トリプルネガティブ乳がんとは?治療法が少ないと不安な人へ、今の治療

トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン受容体とHER2がどちらも陰性の乳がんです。
「使える薬が少ない」と言われてきましたが、2018年以降、日本で使える薬が加わっています。

この記事では、トリプルネガティブ乳がんの定義と調べ方、なぜ薬が少ないと言われてきたのか、いま日本で使える薬と、それを使うために必要な検査を、日本乳癌学会の診療ガイドラインと薬の添付文書をもとに整理します。

トリプルネガティブ乳がんとは、どんな乳がんですか?

エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つが、いずれも陰性の乳がんです。

乳がんは、がん細胞が持っている目印によって性質を分けます。これをサブタイプ分類といい、どの薬が合うかを選ぶための参考にします(国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」2025年6月19日更新)。

トリプルネガティブは「3つの陰性」という意味です。3つの目印と、陽性だったときに使われる薬は次のとおりです(同)。

目印 何か 陽性のときに使われる薬
エストロゲン受容体 女性ホルモンと結合するタンパク質(受容体) ホルモン療法薬
プロゲステロン受容体 女性ホルモンと結合するタンパク質(受容体) ホルモン療法薬
HER2 がん細胞の増殖を促すタンパク質 抗HER2薬

2つのホルモン受容体のどちらかがあれば、ホルモン受容体陽性と判定します(同)。トリプルネガティブ乳がんは、2つのホルモン受容体がどちらもなく、HER2も陰性のものです。

どのくらいの人が、トリプルネガティブ乳がんですか?

米国では、乳がん全体の約10〜15%とされています。

米国がん協会は、トリプルネガティブ乳がんが乳がん全体の約10〜15%を占めるとしています。閉経前の女性、アフリカ系アメリカ人の女性、遺伝性のBRCA1遺伝子変異がある女性に多いとしています(American Cancer Society「Triple-negative Breast Cancer」2026年6月24日改訂)。

BRCA遺伝子との関係は、この記事の後半で日本のデータとあわせて説明します。

トリプルネガティブかどうかは、どうやって分かりますか?

生検で採ったがんの組織を調べて、3つの目印があるかどうかを判定します。

乳がんの確定診断では、画像で位置を確かめながら、針で病変の一部を採取します。がん細胞が見つかった場合は、がんの性質を調べ、治療法の選択に役立てます(がん情報サービス「乳がん 検査」2023年7月5日更新)。

HER2は、免疫組織化学染色(IHC)の判定を基本に、結果によってはISHという別の方法でも確かめます。

ここで知っておきたいのは、「HER2陰性」の中にも段階があることです。日本乳癌学会のガイドラインは、IHCで1+、またはIHCで2+かつISH陰性のものを「HER2低発現」と定義しています(乳癌診療ガイドライン2022年版 薬物療法 CQ34)。HER2低発現は抗HER2薬の対象にはなりませんが、後で説明するように、使える薬が1つ変わります。

なぜ「使える薬が少ない」と言われてきたのですか?

ホルモン療法薬も抗HER2薬も、狙う目印がないために使えないからです。

ホルモン受容体陽性の乳がんは女性ホルモンで増える性質をもつため、ホルモン療法薬の効果が期待できます。HER2陽性の乳がんには抗HER2薬を使います(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)。トリプルネガティブ乳がんには、そのどちらの目印もありません。

そのため、トリプルネガティブ乳がんは細胞障害性抗がん薬で治療し、免疫チェックポイント阻害薬を使うこともある、とされています(同)。細胞障害性抗がん薬は、細胞が増える仕組みの一部を邪魔してがん細胞を攻撃する薬で、正常に増えている細胞も影響を受けます(同)。

「使える薬が少ない」は、この「目印がない」ことから来た言い方です。ただし、その後の変化で、この言い方は当てはまる範囲が狭くなっています。

いまは、どんな薬が使えますか?

