がんのある人は血栓症が起こりやすく、片方の足の急な腫れや痛み、急な息切れや胸の痛みは、すぐ医療機関に連絡するサインです。
血栓症は、血管の中で血液が固まり、流れをふさぐ病気です。この記事では、がんのある人に多い静脈の血栓症について、起こりやすい理由と頻度、受診の目安、むくみのほかの原因、検査、治療薬と出血、予防を、日本のガイドラインと臨床試験の数字で整理します。
この記事の内容
がんがあると、なぜ血栓症が起こりやすいのですか?
がんそのものが血液を固まりやすくし、そこに手術や薬、カテーテル、安静による血流の滞りが重なるためです。

静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症をまとめた呼び方です。
深部静脈血栓症は、主に足の奥の静脈に血栓ができる病気です。その血栓がはがれて肺の動脈に詰まると、肺血栓塞栓症(肺塞栓)になります。がんに関連して起こるものは、がん関連血栓症とも呼ばれます。
日本循環器学会などのガイドラインは、がん(悪性腫瘍)を、血液を固まりやすくする要因に挙げています。がん細胞に由来する組織因子という物質が、血液を固める反応を進めるためです(日本循環器学会ほか 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン 2017年改訂版)。進行したがんでは、トルソー症候群と呼ばれる血栓症も問題になるとされています。
オランダで、初めて足の静脈血栓症か肺塞栓症になった18〜70歳の3,220人と、そのパートナー2,131人を比べた研究があります。がんのある人は静脈血栓症を起こしやすく、その関係の強さを示すオッズ比は6.7(95%信頼区間5.2〜8.6)でした(Blom JW, et al. JAMA 2005)。リスクは、がんと診断されてから最初の数か月と、遠くの臓器に転移がある場合に、とくに高くなっていました。
| 要因 | 血栓ができやすくなる理由 |
| がんそのもの | がん細胞が血液を固める物質を出します。大きくなったがんが静脈を圧迫して、血流が滞ることもあります |
| 手術 | 手術は、血液を固まりやすくする要因に挙げられています。術後に横になっている時間が長くなると、足の血流も滞ります |
| 一部の抗がん剤やホルモン療法の薬 | 血管の内側を傷つけたり、血液を固まりやすくしたりする薬があります |
| 中心静脈カテーテル・CVポート | カテーテルの留置は、血管の内側を傷つける要因に挙げられています |
| 長く横になること・脱水 | 動かない時間が長い、水分がとれないと、血液の流れが滞ります |
出典:日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」、レブラミドカプセル適正使用ガイド(PMDA掲載)、MSDマニュアル家庭版「むくみの主な原因と特徴」をもとに作成
日本で急性の症状が出た静脈血栓塞栓症1,076人を集めた登録研究(JAVA)では、危険因子として最も多かったのががんで、27%でした(2017年改訂版ガイドライン)。
抗がん剤の点滴に使うCVポートのしくみは、抗がん剤の点滴と飲み薬の違いの記事で説明しています。
がんのある人に、血栓症はどのくらい起こりますか?
日本の約1万人の登録研究では、がんの治療を始める前の検査で、5.9%の人にすでに血栓が見つかりました。治療を始めてから1年の間に症状の出た血栓症が起きたのは0.5%でした。
大腸、肺、胃、膵臓、乳房、婦人科のがんで、治療を始める前の9,630人を1年間追った日本の前向き登録研究(Cancer-VTE Registry)があります。1年間で症状のある静脈血栓塞栓症が起きたのは0.5%、大出血または臨床的に問題となる出血は1.4%、亡くなった人は12.2%でした(Ohashi Y, et al. Thromb Res 2022)。
治療を始める前の検査では、9,735人のうち571人(5.9%)にすでに静脈血栓塞栓症が見つかりました。症状のないものが540人(5.5%)で、膝から下の静脈の血栓が466人(4.8%)でした(Ohashi Y, et al. Jpn J Clin Oncol 2020)。治療前に血栓があったことは、その後の症状のある血栓症、出血、死亡のいずれでも、最も強い危険因子でした。
外来で抗がん剤治療を受ける人の血栓症を予測する方法として、米国で作られたKhorana(コラナ)スコアがあります(Khorana AA, et al. Blood 2008)。がんの部位、血小板数、ヘモグロビン値(または貧血の治療薬の使用)、白血球数、BMIの5項目で点数をつけます。
このスコアは2,701人で作られ、別の1,365人で確かめられました。3点以上の高リスク群で症状のある血栓症が起きたのは、中央値2.5か月の追跡で7.1%(確かめた集団では6.7%)、0点の群では0.8%(同0.3%)でした(Khorana AA, et al. Blood 2008)。
0.5%と7.1%を並べる前に
0.5%は、日本の6種類の固形がんの人が、治療を始めてから1年の間に症状の出た血栓症を数えた数字です(Ohashi Y, et al. Thromb Res 2022)。血液のがんは対象に入っていません。7.1%は、米国で外来の抗がん剤治療を受けた人のうち、スコアが3点以上の人を中央値2.5か月追った数字です(Khorana AA, et al. Blood 2008)。調べた人、期間、国が違うため、2つの数字から日本と米国の差を読み取ることはできません。
血栓症が起こりやすいがんや薬はありますか?
