膵臓がんに、これと決まった初期症状はありません。早期で見つかった人の多くは、症状がない段階で別の検査をきっかけに見つかっています。
膵臓は胃の後ろにある、長さ20cmほどの細長い臓器です。消化を助ける膵液をつくる働きと、血糖値を調節するインスリンなどのホルモンをつくる働きがあります(国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん」2026年3月19日更新)。
この記事の内容
膵臓がんに初期症状はありますか?
小さいうちは症状が出にくく、膵臓がんに特有の初期症状はありません。
国立がん研究センターは、膵臓がんについて「小さいうちは症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません」と説明しています(がん情報サービス「膵臓がん」2026年)。
「初期症状」として紹介されることの多い黄疸や背中の痛みは、がん情報サービスでは、がんが進行してくると出る症状として挙げられています。症状は膵臓がん以外の理由でも起こり、膵臓がんでも起こらないことがあるとされています。
日本の14施設が集めた早期の膵臓がん(0期とⅠ期)200例の研究では、症状があったのは20%でした(Kanno A, et al. Multicenter study of early pancreatic cancer in Japan. Pancreatology 2018)。残りの多くは、症状のない段階で検査を受けて見つかっています。
膵臓がんが進行すると、どんな症状が出ますか?
腹痛、食欲不振、おなかの張り、黄疸、体重減少、腰や背中の痛みが出ます。
膵臓は、十二指腸側から膵頭部・膵体部・膵尾部に分けられます。膵臓の中を通る主膵管は、十二指腸乳頭部で、肝臓から胆汁を運ぶ総胆管と合流します。
| 症状 | 起こる理由・特徴 |
| 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) | がんで胆管がふさがり、胆汁の流れが滞るために起こります |
| 尿の色が濃くなる・便が白っぽくなる・かゆみ | 胆汁の流れが滞ると、尿が濃い茶色になる、便の色が白っぽくなる、皮膚がかゆくなることがあります |
| 腹痛・腰や背中の痛み | がんが進行してくると出ることがあります |
| 食欲不振・おなかの張り・体重減少 | がんが進行してくると出ることがあります。膵臓がん以外の理由でも起こります |
| 糖尿病の発症・悪化 | インスリンなどのホルモンが減ることで起こることがあります |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん」(2026年3月19日更新)、同「胆道がん」の症状の項(2026年8月21日更新)をもとに作成
尿・便・かゆみの変化は、胆管がふさがって起こる黄疸に伴う変化として、がん情報サービスの胆道がんのページに記載があります。膵臓がんで胆管がふさがった場合も、同じしくみです。
糖尿病の発症や悪化は、膵臓がんのサインになりますか?
サインになることがあります。膵臓がんがあると、糖尿病が発症したり悪化したりすることがあります。
糖尿病と膵臓がんの関係には、2つの向きがあります。1つは、糖尿病があることが膵臓がんの危険因子になる向きです。もう1つは、膵臓がんが原因で血糖値が上がる向きです。
膵癌診療ガイドライン2025年版は、糖尿病が新たに発症した人や悪化した人に対して、膵臓がんの可能性を考えた精査を行うことを提案しています。推奨の強さは「提案」で、エビデンスの強さはCです(日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン2025 診断G 最終案)。
米国ミネソタ州ロチェスターの住民調査では、50歳以上で糖尿病の基準を初めて満たした2,122人のうち、3年以内に膵臓がんと診断されたのは18人(0.85%)でした。18人のうち10人(56%)は、糖尿病と判定されてから6か月以内に診断されています(Chari ST, et al. Probability of pancreatic cancer following diabetes: a population-based study. Gastroenterology 2005)。
この数字の読み方
0.85%は、新たに糖尿病と判定された50歳以上の人のうち、3年以内に膵臓がんと診断された割合です。言い換えると、99%以上の人は3年以内に膵臓がんと診断されていません。糖尿病の発症は精査を考えるきっかけですが、それだけで膵臓がんを疑う根拠にはなりません。この研究は1950〜1994年に糖尿病と判定された人を追った米国の集計で、今の日本にそのまま当てはまるとは限りません。
血糖値の異常を指摘されたときは、膵臓の検査について医師と相談するとよいと、国立がん研究センターは案内しています。
膵臓がんは、なぜ見つかりにくいのですか?
