腫瘍マーカーとは?数値が高くて不安なとき、何を見ればいいのか

腫瘍マーカーは、1回の値でがんの有無を決める検査ではなく、同じ人の値の動きを追うための検査です。

この記事では、腫瘍マーカーとは何か、何がわかって何がわからないのかを、国立がん研究センターや学会の資料をもとに整理します。CEA・CA19-9・PSAなど主なマーカーの対応表、がんがなくても値が上がる理由、検診で測る意味、そして治療中・治療後の値の読み方を順に説明します。

腫瘍マーカーとは何ですか?

腫瘍マーカーとは、主にがん細胞によって作られるタンパク質などの物質のことで、血液検査で量を調べます。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、腫瘍マーカーを「がんの種類や臓器ごとに特徴がある」物質と説明しています(がん情報サービス「大腸がん 検査」2025年)。

米国国立がん研究所(NCI)の定義はもう少し広く、がん細胞そのものが作る物質に加えて、がんや一部の良性の状態に反応して体のほかの細胞が作る物質も含めています(NCI「Tumor Markers」2023年)。この「良性の状態でも作られる」という点が、あとで説明する偽陽性の出発点になります。

近年はがん細胞の遺伝子変異を調べる検査も「マーカー」と呼ばれますが、この記事では、採血で測るCEAやPSAのような血液中の腫瘍マーカーを扱います。

腫瘍マーカーで何がわかるのですか?

主な目的は、がんの診断の補助、診断後の経過観察、治療の効果判定の3つです。

がん情報サービスは、腫瘍マーカー検査の目的をこの3つと説明しています(がん情報サービス 2025年)。

  • 診断の補助:画像検査や病理検査とあわせて、がんの可能性を考える材料にする
  • 治療の効果判定:手術や薬物療法のあとに値が下がったかを見る
  • 経過観察:治療後の定期検査で、再発の手がかりを探す

同じページには、限界もはっきり書かれています。がんかどうかは腫瘍マーカーの値だけでは診断できません。がんの進行や転移についても、値の変化だけでは判断できません。そのため医師は、画像検査や病理検査などの結果とあわせて総合的に判断します。

治療でがんが縮んだかどうかを数字で表す方法は、奏効率とは何かを説明した記事で扱っています。

主な腫瘍マーカーにはどんな種類がありますか?

よく使われるのはCEA、CA19-9、AFP、PSA、CA125などで、マーカーごとに関係の深いがんが違います。

マーカー 主に関係するがん 主な使われ方 読むときの注意
CEA 大腸がんなど消化器のがん、肺がん 治療の効果と再発の確認 喫煙で高くなる。肝硬変、糖尿病、高齢でも高くなることがある
CA19-9 膵臓がん、胆道がん、胃がん 治療が効いているかの確認 胆管がふさがった黄疸や胆石症でも高くなる。Lewis陰性の人はほとんど作らない
AFP 肝細胞がん、胚細胞腫瘍 診断の補助、治療効果の確認 慢性肝炎、肝硬変、妊娠でも高くなる
PIVKA-II 肝細胞がん 治療効果と再発の確認 ビタミンKが不足すると作られる
PSA 前立腺がん 診断の補助、治療効果と再発の確認 前立腺肥大症や前立腺炎でも高くなる。年齢とともに上がる
CA125 卵巣がん 診断の補助、治療効果と再発の確認 子宮内膜症、月経、妊娠、腹膜炎、肝硬変でも高くなる
CA15-3 乳がん 治療効果と再発の確認 早期の乳がんの発見には向かない
SCC抗原 扁平上皮がん(肺など) がんの組織型の手がかり 皮膚の病気でも高くなる

がんの種類と使われ方は、NCI「Tumor Marker Tests in Common Use」(2023年)、がん情報サービスの各がんの検査ページ(2024〜2026年)による。注意欄は、日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン2005/2006」、同「JSLM2021」、がん情報サービス「前立腺がん 検査」(2024年)、Ballehaninna ら(2012年)による。

表を見ると、1つのがんに複数のマーカーが対応し、1つのマーカーが複数のがんにまたがっていることがわかります。たとえば肝細胞がんでは、腫瘍が小さい場合は2種類以上の腫瘍マーカーを測ることが推奨されています(がん情報サービス「肝細胞がん 検査」2026年)。

肺がんでは、CEAがどの組織型でも陽性になりやすい一方、SCC抗原やシフラ(CYFRA)は扁平上皮がん、NSEやProGRPは小細胞がんとの関係が深いとされます(日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン2005/2006」)。逆にCEAは消化器のがんでも肺がんでも上がるので、CEAが高いというだけでは、どの臓器のがんかは決まりません。

基準値を超えたら、がんなのですか?

