がんは、細胞の遺伝子に変異が何年もかけて積み重なり、細胞の増え方を調節する仕組みが壊れて起こる病気です。
変異がどの遺伝子に起こるとがんに近づくのか、なぜ1回では足りないのか、変異を起こす原因は何か、偶然のコピーミスはどこまで関わるのかを、国立がん研究センターの資料と原著論文から順に見ていきます。後半では、免疫ががん細胞を壊す仕組みと、がん細胞が免疫をすり抜ける仕組みを扱います。
この記事の内容
がんとは、どんな細胞の集まりですか?
体の調節に従わずに増え続け、周りや離れた場所に広がる性質を持った細胞の集まりです。
体の細胞は、増える、増えるのをやめる、成熟して役割を持つ、古くなって脱落する、という動きを遺伝子の働きで調節しています。国立がん研究センターの冊子は、この仕組みが遺伝子の変化によって調節できなくなり、異常な細胞が増え続けたり、脱落しなくなったりすると説明しています(国立がん研究センター がん対策情報センター『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』2013年「がんの発生と進行の仕組みを知る」)。
同じ冊子は、体には遺伝子の傷を修復したり、異常な細胞を取り除いたりして正常な状態を保つ仕組みがあり、そこから逃れて、無制限に増える、ほかの場所に転移するといった性質を得た細胞が、何年もかけて数を増やすと書いています。
がん細胞が持つ性質は、研究者の間で「がんの特徴(ホールマーク)」として整理されています。2000年に6つが挙げられ、2011年の改訂で、特徴2つと、それを可能にする性質2つが加わりました(Hanahan D, Weinberg RA. Hallmarks of cancer: the next generation. Cell 2011)。2022年にも、新たな特徴と性質の候補が示されています(Hanahan D. Hallmarks of Cancer: New Dimensions. Cancer Discov 2022)。
- 増殖の合図を自分で出し続ける
- 増殖を止める合図に反応しない
- 決められた細胞死(アポトーシス)を逃れる
- 限りなく分裂を続けられる
- 新しい血管を引き込む
- 周りの組織に入り込み、離れた場所に転移する
- エネルギーの使い方を作り替える(2011年に追加)
- 免疫による破壊を逃れる(2011年に追加)
腫瘍のうち、周りに入り込んだり転移したりするものが悪性腫瘍で、がんはこちらに当たります。違いの見分け方は良性と悪性の違いの記事で、周りに入り込むことと離れた場所に移ることの区別は転移と浸潤の違いの記事で説明しています。
がんに関わる遺伝子には、どんな種類がありますか?
働きが強まると増殖を進める「がん遺伝子」と、働きを失うと増殖のブレーキが外れる「がん抑制遺伝子」の2種類が中心です。
がん遺伝子は、細胞を増やす側の遺伝子に変異が起こり、アクセルが踏まれたままになる状態を指します。がん抑制遺伝子は、増殖を止めたり、傷のある細胞を休ませて修復させたりする遺伝子で、これが働かなくなるとブレーキが利かなくなります。
| 種類 | 普段の働き | がんで起こる変化 | 例 |
| がん遺伝子 | 細胞を増やす合図を伝える | 変異で働きが強まり、合図が出続ける | KRAS |
| がん抑制遺伝子 | 増殖を止める、傷のある細胞を止めて修復させる | 変異や欠失で働きを失い、ブレーキが外れる | APC、TP53、RB1 |
出典:日本国際賞(2021年)業績資料「多段階発がんモデルの提唱と実証」、Knudson AG. Proc Natl Acad Sci USA 1971 をもとに作成
日本国際賞の業績資料は、がんは「がん遺伝子の出現とがん抑制遺伝子の消失によって引き起こされる」という考え方を紹介しています。かつてがん遺伝子と考えられていたTP53は、のちにがん抑制遺伝子として働くことがわかりました(日本国際賞 2021年 業績資料)。
1971年、網膜芽細胞腫の分析から、この腫瘍ができるには2回の変異が必要で、遺伝する型では1回目が生まれつき備わっているという「2ヒット仮説」が示されました。遺伝する型で、若いうちに両目に腫瘍ができやすいことが、これで説明されました(Knudson AG. Mutation and cancer: statistical study of retinoblastoma. Proc Natl Acad Sci USA 1971)。この2回の変異が、父親と母親から受け継いだがん抑制遺伝子の2つのコピーにあたることは、その後の研究で確かめられました。がん抑制遺伝子は、2つのコピーの両方が働きを失って、はじめてブレーキが外れると考えられています。
がんは遺伝子の病気ですが、遺伝する病気とは限りません。国立がん研究センターの予防の資料は、乳がんの約95%は遺伝性ではないとしています(国立がん研究センター「科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン『日本人のためのがん予防法(5+1)』」第3版 2024年)。親から受け継いだ変化が関わるがんの種類と検査の目安は、がんは遺伝するのかの記事で整理しています。
がんは、1回の変異でできるのですか?