血液のがん、肺がん、消化器のがん、転移のあるがんでリスクが高いと報告されています。一部の薬には、血栓症の注意が書かれています。
前の節のオランダの研究では、がんの種類で見ると、血液のがんのオッズ比が最も高く(28.0)、肺がん、消化器のがんが続きました(Blom JW, et al. JAMA 2005)。血液のがんのオッズ比28.0は人数が少ない中での推定で、95%信頼区間は4.0〜199.7と大きな幅があります。
Khoranaスコアでも、がんの部位は点数の項目に入っていて、とくにリスクが高い部位に2点、リスクが高い部位に1点がつきます(Khorana AA, et al. Blood 2008)。
| 薬(商品名の例) | 血栓症についての記載 |
| レナリドミド(レブラミド) | 多発性骨髄腫などに使う薬です。警告欄で、深部静脈血栓症と肺塞栓症に注意するよう求めています。多発性骨髄腫の臨床試験1,425人では、静脈血栓塞栓症が13.5%に出ました |
| タモキシフェン | 乳がんのホルモン療法の薬です。重大な副作用に、肺塞栓症や下肢静脈血栓症などの血栓塞栓症が挙げられています(頻度不明)。細胞を傷つける抗がん剤との併用で、危険性が増すおそれがあるとされています |
出典:レブラミドカプセル適正使用ガイド(PMDA掲載)、タモキシフェン錠「MYL」電子添文(2026年7月改訂 第5版)をもとに作成
ガイドラインは、新しい抗がん剤の一部に、血管の内側を傷つけて血栓を起こしやすくするものがあるとしています(2017年改訂版ガイドライン)。使っている薬に血栓症の注意があるかは、電子添文や薬の説明書で確かめられます。
タモキシフェンなどの血栓症を含めた副作用の時期は、ホルモン療法の副作用はいつまで続くかの記事で扱っています。
どんな症状が出たら、すぐ受診すべきですか?
片方の足の急な腫れや痛み、急な息切れ、胸の痛み、気を失うといった症状は、すぐ医療機関に連絡するサインです。
- 片方の足(ふくらはぎや太もも)が急に腫れる、痛む
- 腫れた足が赤くなる、熱っぽい
- 急に息が苦しくなる、息切れがする
- 胸が痛む
- 気を失う、気が遠くなる
- 手足がまひする、しびれる、しゃべりにくい
厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアル「血栓症」は、胸の痛み、呼吸困難、片方の足の急激な痛みや腫れ、手足のまひ、しゃべりにくさなどが見られたら、放置せずにただちに医師・薬剤師に連絡するよう呼びかけています(厚生労働省 2006年)。血栓症は突然起こるため、早く見つけることが難しいとも書かれています。
肺血栓塞栓症の224人を調べた国内の報告では、症状は呼吸困難が76%、胸痛が48%、失神が19%でした。発症のきっかけがわかっている108人では、57%が立ち上がったときや歩いているとき、22%が排便・排尿のときに起きていました(2017年改訂版ガイドライン)。
足の血栓は、症状がないまま検査で見つかることもあります。前の節の日本の登録研究でも、治療前に見つかった血栓の多くは症状のないものでした(Ohashi Y, et al. Thromb Res 2022)。
抗がん剤の治療中の息切れや空咳は、薬による肺の炎症でも起こります。見分けるポイントは抗がん剤の間質性肺炎の記事で扱っています。
足のむくみは、すべて血栓症なのですか?
