免疫療法の費用は、保険で受けるものは月の自己負担に上限がかかり、自由診療の免疫細胞療法は上限なしで全額自己負担です。
同じ「免疫療法」という名前でも、保険で受ける免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法と、自由診療で行われる免疫細胞療法では、値段の決まり方も、払う額の天井も違います。この記事では、国が決めた価格と高額療養費の上限で保険の側の自己負担を計算し、自由診療の側は国のシステムで公開されている計画の料金欄から費用の目安を示します。薬価は2026年2月時点、そのほかの金額は2026年10月から11月にかけて確認したものです。
この記事の内容
保険で受けられる免疫療法と、受けられない免疫療法がありますか?
あります。効果が証明されたものは保険診療で受けられ、効果が証明されていないものは自由診療で全額自己負担になります。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、免疫療法を「効果が証明された免疫療法」と「効果が証明されていない免疫療法」に分けています。前者には免疫チェックポイント阻害薬とCAR-T細胞療法などが含まれ、がんの種類によっては保険診療で受けられます。後者には自由診療で行われる樹状細胞ワクチンなどがあり、治療費は全額自費で、副作用の治療費も自費になるとしています(国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年11月6日更新)。
| 免疫チェックポイント阻害薬 | CAR-T細胞療法 | 自由診療の免疫細胞療法 | |
| 国の手続き | 医薬品として承認 | 再生医療等製品として承認 | 再生医療等提供計画を提出 |
| 誰が何を確かめたか | PMDAが品目ごとに品質・有効性・安全性を審査 | PMDAが品目ごとに品質・有効性・安全性を審査 | 安全性の確保等を目的に、委員会が計画を審査する手続き |
| 保険 | 承認されたがん・使い方なら保険診療 | 一部の血液のがんで保険診療 | 保険外(全額自己負担) |
| 1か月の自己負担の上限 | 高額療養費の上限がかかる | 高額療養費の上限がかかる | 上限なし |
| がん情報サービスの分類 | 効果が証明された免疫療法 | 効果が証明された免疫療法 | 効果が証明されていない免疫療法 |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(2025年)、医薬品医療機器総合機構「承認審査業務」、厚生労働省医政局「再生医療等提供計画の提出に関する経過措置期間の終了について」(2015年)をもとに作成
医薬品と再生医療等製品は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「品目ごとに品質、有効性、安全性の審査」を行ったうえで承認されます(医薬品医療機器総合機構「承認審査業務(申請・審査等)」)。一方、細胞を加工して使う医療は再生医療等安全性確保法の対象で、厚生労働省は、リンパ球などを使う免疫細胞治療も含まれ、自由診療で行うものも同じだと説明しています。医療機関は計画を委員会で審査してもらい、提出します(厚生労働省医政局「再生医療等提供計画の提出に関する経過措置期間の終了について」2015年)。この法律の名前のとおり、手続きの目的は安全性の確保です。
免疫チェックポイント阻害薬の薬代は、1回いくらですか?
キイトルーダを1回200mg使う場合、薬代だけで398,924円です。窓口で払うのはその1〜3割で、さらに高額療養費の上限がかかります。
保険で使う薬の値段は、国が品目ごとに決めた薬価です。キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ)の薬価は、2026年2月1日の適用分から1瓶199,462円です(厚生労働省「市場拡大再算定品目について」中医協資料 2025年)。この記事の金額は、この2026年2月時点の薬価で計算しています。
キイトルーダは、成人では1回200mgを3週間間隔、または1回400mgを6週間間隔で点滴します(PMDA キイトルーダ点滴静注100mg 審査報告書 2026年7月31日)。200mgは100mg瓶2本なので、1回の薬代は398,924円になります。これは10割の金額で、診察・検査・点滴の手技料は含みません。
免疫チェックポイント阻害薬の仕組みと、保険で使える病院に条件がある理由は、免疫チェックポイント阻害薬とはの記事で説明しています。
免疫チェックポイント阻害薬を1年続けると、自己負担はいくらになりますか?
