小細胞肺がんとは?進行が速いと言われて不安な人へ、ステージと治療

肺の模型と胸部の検査画像。小細胞肺がんのステージと治療を説明する記事

小細胞肺がんは増殖が速く転移しやすい肺がんで、治療は「限局型」か「進展型」かで大きく分かれます。

肺がんは、がん細胞の形(組織型)によって小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられ、治療の進め方が大きく違います。この記事では、小細胞肺がんの特徴、ステージを決める2つの物差し、病期ごとの治療、2024年末から国内で使えるようになった薬、生存率の数字の読み方を、国立がん研究センターのがん情報サービスと臨床試験の論文から整理します。

小細胞肺がんとは、どんながんですか?

肺がんの組織型の一つで、増殖する速度が速く、転移しやすいという特徴があります。喫煙との関係も強いとされています。

がん情報サービスは、肺がんを組織型によって小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分け、治療はどちらかによって大きく異なるとしています(がん情報サービス「肺がんについて」2026年)。非小細胞肺がんには、女性や非喫煙者にも多い腺がんや、喫煙との関連が強いとされる扁平上皮がんがあります。

小細胞がんは、肺の神経内分泌腫瘍という仲間にも数えられます。同じ仲間の大細胞神経内分泌がんとともに悪性度が高く、肺の中心部の太い気管支の周り(肺門)にも、それ以外の肺の本体(肺野)にもできます(がん情報サービス「肺神経内分泌腫瘍」2026年)。

小細胞肺がんと非小細胞肺がんの違いを並べると、次のようになります。

項目 小細胞肺がん 非小細胞肺がん
特徴 増殖が速く、転移しやすい。喫煙との関係が強い 腺がん、扁平上皮がんなど。腺がんは女性や非喫煙者にも多い
ステージの物差し TNM分類(ⅠA1期〜ⅣB期)と、限局型・進展型の2つ TNM分類(ⅠA1期〜ⅣB期)
手術の対象 限局型のうち、Ⅰ期・ⅡA期でリンパ節転移がないもの Ⅰ期、Ⅱ期と、Ⅲ期の一部
薬の選び方 細胞障害性抗がん薬が中心。進展型では免疫チェックポイント阻害薬を併用することがある がん遺伝子検査とPD-L1検査の結果で薬を選ぶ

出典:がん情報サービス「肺がんについて」「肺がん 小細胞肺がん 治療」「肺がん 非小細胞肺がん 治療」(いずれも2026年8月26日更新)。

小細胞肺がんでは、どんな症状が出ますか?

小細胞肺がんだけに出る症状はなく、咳や痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさなど、肺がんに共通する症状が出ます。

がん情報サービスは、肺がんは早期には症状がみられないことも多く、進行して初めて症状が出ることもあるとしています。脳や骨に転移すると、頭痛やふらつき、背中や肩の痛みが出ることもあります(がん情報サービス「肺がんについて」2026年)。

小細胞肺がんかどうかは、がんの組織や細胞を顕微鏡で調べて決まります。結果が出るまでの日数や検査の流れは、病理検査の結果が何日で出るかを説明した記事で扱っています。血液検査では、肺がんの腫瘍マーカーとしてCYFRA、CEA、ProGRP、NSEなどを測ることがあります(がん情報サービス「肺がん 全ページ」2026年)。

小細胞肺がんのステージは、どう決まりますか?

日本肺癌学会の肺癌取扱い規約 第9版(2025年)によるTNM分類と、限局型・進展型という2つの分け方が使われます。

TNM分類は、がんの大きさと広がり(T)、リンパ節への転移(N)、離れた臓器への転移(M)の組み合わせでステージを決める方法です。小細胞肺がんも非小細胞肺がんと同じく、ⅠA1期からⅣB期まであります(がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」2026年)。TNM分類の考え方は、がんのステージがいくつまであるかを説明した記事で詳しく書いています。

小細胞肺がんでは、これとは別に、限局型と進展型という2つの分け方があります。

分け方 定義
限局型 がんが片側の肺にとどまり、反対側の縦隔と鎖骨の上のリンパ節までに広がりが限られ、がんによる胸水・心嚢水がないもの
進展型 限局型の範囲を超えて進んだもの

出典:がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」(2026年8月26日更新)。日本肺癌学会編『臨床・病理 肺癌取扱い規約 第9版』2025年、『肺癌診療ガイドライン 2025年版』に基づく。

2つの物差しは、どう重なるのですか?

