トンデモ医師の見分け方・エビデンスがある医療とない医療

今日は「トンデモ医師」のお話です。まずここでは「トンデモ医師」の定義は、非科学的根拠をもとに非科学的な治療法を行う医師、保険診療を否定する医師とします。すると、つぎに問題になるのは「非科学的」という意味合いです。「非科学的」を理解するには「科学的」を知る必要があります。「科学的」とはエビデンスと同じようなニュアンスで使われます。

そこで米国臨床腫瘍学会のエビデンスピラミッドを参照しましょう。

エビデンスが5段階に分類されています。エビデンスが一番低いものは、マウスなどの動物や腫瘍細胞などを扱うシャーレでの結果です。「こんな抗がん作用の機序がマウスで判明した」などの話題が新聞を始めメディアでちょくちょく取り上げられます。またヒトひとりに効いたという1例報告もエビデンスレベルは最下位です。

エビデンスレベルが上から4つめ、下から2つめは、複数のヒトで効いたという症例報告です。

エビデンスレベルが真ん中は、上から3つめ、下から3つめで、比較対象がない(ランダム化されていない)臨床試験です。

エビデンスレベルが上から2つめ、下から4つめは、患者数の少ないランダム化比較試験です。ランダム化とはくじ引きで投与群と非投与群を分ける方法です。

米国臨床腫瘍学会のエビデンスピラミッドでエビデンスレベルが最高のものは、患者数が多いランダム化比較試験で、患者数が多いとは1000例規模以上のものをいいます。

つまり、科学的と思われがちなマウスやシャーレの実験は実はエビデンスレベルは最低なのです。その科学的根拠が本当にヒトに有効であるかが不明だからです。サイエンティストの立場からはマウスやシャーレの実験が大切で、それが新しい治療の嚆矢(突破口)になるとは思います。僕が2013年にイグノーベル賞を頂いた「脳と免疫の論文」もマウスによる実験のためエビデンスレベルは最低になります。一方で実臨床医にとって大切なことは患者さんの実際の御利益です。がん治療の場合、いくらマウスでがんが小さくなったり、シャーレの中のがん細胞が消失しても、実際の患者さんの御利益に繋がらなければまったく意味がないのです。

患者さんの御利益を確実に知るには患者数が多いランダム化比較試験が必須なのです。ランダム化しないと本当にその治療が有効かは通常は判明しないのです。自分が選んだ治療は正しいと医療サイドも患者さんも思い込む傾向があるからです。それをプラセボ効果とも称します。ランダム化比較試験は、医師にとっても患者さんにとっても、くじ引きで偽薬を使用する群を選定します。そのように思い込みを排除して、大人数で本当に効果があったかどうかを比較する試験なのです。

保険承認された薬剤に信頼性がある根拠は、患者数が多いランダム化比較試験を勝ち抜いているからです。しかし、日本では非承認医薬品でも海外ではすでに患者数が多いランダム化比較試験を行って承認されているものもあります。また、現状、ランダム化比較試験が行われていない治療でも、将来的にランダム化比較試験を勝ち抜く可能性も排除できません。

そもそも免疫チェックポイント阻害剤を開発し2018年にノーベル医学生理学賞に輝いた本庶佑先生が、免疫チェックポイント阻害剤の開発段階では、腫瘍内科のほとんど全員が免疫チェックポイント阻害剤に好意的ではなかったと発言しています。将来的にすばらしい治療は、そもそもはエビデンスがない状態から始まるのです。

一方で、漢方薬の148種類は本邦では保険適用医薬品ですが、なんと大規模臨床試験を経ることなく、「歴史的に使用されている(人間にとってほんとうに効果があるかのエビデンスは無い)」という事実から超法規的に保険適用薬になっています。つまり、保険適用のものすべてに、明らかなエビデンスがある訳でもないのです。

とはいえ、科学的根拠を求める現代において、患者さんに御利益があるためには、ランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いていることがもっとも大切なのです。

新見正則医院で扱っているフアイアは世界初の明らかな抗がんエビデンス(1000例規模の比較試験)を獲得した生薬です。現状、他の生薬や漢方薬で明らかな抗がんエビデンスがあるものはありません。つまりフアイアは米国臨床腫瘍学会のエビデンスピラミッドでは最上位のエビデンスを獲得しています。中国では抗がん新薬として認められています。しかし、本邦ではまだ保険診療としては認められていません。

そして私、新見正則は、明らかなエビデンスがある治療と、まだエビデンスがない治療をしっかりと説明し、患者さんの意志決定に従って応援しています。僕が「トンデモ医師」とは対極の存在であることがおわかりいただけるかと思います。

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