多くの場合、複数の遺伝子の変異が段階を追って積み重なり、がんになると考えられています。これを多段階発がんと呼びます。

このモデルは大腸がんの研究から示されました。1990年の論文は、悪性の腫瘍ができるには少なくとも4〜5個の遺伝子の変異が必要で、腫瘍の性質を決めるのは変異が起こる順番よりも、積み重なった変異の総数だと述べています。変異は、多くの場合ある決まった順序で起こるとも書かれています(Fearon ER, Vogelstein B. A genetic model for colorectal tumorigenesis. Cell 1990)。
| 段階 | 細胞の状態 |
| 正常な細胞 | 体の調節に従って増えたり止まったりする |
| 過形成 | 細胞の数が増えているが、形はまだ正常に近い |
| 良性腫瘍 | かたまりをつくるが、周りに入り込んだり転移したりしない |
| がん | 周りの組織に入り込む |
| 転移能をもつがん | 離れた場所に移って増える力を持つ |
がん抑制遺伝子の消失(不活性化)とがん遺伝子の変異が段階ごとに加わり、異常が蓄積していく。出典:日本国際賞(2021年)業績資料「がん化は多段階を経て起こる;模式図」(Fearon ER, Vogelstein B. Cell 1990 より改変)をもとに作成
大腸がんでは、APC、KRAS、TP53の変化が順に起こるとされています(日本国際賞 2021年 業績資料)。ただし、すべての大腸がんが同じ順をたどるわけではなく、1990年の論文も、順番より総数が重要だとしています。
多段階発がんのモデルを提唱し実証したことで、ボーゲルスタイン博士とワインバーグ博士は2021年に日本国際賞を受けています。
変異は1回で揃うのではなく、細胞分裂のたびに少しずつ加わります。年齢を重ねるほど、分裂の回数と、変異が積み重なる時間が増えます。国立がん研究センターの冊子が、がんになる性質を得た細胞は「何年もかけて」数を増やすと書いているのは、この時間の長さを指しています(『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』2013年)。
遺伝子の変異は、何が原因で起こりますか?
喫煙、ウイルスや細菌の感染、飲酒などの外からの要因と、加齢や細胞分裂のときのコピーミス、生まれ持った体質が関わります。
日本で2015年に新たに診断されたがんについて、変えられる要因がどれだけ関わっていたかを推計した研究があります。生活習慣と感染が原因と考えられたのは、男性で43.4%、女性で25.3%でした。最も大きかったのは感染と喫煙で、飲酒が続きます(Inoue M, et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med 2022)。
| 要因 | 男性 | 女性 |
| 喫煙(本人) | 23.6% | 4.0% |
| 感染 | 18.1% | 14.7% |
| 飲酒 | 8.3% | 3.5% |
| 塩分の多い食品 | 3.0% | 1.6% |
| 運動不足 | 1.0% | 1.6% |
| 過体重・肥満 | 1.0% | 0.3% |
| 受動喫煙 | 0.2% | 0.9% |
| 野菜の不足 | 0.3% | 0.1% |
| 果物の不足 | 0.1% | 0.02% |
2015年に日本で診断されたがんのうち、各要因が原因と推計された割合(罹患)。女性の過体重はBMI23以上を基準にした値で、BMI25以上を基準にすると0%。出典:国立がん研究センター「科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン『日本人のためのがん予防法(5+1)』」第3版(2024年11月)、Inoue M, et al. Glob Health Med 2022
感染が原因になるがん
国立がん研究センターの予防の資料は、感染とがんの組み合わせとして次の4つを挙げ、いずれも感染したら必ずがんになるわけではないとしています(国立がん研究センター「科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン『日本人のためのがん予防法(5+1)』」第3版 2024年)。
- ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌):胃がん
- B型・C型肝炎ウイルス:肝臓がん
- ヒトパピローマウイルス(HPV):子宮頸がん
- ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1):成人T細胞白血病・リンパ腫
国際がん研究機関(IARC)は、これらに加えて、EBウイルス、カポジ肉腫ヘルペスウイルス、HIV-1、一部の寄生虫(タイ肝吸虫、肝吸虫、ビルハルツ住血吸虫)を、ヒトに対して発がん性がある「グループ1」の病原体としてまとめています(IARC Monographs Volume 100B: Biological Agents 2012)。
世界全体では、2018年に新たに診断されたがんの13%にあたる約220万例が感染によると推計され、原因を件数の多い順に挙げると、ピロリ菌、HPV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスでした(de Martel C, et al. Global burden of cancer attributable to infections in 2018. Lancet Glob Health 2020)。日本の推計でも、感染は男女とも上位の要因です。
がんは「運」で決まるという研究は、本当ですか?
