がんサバイバーとは?平均寿命まで生きられるかという不安に答える

窓辺の明るい光の中で、寄り添って遠くを見つめる年配の夫婦

がんサバイバーは、がんと診断されたときから一生を通じて、その人を指す言葉です。治った人だけを呼ぶ言葉ではありません。

この記事では、がんサバイバーという言葉の定義と日本での使われ方、日本のがん経験者の数、診断からの時期の分け方、治療のあとに続くことや遅れて出ること、そして「平均寿命まで生きられるのか」という問いに、診断から年数がたった人の生存率(サバイバー生存率)の数字で答えます。

がんサバイバーとは、どんな人のことですか?

がんと診断されたときから、その後の一生を通じて、がんを経験した人を指します。治療中の人も含まれます。

米国国立がん研究所(NCI)のがんサバイバーシップ室は、「がんと診断されたときから、その後の生涯を通じて、その人をがんサバイバーとみなす」と定義しています。この定義は、全米がんサバイバーシップ連合(NCCS)の定義をもとにしたものと明記されています(NCI Office of Cancer Survivorship「Definitions」)。

NCIは、がんサバイバーシップを、がんと診断されたあとに本人と介護する人が経験する、体・心・社会・経済の課題を含む状態と説明しています。がんサバイバーシップの研究は、がんサバイバーと介護する人の健康と暮らしをよくすることを目的にすると書かれています。

日本では「がん経験者」「がん体験者」と言い換えられることが多い言葉です。大阪国際がんセンターのがん対策センターの冊子は、NCCSの定義では、がんを克服した人だけでなく、診断直後や治療中の人、その家族や介護者も含まれると紹介し、「がん体験者・経験者」という表現がわかりやすいとしています(大阪国際がんセンター がん対策センター「道しるべBOOK」)。

統計で使う「サバイバー」は意味が少し違います

がん統計では、「サバイバー」がもう少し狭い意味で使われます。国立がん研究センターのがん情報サービスは、サバイバー生存率を「診断から一定年数後生存している者(サバイバー)の、その後の生存率」と説明しています。たとえば1年サバイバーの5年生存率は、診断から1年後に生存している人に限って計算した、その後の5年生存率です(がん情報サービス「最新がん統計」2026年7月14日更新)。この記事の後半で使う数字は、この統計の意味のサバイバーです。

日本に、がんサバイバーはどのくらいいますか?

2023年に新たにがんと診断されたのは993,469例で、診断から5年以内の人は、2015年時点で248万人と推計されています。

がん情報サービスによると、2023年に新たにがんと診断されたのは993,469例(男性556,059例、女性437,406例)でした。2018年に診断された人の5年相対生存率は、男女計で64.8%です(がん情報サービス「最新がん統計」2026年7月14日更新)。

診断を受けたあと生活している人の数について、国立がん研究センターは、2015年時点で、がんと診断されてから5年以内の人を推計で248万人としています(国立がん研究センター プレスリリース 2015年4月16日)。この数には、診断から5年を超えて生活している人は入っていません。

サバイバーシップには、どんな時期がありますか?

診断と治療の時期(急性期)、治療が終わり経過を見る時期(延長期)、再発の心配が薄れていく時期(長期・永続期)の3つに分けて考える見方があります。

がんを経験した医師のフィッツヒュー・マラン氏は、1985年に米国の医学誌に、がんのあとの生存を3つの「季節」に分けて考える論考を書きました(Mullan F. Seasons of survival: reflections of a physician with cancer. N Engl J Med 1985)。

時期 どんな時期か
急性期 がんと診断され、手術や薬物療法などの初めの治療を受けている時期
延長期 初めの治療が終わり、経過観察を続けながら、再発するかどうかがわからないまま過ごす時期
長期(永続期) 再発の不安が薄れ、がんのあとの生活が続いていくという感覚が強まる時期

出典:Mullan F. N Engl J Med 1985;313:270-273 をもとに作成

3つの時期ははっきりした年数で区切られてはいません。延長期にあたる治療後の通院と検査の年数は、がんの種類で違います。その目安はがんの経過観察は何年続くかの記事にまとめています。

治療が終わったあとに、遅れて出てくることはありますか?

