抗がん剤を減らすと効果が落ちるかは一律ではなく、くじ引きの試験で落ちた例も、落ちなかった例もあります。
抗がん剤の量は、副作用の重さを決まった物差しで測り、薬ごとに決められた手順で減らしたり、休んだりします。この記事では、その基準と、減量と効果の関係を調べた研究を、研究の組み立て方の違いとあわせて整理します。
この記事の内容
抗がん剤の減量とは、休薬や延期と何が違うのですか?
減量は1回の量を減らすこと、休薬と延期は投与を止めたり遅らせたりすることで、どれも治療を続けるための調整です。

国立がん研究センターは、がんの薬物療法では標準的な治療のスケジュールや薬の量などが定められているものの、ひとりひとりの状態にあわせて調整することもあると説明しています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年3月11日更新)。最初の量の決まり方(体表面積など)は、細胞障害性抗がん薬とはの記事で説明しています。
| 調整 | 何をするか |
| 減量 | 1回に使う薬の量を減らします。「1段階減量」のように、段階で決められている薬があります |
| 休薬 | 副作用が軽くなるまで、薬を止めて待ちます |
| 延期 | 次の回の開始を遅らせます。血液検査の値が基準に届かないときなどに行います |
| 中止 | その薬をやめます |
出典:ゼローダ錠300 電子添文(2026年2月改訂 第4版)、エルプラット点滴静注液 電子添文(2025年9月改訂 第6版)をもとに作成
スケジュールにはじめから組み込まれた休みの期間は、副作用による休薬とは別のものです。サイクルの組み方は、抗がん剤の期間とサイクルの記事で扱っています。
予定していた量と間隔に対して、実際に投与できた量の割合を、相対用量強度(RDI)と呼びます。
減量、休薬、延期は、どれもRDIを下げます。「減量すると効かなくなるか」を調べた研究の多くは、このRDIで患者さんを分けて比べています。
減量や休薬は、何を基準に決まるのですか?
副作用の重さをCTCAEという共通の物差しでグレード1〜5に分け、そのグレードと出た回数で決めます。
CTCAE(有害事象共通用語規準)は、米国国立がん研究所が作った副作用の物差しで、日本では日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が日本語訳を作っています。v5.0の日本語訳JCOG版は、グレードを次のように定めています(JCOG「CTCAE v5.0 日本語訳JCOG版」)。
| グレード | 定義 |
| 1 | 軽症;症状がない、または軽度の症状がある;臨床所見または検査所見のみ;治療を要さない |
| 2 | 中等症;最小限/局所的/非侵襲的治療を要する;年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限 |
| 3 | 重症または医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない;入院または入院期間の延長を要する;身の回りの日常生活動作の制限 |
| 4 | 生命を脅かす;緊急処置を要する |
| 5 | 有害事象による死亡 |
出典:有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版
身の回り以外の日常生活動作は、食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理などです。身の回りの日常生活動作は、入浴、着衣・脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服ができて、寝たきりではない状態をさします。
たとえば手足のしびれ(末梢性感覚ニューロパチー)は、中等度の症状で身の回り以外の日常生活動作が制限されるとグレード2、高度の症状で身の回りの日常生活動作が制限されるとグレード3です。下痢は、ふだんより排便が1日4〜6回増えるとグレード2、7回以上増えるとグレード3です。
グレードは、生活にどれだけ響いているかで決まる部分があります。しびれや下痢の程度は本人にしかわからないため、本人が伝える症状が、減量するかどうかの判断材料になります。副作用の伝え方と、副作用を抑える治療は、支持療法とはの記事で扱っています。
薬ごとの減量の決まりは、どこに書いてあるのですか?