2018年以降、トリプルネガティブ乳がんの人が対象に含まれる薬が、日本で7回承認されています。

トリプルネガティブ乳がんに関わる薬の日本での承認を年順に示した図。2018年オラパリブ、2019年アテゾリズマブ、2021年ペムブロリズマブ、2022年オラパリブ術後とペムブロリズマブ術前・術後、2023年トラスツズマブ デルクステカン、2024年サシツズマブ ゴビテカン
多くの承認は、BRCA・PD-L1・HER2低発現といった目印の検査結果が条件になっている。
出典:各薬の添付文書、PMDA審査報告書、製造販売元の発表

どの薬も、トリプルネガティブ乳がんなら誰でも使えるわけではありません。添付文書に書かれた条件は、次のとおりです。

薬(種類) 使える条件(添付文書の効能・効果から) 日本での承認
ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬) ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で、再発高リスクの乳がんの術前・術後 2022年
ペムブロリズマブ PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の、手術不能または再発乳がん(ほかの抗がん薬と併用) 2021年
アテゾリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬) PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の、手術不能または再発乳がん(アルブミン懸濁型パクリタキセルと併用) 2019年
オラパリブ(PARP阻害薬) BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で、再発高リスクの乳がんの術後 2022年
オラパリブ がん化学療法歴のある、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん 2018年
トラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体) 化学療法歴のある、HER2低発現の手術不能または再発乳がん 2023年
サシツズマブ ゴビテカン(抗体薬物複合体) 化学療法歴のある、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん 2024年

効能・効果は各薬の添付文書によります(キイトルーダ 2026年2月改訂、テセントリク 2026年8月改訂、リムパーザ 2026年3月改訂、トロデルビ 2026年3月改訂)。トラスツズマブ デルクステカンのHER2低発現への効能は、ガイドラインの記載によります(乳癌診療ガイドライン2022年版 CQ34)。

表を見ると、条件の多くは「何がないか」ではなく「何があるか」で書かれています。BRCA遺伝子の変異がある、PD-L1が陽性である、HER2が低発現である。トリプルネガティブという名前は3つの「ない」で決まりますが、いまの薬の選び方は、その中にある別の目印を探す形になっています。

目印の検査が要らない承認もあります。術前・術後のペムブロリズマブは「再発高リスク」が条件で、PD-L1陽性は条件に入っていません(キイトルーダ 添付文書)。サシツズマブ ゴビテカンの条件も、化学療法歴と、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性であることです(トロデルビ 添付文書)。

【最新の知見】2026年10月更新

サシツズマブ ゴビテカンは、2026年3月の添付文書改訂で、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんにも効能が加わりました(トロデルビ 添付文書 2026年3月改訂)。同じ抗体薬物複合体のダトポタマブ デルクステカンは、日本での効能・効果がホルモン受容体陽性かつHER2陰性の乳がんで、トリプルネガティブ乳がんは含まれていません(ダトロウェイ 添付文書 2025年9月改訂)。

手術ができる段階では、どう治療しますか?

再発のリスクが高い場合は手術の前から薬物療法を行い、手術後の治療は、取り出した組織にがんが残ったかどうかやBRCA遺伝子の結果で変わります。

手術の前に薬を使うのは、なぜですか?

術前薬物療法の主な目的は、手術の前にがんを小さくすることです。がんが大きくて乳房部分切除術ができない場合でも、小さくできれば部分切除ができる可能性があります(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)。

術前薬物療法のあとは、手術で取り出した組織を調べて、病理学的完全奏効(pCR)が得られたかどうかを判定します。その結果は、手術後の治療を選ぶ材料になります(乳癌診療ガイドライン2022年版 CQ10)。

術前・術後のペムブロリズマブ

KEYNOTE-522試験は、腫瘍の大きさがT2以上、またはT1cでリンパ節転移があるトリプルネガティブ乳がんを対象に、術前の化学療法にペムブロリズマブを加え、術後も続ける治療を、プラセボと比べました(乳癌診療ガイドライン2022年版 CQ16)。腫瘍の大きさ(T)とリンパ節転移(N)は、がんのステージを決める要素でもあります。

評価項目 ペムブロリズマブ併用 プラセボ
pCR率 64.8% 51.2%
3年無イベント生存率 84.5% 76.8%
グレード3以上の有害事象 76.8% 72.2%
甲状腺機能低下症 15.1% 5.7%
副腎機能障害 2.6% 0%

