「治りにくいがん」に厳密な定義はありません。5年生存率だけでなく、見つかる時期、手術で取り切れるか、再発の時期、がんの組織型によって、治りにくさの中身は変わります。
国立がん研究センターは、難治性がんを、早期発見が難しい、治療効果が得られにくい、転移・再発しやすいなどの性質があるために、診断や治療が特に難しいがんと説明しています。そのうえで、厳密に定義されているわけではないとしています(国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「難治性がん」2025年1月31日更新)。
この記事の内容
治りにくいがん(難治がん)とは、どんながんですか?
早期発見が難しい、治療が効きにくい、転移・再発しやすいといった性質を持つがんです。
難治がんという言葉は、1つの数字で線を引いたものではありません。国立がん研究センターの用語集が挙げる性質は、次の3つです。
- 早期発見が難しい
- 治療効果が得られにくい
- 転移・再発しやすい
この3つは、同じがんでも人によって当てはまり方が違います。治りにくいかどうかは、部位の名前だけでは決まりません。
5年生存率で見ると、どのがんが治りにくいですか?
全国がん登録の5年相対生存率では、膵臓、胆のう・胆管、肝臓、脳・中枢神経系、肺の順に低くなっています。
国立がん研究センターが公表している、全国がん登録で2018年に診断された人の5年相対生存率です。あわせて、2024年に亡くなった人の数を並べます。
| 部位 | 5年相対生存率(2018年診断) | 死亡数(2024年) |
| 膵臓 | 13.2% | 41,235人 |
| 胆のう・胆管 | 24.8% | 17,232人 |
| 肝臓 | 35.2% | 22,465人 |
| 脳・中枢神経系 | 37.8% | 3,230人 |
| 肺 | 39.3% | 75,569人 |
| 食道 | 48.8% | 10,638人 |
| 胃 | 66.1% | 37,867人 |
| 大腸 | 69.9% | 54,416人 |
| 乳房 | 89.7% | 16,005人 |
| 前立腺 | 95.7% | 13,670人 |
| 全がん | 64.8% | 384,111人 |
出典:国立がん研究センター がん統計 部位別ページ(全国がん登録、人口動態統計。2026年7月22日確認)
生存率の低い順と、亡くなる人の多い順は一致しません。2024年に亡くなった人が最も多いのは肺がんで、膵臓がんは男女計で3番目です(国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」2026年7月14日更新)。亡くなる人の数は、そのがんになる人の数にも左右されるためです。
相対生存率が何を表す数字か、ステージ別の5年・10年生存率がどうなっているかは、がんの生存率の記事で一覧にしています。この記事では、その数字の外にある違いを見ていきます。
この順位の前提
並べたのは、2018年に診断された人の5年後の数字です。いま診断される人の治療の結果ではありません。部位のまとめ方も集計によって違い、たとえば肺は、小細胞肺がんと非小細胞肺がんを合わせた数字です。どの集計の、何年の数字かで順位は入れ替わることがあります。
見つかる時期で、治りにくさはどう変わりますか?
Ⅰ期で見つかる人の割合が、部位によって大きく違います。
5年生存率が低いがんの多くは、進んだ段階で見つかる人が多いがんでもあります。院内がん登録で2014〜2015年に診断された人を、ステージごとの人数で比べます(国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム)。
| 部位 | Ⅰ期の人数 | Ⅳ期の人数 | Ⅰ〜Ⅳ期に占めるⅠ期の割合 |
| 胃 | 75,213人 | 7,562人 | 73.5% |
| 非小細胞肺がん | 42,767人 | 13,135人 | 56.4% |
| 肝細胞がん | 12,759人 | 433人 | 54.9% |
| 食道 | 11,222人 | 1,864人 | 53.4% |
| 乳房 | 38,657人 | 3,935人 | 46.6% |
| 大腸 | 30,354人 | 13,680人 | 30.3% |
| 胆のう | 736人 | 633人 | 25.2% |
| 膵臓 | 2,063人 | 3,434人 | 14.1% |
| 小細胞肺がん | 626人 | 1,929人 | 12.6% |
出典:国立がん研究センター 院内がん登録 2014-2015年5年生存率集計の病期別対象数から作成。割合はⅠ〜Ⅳ期の合計を分母に計算し、病期不明などは含めていない
胃がんはⅠ期で見つかる人が7割を超えます。膵臓がんと小細胞肺がんは、Ⅰ期で見つかる人が1割台です。同じ「がん」でも、見つかる時期の分布がこれだけ違えば、全体の生存率も違ってきます。
見つかる時期は、がんの性質だけでなく、検診があるかどうかにも左右されます。国の指針で定められたがん検診は、胃、子宮頸部、肺、乳房、大腸の5つです(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」)。膵臓がんの検診は、この指針に含まれていません。
手術で取り切れるかどうかで、何が変わりますか?