いいえ。リンパ浮腫や、心臓・腎臓・肝臓の病気、薬など、むくみの原因はほかにもあり、見た目だけでは区別できません。
| 原因 | むくみの特徴 | 出る側 |
| 深部静脈血栓症 | 急に腫れます。痛み、赤み、熱っぽさを伴うことが多いです | 主に片側の足 |
| リンパ浮腫 | 手術や放射線治療のあとに起こります。重い感じやだるさがあります | 治療した側。両足のこともあります |
| 心不全 | 痛みのないむくみです。動いたときや横になったときに息切れします | 両足 |
| 腎臓・肝臓の病気 | 広い範囲の痛みのないむくみです。おなかに水がたまることもあります | 両側・広い範囲 |
| 薬 | 一部の痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)や血圧の薬(一部のカルシウム拮抗薬)などで、痛みのないむくみが出ます | 両足 |
| 蜂窩織炎(皮膚の感染症) | 皮膚の赤み、熱っぽさ、痛みがあり、熱が出ることもあります | 片側 |
| がんによる静脈の圧迫 | 徐々に出る、痛みのないむくみです | 圧迫される場所による |
出典:MSDマニュアル家庭版「むくみの主な原因と特徴」、国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫」(2025年9月5日更新)をもとに作成
リンパ浮腫は、手術でリンパ節を取ったあとや、放射線治療のあとに起こることがあります。治療の直後に出ることもあれば、数年たってから出ることもあります(がん情報サービス「リンパ浮腫」2025年)。一部のタキサン系抗がん剤ではむくみが出やすく、それがリンパ浮腫につながることもあるとされています。
片側のむくみは、血栓症でもリンパ浮腫でも起こります。どちらかを見た目で決めることはできず、血栓症が疑われるときは超音波検査などで確かめます(MSDマニュアル家庭版)。
がん情報サービスは、むくみに気づいたら、いつから、どこが、どのような状態かを医師に伝えるよう案内しています。皮膚の赤み、熱っぽさ、痛み、38度以上の発熱は、蜂窩織炎の症状として挙げられ、早めの受診が勧められています。
血栓症は、どんな検査で調べますか?
Dダイマーという血液検査、足の静脈の超音波検査、造影CTを、症状と血栓症の可能性に応じて組み合わせます。
| 検査 | わかること・注意点 |
| Dダイマー(血液検査) | 低ければ、血栓症を否定する手がかりになります。がん、炎症、手術、加齢でも上がるため、高いだけでは診断できません |
| 下肢静脈の超音波検査 | 足の静脈の血栓を調べます。治療を始めたあとの経過を見るのにも使われます |
| 造影CT | 肺の動脈の血栓を調べます。海外の試験(PIOPED II)で、感度は83%、特異度は96%でした |
出典:日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」をもとに作成
Dダイマーは、検査の前に血栓症の可能性が低い、または中くらいと見積もられた人で、血栓症を否定するために使われます。可能性が高い人では、Dダイマーが低くても精査をやめられるほどには可能性が下がらないため、画像検査に進みます(2017年改訂版ガイドライン)。
ガイドラインは、がんがあるとDダイマーが上がることを、この検査の特異度が低い理由に挙げています。がんの治療中にDダイマーが高いと言われても、それだけで血栓症と決まるわけではありません。
がん関連血栓症は、予防できますか?
足を動かす、水分をとる、手術のあとは早く歩き始めるといった方法があります。予防のための抗凝固薬は、海外の試験で結果が分かれ、出血も増えています。
愛知県がんセンターの資料は、ベッドで安静にしている間も足首を動かしたり足に力を入れたりすること、術後は早くリハビリを始めて歩くこと、水分をしっかりとることを挙げています(愛知県がんセンター 循環器科「がん疾患と血栓症について」)。ガイドラインは、予防の方法として弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法(足に巻いたカフに空気を送り、血流を促す方法)、抗凝固薬を取り上げ、手術の領域ごとの予防法を示しています(2017年改訂版ガイドライン)。
外来で抗がん剤治療を始める人のうち、Khoranaスコアが2点以上の人に予防の飲み薬を試した試験が2つあります。アピキサバンのAVERT試験(574人)では、180日間の静脈血栓塞栓症が、プラセボの10.2%に対して4.2%に減りました。一方で大出血は1.8%に対して3.5%に増えました(Carrier M, et al. N Engl J Med 2019)。
リバーロキサバンのCASSINI試験(841人)では、180日間の静脈血栓塞栓症と、それによる死亡を合わせた割合が、プラセボの8.8%に対して6.0%でした(ハザード比0.66、95%信頼区間0.40〜1.09)。この幅は、4割減らした可能性から1割近く増やした可能性までを含み、主解析では統計的な差は出ませんでした。同じ論文は、薬を飲んでいた期間に限った、事前に決めていた解析では、2.6%対6.4%(ハザード比0.40、95%信頼区間0.20〜0.80)と減っていたことも報告しています。大出血は1.0%に対して2.0%でした(Khorana AA, et al. N Engl J Med 2019)。
どちらの試験でも、予防の薬を飲んだ人のほうが大出血は多くなっています。予防の薬を使うかどうかは、血栓のできやすさと出血のしやすさを比べて決めることになります。
がん関連血栓症は、どんな薬で治療しますか?
