抗がん剤の効果判定はどう決まる?CTの結果が不安なときに知りたい流れと基準

抗がん剤の効果判定はどう決まる?の見出しと、CT画像を見る医師の写真。縮小は治療前と、増大は最小時点と比べる

抗がん剤の効果判定は、治療前と治療中のCTで同じ病変の大きさを測り、決められた基準で比べて行います。

この記事では、抗がん剤が効いているかどうかを、いつ・何を測って・誰が判定するのかを、国際的な判定基準であるRECIST(レシスト)の原文から順に説明します。治療前より小さいのに「進行」と判定されることがある理由、腫瘍マーカーの扱い、免疫チェックポイント阻害薬での判定の違い、結果を聞くときに確かめることもまとめました。

抗がん剤の効果判定とは何ですか?

治療によってがんが小さくなったか、変わらないか、大きくなったかを、決まった方法で確かめることです。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、多くのがんでは、CT検査などの画像検査でがんの大きさがどれだけ小さくなっているかを見て治療の効果を確認し、これを治療効果判定と呼ぶと説明しています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。

確かめ方は、がんの種類で分かれます。

がんの種類 主に何で確かめるか
肺がん、大腸がん、胃がんなど、かたまりを作るがん(固形がん) CTなどの画像検査で、がんの大きさを測る
白血病、多発性骨髄腫など、血液のがん 血液検査、骨髄検査
がんの種類によって 腫瘍マーカーを補助的に用いる

出典:がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(2025年3月確認)。

固形がんで画像を使った判定の物差しとして世界で使われているのが、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、固形がんの治療効果判定基準)です。現在の版は2009年に発表されたversion 1.1で、日本では2010年に日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が日本語訳を作っています(JCOG「固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)改訂版 version 1.1 日本語訳JCOG版」2010年)。この記事のRECISTの記述は、この日本語訳によります。

判定の結果を集計した「奏効率」という数字の読み方は、奏効率とは何かを説明した記事で扱っています。ここでは、一人の患者さんの判定がどう決まるかを順に見ていきます。

効果判定は、いつ行うのですか?

治療を始める前に1回、治療中は決まった間隔で繰り返し、同じ方法で撮影して比べます。

治療を始める前(ベースライン)

比べるための最初の画像を「ベースライン」と呼びます。RECISTは、ベースラインの評価を治療開始のできるだけ近くに行い、早くとも治療開始前4週以内に実施しなければならないとしています(JCOG版 2010年)。それより前の画像では、治療を始めるまでにがんが変化している可能性があるためです。

治療中

治療中の撮影の間隔は、RECISTでは試験の計画書で決めることになっています。効果がまだわかっていない第II相試験の例として、6〜8週ごと(各サイクルの終わりに合わせた時期)の判定が挙げられています(JCOG版 2010年)(RECIST Working Group「RECIST 1.1 Q&A」)。

日常の診療での間隔は、がんの種類、薬、体の状態によって変わり、決まった1つの答えはありません。次のCTがいつかは、治療を始めるときに主治医に確認できます。

同じ方法で撮る

RECISTは、ベースラインと経過観察のあいだで、同じ評価法・同じ技術を使わなければならないとしています。現時点ではCTが最も広く使え、再現性にも優れた方法とされています(JCOG版 2010年)。別の病院で撮ったCTや、撮り方の違う画像と比べると、大きさの差が治療の効果なのか撮り方の違いなのか区別しにくくなります。

時期 何をするか RECISTの決まり
治療開始前 ベースラインの画像を撮り、測る病変を決める 治療開始前4週以内
治療中 同じ方法で撮影し、同じ病変を測る 間隔は計画書で決める(第II相試験では6〜8週ごとの例)
縮小が見られたあと 次の評価でも基準を満たすかを確かめる(確定) 奏効が主な評価項目の非ランダム化試験で必要。通常4週以上あける

出典:JCOG「RECISTガイドライン改訂版 version 1.1 日本語訳JCOG版」(2010年)。

抗がん剤の効果判定では、何を測ってどう判定するのですか?