細胞分裂のときの偶然のコピーミスが大きく関わるという研究がありますが、数字の意味と解釈には反論もあります。
2015年、米国ジョンズ・ホプキンス大学のトマセッティ氏とボーゲルスタイン氏は、31種類の組織について、一生のうちに幹細胞が分裂する回数と、その組織にがんができる一生のリスクを比べました。両者の相関係数は0.81と強く、組織によるがんのできやすさの違いのうち、環境や遺伝で説明できるのは3分の1にとどまり、残りの大部分は分裂のときの偶然の変異、いわば「不運」によると報告しました(Tomasetti C, Vogelstein B. Variation in cancer risk among tissues can be explained by the number of stem cell divisions. Science 2015)。
この論文には、すぐに反論が出ました。2016年の論文は、分裂回数とリスクが相関するだけでは、細胞の内側の要因と外からの要因の寄与を区別できないと指摘し、細胞の内側の要因が一生のリスクに占める割合は10〜30%未満にとどまり、がんのリスクは外からの要因に大きく左右されると結論しています(Wu S, et al. Substantial contribution of extrinsic risk factors to cancer development. Nature 2016)。
2017年、トマセッティ氏らは69か国・17種類のがんに分析を広げ、どの国でも幹細胞の分裂回数とがんの発生が強く相関した(相関の中央値0.80)と報告しました。がんの遺伝子配列と疫学のデータを使った別の方法で、がんに見られる変異の3分の2はDNA複製のときのコピーミスによると推定しています。同時に、この結果は、環境を変えることで防げるがんの割合についての疫学の推計と矛盾しないとも書いています(Tomasetti C, Li L, Vogelstein B. Stem cell divisions, somatic mutations, cancer etiology, and cancer prevention. Science 2017)。
「3分の2」が指しているもの
2015年の論文の「3分の2」は、組織ごとのがんのできやすさの違いを説明する割合で、2017年の論文の「3分の2」は、がん細胞に見られる変異のうちコピーミスによる割合です。どちらも「がんになった人の3分の2は防げなかった」という意味ではありません。がんには複数の変異が必要なため、そのうち1つでも喫煙や感染による変異があれば、その要因を避けることでがんを防げた可能性が残ります。内側の要因の割合については、Wu S, et al. Nature 2016のように10〜30%未満とする見方もあり、研究者の間で決着していません。
体の免疫は、がん細胞を排除しているのですか?
