遺伝子に変化がある女性では、卵巣がんや乳がんのリスクが高いことがわかっています。変化があっても必ずがんになるとは限りません。気になる場合は、遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 全ページ」(2026年3月17日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/print.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 予防・検診」(2026年3月17日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/prevention_screening.html
  3. 国立がん研究センター がん統計「卵巣」(2026年7月22日確認)
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/19_ovary.html
  4. 国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 卵巣がん 2014-2015年5年生存率
    https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c25
  5. 日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」(2025年1月30日更新)
    https://www.jsog.or.jp/citizen/5715/
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「遺伝性腫瘍」(2026年4月24日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/hereditary_tumors/index.html
  7. Menon U, Gentry-Maharaj A, Burnell M, et al. Ovarian cancer population screening and mortality after long-term follow-up in the UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening (UKCTOCS): a randomised controlled trial. Lancet. 2021;397(10290):2182-2193. doi:10.1016/S0140-6736(21)00731-5
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33991479/
  8. Buys SS, Partridge E, Black A, et al. Effect of screening on ovarian cancer mortality: the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Randomized Controlled Trial. JAMA. 2011;305(22):2295-2303. doi:10.1001/jama.2011.766
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21642681/

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