がん免疫療法の副作用は、強まった免疫が自分の臓器を攻撃して起こります。全身のどこにでも、治療が終わったあとにも出ます。副作用が出たかどうかで、効いているかは判断できません。自由診療で受ける場合は、副作用の治療費も自分の負担になります。
この記事では、保険で使われる免疫療法である免疫チェックポイント阻害薬の副作用について、どの臓器にどんな症状が出るか、いつごろ出やすいか、どのくらいの頻度か、重さに応じてどう治療するかを、厚生労働省のマニュアルと国内外の学会のガイドラインから整理します。すぐ病院に連絡すべきサインと、「副作用が出た人ほど効く」という話の読み方もまとめました。
この記事の内容
この記事で扱う「免疫療法の副作用」は、どの治療のものですか?
主に、保険で使われる免疫チェックポイント阻害薬の副作用です。
「免疫療法」と呼ばれる治療には、いくつかの種類があります。国立がん研究センターのがん情報サービスは、大規模な臨床試験などで効果と安全性が証明された免疫療法は一部に限られ、その中心が免疫チェックポイント阻害薬だとしています(がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年)。この記事の副作用の話は、この薬についてのものです。
ほかの免疫療法の副作用は、この記事では短く触れるだけにします。
- CAR-T細胞療法:サイトカイン放出症候群や神経の症状などの強い副作用に備えて、入院して治療します(がん情報サービス 2025年)
- 自由診療の免疫細胞療法・がんワクチン:がん情報サービスは効果が証明されていないとしています。保険が使えないため、副作用が出たときの治療費も全額自己負担になります(がん情報サービス 2025年)
免疫チェックポイント阻害薬がどんな仕組みの薬か、どの薬が保険で使えるかは、がん免疫療法の歴史で説明しています。
免疫療法の副作用は、なぜ起こるのですか?
がんを攻撃するために強めた免疫が、がんのない臓器にも向かってしまうからです。
免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞にかかっているブレーキ(PD-1、PD-L1、CTLA-4など)を外して、がんへの攻撃を強める薬です。厚生労働省のマニュアルは、この作用によって起こる副作用を「免疫関連有害事象」(irAE:アイ・アール・エー)と呼んでいます(厚生労働省「免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル」令和4年2月)。
がん情報サービスは、この副作用が自己免疫の病気や炎症の病気に似た症状として出ること、いつ、どの臓器に、どんな形で出るかの予測が難しいことを挙げています(がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年)。
従来の抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)の副作用とは、性質が違います。
| 従来の抗がん剤 | 免疫チェックポイント阻害薬 | |
| 起こる理由 | 薬が、増殖の速い正常な細胞も傷つける | 強まった免疫が、自分の臓器を攻撃する |
| 主な場所 | 骨髄、毛根、口や腸の粘膜など | 全身のどこでも(皮膚、腸、肺、肝臓、内分泌の臓器、神経、筋肉、心臓など) |
| 時期 | 投与からの日数でおおよそ予測できる | 予測が難しく、治療が終わってから出ることもある |
| 主な治療 | 薬の減量・休薬、症状を和らげる薬 | 休薬・中止と、免疫を抑える薬(ステロイドなど) |
出典:がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」(2025年)、「免疫療法 もっと詳しく」(2025年)、厚生労働省 免疫関連有害事象対策マニュアル(令和4年)。表は各資料の記述をもとに整理したもの。
どの臓器に、どんな症状が出るのですか?