血液を固まりにくくする抗凝固薬で治療します。日本では、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンという飲み薬が使われています。
日本では、エドキサバンが2014年9月(第一三共 2014年9月26日)、リバーロキサバンが2015年9月(PMDA イグザレルト再審査報告書)、アピキサバンが2015年12月(PMDA エリキュース再審査報告書)に、静脈血栓塞栓症の治療と再発抑制の効能で承認されました。これらは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と呼ばれます。注射のヘパリンやフォンダパリヌクス、飲み薬のワルファリンも使われます。
がんのある人の血栓症では、飲み薬のDOACと、注射の低分子ヘパリン(ダルテパリン)を比べたランダム化比較試験が行われています。
| 試験(発表年) | 対象と比べた薬 | 血栓症の再発 | 大出血 |
| Hokusai VTE Cancer(2018年) | 1,046人。エドキサバンとダルテパリン。12か月追跡 | 7.9%と11.3% | 6.9%と4.0% |
| SELECT-D(2018年) | 406人。リバーロキサバンとダルテパリン。6か月 | 4%と11% | 6%と4% |
| Caravaggio(2020年) | 1,155人。アピキサバンとダルテパリン。6か月 | 5.6%と7.9% | 3.8%と4.0% |
出典:Raskob GE, et al. N Engl J Med 2018、Young AM, et al. J Clin Oncol 2018、Agnelli G, et al. N Engl J Med 2020。数字はいずれも飲み薬、ダルテパリンの順
Hokusai VTE Cancer試験では、再発と大出血を合わせた割合が12.8%と13.5%で、エドキサバンはダルテパリンに劣らないと判定されました。大出血はエドキサバンで多く(ハザード比1.77、95%信頼区間1.03〜3.04)、増えたのは主に上部消化管からの出血で、消化器のがんの人で目立ちました(Raskob GE, et al. N Engl J Med 2018)。
SELECT-D試験は、400人規模の予備的な試験(パイロット試験)です。大出血以外の、臨床的に問題となる出血は、リバーロキサバンで13%、ダルテパリンで4%でした(Young AM, et al. J Clin Oncol 2018)。
Caravaggio試験では、アピキサバンは再発でダルテパリンに劣らないと判定されました。大出血のハザード比は0.82(95%信頼区間0.40〜1.69)で、6割少ない可能性から1.7倍に増える可能性までを含み、差ははっきりしませんでした(Agnelli G, et al. N Engl J Med 2020)。
日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会の「Onco-cardiologyガイドライン」(2023年3月発行)は、がん薬物療法に伴って静脈血栓塞栓症を発症した人への抗凝固療法を、臨床上の問い(CQ7-2)として取り上げています(Mindsガイドラインライブラリ)。学会が2022年に公開した案では、推奨は「抗凝固療法を行うことを提案する」で、推奨の強さは弱い、エビデンスの強さはB(中)でした(日本臨床腫瘍学会 Onco-cardiologyガイドライン案 2022年)。
比較試験の対照と日本の保険診療のずれ
上の3つの試験は、どれも飲み薬を注射の低分子ヘパリン(ダルテパリン)と比べています。海外では、低分子ヘパリンが古くから標準治療として使われてきました。一方、2017年改訂版ガイドラインは、日本では低分子ヘパリンに静脈血栓塞栓症の治療への保険適用はないと書いています(2017年改訂版ガイドライン)。また、Hokusai VTE Cancer試験で大出血が増えたのは主に消化器のがんの人でした(Raskob GE, et al. N Engl J Med 2018)。試験の平均の数字は、がんの場所によって、そのまま当てはまらないことがあります。
抗凝固薬は、いつまで続けるのですか?
