フアイアはサプリなのか。医薬品との違いがわかりにくい理由

Huaier(フアイア)は日本では健康食品として流通し、医療機関では未承認薬として処方されています。その分類は、効くかどうかで決まっているわけではありません。

サプリメントなのか、医薬品なのか。診察でよく聞かれます。ここでは、国によって分類が違う理由と、医薬品と食品を分けている線が実際には何で引かれているのかを説明します。

Huaier(フアイア)はサプリメントなのか?

フアイアはサプリなのかを考える図。同じフアイアが、中国では1992年に認可された医薬品(適応は肝がん)、アメリカでは未承認でNCIの薬剤辞典に収載、日本では健康食品として流通し医療機関で未承認薬として処方されている。分類が示すのは通った手続きで、効くかどうかは対象・評価項目・期間・差で見る
分類は国ごとの手続きで決まり、効くかどうかは試験の中身で見ます。
出典:Chen Q, et al. Gut. 2018;67(11):2006-2016

Huaier(フアイア)は、えんじゅの老木に生じる菌類(学名 Trametes robiniophila Murr)に由来します。いま使われているものは、菌糸体の培養物から製剤化されたものです。

日本では、医薬品として承認されていません。日本では自生も栽培もされておらず、中国の工場で菌糸体から製造されたものが輸入され、健康食品として流入しています。多くは医師の裁量のもと、未承認薬として自由診療で臨床応用されています。当院での処方も自由診療で、全額自己負担です。

中国では、抗がん新薬として認可された医薬品です(Huaier granule、医薬品登録番号 国薬準字Z20000109)。

アメリカでは、医薬品としては承認されていません。米国国立がん研究所(NCI)の薬剤辞典に「Huaier extract granule」として収載されています(コードC125001)。

国 扱い その扱いが示していること
日本 医薬品として未承認。健康食品として流通し、医療機関では未承認薬として処方される 保険は使えない。
中国 抗がん新薬として認可(Huaier granule、国薬準字Z20000109) 中国の承認手続きを通った。適応は肝がんに限られる
アメリカ 医薬品として未承認。NCIの薬剤辞典に収載(C125001) 辞書に載っている。

同じものが、中国では医薬品、アメリカでは辞典に収載、日本では健康食品として流入し医師の裁量で臨床応用されています。各国で中身は変わりません。

日本では、医薬品と何が違うのか?

違いは3つあります。保険、表示、副作用の救済です。

承認された医薬品 日本でのHuaier(フアイア)
保険 承認された範囲で使える 使えない。自由診療で全額自己負担
効能効果の表示 承認された範囲でできる 臨床応用する場合は可能
副作用の救済制度 あり(対象除外医薬品あり) なし

3つ目は見落とされがちです。医薬品を適正に使ったのに入院が必要な副作用が出た場合、医薬品副作用被害救済制度から医療費などの給付を受けられます(PMDA 医薬品副作用被害救済制度)。食品にはこの制度がありません。なお、当院がトラローム療法の主薬として使用する高用量フアイア顆粒は、2026年10月時点で約250件の臨床試験が実施されていますが、60gまで重大な副作用は報告されていません。

ただし、承認された医薬品ならすべて対象になるわけでもありません。がんなどの病気に使う医薬品のうち厚生労働大臣が指定したものは、この制度の対象から外れています(PMDA 対象除外医薬品等)。

医薬品と食品は、何で分けられているのか?

葛根湯や麻黄湯に入っている麻黄という生薬があります。1885年、長井長義がこの麻黄からエフェドリンを取り出しました(齋藤繁「エフェドリンの歴史」日本医史学雑誌 2012年)。

エフェドリンは今も注射薬として使われています。脊髄くも膜下麻酔で血圧が下がったときに、麻酔科医が押すのがこれです。

同じ植物が、一方では薬局で買える漢方薬の材料であり、他方では手術室の昇圧薬です。ヤナギの樹皮からはアスピリンが生まれました。

どちらも、単離される前から効いていました。単離が効果を作ったのではありません。効果に説明を与えただけです。

医薬品と健康食品を分けている線の少なくとも一部は、ここで引かれています。効くかどうかではなく、一つの成分に還元できたかどうかです。

機序がわからないものは、医薬品になれないのか?