薬の添付文書(電子添文)や治療計画(レジメン)に、グレードと回数ごとの休薬・減量の手順が書かれています。
飲み薬のカペシタビン(商品名ゼローダ)の電子添文には、副作用が出たときの休薬・減量の規定があります(B法・C法の場合。ゼローダ錠300 電子添文 2026年2月改訂 第4版)。
| グレード | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 |
| 1 | 休薬・減量なし | 休薬・減量なし | 休薬・減量なし | 休薬・減量なし |
| 2 | グレード0〜1に戻るまで休薬。同じ量で再開 | 休薬。1段階減量して再開 | 休薬。2段階減量して再開 | 中止 |
| 3 | 休薬。1段階減量して再開 | 休薬。2段階減量して再開 | 中止 | — |
| 4 | 中止。続けることが望ましいと医師が判断した場合は、休薬して2段階減量で再開 | — | — | — |
出典:ゼローダ錠300 電子添文(2026年2月改訂 第4版)7.2.1をもとに作成。胃がんの術後の治療では、グレード2の血液以外の副作用にグレード3の規定を使うことがあるとされています
同じ電子添文は「一旦減量した後に増量は行わないこと」としています。この薬では、一度減らした量を、あとで元に戻さない決まりです。
点滴のオキサリプラチン(商品名エルプラット)の電子添文では、カペシタビンと組み合わせる治療(XELOX)でグレード3以上の副作用が出た場合、1回目は100mg/m²に、2回目は85mg/m²に減らすと定められています。次の回を始める目安は、好中球数1,500/mm³以上、血小板数75,000/mm³以上で、届かないときは延期します(エルプラット点滴静注液 電子添文 2025年9月改訂 第6版)。
オキサリプラチンでは、感覚性の機能障害があらわれた場合に、減量、休薬、中止などの処置を行うこととされています。しびれがいつまで続くかは、抗がん剤のしびれはいつまで続くかの記事で説明しています。
カペシタビンの電子添文は、これらの規定を「参考にして」休薬・減量を行うこととしています。実際には、がんの種類、治療の目的、体の状態をあわせて、主治医が判断します。
なお、電子添文の規定でグレードを判定した物差しは、上の表のv5.0ではありません。ゼローダの国内臨床試験ではNCI-CTC(Ver.2.0)またはCTCAE v3.0/v4.03が、エルプラットのXELOX法の減量基準ではCTCAE version 3.0が使われています(ゼローダ錠300 電子添文 7.2.1の注、エルプラット点滴静注液 電子添文 7.5の注8)。版によってグレードの細かな定義が違うことがあるため、v5.0の表は副作用の重さをつかむ目安として読みます。
「減量した人は経過が悪い」という研究は、何を示しているのですか?
減量した人の経過が悪いという関連は報告されていますが、その多くは、減量が原因かどうかまではわからない比べ方です。
進行した固形がんの研究をまとめた2021年のメタアナリシスがあります。2013〜2020年に発表された研究から22本を選び、7本を統合しました。カルボプラチンを使う治療の4研究(乳がん、非小細胞肺がん、卵巣がん)では、RDIが80%または85%未満の人は、それ以上の人より全生存期間が短く、ハザード比は1.17(95%信頼区間1.07〜1.27)でした。FOLFOXなどを使う3研究(大腸がん、膵臓がん)では1.39(95%信頼区間1.03〜1.89)でした(Nielson CM, et al. Oncologist 2021)。
こうした研究は、量をくじ引きで割り当てたものではありません。治療を進めた結果として「どれだけ投与できたか」で、あとから患者さんを分けています。量が少なくなった人と、予定どおり受けられた人とでは、量のほかにも違いがあります。副作用が強く出て減量が必要になった人は、もともと体の状態が違うことがあります。早く再発した人は、その時点で治療が終わるため、投与できた量が少なくなります。
この偏りの大きさを示した研究があります。Ⅱ期・Ⅲ期の乳がんの手術後にCMF療法を2年間受けた256人を、ふつうの方法で比べると、予定に近い量を受けた人ほど再発しないで過ごした期間が長く、量と効果の関係があるように見えました。ところが、6か月、12か月、24か月の時点でまだ治療を続けていた人に限って比べると、この関係は見られなくなりました。著者らは、量が少なかった人の経過が悪く見えたのは、治療中の2年間に再発した人が含まれていたためと考えられるとしています(Geller NL, et al. Cancer 1990)。
減量の影響と、減量が必要になった理由が混ざる
減量した人と減量しなかった人の差には、減量そのものの影響と、減量が必要になった理由(体の状態、早い再発など)の影響が混ざっています。実際に投与できた量で分ける比べ方では、この2つを分けきれません。反対に、Geller 1990の結果も1つの試験の乳がんの患者さんを調べたもので、どのがんでも減量の影響がないことを示したものではありません。
くじ引きで量や期間を比べた試験では、何がわかっていますか?