いいえ。基準値を超えてもがんとは限らず、基準値の中でもがんがないとは言えません。

NCIは、腫瘍マーカーが高くてもがんの証明にはならず、がん以外の状態でも値が上がること、また同じがんの人でも全員の値が上がるわけではないことを明記しています(NCI 2023年)。

がんがなくても値が上がる場合

表の注意欄に挙げたものが代表例です。

  • CEA:喫煙で高くなる(日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン JSLM2021」)
  • CA19-9:胆管がふさがって黄疸が出ると、がんでなくても大きく上がることが多い。良性の閉塞性黄疸の61%でCA19-9が高かったという報告がある(Ballehaninna ら 2012年)
  • PSA:前立腺肥大症や前立腺炎など、がん以外の病気でも上がる(がん情報サービス 2024年)
  • CA125:子宮内膜症、月経、妊娠、腹膜炎、肝硬変で上がる(日本臨床検査医学会 2005/2006)
  • AFP:慢性肝炎、肝硬変、妊娠で上がる(同)

がんがあっても値が上がらない場合

PSAについて、がん情報サービスは、PSA値が10ng/mL以上でも前立腺がんが見つからないことがある一方で、基準値以下でも前立腺がんが見つかることがあると説明しています(がん情報サービス 2024年)。

CA19-9には、体質による「上がらない人」がいます。Lewis(ルイス)式血液型で陰性の人は、CA19-9を作るのに必要な酵素を持っていません。その割合は人口の5〜10%とされ、膵臓がんがあってもCA19-9が上がらないことがあります(Ballehaninna ら J Gastrointest Oncol 2012年)。

基準値そのものも一つではない

PSAの基準値は一般に4.0ng/mL以下とされますが、年齢とともに上がることを考えて、50〜64歳で3.0ng/mL以下、65〜69歳で3.5ng/mL以下、70歳以上で4.0ng/mL以下が推奨されています(がん情報サービス 2024年)。同じ値でも、年齢によって基準の内か外かが変わるということです。

健康診断や人間ドックで測る意味はありますか?

症状のない人のがん検診として腫瘍マーカーを測ることは、原則として効果が認められていません。

国が推奨するがん検診は、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5つで、腫瘍マーカーは含まれていません。がん情報サービスは、CT、PET、腫瘍マーカーなどについて、がんの再発や転移を調べる検査としては大変重要としたうえで、がん検診としての効果(がん死亡を減らす効果が確実で、利益が不利益を上回ること)は認められていないと説明しています(がん情報サービス「がん検診について」2026年)。

理由は、がんが少ない集団で測ると、値が高い人のほとんどががんではないからです。韓国で症状のない70,940人をCA19-9などで調べた研究では、CA19-9が基準を超えた1,063人のうち、膵臓がんだったのは4人でした(Kim ら 2004年。Swords ら OncoTargets and Therapy 2016年による)。

CA125では、英国で閉経後の女性202,562人を対象にしたランダム化比較試験(UKCTOCS)があります。毎年のCA125測定を軸にした検診の群、超音波検診の群、検診なしの群に分けて中央値16.3年追跡したところ、CA125の群では早期に見つかる人が増えたものの、どちらの検診群でも、卵巣がん・卵管がんによる死亡は検診なしの群と比べて有意には減りませんでした。著者らは一般集団での検診は推奨できないと結論しています(Menon ら Lancet 2021年)。