選んだ病変の「径(長さ)」を測って合計し、その合計が治療前や最小時点からどれだけ変わったかで、CR・PR・SD・PDの4つに分けます。

抗がん剤の効果判定(RECIST 1.1)の例。標的病変の径の合計が100mmから50mmまで縮んだあと62mmに増えると、治療前より38%小さくても、最小時点から20%以上かつ5mm以上増えたためPD(進行)と判定される

1. 測る病変(標的病変)を選ぶ

ベースラインの画像で、数字で追いかける病変を選びます。これを「標的病変」と呼びます(JCOG版 2010年)。

  • CTで長いほうの径が10mm以上の病変(CTのスライス厚が5mm以下の場合)
  • リンパ節は、短いほうの径(短径)が15mm以上のもの
  • 合計で最大5個、1つの臓器からは最大2個まで

選ばれなかった病変は「非標的病変」として記録され、大きさは測らず、あるかないか、明らかに悪くなったかを見ます。短径が10mm以上15mm未満のリンパ節は非標的病変、10mm未満のリンパ節は病変とはみなしません。

2. 径の合計を出して比べる

標的病変の径を足し合わせた「径和」を、毎回同じように計算します。判定の基準は次のとおりです(JCOG版 2010年)。

判定 標的病変の基準 比べる相手
CR(完全奏効) すべての標的病変が消失。リンパ節は短径10mm未満に縮小 —
PR(部分奏効) 径和が30%以上減少 治療前(ベースライン)の径和
PD(進行) 径和が20%以上増加、かつ絶対値でも5mm以上増加 経過中の最小の径和
SD(安定) PRに当たる縮小も、PDに当たる増大もない —

出典:JCOG「RECISTガイドライン改訂版 version 1.1 日本語訳JCOG版」(2010年)。

3. 新しい病変と、測っていない病変も見る

標的病変の径和だけでは判定は決まりません。新しい病変が明らかに出てきた場合は、標的病変が縮んでいても総合効果はPDになります。非標的病変が「明らかに」悪くなった場合もPDです。ただしRECISTは、非標的病変がいくつか若干大きくなっただけでは、通常は明らかな増悪とは判定しないとしています(JCOG版 2010年)。

治療前より小さいのに「進行」と言われるのはなぜですか?

PDかどうかを比べる相手が、治療前ではなく「経過中でいちばん小さかった時点」だからです。

図の例では、径和が治療前の100mmから24週目に50mmまで縮み、32週目に62mmになっています。62mmは治療前より38%小さい値です。それでも、いちばん小さかった50mmから24%・12mm増えているので、判定はPDになります。

縮小を見るときは治療前と、増大を見るときは最小時点と比べる。物差しの起点が2つあることを知らないと、「まだ治療前より小さいのに、なぜ効かなくなったと言われるのか」という食い違いが生まれます。RECISTの考え方では、一度縮んだがんが再び大きくなり始めたことを、その薬の効き目が続いていないしるしとして扱います。

測っているのは、全身の病変の一部です

標的病変は最大5個です。病変がそれより多い人では、残りは非標的病変として「明らかに悪くなったか」だけが見られます。径和の数字は、体の中のがん全体の量をそのまま表したものではありません。

最大5個

RECISTで径を測って合計する標的病変の数の上限(1つの臓器からは最大2個)。全身に病変がいくつあっても、数字で追うのはこの範囲です。

出典:JCOG「RECISTガイドライン改訂版 version 1.1 日本語訳JCOG版」(2010年)

効果判定は、誰が決めるのですか?