あります。治療が終わって数か月から数年、あるいはそれ以降に出る合併症を、晩期合併症と呼びます。

がん情報サービスの用語集は、晩期合併症を「がんの治療が終了して数カ月から数年、あるいはそれ以降に生じる合併症」と説明しています。身体的な症状や二次がん(治療のあとに新しくできる別のがん)に加え、心理的な不安や抑うつ、生活や仕事の悩み、人間関係の変化も含まれ、その内容は、がんの種類や発症の年齢、部位、治療法の種類などによって多岐にわたるとしています(がん情報サービス 用語集「晩期合併症」)。

英国のがん研究支援団体キャンサー・リサーチUKは、抗がん剤の晩期の影響として、次のようなものを挙げています(Cancer Research UK「Late side effects of chemotherapy」2024年5月22日確認)。

体の部位・領域 起こりうること
心臓・肺・肝臓・腎臓・膀胱 一部の抗がん剤で、特定の臓器に長く続く問題が起こることがある。治療の前後に検査し、治療後も何年か確かめることがある
神経 一部の抗がん剤で、とくに手足の神経が傷つく(末梢神経障害)。多くは何か月もかけてよくなるが、一部の人では残る
骨 骨が薄くなる(骨粗しょう症)ことがある。治療でホルモンが減ると、そのリスクが高まる
生殖 卵子や精子が傷つくことがあり、一時的なことも、続くこともある。早く閉経することもある
二次がん 一部の抗がん剤では、将来別のがんができることがある。同団体はそのリスクをとても小さいとしている
疲れ 1年以上続く疲れが、多くの治療や強い治療のあとに起こりやすい

出典:Cancer Research UK「Late side effects of chemotherapy」(2024年5月22日確認)をもとに作成

どれが、どのくらい起こるかは、使った薬の種類と量、治療の組み合わせで大きく変わります。同じ「がんサバイバー」でも、手術だけで治療を終えた人と、抗がん剤と放射線治療を組み合わせた人とでは、気をつけることが違います。自分の治療でどんな晩期合併症が起こりうるかは、治療を受けた病院で確かめておくと、治療後の体の変化に気づきやすくなります。

がんサバイバーは、平均寿命まで生きられますか?

診断から年数がたつと、多くのがんで、その後の生存率は同じ年齢・性別の一般の人に近づきます。近づかないがんもあります。

この問いに答えるための数字が、先に触れたサバイバー生存率(研究では条件付き生存率と呼ばれます)です。ふつうの5年生存率は、診断された日から数えます。診断から1年、3年、5年と生きてきた人にとっては、その人がこれから5年を生きる確率のほうが知りたい数字です。

研究で使われるのは相対生存率です。がんの人の生存率を、同じ性別・年齢の一般の人の生存率で割った値で、がん以外の原因で亡くなる分を差し引いて見るための指標です(Ito Y, et al. Cancer Sci 2014)。相対生存率が100%に近いことは、そのがんの人が、がんのない同年代の人とほぼ同じくらい生きていることを意味します。

大阪府がん登録の38,439人(診断時15〜69歳、1990〜2004年に診断)を調べた研究では、胃がんの5年相対生存率は60%でした。診断から1年生きた人のその後の5年相対生存率は77%、5年生きた人では97%でした(Ito Y, et al. BMC Cancer 2013)。診断時に見る60%と、5年たった人が見る97%は、同じ胃がんの数字です。

日本の6府県のがん登録(山形・宮城・福井・新潟・大阪・長崎)で、2002〜2006年に経過を追った人を分析した研究(解析対象789,600例)も、多くの部位で、診断から生きた年数が長いほど、その後の5年生存率が高くなることを示しています。胃がん、大腸がんなどでは、診断から2〜3年生きると、その後の5年生存率が100%に近づいたと報告されています(Ito Y, et al. Cancer Sci 2014)。

部位 診断からの10年相対生存率 診断から5年生きた人の、その後の5年相対生存率
胃 男性61.3%・女性58.2% 男性96.8%・女性96.5%
結腸 男性68.9%・女性62.8% 男性97.2%・女性96.1%
甲状腺 男性87.1%・女性94.8% 男性97.9%・女性99.3%
肺 男性18.1%・女性31.2% 男性79.4%・女性84.2%
膵臓 男性4.6%・女性4.8% 男性78.8%・女性81.6%
乳房(女性) 79.3% 90.5%
前立腺 78.0% 89.2%
肝臓 男性9.6%・女性9.1% 男性38.0%・女性38.4%
多発性骨髄腫 男性11.4%・女性14.3% 男性41.2%・女性48.4%