限局型には、TNM分類でいえばⅢ期にあたる広がりまでが含まれます。「限局」という言葉から受ける印象ほど、早い段階に限った区分ではありません。

限局型の定義には、反対側の縦隔や鎖骨の上のリンパ節への転移までが含まれます。TNM分類では、こうしたリンパ節への転移はⅢ期に分類される広がりです。一方、離れた臓器への転移や、がんによる胸水は限局型に含まれません。

そのため、同じ「限局型」と言われても、手術の対象になるⅠ期・ⅡA期の人から、Ⅲ期の人までが含まれます。治療の説明を聞くときは、限局型か進展型かとあわせて、TNM分類で何期かを確かめると、次の節の治療の分かれ方がつながって見えます。

「限局型」という言葉が言っていないこと

限局型は、がんの広がりが片側の胸の範囲に収まっているという区分で、早期という意味ではありません。2014〜2015年に診断された人の5年ネット・サバイバルは、Ⅰ期で43.2%、Ⅲ期で17.5%でした(国立がん研究センター 院内がん登録)。どちらも限局型に含まれうる広がりですが、数字には大きな開きがあります。

限局型の小細胞肺がんは、どう治療しますか?

Ⅰ期・ⅡA期でリンパ節転移がなければ手術と術後の抗がん薬、それ以外は抗がん薬と放射線を組み合わせる化学放射線療法が中心です。

がん情報サービスは、限局型の治療を次のように整理しています(がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」2026年)。

状態 主な治療
Ⅰ期・ⅡA期でリンパ節転移がなく、手術で切除できる 手術(がんのある肺葉の切除とリンパ節郭清)のあとに細胞障害性抗がん薬
上記以外で、全身状態がよい(PS0〜2) 細胞障害性抗がん薬と放射線治療を同時に行う。同時が難しい場合は、抗がん薬のあとに放射線治療
全身状態がPS3 薬物療法が中心

出典:がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」(2026年8月26日更新)。PSは全身状態を0〜4の5段階で表す指標。

放射線治療には、1日2回照射する加速過分割照射法と、1日1回の通常分割照射法があります。加速過分割照射法は高い効果が期待される一方、副作用も強くなる可能性があります。放射線と抗がん薬を早い時期に同時に行うと効果が高いとされますが、こちらも副作用が強くなる可能性があります。治療中は放射線肺臓炎に注意が必要で、高齢の人、肺の持病がある人、喫煙歴がある人は危険性が高くなります。放射線治療そのものの通院回数や副作用は、放射線治療で何回通うのかを説明した記事にまとめています。

Ⅰ期・ⅡA期でリンパ節転移がない人以外の限局型で、最初の治療のあとに画像検査でがんが見えなくなった場合には、脳への転移を防ぐ目的で頭部に放射線を当てる予防的全脳照射を行うことがあります(がん情報サービス 2026年)。

化学放射線療法のあとの、デュルバルマブ

限局型では、化学放射線療法のあとに、免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブを続けて使う方法が、2025年3月27日に国内で承認されました(医薬品医療機器総合機構「新医薬品の承認品目一覧 2024年4月〜2025年3月」)。

この使い方を調べたADRIATIC試験では、化学放射線療法を終えた限局型の人を、くじ引きでデュルバルマブと偽薬に分けて比べました。全生存期間の中央値はデュルバルマブで55.9か月、偽薬で33.4か月、ハザード比は0.73でした。無増悪生存期間の中央値は16.6か月と9.2か月でした(Cheng Y, et al. N Engl J Med 2024)。

進展型の小細胞肺がんは、どう治療しますか?