少ない量で再発が増えた試験も、減らしても劣らなかった試験もあり、結果はがんの種類と治療の目的で分かれます。
量の影響を確かめるには、はじめから量や期間をくじ引き(ランダム化)で割り当てて比べる必要があります。そうすれば、体の状態などの違いが両方の群に同じように分かれます。この記事で確認した試験は次の3つです。
| 試験 | 対象と比べたもの | 結果 |
| CALGB 8541(1994年) | リンパ節転移のあるⅡ期の乳がんの手術後、1,572人。シクロホスファミド・ドキソルビシン・フルオロウラシルの量と強さが違う3群 | 総量が半分の低用量群は、ほかの2群より無病生存期間(P<0.001)と全生存期間(P=0.004)が短かった |
| IDEA(2018年) | Ⅲ期の結腸がんの手術後、6つの試験の12,834人。オキサリプラチンを含む治療を3か月で終えるか、6か月続けるか | 3年無病生存率は3か月74.6%、6か月75.5%。全体では、3か月が劣らないことは示されなかった(ハザード比1.07、95%信頼区間1.00〜1.15) |
| GO2(2021年) | 高齢または体の弱い人の進行胃・食道がん、514人。オキサリプラチンとカペシタビンを標準量の100%、80%、60%で開始 | 60%群の無増悪生存期間は100%群に劣らなかった(ハザード比1.10、95%信頼区間0.90〜1.33) |
出典:Wood WC, et al. N Engl J Med 1994、Grothey A, et al. N Engl J Med 2018、Hall PS, et al. JAMA Oncol 2021
乳がんの手術後では、量を減らした群の経過が悪かった
CALGB 8541は、追跡期間の中央値3.4年の時点で、低用量群の無病生存期間と全生存期間が短いという結果でした。中用量群と高用量群の差は、統計的に意味のある差ではありませんでした。著者らは、最大の効果を得るには、この治療の量を減らすべきではないと結論しています(Wood WC, et al. N Engl J Med 1994)。
結腸がんの手術後では、薬の組み合わせで結果が分かれた
IDEAでは、カペシタビンと組み合わせる治療(CAPOX)では3か月が6か月に劣らず(ハザード比0.95)、FOLFOXでは劣らないことが示されませんでした(ハザード比1.16)。再発の危険が高いT4またはN2の人では、探索的な解析で6か月のほうが良い結果でした(ハザード比1.12)。グレード2以上のしびれは、FOLFOXで3か月16.6%、6か月47.7%、CAPOXで3か月14.2%、6か月44.9%でした(Grothey A, et al. N Engl J Med 2018)。比べたのは1回の量ではなく治療期間で、オキサリプラチンの総量を減らすことにあたります。手術後の抗がん剤の目的は、術後補助化学療法とはの記事で説明しています。
高齢・体の弱い人の進行がんでは、60%でも劣らなかった
GO2の対象は、年齢や体の弱さのために標準量の併用療法が向かないと主治医が判断した人です。年齢の中央値は76歳で、58%が重度の虚弱と評価されていました。グレード3以上の血液以外の副作用は、100%群38%、80%群36%、60%群23%でした。全生存期間のハザード比は、60%群で1.14(95%信頼区間0.92〜1.41)でした。著者らは、高齢または虚弱な人では、減らした量での治療を考慮すべきだとしています(Hall PS, et al. JAMA Oncol 2021)。
「減らしても劣らない」と言える範囲
GO2は、標準量が向かないと判断された高齢・虚弱な人の、進行胃・食道がんの試験です。治ることを目指す手術後の治療や、ほかのがんにそのまま当てはまるとは限りません。乳がんの手術後を調べたCALGB 8541では、量を減らした群の経過が悪くなっています。また「劣らない」は「同じ」という意味ではありません。あらかじめ決めた許容範囲の中に差が収まった、という意味です。
最初から少ない量で始める治療は、効果が確かめられていますか?
