乳がんの生存率は?5年を過ぎても不安が消えないのはなぜか

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乳がんの5年生存率は91.6%と高い一方、5年を過ぎても再発が続くため、5年が見通しの区切りになりにくいがんです。

乳がんと診断されると、最初に「生存率」を調べる人は少なくありません。この記事では、国立がん研究センターが公表しているステージ別の5年・10年生存率、全国がん登録の数字、サブタイプ別の米国の集計、そして5年を過ぎても生存率の見通しがほとんど変わらないという乳がんの特徴を、一次資料の数字で整理します。

乳がんの5年生存率は何%ですか?

院内がん登録では91.6%(2014〜2015年診断、ネット・サバイバル)、全国がん登録では89.7%(2018年診断、5年相対生存率)です。

全国のがん診療連携拠点病院などで2014〜2015年に診断・治療を受けた女性の乳がん85,403人の5年生存率は、ネット・サバイバルで91.6%、実測生存率で88.1%でした(国立がん研究センター 院内がん登録生存率最新集計値 2023年3月公表)。

病院に限らず全国のがんを集めた全国がん登録では、2018年に診断された女性の乳がんの5年相対生存率は89.7%です。2023年に乳がんと診断されたのは103,424例(うち女性102,592例)、2024年に乳がんで亡くなったのは16,005人(うち女性15,869人)でした(国立がん研究センター がん統計「乳房」2026年7月22日更新)。

実測生存率、相対生存率、ネット・サバイバルの違いと、ほかのがんとの比べ方はがんの生存率の記事で説明しています。

ステージ別の生存率は、どのくらい違いますか?

Ⅰ期の5年生存率は98.9%、Ⅲ期は80.6%で、10年ではⅠ期93.7%、Ⅲ期63.8%に下がります。

乳がんのステージ(病期)は、しこりの大きさ、リンパ節への転移、乳房から離れた臓器への転移(遠隔転移)の3つで決まります(がん情報サービス「乳がん 治療」2025年6月19日更新)。院内がん登録のネット・サバイバルは次のとおりです。

病期 5年 ネット・サバイバル(症例数) 10年 ネット・サバイバル(症例数)
Ⅰ期 98.9%(38,996人) 93.7%(15,215人)
Ⅱ期 94.6%(30,931人) 85.4%(12,310人)
Ⅲ期 80.6%(10,127人) 63.8%(3,988人)
全体 91.6%(85,403人) 82.5%(33,715人)

出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率最新集計値(女性乳がん)。5年は2014〜2015年診断(2023年3月公表)、10年は2012年診断(2025年3月公表)

5年と10年は、診断された年も集計に参加した病院も違う別の集団です。そのため、表の5年と10年の差をそのまま「5年目から10年目の間に亡くなった人の割合」と読むことはできません。それでも、どの病期でも10年の数字は5年より低くなっています。

Ⅳ期の5年ネット・サバイバルは39.8%(4,941人)で、Ⅰ〜Ⅲ期と大きく離れています(院内がん登録 2014〜2015年診断)。

院内がん登録の数字は、全国のすべての病院ではなく、拠点病院などに参加した施設の患者の数字です。生存状況を把握できた割合が90%に満たない施設は、集計から除かれています(院内がん登録生存率最新集計値)。

サブタイプによって、生存率は違いますか?

違います。米国の集計では、ホルモン受容体陽性・HER2陰性の5年相対生存率が95.8%、トリプルネガティブが78.7%でした。

サブタイプは、がん細胞のホルモン受容体とHER2の有無などの組み合わせで、乳がんの性質を分けたものです。

米国国立がん研究所(NCI)のがん登録SEERは、2016〜2022年に診断された女性の乳がんの5年相対生存率を、サブタイプと広がりの程度ごとに公表しています(NCI SEER Cancer Stat Facts: Female Breast Cancer Subtypes、SEER 21、イリノイ州を除く)。

サブタイプ 全体 乳房にとどまる(限局) 近くのリンパ節など(領域) 遠隔転移
ホルモン受容体陽性・HER2陰性 95.8% 100.0% 91.1% 38.1%
ホルモン受容体陽性・HER2陽性 92.2% 99.5% 91.5% 48.7%
ホルモン受容体陰性・HER2陽性 87.0% 97.8% 86.4% 43.1%
トリプルネガティブ(ホルモン受容体陰性・HER2陰性) 78.7% 92.8% 68.3% 14.9%

出典:NCI SEER Cancer Stat Facts: Female Breast Cancer Subtypes(米国、2016〜2022年診断、5年相対生存率)

同じ集計で、2019〜2023年に診断された乳がんの約70%がホルモン受容体陽性・HER2陰性、約11%がトリプルネガティブ、約9%がホルモン受容体陽性・HER2陽性、約4%がホルモン受容体陰性・HER2陽性でした。

トリプルネガティブは、乳房にとどまる段階では92.8%ですが、領域では68.3%、遠隔転移では14.9%と、広がりによる差がほかのサブタイプより大きくなっています。

米国の集計を日本に重ねる前に

SEERの数字は米国の住民を対象にした集計で、医療制度や使える薬、検診の受け方が日本とは違います。また、広がりの区分(限局・領域・遠隔)は、日本の院内がん登録のⅠ〜Ⅳ期とは別の物差しです。上の表の5年相対生存率を、前の節のステージ別のネット・サバイバルと並べて比べることはできません(NCI SEER)。

トリプルネガティブの性質と今の治療は、トリプルネガティブ乳がんとはの記事にまとめています。

5年を過ぎれば、乳がんは治ったと考えてよいですか?