マウスの実験では、免疫ががん細胞を排除して、がんの発生を抑えることが直接示されています。人では、免疫が弱まるとがんが増えるという間接的なデータがあります。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、免疫細胞のうちT細胞には、がん細胞を攻撃する性質があると説明しています(がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年11月6日更新)。
免疫ががんの発生を抑えていることは、マウスの実験で直接示されています。2001年の研究では、リンパ球を持たないように遺伝子を操作したマウス(RAG2欠損マウス)と普通のマウスに発がん物質を注射したところ、腫瘍ができたのはRAG2欠損マウスで58%、普通のマウスで19%でした。何もしなくても、RAG2欠損マウスは12匹すべてに生後15か月までに腫瘍ができ、その半数は悪性でした。普通のマウスで腫瘍ができたのは11匹中2匹で、いずれも良性でした(Shankaran V, et al. IFNgamma and lymphocytes prevent primary tumour development and shape tumour immunogenicity. Nature 2001)。
この研究の流れから、免疫とがんの関係は3つの段階で整理されています(Schreiber RD, Old LJ, Smyth MJ. Cancer immunoediting. Science 2011)。
| 段階 | 起こっていること |
| 排除 | 免疫が、目立つがん細胞を見つけて壊す |
| 平衡 | 生き残ったがん細胞が分裂と変異を続け、免疫による抑え込みと釣り合って、腫瘍が大きくならない状態が続く |
| 逃避 | 免疫に見つからない、または壊されない性質を得たがん細胞が増え、目に見える腫瘍になる |
出典:Schreiber RD, Old LJ, Smyth MJ. Science 2011(がん免疫編集)をもとに作成
人では、免疫の働きを薬で抑えている人や、免疫が弱まる病気の人で、がんが増えることが知られています。米国で1987〜2008年に行われた17万5732件の臓器移植の追跡では、移植を受けた人のがんの発生は一般の人の2.10倍(標準化罹患比、95%信頼区間2.06〜2.14)でした。リスクが上がったがんのうち、件数が多かったのは非ホジキンリンパ腫、肺がん、肝臓がん、腎臓がんの順です。一般の人と比べた増え方(標準化罹患比)は、この4つの中では肝臓がんの11.56倍が最も大きく、非ホジキンリンパ腫7.54倍、腎臓がん4.65倍、肺がん1.97倍でした(Engels EA, et al. Spectrum of cancer risk among US solid organ transplant recipients. JAMA 2011)。
HIV/エイズの人44万4172人と移植を受けた人3万1977人を比べたメタアナリシスでは、調べた28種類のがんのうち20種類が、両方の集団で一般の人より有意に多く見られました。その多くは、HPVが関わるがん、肝臓がん、胃がんなど、感染が原因として知られるがんでした。著者らは、2つの集団で増え方の形が似ていることから、増加の原因は免疫の低下だと考えています(Grulich AE, et al. Incidence of cancers in people with HIV/AIDS compared with immunosuppressed transplant recipients: a meta-analysis. Lancet 2007)。
マウスの実験と、人のデータの間
免疫ががん細胞を壊して発生を抑える様子を直接示したのは、主にマウスの実験です。人で使えるのは、免疫が弱まった人でがんが増えるという間接的なデータで、増え方はがんの種類によって大きく違い、感染が原因になるがんで目立ちます(Grulich AE, et al. Lancet 2007)。
免疫でがんを治療しようとする試みが、なぜ長くうまくいかなかったのかは、がん免疫療法の歴史の記事でたどっています。
がん細胞は、どうやって免疫をすり抜けるのですか?
免疫にブレーキをかける分子を出したり、免疫に見つかりにくい細胞が選ばれて残ったりして、すり抜けます。
がん情報サービスは、T細胞にもがん細胞にも「アンテナ」があり、がん細胞がT細胞のアンテナに結合して「攻撃するな」という命令を送ると説明しています。これでT細胞にブレーキがかかり、がん細胞が排除されなくなります。この仕組みを免疫チェックポイントと呼びます(がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年)。
がん細胞側のアンテナの1つがPD-L1です。2002年の研究では、PD-L1は正常な組織ではマクロファージの系統の細胞にしか見られなかったのに対し、肺がん、卵巣がん、大腸がん、メラノーマには多く出ていました。PD-L1は、インターフェロンγという物質によって増え、がんを攻撃するT細胞の細胞死を増やしました(Dong H, et al. Tumor-associated B7-H1 promotes T-cell apoptosis: a potential mechanism of immune evasion. Nat Med 2002)。
もう1つは、選ばれて残る仕組みです。先のマウスの研究では、免疫を持たないマウスにできた腫瘍を普通のマウスに移すと、20個中8個が拒絶されました。一方、普通のマウスにできた腫瘍は、移しても増え続けました。免疫のある体で育った腫瘍は、すでに免疫に壊されにくい細胞が残ったものだったことになります(Shankaran V, et al. Nature 2001)。
2011年に改訂された「がんの特徴」に「免疫による破壊を逃れる」が加えられたのは、こうした研究の積み重ねによります(Hanahan D, Weinberg RA. Cell 2011)。PD-L1などのブレーキを薬でふさぎ、T細胞の攻撃を取り戻そうとするのが、免疫チェックポイント阻害薬です。
がんの仕組みがわかると、何が変わるのですか?