細胞障害性抗がん薬が中心で、全身状態がPS0〜1の場合は、免疫チェックポイント阻害薬を併用することがあります。

PSは、全身状態を0から4の5段階で表す指標です。0〜2は全身状態が比較的よく、3は日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす状態を指します(がん情報サービス 2026年)。

進展型で免疫チェックポイント阻害薬を上乗せした試験の一つがIMpower133試験です。抗がん薬にアテゾリズマブを加えた201人と、偽薬を加えた202人を比べ、全生存期間の中央値は12.3か月と10.3か月、ハザード比は0.70でした。無増悪生存期間の中央値は5.2か月と4.3か月でした(Horn L, et al. N Engl J Med 2018)。

中央値は、同じ治療を受けた人の半分がそれより長く生きた時点を示す数字です。余命の数字の読み方は、余命宣告の数字の意味を説明した記事で扱っています。

骨や脳への転移には、痛みや症状に応じて放射線治療や手術を検討します。症状がない脳転移でも、状況に応じて薬物療法や放射線治療を行います(がん情報サービス 2026年)。

再発したら、どんな治療がありますか?

薬物療法が中心です。全身状態がPS0〜1なら、細胞障害性抗がん薬か、二重特異性T細胞誘導抗体という新しい種類の薬を使います。

二重特異性T細胞誘導抗体は、がん細胞の目印と、がんを攻撃するT細胞の両方に結合し、T細胞をがん細胞に引き寄せる薬です。小細胞肺がんでは、タルラタマブが「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」を対象に、2024年12月27日に国内で承認されました(医薬品医療機器総合機構 承認品目一覧)。承認にあたっては、使い始めの時期を入院で管理すること、サイトカイン放出症候群に対応できる体制で使うことなどが求められています(厚生労働省「タルラタマブ(遺伝子組換え)製剤の使用にあたっての留意事項について」2024年)。

プラチナ製剤を含む抗がん薬のあとに悪化した人を対象にしたDeLLphi-304試験では、タルラタマブの254人と、抗がん薬の255人を比べ、全生存期間の中央値は13.6か月と8.3か月、ハザード比は0.60でした。グレード3以上の有害事象は54%と80%でした(Mountzios G, et al. N Engl J Med 2025)。

主な試験を並べると次のとおりです。

試験 対象 比べたもの 全生存期間の中央値 ハザード比
ADRIATIC 化学放射線療法を終えた限局型 デュルバルマブ 対 偽薬 55.9か月 対 33.4か月 0.73
IMpower133 初回治療の進展型 抗がん薬+アテゾリズマブ 対 抗がん薬+偽薬 12.3か月 対 10.3か月 0.70
DeLLphi-304 抗がん薬のあとに悪化 タルラタマブ 対 抗がん薬 13.6か月 対 8.3か月 0.60

出典:Cheng Y, et al. N Engl J Med 2024/Horn L, et al. N Engl J Med 2018/Mountzios G, et al. N Engl J Med 2025。

がん情報サービスは、2026年8月現在、小細胞肺がんで効果が証明されている免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬か二重特異性T細胞誘導抗体を使う薬物療法だけだとしています(がん情報サービス 2026年)。自由診療で行われている免疫細胞療法などについては、効果を確かめた比較試験の結果がまだないという意味で、効かないことが証明されたという意味ではありません。費用が全額自己負担になるものや副作用があるものほど、根拠を慎重に確かめる必要があります。臨床試験に参加して新しい治療を受ける方法は、がんの治験に参加する方法で説明しています。

小細胞肺がんの生存率は、どのくらいですか?

