PET検査でがんはどこまでわかる?苦手ながんと被ばくリスク・保険の不安

PET検査でわかるのは、体のどこでブドウ糖が多く使われているかです。
光ればがん、光らなければ安心、とは言えない検査です。

この記事では、PET検査の仕組み、がんについて何がわかり何がわかりにくいか、PET-CTとの違い、検査の流れ、被ばく、保険が使える条件、検診として受けるPETの位置づけを、国立がん研究センターと日本核医学会の資料、診療報酬の通知をもとに整理します。

PET検査は、何を見ている検査ですか?

体のどこでブドウ糖が多く使われているかを、画像にする検査です。

がんの検査で行われるPETの多くは、FDGという薬を使うFDG-PETです。FDGは、ブドウ糖に放射性のフッ素を付けたものです。これを静脈から注射し、FDGが体のどこに集まったかを撮影します(国立がん研究センター がん情報サービス「PET検査」2024年)。この記事では、FDG-PETをPET検査と呼びます。

がん細胞は、ふつうの細胞より多くのブドウ糖を取り込みます。そのため、FDGがたくさん集まった場所には、がんがある可能性が高いと考えます。

押さえておきたいのは、PETが映しているのは「がん」そのものではなく「ブドウ糖の取り込み」だということです。がん以外でもブドウ糖を多く使う場所は光り、ブドウ糖をあまり使わないがんは光りにくくなります。PETの得意と苦手は、すべてこの仕組みから出てきます。

PET検査で、がんの何がわかりますか?

がんの広がりや転移、治療の効果、再発の有無を、ほぼ全身まとめて調べられます。

がん情報サービスは、PET検査の目的として次の3つを挙げています。

  • 治療の前に、がんの広がりや、ほかの臓器への転移がないかを調べる
  • 治療の効果を判定する
  • 治療のあとに、再発がないかを確かめる

一度にほぼ全身を撮影できること、がん細胞が活発に活動しているかという「がんの状態」も見られることが特徴です。多くのがんで行われますが、特に頭頸部がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、肺がん、乳がん、大腸がん、膵臓がんなどで有用とされています(がん情報サービス 2024年)。

一方で、PET検査はがんかどうかを最終的に決める検査ではありません。がんがあるか、どんな種類のがんかは、組織や細胞を顕微鏡で調べる病理検査で確かめます。

PET検査が苦手ながんはありますか?

あります。ブドウ糖をあまり取り込まないがん、小さいがん、もともとFDGが集まる臓器のそばのがんは、見つけにくくなります。

PET検査でがんがわかる割合(感度)をがんの種類別に比べた図。大腸がん90.2%、甲状腺がん87.9%、乳がん87.2%、前立腺がん44.7%、胃がん26.6%
PETを使ったがん検診での感度(がんがあった人のうち、FDG-PETで陽性になった割合)。胃がんでは73.4%が陽性になっていません。
出典:日本核医学会 PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン(2012改訂)」に引用された全国調査

日本核医学会のPETがん検診ガイドラインは、FDGの集まりが乏しいがんとして、腎細胞がん、前立腺がん、膀胱がん、胃の硬がん(スキルス)、高分化型の肺腺がん、高分化型の肝細胞がんを挙げています(日本核医学会 PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン(2012改訂)」)。

早期の胃がんについて、同じガイドラインは「早期癌の発見に関しては、FDG-PET検査は無力であることを認識すべきである」とまで書いています。

見つけにくくなる理由は、大きく4つに分けられます。

見つけにくくなる理由 例
がんがブドウ糖をあまり取り込まない 腎細胞がん、前立腺がん、膀胱がん、胃の硬がん、高分化型の肺腺がん・肝細胞がん
がんと関係なく、もともとFDGが集まる臓器 脳、心臓、消化管、肝臓、咽頭の粘膜、泌尿器
病変が小さい、細胞の密度が低い 小さな乳がんや肺がん、尿路や脳に近い病変
検査のときに血糖値が高い 糖尿病などで高血糖の状態