皮膚、腸、肺、肝臓、ホルモンを出す臓器、神経や筋肉など、全身に出ます。症状はだるさや吐き気など、ありふれたものが多いのが特徴です。
厚生労働省のマニュアルが患者さん向けに挙げている、主な副作用と気づくきっかけの症状は次のとおりです(厚生労働省 令和4年)。
| 副作用 | 気づくきっかけの症状 |
| 皮膚の障害 | 皮膚の赤み、かゆみ、水ぶくれ、ただれ、くちびるや目の赤み、めやに |
| 大腸炎・重い下痢 | 下痢、血便、吐き気、嘔吐 |
| 間質性肺炎 | 息苦しさ、咳、発熱 |
| 肝障害 | だるい、元気が出ない |
| 甲状腺の障害 | だるい、食欲がない、吐き気、動悸、むくみ、うとうとする |
| 下垂体・副腎の障害 | だるい、食欲がない、吐き気、うとうとする |
| 1型糖尿病 | のどが渇く、水を多く飲む、尿が多い、だるい |
| 腎障害 | 尿が少ない、だるい |
| 神経障害 | 手足のしびれ、力が入りにくい |
| 重症筋無力症・筋炎 | 力が入りにくい、息がしづらい、筋肉が痛む |
| 脳炎・髄膜炎 | 発熱、ぼーっとする、頭痛、意識が薄れる |
出典:厚生労働省「免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル」(令和4年2月)。
がん情報サービスは、このほかに視力の低下や目の痛み・充血、めまい、胸の痛み、黄疸、体重の減少、出血やあざなども挙げています(がん情報サービス 2025年)。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドラインは、心臓の筋肉の炎症(心筋炎)や目の炎症(ぶどう膜炎など)も取り上げています(Haanen J, et al. Ann Oncol. 2022)。
「だるい」が多い理由
表を見ると、甲状腺、下垂体、副腎、肝臓の障害の最初の症状は、どれも「だるい」「食欲がない」です。がんそのものや、ほかの治療でもよく起こる症状なので、本人も家族も見過ごしやすくなります。マニュアルが、肝臓の検査を2〜4週ごとに行うこと、筋炎を疑う血液の値(CK)を投与の前後に測ることを医療者向けに求めているのは、症状だけでは見つけにくいからです(厚生労働省 令和4年)。
ホルモンの臓器は、戻らないことがある
ESMOのガイドラインは、ホルモンを出す臓器の働きが落ちた場合、多くはそのまま戻らず、ホルモンを補う薬を生涯続ける必要があるとしています。その一方で、補充をしながら免疫チェックポイント阻害薬の治療を続けられることが多いとも書いています(Haanen J, et al. 2022)。
副作用は、治療を始めてからいつごろ出るのですか?
副作用ごとに出やすい時期はありますが、幅が広く、治療を終えてから出ることもあります。

厚生労働省のマニュアルとESMOのガイドラインに書かれている時期は、次のとおりです。
| 副作用 | 出やすい時期 | 出典 |
| 重症筋無力症・筋炎 | 投与開始から4週間以内が多い | 厚生労働省 令和4年 |
| 皮膚の発疹(紅斑丘疹状) | 最初の6週間以内が多い | ESMO 2022 |
| 脳炎 | 投与開始から8週間以内が多い | 厚生労働省 令和4年 |
| 甲状腺の障害 | 多くは3か月以内。いつでも起こりうる | ESMO 2022 |
| 大腸炎 | 中央値は抗PD-1抗体で2〜4か月、抗CTLA-4抗体で約1か月 | ESMO 2022 |
| 間質性肺炎 | 3か月前後が多い。投与直後から1年以上後まで | 厚生労働省 令和4年 |
| 肝障害 | 投与開始数週間から6か月以降まで | 厚生労働省 令和4年 |
| 1型糖尿病 | 投与後数週間から約1年後まで | 厚生労働省 令和4年 |
出典:厚生労働省「免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル」(令和4年2月)、Haanen J, et al. Ann Oncol 2022(ESMO)。
治療が終わったあとについても、いくつかの記載があります。ESMOのガイドラインは、薬をやめてから大腸炎が起こるまでの間隔が、抗PD-1抗体では最長1年だったとしています。米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインも、大腸炎は免疫療法をやめて数か月後に起こったり再燃したりすることがあると書いています(Schneider BJ, et al. J Clin Oncol. 2021)。がん情報サービスも、治療が終わって数週間から数か月後に起こるものがあるとしています(2025年)。
スイスの病院で肺がんと悪性黒色腫の患者さん437人を追った研究では、中等度以上の副作用が出た人の割合は、治療開始から6か月で42.8%、12か月で51.0%、24か月で57.3%と、時間とともに増えていきました。出た副作用のうち35.2%は6か月以上続き、6.9%は治療開始から1年以上たってから始まっていました(Ghisoni E, et al. Eur J Cancer. 2021)。
点滴が終わった日を区切りにせず、症状で判断することになります。
副作用は、どのくらいの頻度で起こるのですか?