症状が出にくい場所にあり、体の外からの検査では膵臓全体が見えにくいためです。
- 胃の後ろにある臓器で、小さいがんでは症状が出にくい
- 出る症状は、膵臓がん以外の理由でも起こる
- 腹部超音波(エコー)では、胃や腸のガスのために膵臓全体が見えないことがある
- 腫瘍マーカーだけでは診断できない
- 国の指針で定められた膵臓がんの検診がない
実際に、Ⅰ期で見つかる人は少数です。院内がん登録で2014〜2015年に診断された膵臓がん14,887人のうち、Ⅰ期は2,063人、Ⅱ期6,788人、Ⅲ期2,310人、Ⅳ期3,434人でした(国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム)。
膵臓がんになりやすいのは、どんな人ですか?
血縁者に膵臓がんの人がいる、糖尿病、慢性膵炎、IPMN、喫煙、飲酒、肥満などがリスクを高めます。
国立がん研究センターは、これらの要因が膵臓がんのリスクを高めることがわかっているとしています(がん情報サービス「膵臓がん 予防・検診」2026年3月19日更新)。
| 危険因子 | 内容 |
| 家族歴 | 両親、きょうだい、子どものうち膵臓がんの人が2人以上いる場合を家族性膵がんと呼びます。発症のリスクは高いとされますが、必ず発症するわけではありません |
| 糖尿病 | 危険因子の1つです。新たな発症や悪化は、膵臓がんが原因のこともあります |
| 慢性膵炎 | 炎症が長く続いて膵臓が硬くなる病気で、膵臓がんの危険因子とされています |
| IPMN | 膵管にできる腫瘍で、がんに変化することがあります |
| 喫煙 | 82の研究をまとめた解析で、現在の喫煙者の膵臓がんの相対リスクは1.74でした。禁煙後も少なくとも10年はリスクが高いままでした |
| 飲酒・肥満 | リスクを高める要因として挙げられています |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 予防・検診」(2026年)、Iodice S, et al. Langenbecks Arch Surg 2008
喫煙の数字は、1950〜2007年に発表された82の研究をまとめたメタアナリシスによります(Iodice S, et al. Tobacco and the risk of pancreatic cancer: a review and meta-analysis. Langenbecks Arch Surg 2008)。現在の喫煙者の相対リスクは1.74(95%信頼区間1.61〜1.87)、過去の喫煙者は1.2でした。国立がん研究センターは、膵臓がんの予防として特に禁煙が効果的といわれていると説明しています。
血液型との関係
米国の医療従事者10万7503人を追った2つのコホート研究では、O型に比べてA型・AB型・B型で膵臓がんの発症が多く、調整後のハザード比はそれぞれ1.32、1.51、1.72でした(Wolpin BM, et al. ABO blood group and the risk of pancreatic cancer. J Natl Cancer Inst 2009)。血液型は変えられない要因で、国立がん研究センターの危険因子の一覧には入っていません。
胃の病気で知られるピロリ菌と膵臓がんの関係を調べた研究は、ピロリ菌は膵臓がんの原因かの記事で比べています。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)と言われたら、どうなりますか?
IPMNは良性のこともありますが、がんに変化することがあるため、検査で経過を見ます。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)は、膵管の中にできる、粘液をつくる腫瘍です。IPMNそのものががんに変化することがあり、IPMNがある人は、膵臓の別の場所にがんができることもあるとされています(がん情報サービス「膵臓がん」2026年)。
膵癌診療ガイドライン2025年版は、IPMNがある人に対して、別の場所にできる膵臓がんも考えた精査と経過観察を行うことを提案しています(エビデンスの強さB)。同じく、慢性膵炎のある人、膵臓がんに関わる遺伝子の変化を持つ人、家族性膵がんの家系の人にも、精査や経過観察が提案されています。
IPMNと言われたら、次の検査の時期と、どんな変化があれば詳しく調べるのかを、主治医に確認しておくと見通しが立ちます。
膵臓がんは、どんな検査で調べますか?