なれます。実例があります。

アスピリンが鎮痛解熱薬として広まったのは19世紀末です。プロスタグランジンの合成を止めているという説明がついたのは1971年でした(Vane JR. Nature New Biology 1971;231:232-235)。

同じことは今も起きています。2023年にアメリカで承認されたシラカバ樹皮由来のFilsuvezは、作用機序は不明と添付文書に書かれたまま承認されました(FDA prescribing information、2023年)。

審査が問うているのは、機序の説明ではありません。有効性と安全性の実証です。

分類の代わりに、何を見ればいいのか?

サプリか医薬品かという問いには、手続きの答えしか返ってきません。効くかどうかを知りたいなら、研究を見るしかありません。

そのために、有用なのは日本フアイア研究会です。1院が集めた治療成績など都合のいいデータだけを拾えば、どんなものでも効いて見えてきます。日本フアイア研究会は、査読を経て公表された論文と適正な試験登録だけが収集され、推測での有効性は書かれていません。差が出なかった研究も、差が出た研究と同じ細かさで書き、研究が証明したこととしていないことまで書かれています。

Huaier(フアイア)の研究はここまで広がっています(日本フアイア研究会「研究の概況」、検索日2026年10月6日)。

件数 中身
PubMedに掲載された論文 258件 抽出物216件・配合製剤(槐杞黄)42件
公的な試験登録に登録された臨床試験 67件 ClinicalTrials.gov 35件・中国臨床試験登録センター32件
登録された試験の目標例数の合計 約17,900例 ClinicalTrials.govの登録分。うちランダム化試験20件以上
研究が報告されているがん種 20種以上 がん以外の疾患(腎疾患・免疫疾患・感染症など)も20以上

研究や試験の件数が多いことは、それだけで効き目の証明にはなりません。それでも僕は、この数を軽く見ていません。臨床試験には時間もお金も人手もかかることを、僕は自分で試験に関わってきて知っています。差が出る見込みのない試験は、そもそも計画されないと言いきれます。約18,000例分の試験が組まれていること自体が、Huaier(フアイア)のエビデンスがこれからさらに広がっていくと期待できる理由です。

肝臓がん以外では、どこまでわかっているのか?

肝細胞がん以外でも、乳がん・大腸がん・胃がんでは、複数の試験をまとめたメタアナリシスで群間の差が報告されています。

がん種 研究の段階 主な根拠
肝細胞がん 大規模ランダム化比較試験で差 Gut 2018(1,044例)。メタアナリシス6件(統合4,577例)で差
乳がん メタアナリシスで差・試験で検証中 メタアナリシス2件(統合2,562例)で差。臨床研究3件は差あり2・差なし1。結果公表前のランダム化試験7件(うちプラセボ対照1)
大腸がん メタアナリシスで差・試験で検証中 メタアナリシス1件(統合2,884例)で差。結果公表前のランダム化試験3件
胃がん メタアナリシスで差・試験で検証中 メタアナリシス2件(統合2,884例)で差。結果公表前のランダム化試験1件
肺がん 中国語誌の臨床研究で差・試験で検証中 前向き比較1件。結果公表前のランダム化試験1件
膵がん・婦人科がんなど 試験で検証中(結果は未公表) 結果公表前の試験が多数進行中

出典:日本フアイア研究会「研究の概況」(検索日2026年10月6日)。差の有無は各研究の主要な評価項目による。

さらに、乳がん・大腸がん・胃がん・肺がん・膵がんを対象にしたランダム化試験が13件、結果の公表を待っています。日本フアイア研究会によると、結果公表前の臨床試験は29件、目標例数の合計は15,751例です。このうち1件(目標1,184例)は、偽薬を対照にしたランダム化試験です。

日本フアイア研究会は、医療従事者に向けて、大規模臨床試験のエビデンスを最優先にして情報を出しています。僕が望む本邦での保険での保険適用には、まず正しい情報が届かなければならないと僕は考えています。

医学誌Gutに載った試験は、どれだけ効いたのか?

2018年に英国の医学誌Gutに載った試験です。肝細胞がんを根治切除した患者さん1,044例を集めて、Huaier(フアイア)を投与する群と一切他の治療をしない群を分けました。実施は39施設、最長96週。主要評価項目は無再発生存率で、96週の時点で62.39%と49.05%、差は13.34ポイントでした(Gut. 2018;67(11):2006-2016)。

掲載誌

Gut

2018年 67巻11号 2006-2016ページ

研究デザイン 多施設共同ランダム化比較試験(非盲検)
規模 1,044例・39施設
対象 肝細胞がんの根治切除後
主要評価項目 無再発生存率

PubMedで論文を見る(PMID 29802174)