少なくとも3か月が基本です。がんのある人の肺血栓塞栓症では、がんが治らない限り、より長く続けることが推奨されています。
ガイドラインは、一時的な危険因子による静脈血栓塞栓症では3か月、はっきりした誘因がない場合も少なくとも3か月の抗凝固療法を、推奨クラスⅠ(エビデンスレベルA)としています。急性肺血栓塞栓症のがんのある人については、がんが治らない限り、より長い期間続けることを推奨クラスⅡa(エビデンスレベルB)としています(2017年改訂版ガイドライン)。クラスⅡaは、最も強いクラスⅠより一段弱い推奨です。
膝から下の静脈だけに血栓がある(下腿限局型の)深部静脈血栓症のがんの人601人を、エドキサバンを12か月続ける群と3か月でやめる群に分けた日本の試験があります(ONCO DVT試験)。60施設で行われ、平均年齢は70.8歳、最初に症状があった人は20%でした(Yamashita Y, et al. Circulation 2023)。
12か月の時点で、症状のある再発または血栓症による死亡は、12か月群で1.0%、3か月群で7.2%でした(オッズ比0.13、95%信頼区間0.03〜0.44)。大出血は、12か月群で9.5%、3か月群で7.2%でした(オッズ比1.34、95%信頼区間0.75〜2.41)。大出血の幅は、長く続けたほうが少ない可能性から2倍以上多い可能性までを含み、差ははっきりしませんでした(Yamashita Y, et al. Circulation 2023)。
どのくらい続けるかは、血栓の場所、がんの状態、出血のしやすさを見ながら、主治医と相談して決めることになります。
9.5%
膝から下の静脈に血栓ができたがんの人が、エドキサバンを12か月続けた群で、1年のうちに大出血が起きた割合です。
3か月でやめた群では7.2%でした。長く続けた群は再発が少なくなった一方で、出血の危険がなくなるわけではありません。
出典:Yamashita Y, et al. Circulation 2023(ONCO DVT試験、日本の60施設、601人)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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むくみや血栓症のように、治療に伴って起こる症状を予防し、和らげる治療とケアは、支持療法と呼ばれます。
支持療法とは?抗がん剤の副作用が不安なときの予防と和らげ方
支持療法の定義と緩和ケアとの違い、吐き気・感染・口内炎・リンパ浮腫など症状ごとの対策を整理した記事です。患者さんが感じた副作用の40.7%〜74.4%が医師の記録になかったという研究から、つらさを伝えることの意味も説明しています。
よくある質問
Qがん患者は、なぜ血栓ができやすいのですか?
がん細胞が血液を固める物質を出すことに加えて、手術、一部の抗がん剤やホルモン療法の薬、中心静脈カテーテル、長く横になっていることなどが重なるためです。オランダの症例対照研究では、がんがあることと静脈血栓症の関係の強さを示すオッズ比は6.7でした。
Qがんの治療中に足がむくんだら、血栓症ですか?
血栓症とは限りません。リンパ浮腫、心臓・腎臓・肝臓の病気、薬などでもむくみは起こり、見た目だけでは区別できません。片方の足が急に腫れた、痛みや赤みがある、息切れや胸の痛みを伴うといったときは、すぐ医療機関に連絡するサインです。
Q肺塞栓症の症状は何ですか?
急な息切れ(呼吸困難)、胸の痛み、失神などです。国内の224人の報告では、呼吸困難が76%、胸痛が48%、失神が19%でした。立ち上がったときや歩いているとき、排便・排尿のときに起きた例が多く報告されています。
Qがんの血栓症の治療薬は何ですか?
血液を固まりにくくする抗凝固薬です。日本では、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンという飲み薬(DOAC)が使われています。海外の試験では、これらの飲み薬は注射の低分子ヘパリンと比べて、再発が同じくらいか少なかったと報告されています。
Q抗凝固薬を飲むと、出血しやすくなりますか?
なります。日本のONCO DVT試験では、エドキサバンを12か月続けた群の9.5%、3か月でやめた群の7.2%に、1年以内の大出血がありました。海外の試験では、消化器のがんの人で消化管からの出血が目立ったと報告されています。
参考文献
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https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/JCS2017_ito_h.pdf - 日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会 編「Onco-cardiology ガイドライン」南江堂 2023年3月10日発行(Mindsガイドラインライブラリ)
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00777/ - 日本臨床腫瘍学会「Onco-cardiology ガイドライン」案(2022年公開)
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