例外的な扱いがあるもの

PSAは、職場や自治体のがん検診で実施されることがあります(がん情報サービス 2024年)。ただし国立がん研究センターの「有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン」(2008年度版)は、死亡率を減らす効果の有無を判断する証拠が不十分だとして、PSA検査を自治体などの対策型検診としては勧めていません。人間ドックなどの任意型検診で行う場合は、効果が不明であることと、過剰診断などの不利益を受診者に説明する必要があるとしています(国立がん研究センター がん検診ガイドライン)。

もう一つは、肝細胞がんになりやすい人の定期検査です。B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人には、3〜6か月ごとの腹部超音波検査や腫瘍マーカー検査が勧められています(がん情報サービス 2026年)。これは一般の人の検診ではなく、リスクがはっきりした人を追いかける検査です。

治療中・治療後の値は、どう読めばよいのですか?

1回の値が基準値の上か下かより、同じ人の値が前回からどう動いたかを見ます。

腫瘍マーカーとは1回の値ではなく推移を見る検査であることを示す模式図。基準値より上でも横ばい、基準値の中でも上がり続ける、一度だけ跳ねて戻る、の3つの形

ここまで見てきたように、腫瘍マーカーの値には、がん以外の要因や体質が混ざります。喫煙者のCEAのように、がんと関係なく高めの人もいれば、Lewis陰性の人のCA19-9のように、がんがあっても上がらない人もいます。人によって「ふだんの値」が違うのです。

そのため、他人と比べるための基準値より、同じ人の中での変化のほうが情報を持ちます。がん情報サービスも、腫瘍マーカーの値を「体の中にあるがんの量を反映する指標」として用いると説明しています(がん情報サービス 2025年)。

図のAは、基準値を超えていても、ほぼ動いていない形です。Bは、基準値の中に収まっていても、測るたびに上がっている形です。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2006年の勧告は、進行した膵臓がんでCA19-9を繰り返し測り、上がり続けることは病気の進行を示唆するとしています(Locker ら J Clin Oncol 2006年)。

Cは、一度だけ跳ねて戻る形です。同じASCOの勧告は、新しい治療を始めてから4〜6週の間のCEAの上昇は慎重に解釈するよう勧めています。とくにオキサリプラチンという抗がん剤のあとに、見かけ上の早い上昇が起こりうるためです(Hermunen ら Anticancer Res 2013年)。治療の直後に1回上がっただけで、治療が効いていないとは決められません。

どのくらいの間隔で測るのか

間隔はがんの種類や治療によって違います。大腸がんの手術後は、3年目までは3か月ごとの血液検査と6か月ごとのCT検査、4年目以降は6か月ごとに血液検査と画像検査を受け、定期検査の目安は5年間とされています(がん情報サービス「大腸がん 療養」2025年)。ASCOの勧告では、ステージⅡ・Ⅲの大腸がんの手術後は、少なくとも3年間、3か月ごとにCEAを測るとしています(Locker ら 2006年)。

間隔があらかじめ決まっているのは、推移を見るためです。値を1点ずつ追うのではなく、何回分かを並べて形として見ることで、はじめて読めるようになります。

値が上がったと言われたら、何を確認すればよいですか?

前回からの変化、がん以外の要因、画像検査など他の検査の結果の3つを、主治医に確認します。

  • 前回、前々回の値と比べてどう動いているか。上がったのは1回だけか、続けてか
  • がん以外に値を動かす要因はないか。喫煙、胆管の詰まり、前立腺の炎症、月経や妊娠など、マーカーごとに違う
  • 新しい治療を始めた直後ではないか
  • 画像検査など、ほかの検査ではどう見えているか
  • このマーカーは、診断のときに自分の場合も上がっていたものか

最後の項目は、Lewis陰性の人のCA19-9のように、そもそもその人の体では上がらないマーカーがあるためです。診断時に上がっていたかどうかは、主治医が把握しています。

腫瘍マーカーの値は、検査結果の用紙の上では1つの数字として届きます。けれども、その数字が意味を持つのは、前の数字と並べたときです。

腫瘍マーカーが答えられないこと

がんかどうかは、腫瘍マーカーの値だけでは診断できません。がんの進行や転移も、値の変化だけでは判断できません(がん情報サービス 2025年)。値はあくまで判断の材料の一つで、画像検査や病理検査の結果とあわせて読まれます。

