抗がん剤の副作用が出ないと効いてない?不安の正体と効果の確かめ方

副作用が出ないからといって、効いていないとは決まりません。効いているかどうかは、体調ではなく画像検査などで確かめます。

抗がん剤の治療中に吐き気や脱毛がほとんどないと、薬が効いていないのではと心配になる方は少なくありません。この記事では、副作用の出方が人によって違う理由、副作用と効果の関係が研究でどう報告されているか、そして効果を何で確かめるのかを、公的機関の情報と論文をもとに整理します。

副作用が出ないのは、効いていないからですか?

そうとは決まりません。副作用の強さは、がんへの効き方以外の多くの理由で変わるからです。

副作用は、がんを攻撃する仕組みが、がん以外の場所でも働くことで起こることがあります。

たとえば分子標的薬が狙う分子は、実際には正常な細胞にもあり、それが副作用の原因になることがあります。免疫チェックポイント阻害薬は免疫反応を強める薬で、がんのない部位でも免疫反応が強くなると、それが副作用になります(国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。

副作用の出方は、薬の種類、予防の薬、体質、時期によって変わります(次の節)。そのため、体で感じる「つらさ」の量を、そのまま効き目の物差しにすることはできません。

ただし、副作用と効果がまったく無関係だと言い切れるわけでもありません。一部の薬では、特定の副作用が出た人のほうが経過が長かったという報告があります。これは後の節で、数字とあわせて説明します。

副作用の出方は、なぜ人によって違うのですか?

薬の種類、吐き気止めなどの予防の薬、体が薬を処理する速さ、時期の違いが重なるからです。

がん情報サービスは「副作用の出方には個人差があり、症状の出る時期や強さなどは人によって異なります」としています(2025年)。副作用を感じないときに考えられる理由を並べます。

副作用を感じない理由 中身
薬の種類が違う 細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、内分泌療法薬では、出やすい副作用が違います。分子標的薬では、標的の分子によって皮膚障害、高血圧、間質性肺炎、タンパク尿などさまざまです(がん情報サービス 2025年)。
予防の薬が効いている 吐き気止めは、薬物療法で吐き気が起こる頻度に合わせて、予防的に使います(がん情報サービス「吐き気・嘔吐」2024年)。
薬が体から除かれる速さが違う 体表面積をもとに量を決めても、薬が体から除かれる速さ(クリアランス)は人によって違います。体表面積と薬の体内での動きの関係は弱いと指摘されています(Gargiulo 2021)。
まだ時期が来ていない 細胞障害性抗がん薬では、吐き気やだるさは1〜2週目ごろ、脱毛やしびれは2週目ごろからみられます(がん情報サービス 2025年)。
自覚しにくい副作用である 肝機能障害、腎機能障害、白血球減少などの血液の異常は、自覚するのが難しく、検査によってわかる副作用です(がん情報サービス 2025年)。

吐き気には心の状態も関わります。がん情報サービスは、不安や緊張、以前の治療で吐き気を経験したことが原因になることもあるとしています(2024年)。

副作用は、治療のどのくらい後に出るのですか?

抗がん剤の副作用が出る時期の目安。治療直後にアレルギー反応、1〜2週目ごろに吐き気やだるさ、2週目ごろから脱毛やしびれ。肝機能障害や白血球減少は自覚しにくく検査でわかる

細胞障害性抗がん薬では、治療直後、1〜2週目ごろ、2週目ごろからと、副作用ごとにおおよその時期があります。

副作用の内容や時期、頻度は、ある程度予測できるとされています。一方、免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、時期や具体的な症状、出る場所の予測が難しいとされています(がん情報サービス 2025年)。

吐き気は、投与直後に起こる場合も、1日以上たってから起こる場合もあり、多くは5日〜1週間程度でおさまります(がん情報サービス 2024年)。治療を始めて数日何も感じなくても、それで副作用が出ないと決まったわけではありません。

副作用と効果に関係があると報告された薬はありますか?