3年無イベント生存率のハザード比は0.63(95%信頼区間0.48〜0.82)でした(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386(6):556-567)。ガイドラインは、周術期のペムブロリズマブを「弱く推奨する」としています(推奨の強さ2、エビデンスの強さ中、合意率80%)(CQ16)。

7.7ポイント

ペムブロリズマブを加えたことによる、3年無イベント生存率の差(84.5%と76.8%)。
加えなくても76.8%の人はイベントがなく、加えても15.5%の人にはイベントが起きていた。

Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022(KEYNOTE-522、追跡期間中央値39.1か月)

無イベント生存率は、再発や死亡などの「イベント」が起きていない人の割合です。どちらの群も化学療法を受けており、差の7.7ポイントが、ペムブロリズマブを加えた分にあたります。

手術後にがんが残っていた場合

術前の化学療法でpCRが得られなかったHER2陰性の早期乳がんに対して、ガイドラインは術後にカペシタビンを6〜8サイクル投与することを「強く推奨する」としています(推奨の強さ1、エビデンスの強さ中、合意率77%)。根拠のCREATE-X試験では、ホルモン受容体陰性の群で無病生存期間のハザード比0.58(95%信頼区間0.39〜0.87)、全生存期間のハザード比0.52(同0.30〜0.90)でした(CQ10)。

ただし、カペシタビンの添付文書の乳がんの効能・効果は「手術不能又は再発乳癌」で、術後の使用は書かれていません(ゼローダ 添付文書 2026年2月改訂)。ガイドラインも、2022年4月の時点で早期乳がんには保険適用外だと注記しています(CQ10)。使えるかどうかは主治医に確かめてください。

BRCA遺伝子に変異がある場合

BRCA遺伝子の変異があり、再発リスクが高いHER2陰性の早期乳がんでは、周術期の化学療法のあとにオラパリブを1年間投与することを、ガイドラインは「強く推奨する」としています(推奨の強さ1、エビデンスの強さ中、合意率90%)(CQ33)。

根拠のOlympiA試験では、参加者の82.2%(1,509人)がトリプルネガティブ乳がんでした。4年無浸潤疾患生存率はオラパリブ群82.7%、プラセボ群75.4%(ハザード比0.63)、4年全生存率は89.8%と86.4%(ハザード比0.68)です(同)。オラパリブを使うには、承認された検査でBRCA遺伝子の変異が確認されている必要があります(リムパーザ 添付文書)。

がんが小さい場合

浸潤径1cm以下でリンパ節転移のないトリプルネガティブ乳がんについて、ガイドラインは「術後化学療法が予後を改善させるというデータは乏しい」としています。多くの臨床試験がこの人たちを対象から外していたためです(乳癌診療ガイドライン2022年版 FRQ4)。

プラチナ製剤

トリプルネガティブの早期乳がんに対して、ガイドラインはプラチナ製剤の投与を「強く推奨する」としています。ただし合意に至るまでに3回の投票を要し、合意率は70%でした。具体的な対象やレジメンの提示は難しいとしており、海外のNCCN、ASCO、ESMOは術後の使用を推奨していないことも併記しています(CQ17)。

再発・転移した場合は、どう薬を選びますか?

PD-L1、BRCA遺伝子、HER2低発現かどうかといった検査結果と、これまでに受けた治療で選びます。

目印・状況 ガイドラインの推奨 試験の主な結果
PD-L1陽性 化学療法にペムブロリズマブを併用することを強く推奨 KEYNOTE-355(CPS10以上):無増悪生存期間の中央値9.7か月と5.6か月、全生存期間の中央値23.0か月と16.1か月
PD-L1陽性 アルブミン懸濁型パクリタキセルにアテゾリズマブを併用することを強く推奨 IMpassion130(PD-L1陽性):無増悪生存期間の中央値7.5か月と5.0か月
BRCA遺伝子の変異あり アンスラサイクリン系とタキサン系の治療歴があればPARP阻害薬の単剤を強く推奨 2試験の統合で無増悪生存期間のハザード比0.56。全生存期間は有意差なし(ハザード比0.87)
HER2低発現(化学療法歴あり) トラスツズマブ デルクステカンを強く推奨 DESTINY-Breast04のホルモン受容体陰性の人:無増悪生存期間の中央値8.5か月と2.9か月