出典:Ito Y, et al. Long-term survival and conditional survival of cancer patients in Japan using population-based cancer registry data. Cancer Sci 2014(6府県のがん登録、2002〜2006年追跡、15〜99歳、ピリオド法)

膵臓がんは、診断からの10年相対生存率は男性4.6%ですが、5年生きた人のその後の5年相対生存率は78.8%でした。診断時の数字だけを見ると、診断から年数がたった人の見通しを低く見積もることになります。生存率の種類と読み方は、がんの生存率の記事で説明しています。

病院のがん登録でも同じ傾向が見られます。国立がん研究センターが2012年に診断された人の10年生存率を集計した特別集計では、Ⅲ期・Ⅳ期の進行したがんで、1年生存するほどその後の5年生存率が改善する傾向が見られました。Ⅰ期・Ⅱ期では多くのがんでほぼ横ばいでした(国立がん研究センター「院内がん登録2012年10年生存率集計 公表」2025年2月13日)。

年数がたっても、生存率が一般の人に近づかないがんはありますか?

あります。肝臓がんと多発性骨髄腫では、診断から5年生きた人でも、その後の5年相対生存率が50%を下回っていました。

6府県のがん登録の研究では、肝臓がんと多発性骨髄腫は、診断から生きた年数が長くなっても、その後の5年生存率が上がりませんでした。診断から5年たった時点でも50%未満です(Ito Y, et al. Cancer Sci 2014)。

乳がんと前立腺がんは、診断から早い時期に高い生存率に達しますが、その後の5年生存率は年数がたってもあまり上がらず、少しずつ亡くなる人が続いていました。院内がん登録の2012年診断の集計でも、乳がんはどの病期でもサバイバー5年生存率がほぼ横ばいで、長期の治療と経過観察が必要なタイプがあることを反映していると推測されています。

100%に近いという数字が届く範囲

診断から年数がたった人の相対生存率が100%に近いことは、集団として、がんのない同年代の人とほぼ同じくらい生きていることを示します。一人ひとりが平均寿命まで生きられるという保証ではありません。また、6府県の研究は2002〜2006年に経過を追った人の数字で(Ito Y, et al. Cancer Sci 2014)、その後に広まった治療の効果は入っていません。病期を分けない数字なので、同じ部位でも病期によって見通しは違います。

小児がんやAYA世代のがんサバイバーでは、何が違いますか?

治療のあとの人生が長いぶん、晩期合併症を長い期間にわたって確かめていく必要があります。

AYA世代は15歳から39歳を指し、年間約2万人のAYA世代の人が新たにがんと診断されるとされています。乳がん、大腸がん、子宮頸がんなどが多くを占めます(国立がん研究センター中央病院「AYA世代のがんについて」)。日本の6府県の研究では、小児とAYA世代のがんの患者のおよそ70〜80%が10年を超えて生存していました(Ito Y, et al. Cancer Sci 2014)。

米国で小児がんの経験者10,397人を追った研究(Childhood Cancer Survivor Study)では、62.3%が少なくとも1つの慢性の健康問題を持ち、27.5%は重い、または命にかかわる問題を持っていました。きょうだい3,034人と比べた相対リスクは、慢性の健康問題で3.3、重い問題で8.2です。診断から30年の時点で慢性の健康問題を持つ人の累積の割合は73.4%でした(Oeffinger KC, et al. N Engl J Med 2006)。

NCIの小児がんの晩期合併症の解説は、二次がん、心臓・血管、脳・神経、骨・筋肉、内分泌、生殖など、ほぼ全身にわたる項目を挙げ、晩期合併症を見つけて治療することに慣れた医療者による長期のフォローアップと、少なくとも年1回の診察が大切としています(NCI「Late Effects of Treatment for Childhood Cancer (PDQ)」)。

治療のあとの暮らしで困ったとき、どこに相談できますか?

全国のがん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターで相談できます。

治療後の体の変化、仕事、お金、家族のことなど、がんのあとの暮らしの困りごとは、がん相談支援センターで相談できます。仕事を続けるか迷ったときに確かめる順番は、がんでも仕事は続けられるかの記事で整理しています。

38.0%

診断から5年生きた肝臓がんの男性の、その後の5年相対生存率です(女性38.4%)。胃がんでは同じ値が96.8%でした。
診断から年数がたつと一般の人に近づくのは多くのがんにあてはまりますが、すべてのがんではありません。

出典:Ito Y, et al. Cancer Sci 2014(日本の6府県のがん登録、2002〜2006年追跡、ピリオド法)

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

Qがんサバイバーの意味は何ですか?