1行目と3行目は日本核医学会「FDG-PETがん検診ガイドライン(2012改訂)」、2行目と4行目はがん情報サービス「PET検査」(2024年)による。

FDGは尿と一緒に体の外に出るため、膀胱や腎臓のあたりは、がんがなくても強く光ります(がん情報サービス 2024年)。膀胱がんが見つけにくいのは、がん自体の性質に加えて、この位置の問題もあります。

検診のデータで見ると、差ははっきりします。同ガイドラインが引く全国調査では、FDG-PETの感度は大腸がん90.2%、甲状腺がん87.9%、乳がん87.2%に対し、前立腺がん44.7%、胃がん26.6%でした。

PETで光ったら、がんなのですか?

そうとは限りません。炎症や良性の病変にもFDGは集まります。

がん情報サービスは、炎症を起こしている組織には、がんと関係なくブドウ糖が集まりやすいと説明しています。日本核医学会のガイドラインによれば、肺で光ったのにがんではなかったものの多くは活動性の炎症です。例として次のものが挙がっています。

  • 肺:結核、非結核性抗酸菌症、サルコイドーシス
  • 甲状腺:良性の濾胞腺腫
  • 前立腺:前立腺炎、前立腺肥大症

大腸は、腸そのものにもFDGが集まります。同ガイドラインは「大腸癌PET検診の最大の問題は偽陽性が多いことであろう」と書いています。偽陽性とは、がんがないのに陽性と出ることです。引用されている全国調査では、大腸の陽性適中率(陽性になった人のうち、実際にがんだった割合)は22.6%でした。

PETで光った場所は、その場所に合ったほかの検査で確かめてから判断することになります。

PET-CTは、PETと何が違いますか?

PETの画像とCTの画像を重ね合わせ、光った場所が体のどこにあるかを正確に示せる検査です。

PETだけの画像では、光っていることはわかっても、それがどの臓器のどの位置なのかがわかりにくいことがあります。PET-CTでは同じ装置でCTも撮り、2つの画像を重ねることで、がんの有無や位置、広がりを高い精度で診断できるとされています。MRIと組み合わせることもあります(がん情報サービス 2024年)。

検診のデータにも差が出ています。日本核医学会のガイドラインが引く2005年度の全国調査では、肺がんの感度と陽性適中率は、PET専用機で59%と25.0%、PET/CTで100%と47.1%でした。

CTとMRIそれぞれで何がわかるかは、CT・MRI検査でがんはどこまでわかるかにまとめています。

PET検査は、どんな流れで受けますか?

検査の5〜6時間前から糖分をとらず、FDGを注射して1時間前後休んだあと、30分程度撮影します。

がん情報サービスが示している流れは次のとおりです。

  1. 検査の5〜6時間前から、糖分を含む飲食物をとらない
  2. 検査の直前に排尿する
  3. FDGを静脈から注射し、1時間前後安静にして、FDGが取り込まれるのを待つ
  4. 撮影する(30分程度)。画像で確認しにくいときは、時間をおいてもう一度撮ることがある
  5. 検査のあとは水分を多めにとり、排尿を促す

糖尿病などで血糖値が高いと、正確な結果が出ないことがあります。妊娠している人、妊娠している可能性がある人も含め、検査の前に医師に伝えます(がん情報サービス 2024年)。細かい注意は施設ごとに異なるため、受ける施設の説明に従います。

PET検査の被ばくは、大丈夫ですか?