あります。好中球減少、EGFR阻害薬の皮疹、免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象では、出た人のほうが経過が長かったと報告されています。

薬と副作用 報告されたこと
細胞障害性抗がん薬(進行非小細胞肺がん)の好中球減少 6つのランダム化試験の1,529人を統合した解析。180日時点で生存していた572人に限ると、重度の好中球減少があった人は、なかった人より死亡の危険度が低かった(ハザード比0.71、95%信頼区間0.53〜0.95)(Gargiulo 2021)
EGFR阻害薬(チロシンキナーゼ阻害薬、非小細胞肺がん)の皮疹 33試験・6,798人のメタ解析。皮疹が出た人は出なかった人より奏効の割合が高く(相対リスク3.28、95%信頼区間2.41〜4.47)、無増悪生存期間と全生存期間も長かった(Liu 2013)
免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象 30研究・4,971人のメタ解析。免疫関連有害事象が出た人は、全生存(ハザード比0.54、95%信頼区間0.45〜0.65)、無増悪生存(ハザード比0.52、95%信頼区間0.44〜0.61)ともに良かった(Zhou 2020)

日本からの報告では、ニボルマブで治療した非小細胞肺がんの134人のうち69人に免疫関連有害事象が出ました。無増悪生存期間の中央値は、出た人で9.2か月、出なかった人で4.8か月でした(Haratani K, et al. JAMA Oncol. 2018)。

ここで見落とされやすい点があります。細胞障害性抗がん薬で生存との関係が報告されている好中球減少は、がん情報サービスの分類では「自覚するのが難しく、検査によってわかる副作用」です。

つまり、吐き気もだるさもなく「副作用が出ていない」と感じていても、血液検査では副作用が出ていることがあります。体感と検査の結果は、同じものを見ていません。

好中球減少を調べた研究者は、骨髄抑制(好中球減少など)が出ないことは、がんへの効果が十分でないことを映している可能性があると述べ、副作用に合わせて量を調整する方法を検討すべきだとしています。ただし、それを確かめるには前向きの試験が必要だとも述べています(Gargiulo P, et al. BMC Cancer. 2021)。

では、副作用が出ない人は効きにくいのですか?

一人ひとりについては、そうとは言えません。報告されているのは集団どうしの比較で、副作用が出なかった人の中にも経過の長い人がいます。

前の節の数字は、どれも「副作用が出た人の集団」と「出なかった人の集団」を比べたものです。目の前の一人に、効くか効かないかを言い当てるものではありません。

長く治療を続けた人ほど、副作用を経験しやすい

副作用は、治療を続けるうちに出る機会が増えます。長く生きて治療を続けた人ほど副作用を経験しやすいため、副作用と生存期間の関係は、実際より強く見えることがあります。Gargiuloらはこの偏りを減らすため、6サイクルの治療を終えて180日時点で生存していた人に限って比べました。すると、軽度の好中球減少では、生存との関係は見られませんでした(ハザード比1.21、95%信頼区間0.92〜1.58)(Gargiulo 2021)。

17.0か月

好中球減少がなかった人の生存期間の中央値。軽度だった人(15.7か月)より短くありませんでした。重度だった人は19.6か月です。

(Gargiulo P, et al. BMC Cancer. 2021(進行非小細胞肺がん、180日時点で生存していた572人の解析))

薬の種類や組み合わせによっては、関係そのものがはっきりしません。免疫チェックポイント阻害薬のメタ解析では、CTLA-4阻害薬(ハザード比0.89、95%信頼区間0.49〜1.61)と併用療法(ハザード比0.62、95%信頼区間0.36〜1.05)で、副作用と全生存の関係は統計的に有意ではありませんでした(Zhou X, et al. BMC Med. 2020)。

「副作用を強くすれば効く」という意味ではない

これらの研究が示したのは、副作用が出た人の経過が長かったという観察です。副作用そのものが効果を生んでいることや、副作用を強くすれば効くようになることを示したものではありません。皮疹の研究の著者らも、皮疹は効果を予測する目印になりうる、という書き方にとどめています(Liu HB, et al. PLoS One. 2013)。

効いているかどうかは、何で確かめるのですか?