血液検査と腹部超音波から始め、造影CT・MRI・超音波内視鏡で詳しく調べ、細胞や組織で確定します。
| 検査 | 何がわかるか・注意点 |
| 血液検査 | アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの膵酵素を調べます |
| 腫瘍マーカー | CA19-9、APOA2アイソフォーム、SPan-1、DUPAN-2、CEA、CA50などが使われます。腫瘍マーカーだけで診断はできません |
| 腹部超音波(エコー) | 痛みのない検査で、最初の段階で行われます。ガスのために膵臓全体が見えないことがあります |
| 造影CT | 膵臓がんが疑われたときに行う画像検査です。造影剤を使った検査が推奨されています |
| MRI・MRCP | MRIは膵管をCTより細かく観察できます。MRCPは造影剤や内視鏡を使わずに胆管・膵管を写します |
| 超音波内視鏡(EUS) | 胃や十二指腸から膵臓を観察します。針で組織を採るEUS-FNAで病理診断を行うこともあります |
| ERCP | 他の検査で確定しないときに、膵管や胆管を造影し、膵液の細胞を調べます。急性膵炎などの合併症があります |
| PET | がんと炎症の区別がつきにくく、膵臓がんがあるかを調べる目的では勧められていません。転移を調べる病期診断の目的での実施は提案されています |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん」(2026年3月19日更新)、日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン2025 診断G 最終案
膵癌診療ガイドライン2025年版では、膵臓がんを疑う所見がある人に、最初の検査として腹部超音波を行うことが提案されています。超音波内視鏡は、合併症の頻度が0.3%であることや、行える施設が限られることも考えたうえで、行うことが提案されています。
検査の詳しい違いは、腫瘍マーカーの数値の読み方を腫瘍マーカーとは、画像検査の違いをCTとMRIの違い、PETの向き不向きをPET検査でがんはどこまでわかるかの記事で整理しています。
確定診断とステージ
がんかどうかと、がんの種類は、採った細胞や組織を顕微鏡で調べる病理診断で確定します。あわせて、がんの大きさ、周囲への広がり、リンパ節転移、遠隔転移を調べて、0期からⅣ期のステージを決めます。肝転移や腹膜播種が疑われるときは、病期を診断する目的で審査腹腔鏡を行うことがあります。
膵臓がんの検診はありますか?
国の指針で定められた膵臓がんの検診はありません。
がん検診は、症状のない人を対象に、がんで亡くなる人を減らすことを目的に行われます。国が定める指針には、膵臓がんの検診は含まれていません(がん情報サービス「膵臓がん 予防・検診」2026年)。
人間ドックなどで膵臓を調べる任意の検査を受ける場合は、メリットとデメリットを理解したうえで受けることが勧められています。家族性膵がんの家系で心配な人は、遺伝カウンセリングや遺伝子検査について医師に相談できます。専門施設の情報は、がん相談支援センターで確認できます。
膵臓がんが早く見つかると、何が変わりますか?
見つかった時期で、選べる治療と生存率が大きく違います。
膵臓がんの治療は、まず手術で取り切れるかどうかで分かれます。「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」に分けて、手術、薬物療法、放射線治療を組み合わせます(がん情報サービス「膵臓がん」2026年)。
院内がん登録で2014〜2015年に診断された膵臓がんの5年生存率(ネット・サバイバル)は、Ⅰ期53.4%、Ⅳ期1.6%でした(国立がん研究センター 院内がん登録 2023年3月公表)。日本膵臓学会の膵癌登録(1981〜2007年の3万2619例)では、UICC分類の0期の5年生存率は85%と報告されています(Egawa S, et al. Japan Pancreatic Cancer Registry; 30th year anniversary. Pancreas 2012)。
全国がん登録では、2023年に膵臓がんと診断されたのは47,540例、2024年に膵臓がんで亡くなったのは41,235人です。2018年に診断された人の5年相対生存率は13.2%でした(国立がん研究センター がん統計「膵臓」2026年7月22日確認)。生存率の種類と読み方は、がんの生存率の記事で説明しています。
早期の膵臓がんの研究でわかっていないこと
早期の膵臓がん200例の研究(Kanno A, et al. Pancreatology 2018)は、早期で見つかった人をさかのぼって集めた研究です。症状のない人にどの検査を、どの間隔で行えば膵臓がんで亡くなる人が減るかは、この研究からはわかりません。0期とⅠ期は、この研究の施設で膵臓がん全体のおよそ0.7%と3%でした。
20%
早期(0期・Ⅰ期)で見つかった膵臓がんのうち、症状があった人の割合です。
早期の膵臓がんの多くは、初期症状からではなく、症状のない段階の検査で見つかっています。
出典:Kanno A, et al. Pancreatology 2018(日本の14施設、0期・Ⅰ期200例)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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検査の結果で、腫瘍マーカーの数値を見て不安になる人は少なくありません。
腫瘍マーカーとは?数値が高くて不安なとき、何を見ればいいのか
CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーが、何のために測られ、どこまでわかるのかを整理した記事です。数値が高くてもがんとは限らない理由と、がんでも上がらない場合を説明しています。
よくある質問
Q膵臓がんの初期症状は何ですか?