FDGによる被ばくは1回約3.5mSvで、健康への影響が確認されている100mSvより小さい量です。PET-CTでは、これにCTの分が加わります。

がん情報サービスは、人の健康に影響が確認されている放射線の1回量を100mSv以上とし、1回のPET検査でFDGから受ける量を約3.5mSvとしています。FDGの放射線は時間とともに弱まり、多くは尿と一緒に体の外に出ます。被ばくの影響より検査の利益が大きい場合に行う、というのが前提です(がん情報サービス 2024年)。

この3.5mSvは、成人にFDGを185MBq投与した場合の実効線量です(PET検査施設における放射線安全の確保に関する研究班「FDG-PET検査における安全確保に関するガイドライン」2005年)。

見落とされやすいのは、PET-CTの被ばくの量を大きく左右するのが、FDGよりもCTの撮り方だという点です。日本核医学会のガイドラインは、機種にもよるとしたうえで、CTによる被ばくを、PET画像の補正(吸収補正)のための条件では〜2mSv程度、PETと重ねて読む画像(融合画像)の条件では〜12mSv程度としています(日本核医学会 2012改訂)。

同じ「PET-CT」でも、FDGの約3.5mSvに加わるCTの分が、撮る条件によって〜2mSv程度にも〜12mSv程度にもなりうるということです。気になる場合は、CTをどの条件で撮るのかを検査を受ける施設に聞くことができます。

PET検査に保険は使えますか?費用はいくらですか?

がんと診断されたあと、ほかの検査では病期(ステージ)や転移・再発がはっきりしないときに、保険で受けられます。

がん情報サービスは、PET検査は「他の検査、画像診断による病期診断や転移・再発の診断が確定できない場合に保険診療で受けることができます」と説明しています。

診療報酬の通知は、FDGを使うPETの対象を、悪性腫瘍(早期胃癌を除き、悪性リンパ腫を含む。)について「他の検査又は画像診断により病期診断又は転移若しくは再発の診断が確定できない患者に使用する」と定めています(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」医科点数表・留意事項通知 E101-2、E101-3)。この文言から読み取れることは3つあります。

  • 対象は、病期の診断と、転移・再発の診断です。がんかどうかを見分ける目的は、悪性腫瘍の欄には書かれていません
  • 早期の胃がんは対象から外れています。通知は理由を書いていませんが、前の章のとおり、日本核医学会のガイドラインは早期胃がんの発見にPETは無力だとしています
  • ほかの検査や画像診断で診断が確定できないことが条件です

がん以外では、外科的な切除が必要とされる難治性のてんかん、高安動脈炎などの大型血管炎にも、保険の対象があります(同通知)。

検査料の点数は次のとおりです。1点は10円です。

検査(FDGを使う場合) 点数(令和8年度) 3割負担の場合の検査料
PET-CT(E101-3) 8,625点 25,875円
PET(E101-2) 7,500点 22,500円

これは検査料の部分だけで、診察料などは別にかかります。施設基準の届け出をしていない医療機関で行う場合は、所定点数の100分の80で計算します。自己負担の割合は、年齢や所得によって変わります。

保険の点数表では、PET-CTとして算定するのは診断用の画像を得るためにCTを撮った場合で、吸収補正のためだけのCTはこれに当たらないとされています(同通知)。前の章の被ばくの話と、ここでつながります。

がん検診としてPETを受ける意味はありますか?

PETによるがん検診で、がんで亡くなる人が減るかどうかは、まだ十分なデータがありません。

がん情報サービスは、PETによるがん検診について「がんがどれくらいの精度で発見され、がんで亡くなる人がどれくらい減少するのかなどは、まだ十分なデータがありません」としています。そして「現在国内で実施されているPET検診は全て、国が推奨するがん検診ではなく、人間ドックなどで行われる任意の検診です」と書いています(がん情報サービス 2024年)。保険は使えず、費用は全額自己負担です。

PET検診を行う側の日本核医学会のガイドラインも、冒頭で「PETがん検診が有効であるというエビデンスが得られたから策定されたのではない」と断っています。そのうえで、PETだけでなく、ほかの検査を組み合わせた総合的な検診を勧めています。