70歳未満で年収約370万〜約770万円の区分なら、2026年8月から2027年7月までの1年の自己負担は53万円が上限です。
高額療養費は、1か月の自己負担に所得に応じた上限をかける制度です。70歳未満で年収約370万〜約770万円の区分(区分ウ)では、2026年8月から2027年7月までの診療分の上限は次のとおりです(港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」2026年7月31日更新、厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」)。
| 月の数え方 | 1か月の自己負担の上限(区分ウ) |
| その月までの12か月で、上限に達した月が3回目まで | 85,800円+(総医療費−286,000円)×1% |
| 4回目から(多数回該当) | 44,400円 |
| 1年(8月〜翌年7月)の合計 | 53万円(年間上限) |
出典:港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」(2026年7月31日更新)、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)。総医療費は保険診療の10割の金額
年間上限は2026年8月にできた仕組みで、月ごとの自己負担が積み上がって年間上限に達したあとは、超えた分を保険者から還付してもらえます(厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」2026年7月31日更新)。
ここにキイトルーダ200mgを3週間ごとに使う場合を当てはめます。3週間ごとの点滴なら、どの月にも少なくとも1回は投与があり、その月の総医療費は薬代だけで398,924円を超えるので、毎月上限に届きます。8月に始めて、同じ健康保険に入ったまま1年続けた場合、計算は次のようになります。
- 8月〜10月の3か月:それぞれ少なくとも86,929円(85,800円+(398,924円−286,000円)×1%)。3か月で少なくとも260,787円
- 11月〜翌年7月の9か月:多数回該当で毎月44,400円。9か月で399,600円
- 月ごとの上限を足した額:少なくとも660,387円
- 年間上限53万円を超えた少なくとも130,387円は、保険者から還付を受けられる
免疫チェックポイント阻害薬は何か月も続けることが多い治療で、月ごとの上限だけでなく、多数回該当と年間上限が実際の負担を決めます。ただし、手術の後に使う場合のように使う期間が決まっている使い方もあり(PMDA キイトルーダ審査報告書 2026年)、1年続くとは限りません。
区分ウ以外の上限額、70歳以上の上限、窓口での支払いを上限までにする手続きは、がんの治療費と高額療養費の仕組みにまとめています。2027年8月からは所得区分がさらに細かく分かれ、式が変わる予定です(厚生労働省 2026年)。
CAR-T細胞療法の費用は、自己負担でいくらですか?
製品の価格は1回3,000万円を超えますが、保険診療なので高額療養費の上限がかかります。区分ウでは、その月の自己負担は少なくとも409,417円、多数回該当なら44,400円です。
CAR-T細胞療法は、自分のT細胞を取り出し、がん細胞を攻撃するように遺伝子を組み込んで増やし、体に戻す治療です。一部の血液・リンパのがんで使われ、治療ができる施設は限られ、治療費が高額だと、がん情報サービスは説明しています(がん情報サービス 2025年)。
中医協の資料では、キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジの3品目の価格は、費用対効果評価による調整のあと、いずれも32,647,761円です(厚生労働省保険局医療課「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子(案)」中医協 2025年12月)。
この価格を区分ウの式に当てはめると、その月の上限は85,800円+(32,647,761円−286,000円)×1%で、409,417円になります(1円未満を除く)。病院の入院料や検査料が加わればその分の1%も加わるので、少なくともこの額です。月ごとの上限は、総医療費が上限ラインを超えた部分の1%が自己負担に残る仕組みで、3,000万円を超える治療では、その1%だけで32万円を超えます。
一方、その月までの12か月で上限に達した月がすでに3回あれば、その月は多数回該当になり、上限は44,400円です。多数回該当の上限には1%の部分がありません。CAR-T細胞療法は、それまでに別の治療を受けた人が対象です。たとえばキムリアの濾胞性リンパ腫への使用は、初発なら全身治療を2回以上、再発なら再発後に1回以上受けたうえで、効果がなかったか再発したことが条件になっています(PMDA キムリア審査報告書 2022年)。同じ3,000万円超の治療でも、何回目の該当になるかで、その月の自己負担は約9倍違います。どちらの場合も、1年の自己負担は年間上限の53万円で止まります。
上限の式に入らない出費
高額療養費の上限がかかるのは、保険診療の自己負担だけです。入院中の食事代、差額ベッド代、通院や付き添いの交通費・宿泊費は別に払います。CAR-T細胞療法は、2022年の審査報告書で、緊急時に十分対応できる医療施設で使うことが承認条件とされており(PMDA キムリア審査報告書 2022年)、受けられる施設が近くにない人では、この上限の外の出費が大きくなることがあります。
自由診療の免疫細胞療法の費用は、いくらですか?