がんと診断されたときから、その後の一生を通じて、がんを経験した人を指す言葉です。米国国立がん研究所(NCI)は、全米がんサバイバーシップ連合(NCCS)の定義をもとに、この意味で使っています。日本では「がん経験者」「がん体験者」と言い換えられることが多い言葉です。

Qがんサバイバーは、治療が終わってからを指すのですか?

いいえ。NCIの定義では、がんと診断されたときからがんサバイバーとみなします。治療中の人も含まれます。一方、がん統計の「サバイバー生存率」では、診断から一定年数後に生存している人をサバイバーと呼んでおり、意味が少し違います。

Qがんサバイバーは平均寿命まで生きられますか?

がんの種類と病期で違います。日本の6府県のがん登録の研究では、胃がんや大腸がんなどは、診断から2〜3年生きると、その後の5年相対生存率が100%に近づきました。肝臓がんと多発性骨髄腫では、診断から5年生きた人でも50%未満でした。集団の数字で、一人ひとりの寿命を保証するものではありません。

Qがんの治療後、何年たてば安心できますか?

がんによって違います。胃がんの研究では、診断から1年生きた人のその後の5年相対生存率は77%、5年生きた人では97%でした(BMC Cancer 2013)。乳がんや前立腺がんのように、年数がたっても横ばいのがんもあります。経過観察の年数も、がんの種類で違います。

Q晩期合併症とは何ですか?

がんの治療が終わって数か月から数年、あるいはそれ以降に起こる合併症です。心臓などの臓器、神経、骨、生殖への影響や二次がんのほか、心理的な不安や仕事の悩みも含まれます。どれが起こりうるかは、がんの種類と受けた治療で変わります。

参考文献

  1. National Cancer Institute, Office of Cancer Survivorship. Definitions.(2026年11月6日確認)
    https://cancercontrol.cancer.gov/ocs/definitions
  2. Mullan F. Seasons of survival: reflections of a physician with cancer. N Engl J Med. 1985;313(4):270-273. doi:10.1056/NEJM198507253130421
    https://doi.org/10.1056/NEJM198507253130421
  3. 大阪国際がんセンター がん対策センター「道しるべBOOK」(がんサバイバー生存率のリーフレット)
    https://oici.jp/ocr/common/images/cancer_survivor/leaflet001.pdf
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」(2026年7月14日更新)
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
  5. 国立がん研究センター プレスリリース「全国がん登録 PRキャンペーンサイト『サンキューバトン』開設」(2015年4月16日)
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2015/0416/press_release_20150416.pdf
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「晩期合併症」(2026年11月6日確認)
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/late-effect.html
  7. Cancer Research UK. Late side effects of chemotherapy.(2024年5月22日確認)
    https://www.cancerresearchuk.org/about-cancer/treatment/chemotherapy/side-effects/late-effects
  8. National Cancer Institute. Late Effects of Treatment for Childhood Cancer (PDQ®)–Patient Version.(2026年11月6日確認)
    https://www.cancer.gov/types/childhood-cancers/late-effects-pdq
  9. Oeffinger KC, Mertens AC, Sklar CA, et al. Chronic health conditions in adult survivors of childhood cancer. N Engl J Med. 2006;355(15):1572-1582. doi:10.1056/NEJMsa060185
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17035650/
  10. Ito Y, Nakayama T, Miyashiro I, Ioka A, Tsukuma H. Conditional survival for longer-term survivors from 2000-2004 using population-based cancer registry data in Osaka, Japan. BMC Cancer. 2013;13:304. doi:10.1186/1471-2407-13-304
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23800306/
  11. Ito Y, Miyashiro I, Ito H, et al. Long-term survival and conditional survival of cancer patients in Japan using population-based cancer registry data. Cancer Sci. 2014;105(11):1480-1486. doi:10.1111/cas.12525
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25183551/
  12. 国立がん研究センター「院内がん登録2012年10年生存率集計 公表」(2025年2月13日)
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0213_1/index.html
  13. 国立がん研究センター中央病院「AYA世代のがんについて」(2026年11月6日確認)
    https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/AYA/index.html

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