そうとは言えません。乳がんは、5年生きた人でも、その先5年の生存率がほとんど上がらないことが国内の集計で示されています。

がんの生存率では、5年が治癒の目安とされることが多くあります(国立がん研究センター プレスリリース 2017年8月9日)。乳がんでは、この目安がほかのがんほど当てはまりません。

国立がん研究センターは2025年2月、2012年に診断された人の10年分のデータを使って、診断から1年、2年と生き延びた人がその後5年を生きる確率(サバイバー5年生存率)を、18のがんで初めて集計しました(国立がん研究センター プレスリリース 2025年2月13日)。

多くのがんでは、Ⅲ・Ⅳ期では1年生存するほどサバイバー5年生存率が改善する傾向がみられました。一方で乳がんについては「どの病期でもサバイバー5年生存率はほぼ横ばいであることから、長期の治療と経過観察が必要なサブタイプがあることを反映していると推測されました」と書かれています(同)。

つまり、乳がんでは、診断から何年か無事に過ごしても、そこから先の5年の見通しが、診断したときの見通しとあまり変わらないということです。

その背景の1つが、エストロゲン受容体陽性の乳がんで遅い時期の再発が続くことです。5年間のホルモン療法を終えた時点で再発のなかった62,923人を分析した研究では、5年目から20年目まで再発が起こり続け、しこりが2cm以下でリンパ節転移のない人(T1N0)でも、この15年間の遠隔再発のリスクは13%でした(Pan H, et al. N Engl J Med. 2017)。

横ばいという言葉が指す範囲

国立がん研究センターの集計は、乳がん全体を病期ごとにまとめた数字で、サブタイプ別のサバイバー生存率は公表資料の本文に示されていません。「長期の治療と経過観察が必要なサブタイプがある」という部分は、集計結果からの推測として書かれています(国立がん研究センター 2025年)。どのサブタイプの人で見通しがどれだけ続くかまでは、この集計からは決められません。

生存率の数字は、自分にどこまで当てはまりますか?

生存率は、過去に診断された大勢の人の平均で、一人ひとりの見通しをそのまま示す数字ではありません。

  • 5年生存率は2014〜2015年、10年生存率は2012年、全国がん登録は2018年に診断された人の数字で、その後に承認された薬の効果は含まれない
  • 同じ病期でも、サブタイプ、年齢、閉経の状況、リンパ節転移の数で見通しは違う
  • ネット・サバイバルと相対生存率は、がん以外の原因による死亡の影響を除くように計算した数字で、実際に生きている人の割合(実測生存率)とは違う
  • 院内がん登録と全国がん登録は、集めている患者の範囲が違い、数字を直接は比べられない

主治医には、病期とサブタイプのほかに、手術で取った組織の病理検査の結果(しこりの大きさ、リンパ節転移の数)と、術後の治療をどのくらいの期間続ける予定かを確かめておくと、表の中で自分の位置をつかみやすくなります。

13%

エストロゲン受容体陽性で、しこりが2cm以下・リンパ節転移なし(T1N0)の人が、5年間のホルモン療法を終えて再発がなかった時点から、20年目までに遠隔再発するリスク。
5年生存率の高さだけでは、5年目以降の見通しはわかりません。

出典:Pan H, et al. N Engl J Med. 2017;377(19):1836-1846(88試験・62,923人のメタアナリシス)

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

詳しいプロフィール

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よくある質問

Q乳がんの5年生存率は何%ですか?

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014〜2015年に診断された女性の乳がんの5年生存率はネット・サバイバルで91.6%でした。全国がん登録では、2018年に診断された女性の乳がんの5年相対生存率が89.7%です。

Q乳がんステージ1の生存率はどのくらいですか?

院内がん登録では、Ⅰ期の5年ネット・サバイバルが98.9%(2014〜2015年診断、38,996人)、10年ネット・サバイバルが93.7%(2012年診断、15,215人)です。5年と10年は別の年に診断された集団の数字です。

Q乳がんの10年生存率はどのくらいですか?

院内がん登録で2012年に診断された女性の乳がん33,715人の10年ネット・サバイバルは82.5%でした。病期別ではⅠ期93.7%、Ⅱ期85.4%、Ⅲ期63.8%です。

Qトリプルネガティブ乳がんの生存率は低いのですか?

米国のSEERの集計では、2016〜2022年に診断されたトリプルネガティブ乳がんの5年相対生存率は78.7%で、ホルモン受容体陽性・HER2陰性の95.8%より低くなっています。乳房にとどまる段階では92.8%でした。日本の数字ではありません。

Q乳がんは5年たてば完治といえますか?

5年を過ぎても再発することがあり、5年で完治とはいえません。国立がん研究センターの集計では、乳がんは診断から年数がたっても、その先5年の生存率がどの病期でもほぼ横ばいでした。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「院内がん登録生存率最新集計値」(5年:2014〜2015年診断・2023年3月公表/10年:2012年診断・2025年3月公表)
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/latest.html
  2. 国立がん研究センター がん統計「乳房」(2026年7月22日更新)
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html
  3. 国立がん研究センター プレスリリース「院内がん登録2012年10年生存率集計」(2025年2月13日)
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0213_1/index.html
  4. 国立がん研究センター プレスリリース「院内がん登録 2008年5年生存率集計」(2017年8月9日)
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2017/0809/press_release_20170809.pdf
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(2025年6月19日更新)
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html
  6. National Cancer Institute. SEER Cancer Stat Facts: Female Breast Cancer Subtypes(米国、5年相対生存率は2016〜2022年診断、SEER 21・イリノイ州を除く)
    https://seer.cancer.gov/statfacts/html/breast-subtypes.html
  7. Pan H, Gray R, Braybrooke J, et al. 20-Year Risks of Breast-Cancer Recurrence after Stopping Endocrine Therapy at 5 Years. N Engl J Med. 2017;377(19):1836-1846. doi:10.1056/NEJMoa1701830
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29117498/

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