国のシステムで公開されている計画8件では、1回の投与あたり30万円から93万5,000円で、検査料などは別でした。
自由診療の免疫細胞療法は、医療機関が料金を決めます。厚生労働省の「e-再生医療」では、治療として行われている再生医療等提供計画の一部が公開されています(厚生労働省「e-再生医療」公開の再生医療等提供計画(治療)2026年11月1日閲覧)。がんを対象と明記した免疫細胞療法の計画のうち、料金を書いた文書を開けた8件を整理すると、次のとおりです。
| 治療の種類(計画の表記) | 1回の投与あたりの費用(計画に書かれた額) |
| 活性化リンパ球・αβT細胞 | 30万円(税別)、39万6,000円(税込) |
| 活性化リンパ球とNK細胞 | 30万円または45万円(細胞の量による。税の表示なし) |
| NK細胞 | 36万円(税別)、88万円(税込) |
| 樹状細胞(ワクチン、リンパ球との共培養) | 60万円(税別。2件)、66万円(税込)、93万5,000円(税込) |
| 種類の記載なし(がん免疫細胞療法) | 44万円(税込。採血・培養・投与1回分) |
出典:厚生労働省「e-再生医療」で公開された再生医療等提供計画(治療)8件の料金欄(2026年11月1日閲覧)。施設名は記載していない。同じ計画に複数の治療がある場合は、それぞれを数えた
8件のうち6件は、採血のあとや支払いのあとに中止しても返金しないと書いていました。8件すべてで、初診料、相談料、採血料、検査料、細胞の輸送料のいずれかが別にかかるか、別の料金として示されていました。樹状細胞を使う計画の1件は、4〜12回分をまとめて190万円(税別)とする料金も示していました。
保険診療の上限がかからないので、総額は1回の料金に回数を掛けた額に、別料金を足したものになります。がん情報サービスは、自由診療の免疫療法では副作用が出たときの治療費も全額自費になるとしています(がん情報サービス 2025年)。
8件の料金表が示すもの
この8件は、公開文書のうち検索で見つかったもので、自由診療の免疫細胞療法全体の平均や相場ではありません。計画の作成時点の料金で、いまの料金と違う場合があります。また、料金の高さは、効果が確かめられているかどうかを示すものではありません。がん情報サービスは、これらの免疫療法を効果が証明されていないものに分類しています。
保険の免疫療法と自由診療の免疫細胞療法では、効果の確かめ方がどう違いますか?
保険の側は国が試験の結果を審査して承認しています。自由診療の免疫細胞療法は、承認を受けた治療ではありません。
自由診療の免疫細胞療法は承認を受けた治療ではなく、再生医療等提供計画の提出は安全性を確保するための手続きです。効果が証明されていないことと効かないと証明されたことは別で、樹状細胞ワクチンなどの臨床試験でどこまでわかっているかは、樹状細胞ワクチンとはの記事で試験ごとに整理しています。
費用を確かめるとき、何を聞けばよいですか?