副作用の種類と薬の組み合わせで大きく違い、2種類の薬を併用すると、単独より多くなります。
ESMOのガイドラインにある主な副作用の頻度を、薬の種類ごとに並べると次のとおりです(重さを問わない頻度。( )内は重いもの)。
| 副作用 | 抗PD-1抗体 | 抗CTLA-4抗体 | 2剤の併用 |
| 下痢 | 約10% | 約35% | 約32% |
| 大腸炎 | 約1% | 約10% | 約15% |
| 肝炎 | 5〜10%(重いもの1〜2%)※単独で使う場合 | 5〜10%(重いもの1〜2%)※単独で使う場合 | 25〜30%(重いもの15%) |
| 甲状腺の機能低下 | 約6〜9%(抗PD-L1抗体を含む) | 4% | 16% |
| 間質性肺炎 | 約4% | 1%未満 | 約10%(単独では1〜5%) |
| 下垂体炎 | 約1% | 2〜6% | 9〜10% |
| 1型糖尿病 | 1〜2% | 1〜2% | 1〜2% |
出典:Haanen J, et al. Management of toxicities from immunotherapy: ESMO Clinical Practice Guideline. Ann Oncol. 2022;33(12):1217-1238。重い心筋炎は、薬の種類ごとの値はなく、全体で1%未満とされています。
1型糖尿病や重い心筋炎は頻度としては多くありません。しかし厚生労働省のマニュアルは、劇症1型糖尿病はすぐに治療を始めないと命に関わりうるとし、筋炎や重症筋無力症は急速に進んで重症化することがあり、すばやい対応が必要だとしています(厚生労働省 令和4年)。
表の数字は、自分に起こる確率ではない
この頻度は、臨床試験などで集められた値をもとにした、幅のある目安です。試験に参加する人は、体の状態などで選ばれています。ESMOのガイドラインも、多くの副作用で値を「約」や範囲で示しています。自分の薬、組み合わせ、がんの種類、ほかの治療歴で何がどのくらい起こりうるかは、担当医に薬の名前を挙げて確かめることになります。
命に関わる副作用は、どのくらいあるのですか?
免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験112件、1万9,217人をまとめた解析では、副作用による死亡の割合は、抗PD-1抗体で0.36%、抗PD-L1抗体で0.38%、抗CTLA-4抗体で1.08%、2剤の併用で1.23%でした。同じ論文は、世界保健機関(WHO)の副作用報告のデータベースで、副作用で亡くなった613例も調べています。こちらでは、心筋炎がいったん起きたときに亡くなる割合が最も高く、報告された131例のうち52例(39.7%)でした。命に関わる副作用が起きた時期は、治療開始から中央値で、併用では14.5日、単独では40日と、早い時期に集中していました(Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018)。
副作用が出たら、どんな治療をするのですか?
重さ(グレード)に応じて、薬を続ける、休む、やめるを決め、中等度以上ではステロイドで免疫を抑えます。
副作用の重さは、グレード1(軽い)から4(命に関わる)までの段階で評価します。ASCOのガイドラインは、全体の原則を次のように示しています(Schneider BJ, et al. 2021)。
| 重さ | 免疫チェックポイント阻害薬 | 副作用への治療 |
| グレード1 | 注意深く見ながら続ける(神経・血液・心臓の一部は除く) | 症状に応じた対応 |
| グレード2 | 多くの場合、いったん休む。軽くなれば再開を検討 | ステロイド(プレドニゾン換算で体重1kgあたり1日0.5〜1mg)を使うことがある |
| グレード3 | 休む | 高用量のステロイド(体重1kgあたり1日1〜2mg)。少なくとも4〜6週間かけて減らす |
| グレード4 | 原則としてやめる(ホルモン補充で安定している内分泌の副作用は除く) | 高用量のステロイドなど |
出典:Schneider BJ, et al. Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2021;39(36):4073-4126。
高用量のステロイドを48〜72時間使っても良くならないときは、副作用の種類によって、インフリキシマブなど別の免疫を抑える薬を使うことがあります。副作用がグレード1以下に戻れば、注意しながら免疫チェックポイント阻害薬を再開できる場合もあります(Schneider BJ, et al. 2021)。
ESMOのガイドラインは、ステロイドは効果のある最小の量を、できるだけ短い期間で使うとしています(Haanen J, et al. 2022)。ステロイドを急にやめると症状がぶり返すことがあるため、減らし方は担当医の指示に従います。
副作用は複数の診療科にまたがるため、日本臨床腫瘍学会の『がん免疫療法ガイドライン 第3版』(2023年)も、病院全体での連携と情報の共有が大切だとしています。
「副作用が出た人ほど効く」というのは本当ですか?