Huaier(フアイア)そのものの成り立ちはフアイアとは何かにまとめています。

僕がすごいと思っているのは、何よりも1,000例規模の大規模ランダム化試験を生存率で勝ったこと。そして副作用がほとんどないことです。この試験は1日60gという量で96週間続けましたが、目立った副作用は下痢で、Huaier(フアイア)の群で686例中35例(5%)、対照群で1.9%で、下痢は次第に改善します。さらに抗がん剤のように、効き目と引き換えに基礎免疫力を低下させるような副作用がありません。

僕は、エビデンスと安全性については一切妥協しません。要件から外していいのは、機序の完全な解明だけだと考えています。

見る場所 Gut 2018の試験では
どんな人を対象に 肝細胞がんを根治切除した患者さん1,044例(39施設)
何を評価項目にして 無再発生存率(主要評価項目)。
どれだけの期間で 最長96週
どれだけの差が出たか 96週で62.39%と49.05%、差は13.34ポイント
比べ方 対照群は追加治療なし

サプリメントか医薬品かを確かめても、効くかどうかはわかりません。命に関わる病気なら、見るのは、生存率で、どれだけの期間、どんな研究手法で差が出たかです。

次に読む

試験の数字の次は、実際にフアイアを飲んだ方の経過です。

症例集

当院でトラローム療法(高用量フアイア内服)の症例報告を、がんの種類ごとにまとめています。うまくいかなかった症例も載せています。

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執筆者略歴 新見正則

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。
98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。
外科医 × サイエンティスト × 漢方医としてレアな存在で活躍中。
2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。
2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。
現在は、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。
漢方JP主宰者。

よくある質問

Huaier(フアイア)はサプリメントですか?

日本では医薬品として承認されておらず、健康食品として流入しています。医師の裁量で自由診療にて処方されます。中国では抗がん新薬として認可された医薬品です。

Huaier(フアイア)はアメリカで承認されていますか?

医薬品としては承認されていません。米国国立がん研究所(NCI)の薬剤辞典に収載されています(コードC125001)。

Huaier(フアイア)は保険が使えますか?

使えません。当院での処方は自由診療で、全額自己負担です。

Huaier(フアイア)はどれくらい効くのですか?

肝細胞がんの根治切除後を対象にした試験では、96週の無再発生存率が62.39%と49.05%で、差は13.34ポイントでした(Gut. 2018;67(11):2006-2016)。

Huaier(フアイア)の研究は肝臓がんだけですか?

そうではありません。20種以上のがん種、29の免疫が関わる疾患の研究が報告されています。その中で最も大規模なランダム化比較試験は肝細胞がんの根治切除後です。乳がん・大腸がん・胃がんではメタアナリシスで群間の差が報告され、乳がん・大腸がん・胃がん・肺がん・膵がんを対象にしたランダム化試験が13件進行中です。(日本フアイア研究会「研究の概況」、2026年10月6日検索)。

Huaier(フアイア)で副作用が出たら、救済制度は使えますか?

使えません。日本では医薬品として承認されていないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。がんなどの病気に使う医薬品のうち厚生労働大臣が指定したものは、この制度の対象から外れています(PMDA 対象除外医薬品等)。

Huaier(フアイア)ではどのくらい副作用が確認されてますか?

臨床研究で用いられた投与量は 1日60gおよび30gです。当院で使用する3倍〜20倍量の1日60gの試験での腎機能・肝機能障害やその他の重篤な副作用の発生は報告されていません。

作用機序がわかっていないのに使っていいのですか?

作用機序が不明のまま承認されている薬は現在もあります。大切なことは有効性と安全性です。

参考文献

  1. Chen Q, et al. Effect of Huaier granule on recurrence after curative resection of HCC: a multicentre, randomised clinical trial. Gut. 2018;67(11):2006-2016.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29802174/
  2. Gland Surg 2019(トリプルネガティブ乳がん術後201例。書誌は10-08版の参考文献と同じ)
  3. Vane JR. Nature New Biology. 1971;231:232-235.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5284360/
  4. FILSUVEZ (birch triterpenes) topical gel, FDA prescribing information, 2023.
    https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2023/215064s000lbl.pdf
  5. National Cancer Institute. NCI Drug Dictionary: huaier extract granule(C125001).
    https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-drug/def/huaier-extract-granule
  6. 齋藤繁. エフェドリンの歴史. 日本医史学雑誌. 2012;58(3):321-329.
  7. PMDA. 医薬品副作用被害救済制度/対象除外医薬品等

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