保険診療で受けられるか、治療全体でいくらかかるか、副作用が出たときにいくら追加でかかるかを聞きます。
がん情報サービスは、免疫療法を受ける前に医師に確かめる質問の例を挙げています(がん情報サービス 2025年)。費用に関わるものを中心に並べます。
- その治療は、多くの人を対象にした臨床試験で効果が証明されたものか
- 保険診療で受けられるか
- 治療全体で、どれくらいの費用がかかるか
- 副作用が出たとき、その治療に追加でいくらかかるか
- いま受けている治療を続けながら受けられるか
保険診療で新しい治療を受ける道には、治験もあります。費用の扱いはがんの治験に参加するにはの記事で説明しています。使える制度と1か月の見込み額は、病院の医療ソーシャルワーカーや、がん相談支援センターで治療を始める前に確認できます。
409,417円
CAR-T細胞療法(製品価格32,647,761円)を使った月の、高額療養費の上限額(70歳未満・区分ウ、多数回該当でない場合)。
上限があっても、超高額の治療では1%の部分だけで自己負担が月30万円を超えます。
計算の出典:中医協資料(2025年12月)の製品価格、港区・厚生労働省の高額療養費の上限額(2026年8月〜2027年7月診療分)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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自由診療の料金がわかったら、次に知りたいのは、その治療が臨床試験でどこまで確かめられているかです。
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よくある質問
Q免疫療法の費用はいくらですか?
保険で受ける免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法は、薬や製品の価格が高くても、1か月の自己負担に高額療養費の上限がかかります。自由診療の免疫細胞療法は、国のシステムで公開されている計画8件では1回30万円から93万5,000円で、上限はかからず全額自己負担です。
Qキイトルーダの費用は1か月いくらですか?
2026年2月時点の薬価では、1回200mgの薬代は398,924円です。70歳未満で年収約370万〜約770万円の区分なら、自己負担の上限は月85,800円+(総医療費−286,000円)×1%で、4回目からは44,400円、2026年8月から1年の合計は53万円が上限です。
QCAR-T細胞療法の費用は自己負担でいくらですか?
主な3品目(キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)の製品の価格は32,647,761円で、保険診療なので高額療養費の上限がかかります。70歳未満で年収約370万〜約770万円の区分なら、その月の上限は少なくとも409,417円で、多数回該当なら44,400円です。入院中の食事代や交通費などは別にかかります。
Q免疫細胞療法は保険適用になりますか?
樹状細胞ワクチンやNK細胞療法などの免疫細胞療法は、自由診療で行われ、保険は使えません。国立がん研究センターのがん情報サービスは、効果が証明されていない免疫療法に分類し、副作用の治療費も全額自費になるとしています。保険で受けられる細胞療法は、一部の血液のがんのCAR-T細胞療法などです。
Q自由診療の免疫療法に高額療養費は使えますか?
使えません。高額療養費は保険診療の自己負担にかかる上限で、自由診療の費用は対象外です。回数を重ねた分だけ、費用はそのまま積み上がります。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(2025年11月6日更新)
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html - 厚生労働省「市場拡大再算定品目について」(薬価算定組織 2025年10月16日、中医協資料。キイトルーダ点滴静注100mg 199,462円、2026年2月1日適用)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001590728.pdf - 医薬品医療機器総合機構 キイトルーダ点滴静注100mg 審査報告書(2026年7月31日)
https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260911003/170050000_22800AMX00696_A100_1.pdf - 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html - 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf - 港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」(2026年7月31日更新)
https://www.city.minato.tokyo.jp/kyufu/kurashi/hoken/kenkohoken/k-kyufu/kougakuhenkou.html - 全国健康保険協会「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/009/002/index.html - 厚生労働省保険局医療課「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子(案)」中医協 費-2参考(2025年12月)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001623432.pdf - 医薬品医療機器総合機構 キムリア点滴静注 審査報告書(濾胞性リンパ腫、2022年)
https://www.pmda.go.jp/regenerative_medicines/2022/R20220829001/300242000_23100FZX00002_A100_1.pdf - 医薬品医療機器総合機構「承認審査業務(申請・審査等)」
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/0001.html - 厚生労働省医政局研究開発振興課「再生医療等提供計画の提出に関する経過措置期間の終了について」(2015年6月18日)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000150811.pdf - 厚生労働省「e-再生医療」(再生医療等の各種申請等のオンライン手続サイト)
https://saiseiiryo.mhlw.go.jp