そう見える研究は多くありますが、研究の数え方の偏りで生まれる部分があり、副作用が効果をもたらしているとは言えません。
「免疫の副作用が出た人のほうが、長く生きている」という報告は、たくさんあります。副作用が出るほど免疫が強く働いているのだから、がんにも効いているはずだ、という説明は、わかりやすく聞こえます。
ただし、この比べ方には落とし穴があります。
長く治療を続けた人ほど、副作用が出る機会が多い
副作用は、治療を始めてから数週間、数か月たって出ることが多いものです。前の節の研究では、中等度以上の副作用が出た人の割合は6か月で42.8%、24か月で57.3%と、時間とともに増えていました(Ghisoni E, et al. 2021)。
すると、早い時期にがんが進んで治療をやめた人や亡くなった人は、副作用が出る前に観察が終わります。「副作用が出た人」のグループには、少なくとも副作用が出る日まで生きていた人しか入りません。この、グループ分けの時点で生存が約束されている期間を、疫学では「イモータルタイム(不死の期間)」と呼び、この偏りを「イモータルタイムバイアス」といいます。
副作用が出たから長生きしたのではなく、長く生きて治療を続けたから副作用が出る機会があった、という逆向きの関係が混ざってしまうのです。
偏りを取り除くと、差は小さくなるか、消える
この偏りを取り除くには、副作用が出た時点からその人を「副作用あり」として数える方法(時間依存の解析)や、一定の時点まで生きていた人だけで比べる方法(ランドマーク解析)を使います。
| 研究 | 偏りを考えない比べ方 | 偏りを取り除いた比べ方 |
| 肺がん(スイス、217人) | 死亡のリスク 0.53倍(差あり) | 1.11倍(差なし) |
| 悪性黒色腫(スイス、220人) | 死亡のリスク 0.56倍(差あり) | 0.74倍(差なし) |
| 頭頸部がん(大阪大学、130人):がんが進むまでの期間 | 進行のリスク 0.49倍(差あり) | 0.75倍(差なし) |
| 頭頸部がん(大阪大学、130人):生存期間 | 死亡のリスク 0.38倍(差あり) | 0.50倍(差あり) |
出典:Ghisoni E, et al. Eur J Cancer 2021(中等度以上の副作用。全生存期間のハザード比。時間依存の解析)、Tamura K, et al. PLoS One 2024(無増悪生存期間と全生存期間のハザード比。多変量解析。時間依存の解析)。
スイスの研究では、偏りを考えない比べ方では副作用が出た人の死亡のリスクが約半分に見えましたが、時間依存の解析では差がなくなりました。著者らは、副作用が出た人に見えた有利さは、イモータルタイムバイアスで説明できるとしています(Ghisoni E, et al. 2021)。
大阪大学の研究では、生存期間の差は偏りを取り除いても残りましたが、がんが進むまでの期間の差は消え、腫瘍が縮んだ割合の差も小さくなりました。著者らは、副作用はがんの治療効果を予測する材料としては限られており、副作用があるかどうかだけで治療を続けるかを決めるべきではないとしています(Tamura K, et al. PLoS One. 2024)。
同じ論文によると、この関係を調べた研究29本をまとめた解析では、イモータルタイムバイアスを考慮していた研究は7本だけでした(Tamura K, et al. 2024が引用したDall’Olio FG, et al. Immunotherapy 2021)。
0.53倍 → 1.11倍
スイスの肺がん患者さん217人で、中等度以上の副作用が出た人の死亡のリスク(ハザード比)。副作用が出るまでの期間を考えずに比べると0.53倍、副作用が出た時点から数え直すと1.11倍で、差はなくなりました。
出典:Ghisoni E, et al. Late-onset and long-lasting immune-related adverse events from immune checkpoint-inhibitors. Eur J Cancer. 2021;149:153-164
「副作用は悪いしるし」とも言えない
偏りを取り除いても、副作用と長い生存の関係が残る研究もあります(大阪大学の研究の生存期間など)。研究はどれも、治療を受けた人をあとから振り返った観察研究で、がんの種類や薬、副作用の重さによって結果が違います。言えるのは、「副作用が出たから効いている」「出ないから効いていない」と、副作用の有無で効果を判断することはできない、ということです。
副作用の有無は、効いているかどうかの目安にはなりません。そのため、副作用を「効いているしるし」と考えて我慢する理由も、出ないことを悲観する理由もありません。
すぐに病院へ連絡すべきなのは、どんなときですか?