取り切れるかどうかで、治療の目的と組み合わせが変わります。
膵臓がんのように、手術でがんを取り切れるかどうかで治療の進め方が分かれるがんがあります。膵臓がんは、「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」の3つに分けて治療を選びます(がん情報サービス「膵臓がん 治療」2026年3月19日更新)。
| 状態 | 治療の進め方 |
| 切除可能 | 手術のみ、または手術と薬物療法を組み合わせます |
| 切除可能境界 | 切除しても細胞レベルでがんが残る可能性がある状態です。薬物療法または薬物療法と放射線治療を一定期間行い、手術するかを判断します |
| 切除不能 | 大きな血管を巻き込んでいる、別の臓器に転移しているなどで手術ができない状態です。薬物療法や化学放射線療法を行います |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 治療」(2026年3月19日更新、膵癌診療ガイドライン2025年版に基づく)
膵臓がんでは、がんが周りの大きな血管を巻き込んでいるかどうかで、手術できるかが変わります。手術ができない理由と例外は、ステージ4はなぜ手術できないかの記事で整理しています。薬の効き方の違いは、抗がん剤が効きにくいがんの記事にまとめています。
再発しやすさは、5年生存率に表れますか?
表れないことがあります。5年を過ぎてから再発が続くがんがあるためです。
5年生存率は、診断から5年の時点で生きている人の割合です。5年の時点で再発していても生きていれば数に入り、5年を過ぎてからの再発は数字に入りません。
エストロゲン受容体陽性の乳がんでは、88の臨床試験の6万2923人を解析した研究があります。5年間の内分泌療法を終えた時点で再発がなかった人でも、その後5〜20年のあいだ、再発は一定の割合で起こり続けました(Pan H, et al. 20-Year Risks of Breast-Cancer Recurrence after Stopping Endocrine Therapy at 5 Years. N Engl J Med 2017)。
| 診断時の状態 | 5〜20年の遠隔再発のリスク |
| T1・リンパ節転移なし | 13% |
| T1・リンパ節転移1〜3個 | 20% |
| T1・リンパ節転移4〜9個 | 34% |
| T2・リンパ節転移なし | 19% |
| T2・リンパ節転移1〜3個 | 26% |
| T2・リンパ節転移4〜9個 | 41% |
出典:Pan H, et al. N Engl J Med 2017;377:1836-1846(EBCTCGによるメタアナリシス)。T1・T2は診断時の腫瘍の大きさの区分で、T2のほうが大きい
同じ研究で、腫瘍の悪性度(グレード)も合わせて見ると、5〜20年の遠隔再発のリスクは10〜41%の幅でした。最も低かったのは、T1・リンパ節転移なしで悪性度が低い人の10%です。
乳がんの5年相対生存率は89.7%(2018年診断)と高い一方で、5年を過ぎてからの再発に備える期間が長いがんでもあります。反対に、肝細胞がんは、再発が肝臓の中で起こることが多いとされています(がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」2026年8月21日更新)。再発のしかたも、部位によって違います。
治療後に何年、どんな間隔で検査を続けるかは、がんの種類によって違います。がんの経過観察は何年かの記事で、5年という区切りの意味を説明しています。
同じ部位でも、がんの種類で治りにくさは違いますか?