膵臓がんに特有の初期症状はありません。国立がん研究センターは、小さいうちは症状が出にくいと説明しています。進行すると、腹痛、食欲不振、おなかの張り、黄疸、体重減少、腰や背中の痛みが出ます。どれも膵臓がん以外の病気でも起こります。
Q背中の痛みは膵臓がんのサインですか?
腰や背中の痛みは、膵臓がんが進行したときに出ることがある症状の1つです。ただし、この症状は膵臓がん以外の理由でも起こり、膵臓がんでも起こらないことがあります。痛みが続く、体重が減る、血糖値が急に悪くなったなど、変化が重なるときは受診して相談してください。
Q糖尿病になると膵臓がんになりやすいですか?
糖尿病は膵臓がんの危険因子の1つです。逆に、膵臓がんが原因で糖尿病が発症したり悪化したりすることもあります。米国の研究では、50歳以上で糖尿病と新たに判定された2,122人のうち、3年以内に膵臓がんと診断されたのは18人(0.85%)でした(Chari, Gastroenterology 2005)。
Q健康診断で膵臓がんは見つかりますか?
国の指針で定められた膵臓がんの検診はありません。人間ドックなどで任意の検査を受ける場合は、メリットとデメリットを理解したうえで受けることが勧められています。血糖値などの異常を指摘されたときは、膵臓の検査について医師と相談するとよいとされています。
Q膵臓がんの腫瘍マーカーだけで診断できますか?
できません。CA19-9などの腫瘍マーカーが使われることはありますが、腫瘍マーカーだけで膵臓がんと診断することはできないとされています。画像検査と、細胞や組織の検査を組み合わせて診断します。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 全ページ」(2026年3月19日更新、膵癌診療ガイドライン2025年版に基づく)
https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/print.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 予防・検診」(2026年3月19日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/prevention_screening.html - 国立がん研究センター がん統計「膵臓」(2026年7月22日確認)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/10_pancreas.html - 国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 膵臓がん 2014-2015年5年生存率
https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c11 - 国立がん研究センター がん情報サービス「胆道がん 全ページ」(2026年8月21日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/biliary_tract/print.html - 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン2025 推奨作成関連資料 診断G 最終案
https://www.suizou.org/pdf/pcc/2025/m01-2.pdf - Kanno A, et al. Multicenter study of early pancreatic cancer in Japan. Pancreatology. 2018;18(1):61-67. doi:10.1016/j.pan.2017.11.007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29170051/ - Chari ST, et al. Probability of pancreatic cancer following diabetes: a population-based study. Gastroenterology. 2005;129(2):504-11. doi:10.1016/j.gastro.2005.05.007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16083707/ - Iodice S, et al. Tobacco and the risk of pancreatic cancer: a review and meta-analysis. Langenbecks Arch Surg. 2008;393(4):535-45. doi:10.1007/s00423-007-0266-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18193270/ - Wolpin BM, et al. ABO blood group and the risk of pancreatic cancer. J Natl Cancer Inst. 2009;101(6):424-31. doi:10.1093/jnci/djp020
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19276450/ - Egawa S, et al. Japan Pancreatic Cancer Registry; 30th year anniversary: Japan Pancreas Society. Pancreas. 2012;41(7):985-92. doi:10.1097/MPA.0b013e318258055c
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22750974/