変異の原因のうち変えられるものを減らすことと、変異が積み重なった段階で早く見つけることの2つに、それぞれ根拠があることがわかります。
日本の推計で、生活習慣と感染が原因とされたがんは男性の43.4%、女性の25.3%でした(Inoue M, et al. Glob Health Med 2022)。喫煙、ピロリ菌や肝炎ウイルス、HPVのように、原因がわかっていて対策のあるものは、この部分に含まれます。
一方で、加齢やコピーミスのように避けられない変異もあります。2017年のトマセッティ氏らの論文は、避けられない変異から生じるがんについては、早く見つけて治療することが死亡を減らす手段になると述べています(Tomasetti C, et al. Science 2017)。国立がん研究センターの冊子も、がんになりにくい生活はある程度できても、がんにならないようにすることはできないと書いています(『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』2013年)。
43.4%
2015年に日本で新たに診断された男性のがんのうち、喫煙・感染・飲酒などの変えられる要因が原因と推計された割合です(女性は25.3%)。
半分以上は、この推計で扱った要因では説明できない部分です。
出典:Inoue M, et al. Glob Health Med 2022(Cancer PAF Japan Collaborators、人口寄与割合の推計)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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がん細胞が免疫にかけるブレーキを、薬でふさぐ治療があります。
免疫チェックポイント阻害薬とは?効かない不安と、使える病院の条件
PD-1・PD-L1・CTLA-4の仕組み、薬の種類と使い方、効く人が限られる理由、副作用と費用、保険で使える病院に条件がある理由を、国立がん研究センターや厚生労働省、学会の資料から整理した記事です。
よくある質問
Qがんはなぜできるのですか?
細胞の増え方を調節する遺伝子に変異が積み重なり、調節が効かなくなるためです。増殖を進めるがん遺伝子の働きが強まったり、ブレーキ役のがん抑制遺伝子が働きを失ったりします。大腸がんの研究では、少なくとも4〜5個の遺伝子の変異が必要とされています。
Qがんは遺伝しますか?
がんは遺伝子の病気ですが、多くは生まれたあとに体の細胞に起きた変異によるもので、遺伝するものではありません。国立がん研究センターの資料は、乳がんの約95%は遺伝性ではないとしています。親から受け継いだ変化が関わるがんも一部にあります。
Q免疫力が落ちるとがんになりやすいのですか?
免疫の働きを薬で抑えている臓器移植後の人では、がんの発生が一般の人の2.10倍だったという米国の報告があります。増え方はがんの種類で違い、感染が原因になるがんやリンパ腫で目立ちます。がんの原因には、免疫のほかに喫煙や感染、加齢なども関わります。
Qがんは運が悪いとなるのですか?
細胞分裂のときの偶然のコピーミスが、がんの変異の3分の2を占めるという推定があります。ただし、この数字はがんの3分の2が防げないという意味ではなく、外からの要因の影響がもっと大きいとする研究もあります。日本では男性のがんの43.4%が、生活習慣と感染によると推計されています。
Qピロリ菌やHPVはがんの原因になりますか?
なります。国立がん研究センターは、ピロリ菌と胃がん、HPVと子宮頸がん、B型・C型肝炎ウイルスと肝臓がんなどの組み合わせを挙げ、国際がん研究機関(IARC)はこれらの病原体をヒトに対して発がん性があるグループ1に分類しています。感染しても、必ずがんになるわけではありません。
参考文献
- 国立がん研究センター がん対策情報センター 編著『患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版』学研メディカル秀潤社、2013年。第3部「がんを知る」3-1-1「がんの発生と進行の仕組みを知る」
https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/public/pdf/26_119-178.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(2025年11月6日更新)
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html - 国立がん研究センター「科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン『日本人のためのがん予防法(5+1)』」第3版(2024年11月、2022年8月時点の根拠にもとづく)
https://epi.ncc.go.jp/files/02_can_prev/E7A791E5ADA6E79A84E381ABE6A0B9E68BA0E381ABE59FBAE3.pdf - Inoue M, Hirabayashi M, Abe SK, et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med. 2022;4(1):26-36. doi:10.35772/ghm.2021.01037
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