2014〜2015年に診断された人の5年生存率(ネット・サバイバル)は、全体で11.5%、Ⅰ期43.2%、Ⅳ期2.2%でした。

国立がん研究センターの院内がん登録による、病期別の数字は次のとおりです。

病期 集計した人数 5年実測生存率 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 626人 38.9% 43.2%
Ⅱ期 557人 26.1% 28.5%
Ⅲ期 1,864人 16.3% 17.5%
Ⅳ期 1,929人 2.0% 2.2%
全体 5,030人 10.6% 11.5%

出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計(2014-2015年診断例)小細胞肺がん。全体には病期不明などを含む。

実測生存率は、がん以外の原因も含めたすべての死亡を数えた数字です。ネット・サバイバルは、がんだけが死因になる状況を仮定して計算した数字です。

この集計の病期は、UICCのTNM分類 第7版に準拠しています(院内がん登録生存率集計 システムの見方)。いま使われている第9版とは版が違うため、同じ「Ⅲ期」でも範囲が完全には一致しません。また、この人たちが診断されたのは、IMpower133試験の結果が出た2018年より前で、デュルバルマブやタルラタマブを使う治療は数字に含まれていません。

17.5%

限局型に含まれうるⅢ期の小細胞肺がんの、5年ネット・サバイバル(2014〜2015年診断)。同じ限局型でも、Ⅰ期の43.2%とは開きがあります。

出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計(2014-2015年診断例)

限局型と言われたらTNM分類で何期か、進展型と言われたら全身状態がPSのどの段階と判断されたかを、主治医に尋ねてみてください。この2つがわかると、手術か化学放射線療法か、免疫チェックポイント阻害薬を併用するかという説明が、どの条件から出てきたのかが見えてきます。

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

Q小細胞肺がんの5年生存率はどのくらいですか?

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014〜2015年に診断された人の5年ネット・サバイバルは、全体で11.5%、Ⅰ期43.2%、Ⅱ期28.5%、Ⅲ期17.5%、Ⅳ期2.2%でした。病期は当時のTNM分類 第7版によるもので、2018年以降に加わった免疫チェックポイント阻害薬などの治療は含まれていません。

Q限局型と進展型の違いは何ですか?

限局型は、がんが片側の肺にとどまり、反対側の縦隔と鎖骨の上のリンパ節までに広がりが限られ、がんによる胸水・心嚢水がないものです。進展型は、その範囲を超えて進んだものです。限局型には、TNM分類でⅢ期にあたる広がりまでが含まれます。

Q小細胞肺がんは手術できますか?

手術の対象は、限局型のうちⅠ期・ⅡA期で、リンパ節転移がない場合です。がんのある肺葉を切除してリンパ節を郭清し、手術のあとに細胞障害性抗がん薬を使います。それ以外の限局型では、抗がん薬と放射線を組み合わせる化学放射線療法が中心になります。

Q小細胞肺がんに免疫療法は使えますか?

保険診療で使えます。進展型では、全身状態がPS0〜1の場合に、抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬を併用することがあります。限局型では、化学放射線療法のあとにデュルバルマブを続ける方法が2025年3月に承認されました。がん情報サービスは、2026年8月現在、効果が証明されている免疫療法はこうした薬物療法だけだとしています。

Q小細胞肺がんが再発したら、治療はありますか?

あります。薬物療法が中心で、全身状態がPS0〜1なら、細胞障害性抗がん薬か、二重特異性T細胞誘導抗体のタルラタマブを使います。タルラタマブは2024年12月に「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」を対象に承認され、比較試験では抗がん薬と比べて全生存期間の中央値が13.6か月と8.3か月でした。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 小細胞肺がん 治療」(2026年8月26日更新・確認)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_sclc.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がんについて」(2026年8月26日更新・確認)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html
  3. 国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム「小細胞肺がん 2014-2015年 5年生存率」(2026年10月25日確認)
    https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?amp=&amp=&elapsed=5&type=c07&year=2014-2015
  4. Cheng Y, et al. Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2024.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa2404873
  5. Horn L, Mansfield AS, Szczesna A, et al. First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa1809064
  6. Mountzios G, et al. Tarlatamab in Small-Cell Lung Cancer after Platinum-Based Chemotherapy. N Engl J Med. 2025.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa2502099
  7. 医薬品医療機器総合機構「新医薬品の承認品目一覧(2024年4月〜2025年3月)」(2026年10月25日確認)
    https://www.pmda.go.jp/files/000270227.pdf
  8. 厚生労働省「タルラタマブ(遺伝子組換え)製剤の使用にあたっての留意事項について」(令和6年12月27日)
    https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T241227I0040.pdf

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