推奨と数字は、日本乳癌学会のガイドラインによります(CQ31、CQ32、CQ34)。PD-L1の検査は薬ごとに方法が違い、ペムブロリズマブは22C3という抗体を使ってCPSという指標で、アテゾリズマブはSP142という抗体で判定します(CQ31)。

IMpassion130の全生存期間(中央値25.4か月と17.9か月)は、検証的な解析ではないとされています(CQ31)。

化学療法を受けたあとのサシツズマブ ゴビテカン

サシツズマブ ゴビテカンは、2つ以上の化学療法歴があるトリプルネガティブ乳がんを対象にしたASCENT試験で、医師が選んだ化学療法と比べられました。全体での無増悪生存期間の中央値は4.8か月と1.7か月(ハザード比0.43)、全生存期間の中央値は11.8か月と6.9か月(ハザード比0.51)でした(トロデルビ 添付文書)。

添付文書は、骨髄抑制や感染症などの重い副作用が起こり、死亡に至ることがあるとして警告を出しています。好中球減少は69.4%、重度の下痢は10.3%と記載されています(同)。

中央値は「月」の単位です

表と本文の数字は、試験の条件を満たした人の中央値です。新しい薬で延びた期間の多くは、数か月単位です。またDESTINY-Breast04でホルモン受容体陰性だった人は557人中63人と少なく、ガイドラインも探索的な解析にとどまるとしています(CQ34)。

遺伝は関係ありますか?

関係があります。トリプルネガティブ乳がんでは、BRCA遺伝子の変異が見つかる人が一定の割合でいます。

日本の遺伝性乳がん卵巣がんの登録データでは、BRCA遺伝学的検査を受けた乳がんの女性のうち、60歳以下で発症したトリプルネガティブ乳がんの人の31.6%(1,263人中399人)にBRCA1またはBRCA2の病的バリアントが見つかりました。61歳以上で発症した人では18.3%(278人中51人)でした(Takahashi M, et al. Breast Cancer. 2025;32(4):792-802)。

同じ論文は、日本でBRCA遺伝学的検査が保険で受けられる条件として、次のような乳がんを挙げています(同)。

  • 45歳以下で発症した乳がん
  • 60歳以下で発症したトリプルネガティブ乳がん
  • 原発性乳がんが2つ以上ある
  • 第3度近親までに乳がん・卵巣がん・膵がんの家族歴がある
  • 男性の乳がん

BRCA遺伝子の結果は、オラパリブを使えるかどうかに関わります。また変異がある場合は、予防的な乳房切除を検討することもあります(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年)。

予後はどうですか?

ほかのサブタイプより予後が悪いとされていますが、診断時に広がっている範囲で大きく違います。

日本乳癌学会のガイドラインは、トリプルネガティブ乳がんを、ほかのサブタイプより悪性度が高く予後が悪いとされるものとして扱っています(FRQ4)。米国がん協会は、ほかの浸潤性乳がんより速く増え、広がる傾向があるとしています(American Cancer Society 2026年)。

米国がん協会が示す5年相対生存率は次のとおりです(同)。

診断時の広がり 5年相対生存率
限局(乳房の中にとどまる) 92%
領域(近くの組織やリンパ節に広がる) 67%
遠隔(肺・肝臓・骨などに広がる) 15%
全体 78%

米国の、2015〜2021年に診断された人の数字です

この表は米国の女性のデータで、日本のトリプルネガティブ乳がんの数字ではありません。米国がん協会自身も、治療は進歩しているので、いま診断される人の見通しはこの数字より良い可能性が高いとしています(American Cancer Society 2026年)。

主治医には、何を確かめればよいですか?

