漢方の名医として僕が上げることができるのは僕の漢方の師匠である松田邦夫先生です。他に名医は思い立ちません。
名医とは専門家ということと理解しています。現在は専門家を気取ることが簡単になりました。専門家が話していることを徹底的にパクれば(僕はTTPと読んでいます)、誰でも専門家を気取ることができます。ネットが誰でも簡単に無料で利用できるようになり、専門家の発言をリツイート(RT)することが容易になりました。そして専門家を徹底的にパクれば専門家を気取ることができます。
新型コロナ感染症でメディアが盛り上がり、その解説で視聴率を稼いだこの3年間を冷静に思い出してみてください。専門家と称する人のほとんどが同じことを発言していたでしょう。本当の専門家とは、解っていないことを堂々と解っていないと言える人です。新型コロナウイルス感染症に関しては、僕的に不明と思われることは
- なぜ集団感染が達成されていないのに、そしてワクチンの接種率も高くないのに、何回も起こった発生のピークが自然消退したのか?
- 長期的な使用経験がないのに、なぜワクチンはほとんど安全といえるのか?
- なぜ同一世帯や同じ高齢者施設に感染者が出現しても感染しない人がいるのか?
などです。
漢方でも解っていないことを知っている人が名医です。よく名医と間違えられるのは、「私の患者は100%治っている」とか、「○○という漢方薬を飲めば必ず病気は治る」とかを平気で発言する人です。賢い人は「100%」とか「必ず」とかは言いません。それを覆すにはひとつの例外をみつければ論破できるからです。そして実際は、治った患者さんが長期通院し、治らない人は自然と離れていくので、治った方がほとんどに見えるのです。
「私が処方した薬が効いた」と簡単に発言する人も名医ではありません。自然と時間経過で治った可能性は常に排除できないからです。そして、医療サイドに内緒で他の治療や養生を行っていることもあるでしょう。自分の発言に責任を持てる人、自分の成果を疑った目で見ることができる人が名医です。
漢方の世界では、学会や研究会で若い先生がある症例報告をすると、ちょっと偉そうな年長者が、「実はこちらの漢方薬の方がよかった!」と発言することがあります。そんな時に松田邦夫先生は、「いろいろな理由で処方を変えても、変更した処方が、変更する前の処方より良かったと証明することはできません」と教えてくれました。僕はその謙虚な態度が名医の必須条件と思っています。それほど俯瞰的に自分の診療を見て、やっぱり漢方で治っていると思えるときは、相当の確率で漢方が役に立っているのでしょう。
新見正則医院にはがんや難病・難症で難儀している患者さんが来院されます。多くの方が、僕が処方する生薬フアイ+漢方薬のお陰と感謝をしてくれています。僕は松田邦夫先生の教えを胸に、いつも本当にフアイアが効いているのだろうかと自問自答しています。「フアイアのお陰で患者さんががんや難病・難症から解放されている」のか、「フアイアを飲んでいる患者さんがたまたまがんや難病・難症から解放されている」のかはまったく異なるのです。
そんな俯瞰的な目で冷静に自分の診療を見る僕ですが、40年ちかくの僕の臨床経験と照らし合わせると、やはりフアイアは効いていると思います。だからこそ、1000例規模のランダム化された大規模臨床試験を勝ち抜いたのだと思うのです。