多くのがんでは、CTなどの画像検査で、がんの大きさがどれだけ小さくなったかを見て確かめます。

白血病や多発性骨髄腫などの血液のがんでは、血液検査や骨髄検査の結果で確かめます。がんの種類によっては、腫瘍マーカーを補助的に使うこともあります(がん情報サービス 2025年)。画像でがんが縮んだ人の割合を数えた数字が奏効率で、その読み方は「奏効率とは?生存率との違い」で説明しています。

副作用が出ないとき、主治医に何を確かめればよいですか?

この薬で想定される副作用と時期、血液検査の結果、効果を判定する時期の3つです。

  • この薬で起こりやすい副作用と、それが出やすい時期
  • 血液検査で、好中球などの白血球や、肝機能・腎機能に変化が出ているか
  • 画像検査などで効果を判定するのは、いつ頃か

3つめの答えが、「効いているのか」という不安にいちばん直接に答える情報です。体調の変化は、その日まで待つあいだの手がかりにはなっても、判定の代わりにはなりません。

反対に、治療前とは明らかに違う症状や異常を感じたときは、ためらわずに病院に連絡するよう、がん情報サービスは呼びかけています(2025年)。

監修者

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

抗がん剤の副作用が出ない人の割合はどれくらいですか?

薬と副作用の種類によって大きく違い、一つの数字では言えません。たとえばニボルマブで治療した非小細胞肺がんの研究では、134人中65人に免疫関連有害事象が出ませんでした(Haratani 2018)。肺がんの化学療法を6サイクル終えて180日時点で生存していた572人では、294人(51.4%)に好中球減少がありませんでした(Gargiulo 2021)。

吐き気がないのは、吐き気止めが効いているからですか?

その可能性があります。吐き気止めは、薬物療法で吐き気が起こる頻度に合わせて予防的に使われます(がん情報サービス 2024年)。吐き気が少ないことだけで、抗がん剤の効果の有無を判断することはできません。

免疫チェックポイント阻害薬で副作用が出ないと、効いていないのですか?

集団としては、免疫関連有害事象が出た人の経過が良かったという報告があります(Zhou 2020)。ただしこれは集団どうしの比較で、副作用が出ない一人ひとりに効かないと決まるわけではありません。効果は画像検査などで判定します。

副作用が出ないなら、抗がん剤の量を増やしてもらうべきですか?

副作用に合わせて量を調整するという考え方は研究の段階で、前向きの試験で確かめる必要があるとされています(Gargiulo 2021)。量は、がんの種類や体の状態、検査の結果を見て主治医が決めます。気になるときは、血液検査の結果とあわせて主治医に尋ねてください。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(2025年3月更新・確認)
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「吐き気・嘔吐」(2024年3月更新・確認)
    https://ganjoho.jp/public/support/condition/nausea/index.html
  3. Gargiulo P, Arenare L, Gridelli C, et al. Chemotherapy-induced neutropenia and treatment efficacy in advanced non-small-cell lung cancer: a pooled analysis of 6 randomized trials. BMC Cancer. 2021;21:549.
    https://doi.org/10.1186/s12885-021-08323-4
  4. Liu HB, Wu Y, Lv TF, et al. Skin rash could predict the response to EGFR tyrosine kinase inhibitor and the prognosis for patients with non-small cell lung cancer: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2013;8(1):e55128.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23383079/
  5. Zhou X, Yao Z, Yang H, et al. Are immune-related adverse events associated with the efficacy of immune checkpoint inhibitors in patients with cancer? A systematic review and meta-analysis. BMC Med. 2020;18(1):87.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32306958/
  6. Haratani K, Hayashi H, Chiba Y, et al. Association of immune-related adverse events with nivolumab efficacy in non-small-cell lung cancer. JAMA Oncol. 2018;4(3):374.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28975219/

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