前の節の表にある症状が出たとき、とくに息苦しさ、強い下痢や血便、強いだるさ、のどの渇きと尿が増えること、力が入らないことは、次の受診日を待たずに連絡します。
厚生労働省のマニュアルは、症状に気づいたら放置せず、すぐに医師か薬剤師に連絡するよう患者さんに求めています(厚生労働省 令和4年)。がん情報サービスも、治療前とは明らかに違う症状を感じたら、ためらわずに病院に連絡するよう案内しています(2025年)。
とくに急いで連絡したいのは、次のような場合です。
- 息苦しい、咳が出る、熱がある:間質性肺炎の可能性(厚生労働省 令和4年)
- 下痢が続く、便に血が混じる、おなかが痛い:大腸炎の可能性
- のどが渇いて水をたくさん飲み、尿が多い、強いだるさ:劇症1型糖尿病の可能性。すぐに治療を始めないと命に関わりうる(厚生労働省 令和4年)
- まぶたが下がる、物が二重に見える、手足や首に力が入らない、息がしづらい:重症筋無力症・筋炎の可能性。急速に進むことがある(厚生労働省 令和4年)
- 胸の痛み、動悸、息切れ:心筋炎などの可能性
- ぼーっとする、意識が薄れる、強い頭痛:脳炎の可能性
自分で判断して下痢止めや市販薬を飲む前に、まず病院に相談します。大腸炎による下痢を下痢止めで抑えると、受診が遅れるおそれがあるためです。
治療前と治療後にしておくこと
がん情報サービスは、治療を始める前に、どんな副作用があり、出たときにどう対処するかを担当医に聞いておくこと、家族にも症状を知ってもらい、変化に気づけるようにしておくことを勧めています(2025年)。
- 連絡先を、平日の日中と夜間・休日の両方で確認しておく
- 体温、体重、食事と水分の量、便の回数と様子を、毎日書き留めておく
- 治療が終わったあとも、別の病院や救急にかかるときは、免疫チェックポイント阻害薬を使ったこと、最後に使った日を伝える
最後の項目は、副作用が治療を終えて数か月から1年たってから出ることがあるためです。そのころには、治療を受けた病院とは別の医療機関にかかることもあります。
免疫療法の副作用は、どこに出るかを前もって絞り込めません。だからこそ、だるさや下痢のような身近な変化を、「免疫の薬を使っている人の症状」として伝えられるかどうかが、早く見つけられるかどうかを左右します。
監修
新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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副作用の有無で効果は判断できない。では、免疫療法が「効いた」とは、何を測って言うのでしょうか。
奏効率とは?生存率との違い
がんの治療で「効いた」と言うときに使われる奏効率が、何を数えた数字なのかを説明した記事です。腫瘍が縮んだ人の割合と、長く生きられた人の割合は別のものであることを、臨床試験の数字で確かめています。
よくある質問
Qがん免疫療法の副作用は、いつまで出る可能性がありますか?
治療中だけでなく、治療が終わってから数週間から数か月後に出るものもあります(がん情報サービス 2025年)。欧州臨床腫瘍学会のガイドラインは、抗PD-1抗体では薬をやめて最長1年後に大腸炎が起きたとしています。ホルモンを出す臓器の障害は、多くが戻らず、ホルモンの補充を続けることになります。
Q免疫療法の副作用が出た人ほど効くというのは本当ですか?
そう見える研究はありますが、長く治療を続けた人ほど副作用が出る機会が多いという偏り(イモータルタイムバイアス)を取り除くと、差が小さくなったり消えたりします。副作用の有無で効果を判断することはできません。
Q副作用の治療でステロイドを使うと、免疫療法が効かなくなりますか?
結論は出ていません。欧州臨床腫瘍学会のガイドラインは、ステロイドは効果のある最小の量をできるだけ短い期間使うとし、免疫を抑える薬が治療効果に与える影響は今後の研究で確かめる必要があるとしています。副作用を抑えることを優先し、量と期間は担当医が判断します。
Q免疫療法の副作用で亡くなることはありますか?
あります。臨床試験112件、1万9,217人の解析では、副作用による死亡の割合は抗PD-1抗体で0.36%、2剤の併用で1.23%でした。心筋炎、間質性肺炎、肝炎、神経の副作用、大腸炎などが原因になり、早い時期に起こる傾向がありました(Wang DY, et al. 2018)。
Q自由診療の免疫細胞療法にも副作用はありますか?
この記事では扱っていません。がん情報サービスは、自由診療の免疫細胞療法やがんワクチンは効果が証明されていないとし、保険が使えないため副作用の治療費も全額自己負担になると注意しています(2025年)。
参考文献
- 厚生労働省「免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル」令和4年2月(令和4年7月誤記訂正)
https://www.pmda.go.jp/files/000245271.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年11月6日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「薬物療法 もっと詳しく」2025年3月11日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html - Haanen J, Obeid M, Spain L, et al. Management of toxicities from immunotherapy: ESMO Clinical Practice Guideline for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol. 2022;33(12):1217-1238.
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