  • 大腸:便潜血検査と併用する
  • 乳:超音波検査やマンモグラフィと併用する
  • 肺:胸部CTを併用する
  • 前立腺:PSAやMRIと併用する

組み合わせる理由は、次の数字によく表れています。

104/204

ある施設のPETがん検診で見つかったがん204件のうち、FDG-PETで見つかったのは104件でした。
残りの100件は、PETでは陰性でした。

日本核医学会 PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン(2012改訂)」。1994年10月〜2003年12月、7,793人・18,919回の検診

「PET検診」という名前で受けていても、見つかったがん204件のうち100件(49.0%)は、PET以外の検査が見つけていたことになります。PETだけを受けて「異常なし」と言われた場合、それはPETが見つけられる範囲で異常がなかったという意味です。

この数字の古さについて

104/204は、1施設で1994〜2003年に行われた検診の数字で、PET-CTが広まる前の時期を含みます。肺がんの例のとおり、PET-CTでは感度が変わりうるため、いまの検診にそのまま当てはまるとは言えません。また、これは「見つかったかどうか」の数字で、検診によってがんで亡くなる人が減ったかどうかを示すものではありません。

PET検診で異常を指摘されたあとの考え方は、ほかのがん検診と共通する部分があります。がん検診で要精密検査と言われたときの記事も参考になります。

PET検査の画像が示しているのは、ブドウ糖がどこで多く使われているかという一点です。だから、光った場所がすべてがんとは限らず、光らない場所にがんがないとも限りません。がんと診断されたあとに広がりを調べる検査としては強く、症状のない人のがん探しとしては、まだ確かめられていないことが多い。その違いは、保険が使える条件にそのまま表れています。

監修者

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

PET検査でどんながんがわかりますか?

PET検査は、がんの広がりや転移、治療の効果、再発の有無を、ほぼ全身まとめて調べる検査です。国立がん研究センターのがん情報サービスは、特に頭頸部がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、肺がん、乳がん、大腸がん、膵臓がんなどで有用としています。

PET検査でわからないがんはありますか?

あります。日本核医学会のガイドライン(2012改訂)は、腎細胞がん、前立腺がん、膀胱がん、胃の硬がん、高分化型の肺腺がん・肝細胞がんをFDGの集まりが乏しいがんとして挙げ、早期胃がんの発見にはFDG-PETは無力だとしています。小さい病変や、脳・泌尿器など、もともとFDGが集まる場所の近くも見つけにくくなります。

PET検査は保険適用になりますか?

がんと診断されたあと、ほかの検査や画像診断では病期や転移・再発の診断が確定できないときに保険で受けられます。診療報酬の通知では、対象の悪性腫瘍から早期胃がんが除かれ、悪性リンパ腫は含まれています。症状のない人が検診として受けるPETは保険が使えず、全額自己負担です。

PET検査の被ばく量はどのくらいですか?

1回のPET検査でFDGから受ける量は約3.5mSvです(がん情報サービス)。PET-CTではCTの分が加わり、日本核医学会のガイドラインは、機種にもよるとしたうえで、補正用の条件で〜2mSv程度、融合画像の条件で〜12mSv程度としています。

PET検診だけで、ほかのがん検診の代わりになりますか?

がん情報サービスは、PET検診でがんで亡くなる人がどれくらい減るかは、まだ十分なデータがないとしています。日本核医学会のガイドラインも、便潜血検査、超音波検査やマンモグラフィ、胸部CT、PSAなど、ほかの検査との組み合わせを勧めています。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「PET検査」2024年6月5日更新・確認
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/pet.html
  2. 日本核医学会 PET核医学分科会「FDG-PETがん検診ガイドライン(2012改訂)」
    https://jsnm.org/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/gankenshin_gl2012_120910.pdf
  3. PET検査施設における放射線安全の確保に関する研究班「FDG-PET検査における安全確保に関するガイドライン」2005年
    https://www.radiology.jp/content/files/16.pdf
  4. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(医科点数表、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について)2026年
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

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