臨床試験ではRECISTに沿って判定し、独立した専門家の再判定が勧められます。日常の診療では、画像に症状や検査値を合わせて主治医が判断します。

臨床試験では

臨床試験では、担当医が判定したすべての奏効を、試験から独立した専門家が再判定することが推奨されています(JCOG版 2010年)。担当医の判定だけに頼ると、判定にばらつきや偏りが入りうるためです。

また、縮小が見られたときは「確定」の手続きがあります。奏効が主な評価項目である非ランダム化試験では、PRやCRと判定したあと、次の評価時点(通常は4週後)でも基準を満たした場合にだけ、PRやCRとして確定します(JCOG版 2010年)。

日常の診療では

RECISTは、もともと臨床試験で薬の効果を同じ物差しで測るために作られたものです。RECISTの本文は、腫瘍医が日常診療では画像所見と症状の両方にもとづいて治療を続けるかを判断していることを前提に、このガイドラインは、治療を担当する腫瘍医が適切と判断する場合を除いて、個々の患者さんの治療継続の是非の決定に用いることを意図していないと書いています(JCOG版 2010年 1.3節)。

がん情報サービスも、治療効果を見ながら治療を続けたり、他の治療法を検討したり、治療を終えて経過を観察したりすることがあると説明しています(がん情報サービス 2025年)。

「PD」と「治療をやめる」は同じではありません

RECISTの判定は、臨床試験で薬の効果をそろえて数えるための区分です。日常の診療で治療を続けるか変えるかは、PDかどうかに加えて、症状、体の状態、副作用、ほかに使える治療などを合わせて決まります。反対に、症状が悪くなったこと(病状悪化)は、RECISTでは効果の区分ではなく、治療を中止する理由として扱われます。

腫瘍マーカーは効果判定に使われますか?

腫瘍マーカーだけで効果を判定することはありません。画像による判定を補う材料です。

RECISTは、腫瘍マーカーを客観的な腫瘍縮小効果の評価に単独では使用しないとしています。一方で、治療前に腫瘍マーカーが基準値を上回っていた場合は、CR(完全奏効)と判定するために、腫瘍マーカーが基準値の上限を下回っている必要があります(JCOG版 2010年)。画像でがんが見えなくなっても、マーカーが高いままならCRとはしないということです。

がん情報サービスも、がんの種類によっては腫瘍マーカーを補助的に用いると説明しています(がん情報サービス 2025年)。値の読み方や、がん以外で上がる理由は、腫瘍マーカーとは何かを説明した記事で扱っています。

免疫チェックポイント阻害薬では、判定の仕方が違うのですか?

一時的に大きく見えることがあるため、臨床試験では「進行」をもう一度の撮影で確かめるiRECIST(アイレシスト)という決まりが使われます。

免疫チェックポイント阻害薬では、治療のはじめに病変が大きく見えたり、新しい病変が出たように見えたりしたあとで、縮んでいくことが報告されています。これを偽増悪(ぎぞうあく、pseudoprogression)と呼びます。

このためRECISTの作成グループは2017年にiRECISTを示しました。RECIST 1.1でPDに当たる変化が出ても、体の状態が安定していれば「未確定の進行(iUPD)」として扱い、4〜8週後にもう一度画像を撮って、さらに悪くなっていれば「確定した進行(iCPD)」とします(RECIST Working Group「iRECIST」2017年)。

ただし作成グループ自身が、iRECISTは臨床試験のデータの扱い方についての推奨であって、患者さんの治療方針についての推奨ではなく、また妥当性が検証された判定基準でもないと書いています。免疫チェックポイント阻害薬の治療中に「大きくなった」と言われたとき、それが偽増悪なのか本当の進行なのかは、その時点の1回の画像だけでは決められないことがある、という意味です。

判定の結果を聞くとき、何を確かめればよいですか?

どの病変を測ったか、何と比べたか、新しい病変があるか、次の判定はいつかを確かめます。

CTの結果を聞く日は、本人も家族も緊張しています。言われたことの一部しか覚えていないことも少なくありません。次の点を事前にメモしておくと、聞き漏らしが減ります。

  • 測っている病変はどれか。前回と同じ病変を測っているか
  • 今回の大きさは、治療前と比べてどうか。いちばん小さかった時と比べてどうか
  • 新しい病変は出ていないか
  • 今回の評価は、RECISTの区分(CR・PR・SD・PD)で言うとどれに当たるか
  • その判定を受けて、治療を続けるのか、変えるのか。その理由は何か
  • 次の画像検査はいつか
  • 画像の報告書や検査結果を印刷してもらえるか