違います。同じ臓器のがんでも、組織型によって進み方がまったく異なることがあります。
組織型とは、がん細胞を顕微鏡で見たときの種類のことです。甲状腺がんでは、全体の90%を占める乳頭がんは基本的にゆっくり進むとされています。一方、1〜2%を占める未分化がんは悪性度が高く、進行が速いとされています(がん情報サービス「甲状腺がんについて」2026年8月21日更新)。
| 部位と組織型 | 対象数 | 5年生存率(ネット・サバイバル) |
| 甲状腺 乳頭がん・濾胞がん | 14,419人 | 96.4% |
| 甲状腺 髄様がん | 118人 | 93.2% |
| 甲状腺 未分化がん | 62人 | 6.3% |
| 肺 非小細胞肺がん | 76,420人 | 47.5% |
| 肺 小細胞肺がん | 5,030人 | 11.5% |
出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 2014-2015年5年生存率(全病期)
「甲状腺がん」とひとまとめにすると5年相対生存率は94.3%(全国がん登録、2018年診断)ですが、未分化がんだけを見ると6.3%です。部位の名前でまとめた数字には、その部位で多い組織型の数字が大きく反映されます。
組織型の数字の注意点
甲状腺未分化がんの6.3%は、62人の集計です。対象数が少ない集計は、数人の違いで数字が大きく動きます。また、表の数字はすべての病期を合わせたもので、病期の分布の違いも含んでいます。
自分のがんが治りにくいかは、何を見ればわかりますか?
部位の名前より、ステージ、組織型、取り切れるか、再発のしかたを確かめることです。
統計の順位は、多くの人をまとめた平均です。自分のがんがどの程度治りにくいかを知るには、次の点を主治医に確認すると、統計のどこに自分が当てはまるかが見えてきます。
- ステージ(病期)と、その根拠になった検査
- 組織型(病理検査で何というがんと診断されたか)
- 手術で取り切れる状態か、取り切れない場合は何が理由か
- このがんは、いつごろ、どこに再発しやすいか
- 治療の目的が、治すことか、進行を抑えることか
10〜41%
エストロゲン受容体陽性の乳がんで、5年の内分泌療法後に再発がなかった人の、その後5〜20年の遠隔再発のリスクです。診断時の腫瘍の大きさ、リンパ節転移、悪性度で幅があります。
5年生存率の高いがんでも、5年の先に残る治りにくさは、5年生存率には表れません。
出典:Pan H, et al. N Engl J Med 2017(88試験・6万2923人のメタアナリシス)
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
次に読む
部位別・ステージ別の数字そのものを確かめたい人は、生存率の一覧へ進んでください。
がんの生存率は何%?部位別・ステージ別の5年・10年生存率
国立がん研究センターの最新の集計で、部位別・ステージ別の5年・10年生存率を一覧にした記事です。実測生存率・相対生存率・ネット・サバイバルの違いと、数字がいつ診断された人のものかも説明しています。
よくある質問
Q一番治りにくいがんは何ですか?
何をもって治りにくいとするかに厳密な定義はありません。5年相対生存率で比べると、全国がん登録で2018年に診断された人では、部位別に公表されている中で膵臓がんが13.2%と最も低く、胆のう・胆管がん24.8%、肝臓がん35.2%が続きます。
Q治りやすいがんは何ですか?
全国がん登録で2018年に診断された人の5年相対生存率は、前立腺がん95.7%、甲状腺がん94.3%、皮膚がん94.0%、乳がん89.7%と高くなっています。ただし、生存率が高いがんでも、5年を過ぎてから再発することがあります。
Q亡くなる人が多いがんは、治りにくいがんですか?
同じではありません。2024年にがんで亡くなった人が最も多かったのは肺がんの75,569人でした。亡くなる人の数は、そのがんになる人の数にも左右されます。5年相対生存率が最も低いのは膵臓がんです。
Q5年生存率が高いがんなら、5年たてば安心ですか?
がんの種類によっては、5年を過ぎても再発が続きます。エストロゲン受容体陽性の乳がんで、5年間の内分泌療法を終えた時点で再発がなかった6万2923人の解析では、その後5〜20年の遠隔再発のリスクは、診断時の腫瘍の大きさ、リンパ節転移の数、悪性度(グレード)によって10〜41%でした。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス 用語集「難治性がん」(2025年1月31日更新)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/refractory_cancer.html - 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(2024年2月14日一部改正)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001471911.pdf - 国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」(2026年7月14日更新)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html - 国立がん研究センター がん統計 部位別ページ(全がん。各部位のページを含む。2026年7月22日確認)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/1_all.html - 国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム(2014-2015年5年生存率)
https://hbcr-survival.ganjoho.jp/ - 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 治療」(2026年3月19日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/treatment.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)について」(2026年8月21日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「甲状腺がんについて」(2026年8月21日更新)
https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/about.html - Pan H, et al. 20-Year Risks of Breast-Cancer Recurrence after Stopping Endocrine Therapy at 5 Years. N Engl J Med. 2017;377(19):1836-1846. doi:10.1056/NEJMoa1701830
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29117498/