自分のがんが、どの目印を持っているかです。

トリプルネガティブ乳がんで使える薬は、検査の結果で変わります。次のことを確かめておくと、説明を受けたときに、どの薬の話をしているのかが分かりやすくなります。

  • HER2の判定は「0」か、それとも「1+」や「2+でISH陰性」の低発現か
  • がんの大きさとリンパ節転移から見て、再発高リスクに当たるか
  • 術前薬物療法を受けた場合、手術でpCRだったか
  • BRCA遺伝学的検査の対象になるか。受けた場合、結果はどうか
  • 再発・転移した場合、PD-L1の検査を受けたか。どの方法で、結果はどうか

トリプルネガティブという名前が表しているのは、3つの目印がないということです。治療を選ぶときに見ているのは、その中にある別の目印のほうです。

監修

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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再発・転移したトリプルネガティブ乳がんでは、条件に合う薬を選びながら治療を続けます。使える薬を使い切ったあと、何を基準に治療を選ぶのか。その問いを持った人へ。

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よくある質問

トリプルネガティブ乳がんとは何ですか?

エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つがいずれも陰性の乳がんです。ホルモン療法薬や抗HER2薬が狙う目印がないため、細胞障害性抗がん薬が治療の中心になり、免疫チェックポイント阻害薬を使うこともあります(がん情報サービス)。

トリプルネガティブ乳がんは、本当に使える薬が少ないのですか?

以前よりは増えています。2018年以降、日本ではオラパリブ、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、トラスツズマブ デルクステカン、サシツズマブ ゴビテカンが、トリプルネガティブ乳がんの人を対象に含む形で承認されています。ただし多くは、BRCA遺伝子の変異、PD-L1陽性、HER2低発現などの条件が付いています。

HER2陰性なのに、トラスツズマブ デルクステカンが使えるのはなぜですか?

HER2陰性の中に「HER2低発現」と呼ばれる段階があるからです。免疫組織化学染色で1+、または2+かつISH陰性のものをいいます。日本乳癌学会のガイドラインは、化学療法歴のあるHER2低発現の転移・再発乳がんにトラスツズマブ デルクステカンを強く推奨しています。

トリプルネガティブ乳がんは遺伝しますか?

BRCA遺伝子の変異が関わる場合があります。日本の登録データでは、BRCA遺伝学的検査を受けた60歳以下発症のトリプルネガティブ乳がんの人の31.6%に、BRCA1またはBRCA2の病的バリアントが見つかりました。60歳以下で発症したトリプルネガティブ乳がんは、BRCA遺伝学的検査が保険で受けられる条件の1つです。

トリプルネガティブ乳がんの5年生存率はどのくらいですか?

米国がん協会によると、2015〜2021年に米国で診断された人の5年相対生存率は、乳房の中にとどまる場合92%、近くに広がった場合67%、遠くに広がった場合15%、全体で78%です。米国のデータで、日本の数字ではありません。

参考文献

  1. 日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン2022年版』WEB版(2024年3月28日 WEB改訂版掲載)
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/
  2. 同 薬物療法 CQ16「周術期トリプルネガティブ乳癌に対して,免疫チェックポイント阻害薬は勧められるか?」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/yakubutsu/cq16/
  3. 同 薬物療法 CQ31「転移・再発乳癌に対してPD-1/PD-L1阻害薬は勧められるか?」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/yakubutsu/cq31/
  4. 同 薬物療法 CQ34「化学療法歴のあるHER2低発現の転移・再発乳癌に対して、トラスツズマブ デルクステカンは推奨されるか?」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/yakubutsu/cq34/
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(2025年6月19日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html
  6. Schmid P, Cortes J, Dent R, et al. Event-free Survival with Pembrolizumab in Early Triple-Negative Breast Cancer. N Engl J Med. 2022;386(6):556-567.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa2112651
  7. キイトルーダ点滴静注 添付文書(2026年2月改訂 第26版)KEGG MEDICUS
    https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00068708
  8. トロデルビ点滴静注用200mg 添付文書(2026年3月改訂 第3版)KEGG MEDICUS
    https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071544
  9. Takahashi M, Minoura Y, Den H, et al. Analysis of the conditions for applying BRCA genetic testing to women with breast cancer using the Japanese HBOC consortium and the JOHBOC registry project database. Breast Cancer. 2025;32(4):792-802.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12174290/
  10. American Cancer Society. Triple-negative Breast Cancer(Last Revised: June 24, 2026)
    https://www.cancer.org/cancer/types/breast-cancer/about/types-of-breast-cancer/triple-negative.html

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