免疫チェックポイント阻害薬を使っている場合は、今回の変化を次の撮影で確かめる必要があるかどうかも聞いておけます。

CTの報告書の数字は1回ごとに届きますが、判定はいつも何かとの比較で決まります。比べた相手がわかると、同じ数字の受け取り方が変わります。

画像の結果を、僕はこう受け取ってほしいと思っています

臨床試験で大切なことは、エンドポイント(何を評価するのか)です。現状は、腫瘍が小さくなることによっても保険適用されます。でも実臨床では、腫瘍が小さくなっても、その後また増大することを度々経験します。

大切なことは長生きです。極論すれば、腫瘍が小さくならなくても(少々大きくなっても)、延命効果がある薬剤を患者さんは求めているのです。

血液検査や画像検査の結果は、最近はコンピューターの画面に映されます。印刷して渡してくれる医師が最良ですが、頼んでもいろいろと面倒なことを言われたら、その画面をスマホで撮影しましょう。自分の検査結果です。

新見正則医院院長 新見正則

監修者

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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効果判定の基準も、それを集めた臨床試験の結果も、多くの人をそろえて数えるための物差しです。その物差しを自分の治療にどう当てはめるかを考えるブログです。

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臨床試験のエビデンスは集団の平均的な結果で、一人ひとりに効くことを保証するものではない、と監修者は書いています。試験に参加するのは体調が比較的よい人に限られること、副作用・治療費・通院や家族の負担は試験の数字に表れないことにも触れ、エビデンスを納得して治療を選ぶための道具として位置づけています。

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よくある質問

Q抗がん剤の効果判定はいつ行いますか?

治療を始める前に比べるための画像を撮り、治療中は決まった間隔で撮影して比べます。RECISTでは、治療前の評価は治療開始前4週以内に行うこととされています。治療中の間隔は計画書で決め、第II相試験では6〜8週ごとの判定が例に挙げられています。日常の診療での間隔はがんの種類や薬によって違うので、主治医に確認します。

QPR(部分奏効)とSD(安定)の違いは何ですか?

PRは、測っている病変の径の合計が、治療前と比べて30%以上小さくなった状態です。SDは、PRに当たるほど縮んでおらず、PD(進行)に当たるほど大きくもなっていない状態です(RECIST 1.1)。

Q治療前より小さいのにPD(進行)と言われました。なぜですか?

RECISTでは、PDかどうかを、治療前ではなく経過中でいちばん小さかった時点の径の合計と比べます。そこから20%以上、かつ5mm以上増えるとPDになるので、治療前より小さくてもPDと判定されることがあります。

Q腫瘍マーカーが下がれば、抗がん剤は効いていると考えてよいですか?

RECISTは、腫瘍マーカーを単独で効果判定には使わないとしています。効果判定は画像が中心で、腫瘍マーカーは補助的な材料です。治療前にマーカーが高かった人では、画像でがんが消えてもマーカーが基準値以下にならなければCR(完全奏効)とはしません。

Q免疫療法で腫瘍が大きくなったら、効いていないのですか?

免疫チェックポイント阻害薬では、一時的に大きく見えたあとで縮む「偽増悪」が報告されています。臨床試験で使われるiRECISTでは、進行に見える変化が出ても、4〜8週後の画像で確かめてから進行と確定します。ただしiRECISTは臨床試験のデータの扱い方の推奨で、治療方針は主治医が体の状態とあわせて判断します。

参考文献

  1. JCOG「固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)改訂版 version 1.1 日本語訳JCOG版 ver.1.0」2010年(原著:Eisenhauer EA, et al. Eur J Cancer. 2009;45(2):228-247)
    https://jcog.jp/assets/RECISTv11J_20100810.pdf
  2. Eisenhauer EA, et al. New response evaluation criteria in solid tumours: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009;45(2):228-247.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19097774/
  3. RECIST Working Group. RECIST 1.1 Q&A and clarifications.
    https://recist.eortc.org/recist-1-1-2/
  4. RECIST Working Group. iRECIST guidelines(2017年)
    https://recist.eortc.org/?p=91
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年3月11日確認
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html

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