1,063人中 4人

症状のない70,940人を調べ、CA19-9が基準を超えた1,063人のうち、膵臓がんだった人の数。値が高いことと、がんがあることは別の話です。

出典:Kim ら(2004年)の研究。Ballehaninna ら J Gastrointest Oncol 2012年、Swords ら OncoTargets and Therapy 2016年による

監修

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年英国オックスフォード大学医学博士(移植免疫学)。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞。

詳しいプロフィール

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よくある質問

腫瘍マーカーが正常なら、がんはないと考えてよいですか?

そうとは言えません。同じがんの人でも全員の値が上がるわけではなく、PSAでは基準値以下でも前立腺がんが見つかることがあります。CA19-9は、Lewis陰性の人(人口の5〜10%)ではがんがあっても上がらないことがあります。

腫瘍マーカーは喫煙で上がりますか?

CEAは喫煙で高くなることが、日本臨床検査医学会のガイドライン(JSLM2021)に記載されています。CEAが少し高いときは、喫煙の有無も読み方に関わります。

人間ドックの腫瘍マーカー検査は受けたほうがいいですか?

がん情報サービスは、腫瘍マーカーは再発や転移を調べる検査としては重要だが、がん検診としての効果は認められていないと説明しています。PSAも国立がん研究センターのガイドライン(2008年度版)では対策型検診として勧められておらず、任意で受ける場合は効果が不明なことと過剰診断などの不利益を理解したうえで、とされています。

腫瘍マーカーは何か月ごとに測るものですか?

がんの種類と治療によって違います。大腸がんの手術後は、3年目までは3か月ごとの血液検査、4年目以降は6か月ごとが目安で、定期検査は5年間とされています(がん情報サービス 2025年)。

抗がん剤を始めたら腫瘍マーカーが上がりました。効いていないのですか?

1回の上昇だけでは決められません。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の勧告は、新しい治療を始めて4〜6週の間のCEAの上昇は慎重に解釈するよう勧めており、とくにオキサリプラチンのあとに見かけ上の早い上昇が起こりうるとしています。その後の推移と画像検査の結果をあわせて判断されます。

参考文献

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    https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/diagnosis.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」2026年4月更新
    https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 検査」2024年7月更新
    https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/diagnosis.html
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝細胞がん 検査」2026年8月更新
    https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/diagnosis.html
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 療養」2025年3月更新
    https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/follow_up.html
  6. 国立がん研究センター「有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン」2008年度版
    https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/zenritsusengan.html
  7. National Cancer Institute. Tumor Markers. 2023年12月レビュー
    https://www.cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-fact-sheet
  8. National Cancer Institute. Tumor Marker Tests in Common Use. 2023年12月レビュー
    https://www.cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-list
  9. 日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン JSLM2021」
    https://jslm.org/books/guideline/2021/gl/JSLM_GL2021.pdf
  10. 日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン2005/2006」腫瘍マーカーの見方
    https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/298.pdf
  11. Ballehaninna UK, Chamberlain RS. The clinical utility of serum CA 19-9 in the diagnosis, prognosis and management of pancreatic adenocarcinoma: An evidence based appraisal. J Gastrointest Oncol. 2012;3(2):105-119.
    https://jgo.amegroups.org/article/view/181/html
  12. Swords DS, Firpo MA, Scaife CL, Mulvihill SJ. Biomarkers in pancreatic adenocarcinoma: current perspectives. OncoTargets and Therapy. 2016;9:7459-7467.
    https://www.dovepress.com/biomarkers-in-pancreatic-adenocarcinoma-current-perspectives-peer-reviewed-fulltext-article-OTT
  13. Menon U, et al. Ovarian cancer population screening and mortality after long-term follow-up in the UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening (UKCTOCS): a randomised controlled trial. Lancet. 2021.
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  15. Hermunen K, Haglund CAJ, Osterlund P. CEA Fluctuation During a Single Fluorouracil-based Chemotherapy Cycle for Metastatic Colorectal Cancer. Anticancer Res. 2013;33(1):253-260.
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