高齢や体の弱い人で60%から始めた試験はありますが、それより大幅に少ない量を標準量とくじ引きで比べ、生存期間で劣らないと示したランダム化試験は、確認できる範囲ではありません。
量をくじ引きで比べた上の試験のうち、もっとも少ない開始量はGO2の60%です。標準量の半分を下回る量から始める治療を、標準量とくじ引きで比べて生存期間を確かめたランダム化試験の報告は、確認できる範囲ではありません。保険診療の外の自由診療で行う場合は、薬代を含む費用が全額自己負担になります。量を減らしても副作用はなくならず、GO2の60%群でもグレード3以上の血液以外の副作用が23%にみられました。
がんが小さくなった画像や、少数の患者さんの経過は、くじ引きで比べた生存期間の結果の代わりにはなりません。一方で、比べた結果がまだないことは、効かないことが証明されたこととは別です。
減量を提案されたとき、主治医に何を確かめればよいですか?
どの副作用がどのグレードか、何をどれだけ減らすのか、治療の目的に照らして減量がどう影響するかを確かめます。
- どの副作用が、CTCAEのどのグレードと判定されたか
- 休薬、延期、減量のどれか。減らすなら何段階か
- 一度減らした量を、あとで戻すことはあるか
- 支持療法で副作用を抑えて、量を保つ方法はあるか
- この治療の目的(治すことを目指すのか、進行を抑えるのか)では、減量の影響について何がわかっているか
- 次の効果判定はいつか
減量の影響が試験で確かめられている範囲は、がんの種類と治療の目的によって違います。減量したあとも、効いているかどうかは画像検査などで確かめます。副作用の出方と効き目の関係は、抗がん剤の副作用が出ないと効いていないのかの記事で扱っています。
34日
GO2試験が、標準量に「劣らない」とみなす範囲として決めた、無増悪生存期間の短縮の幅です。患者さんと医師の話し合いで決められました。
「劣らない」は、差がゼロという意味ではなく、この幅の中に収まったという意味です。
出典:Hall PS, et al. JAMA Oncol 2021(GO2試験、高齢または虚弱な進行胃・食道がん514人。ハザード比1.34に相当)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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量を減らしたあとも、効いているかどうかは、体調ではなく画像検査などで確かめます。
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よくある質問
Q抗がん剤を減量すると効果は落ちますか?
一律には言えません。乳がんの手術後を調べたくじ引きの試験(CALGB 8541)では、量を減らした群で無病生存期間と全生存期間が短くなりました。高齢・虚弱な人の進行胃・食道がんの試験(GO2)では、標準量の60%で始めても無増悪生存期間が劣りませんでした。がんの種類と治療の目的によって答えが違います。
Q抗がん剤の減量は何を基準に決めますか?
副作用の重さをCTCAEという物差しでグレード1〜5に分け、薬ごとの電子添文やレジメンに書かれた手順に、グレードと出た回数を当てはめて決めます。実際には、体の状態や治療の目的をあわせて主治医が判断します。
Q減量した人ほど経過が悪いというのは本当ですか?
そうした関連は報告されています。ただし多くは、実際に投与できた量であとから患者さんを分けた比べ方で、減量が必要になった人の体の状態や、早い再発の影響が混ざります。乳がんの研究では、治療を続けていた人に限って比べると、関連が見られなくなりました(Geller 1990)。
Q一度減らした抗がん剤の量は、元に戻せますか?
薬によって違います。カペシタビン(ゼローダ)の電子添文では、一旦減量した後に増量は行わないこととされています。使っている薬で量を戻すことがあるかは、主治医か薬剤師に確認してください。
Q高齢だと、最初から抗がん剤の量を減らすことはありますか?
あります。GO2試験では、標準量が向かないと判断された高齢または虚弱な進行胃・食道がんの514人で、標準量の60%から始めても無増悪生存期間が劣らず、グレード3以上の血液以外の副作用は38%から23%に減りました。手術後の治療やほかのがんに、そのまま当てはまるとは限りません。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(2025年3月11日更新・確認)
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html - 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)「有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版」
https://jcog.jp/doctor/tool/ctcaev5/ - ゼローダ錠300 電子添文(2026年2月改訂 第4版)医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品情報検索
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/450900_4223005F1022_2_02 - エルプラット点滴静注液 電子添文(2025年9月改訂 第6版)医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品情報検索
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/400186_4291410A1029_2_02 - Nielson CM, Bylsma LC, Fryzek JP, Saad HA, Crawford J. Relative Dose Intensity of Chemotherapy and Survival in Patients with Advanced Stage Solid Tumor Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. Oncologist. 2021;26(9):e1609-e1618. doi:10.1002/onco.13822
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