家族ががんと告知されたら、最初にやることは本人の希望を確かめることです。
病状の説明を誰が聞くかも、治療を選ぶのも、本人が決めます。
がんと告知された家族を前に、何から手をつければよいかわからなくなるのは自然なことです。この記事では、国立がん研究センターのがん情報サービスと厚生労働省・個人情報保護委員会の公開資料をもとに、家族が最初にやること、病状の説明を家族が聞くときの決まり、説明への同席の仕方、本人への接し方、仕事の制度、家族自身の相談先を整理します。
この記事の内容
家族ががんと告知されたら、まず何をすればいいですか?
本人がどう感じていて、何を望んでいるかを確かめることから始めます。そのうえで、担当医の説明を本人と一緒に聞く準備をします。

国立がん研究センター がん情報サービス、厚生労働省・個人情報保護委員会のガイダンス(2026年4月一部改正)をもとに作成
がん情報サービスは、家族ががんになったときに家族ができることを、3つのヒントにまとめています(がん情報サービス「家族ががんになったとき」2023年)。
- 患者さんの気持ちや希望を理解し、尊重する
- 情報とうまく付き合う
- 家族が自分自身も大切にする
1つ目のヒントには注意書きがあります。治ってほしいという思いから、家族がよいと思うことを強く勧めると、かえって本人の負担になる場合がある、というものです(同)。
がんは珍しい病気ではありません。一生のうちにがんと診断される確率は、男性61.1%、女性50.1%と推計されています(がん情報サービス「最新がん統計」2023年データに基づく)。治療を続けながら仕事や生活を続ける人も多くいます。原因を過去に探したくなることもありますが、多くのがんの原因はわかっていません。がん情報サービスは、今できることに目を向けることを勧めています(がん情報サービス「家族ががんになったときに知っておきたいこと」2023年)。
家族だけが先に告知されたら、本人に伝えないほうがいいですか?
診断の結果は本人の情報です。家族に伝えるには、原則として本人の同意が要ります。本人より先に家族へ説明するのは例外で、慎重な判断が必要とされています。
個人情報保護委員会は、本人に病名を告知する前に家族に相談する場合について、Q&Aで考え方を示しています(個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」Q&A Q4-2)。要点は次のとおりです。
- 診断結果などの診療情報を家族を含む第三者に伝えるには、原則として本人の同意が必要
- 人の生命や身体の保護のために必要で、本人の同意を得ることが難しい場合は、同意がなくても伝えられる。その例として、病状や予後を説明すると本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療に悪影響を及ぼす場合が挙げられている
- ただし、その例外に当たるかどうかは、本人との関係でも慎重に判断する必要がある
- 本人から、説明を受ける相手の範囲や方法、時期について要望があれば、できる限り本人の意思に配慮する
つまり、家族が本人より先に聞かされる場面は、制度の上では例外として扱われています。本人に伝えるかどうか、いつ、どう伝えるかを、家族だけで抱えて決める必要はありません。担当医や、次に述べるがん相談支援センターに相談できます。
【最新の知見】2026年10月更新
病状説明を家族にするときの決まりを定めた「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、2026年4月に一部改正されました。改正後も、家族への病状説明は本人に説明対象を確認し、同意を得ることが望ましいという記述が残っています(個人情報保護委員会・厚生労働省 ガイダンス 令和8年4月一部改正)。
病状の説明は、どの家族が聞いてもいいのですか?
誰に説明するかは、病院が本人に確認するのが望ましいとされています。本人の申し出で、説明する相手を加えたり、特定の家族に限ったりできます。
ガイダンスは、本人以外の人に病状を説明する場合、本人に対し、あらかじめ説明する家族等の対象者を確認し、同意を得ることが望ましいとしています(ガイダンス 令和8年4月一部改正)。本人の申し出があれば、治療に支障のない範囲で、現に本人の世話をしている親族などを説明の相手に加えたり、家族の中の特定の人に限ったりすることもできます(同)。
意識がない人や重い認知症の人の病状を家族に説明する場合は、本人の同意を得ずに説明できる場合があると考えられています。この場合も、本人の意識が戻ったら、誰に何を伝えたかを速やかに本人に説明するとされています(同)。
ここから、家族が最初に決めておくとよいことが見えてきます。
| 決めること | 理由 |
| 説明を聞く家族を、本人が病院に伝える | 誰に説明するかは本人に確認するのが望ましいとされているため |
| 説明を聞いた人が、ほかの家族に共有する | 本人の申し出で、説明の相手を特定の家族に限ることもできるため |
| 本人が知りたいこと、知りたくないことを確かめる | 説明の相手や方法、時期についての本人の要望には、できる限り配慮するとされているため |
がん情報サービスの冊子には、家族が工夫したこととして「他の家族とも情報共有を心がけた」という声が載っています(冊子「家族ががんになったとき」第4版 2023年)。
担当医の説明に、家族はどう同席すればいいですか?
本人と前もって話し、聞きたいことをメモにまとめて同席します。説明の場ではメモを取り、本人が言いにくいことを補います。
がん情報サービスは、治療の中心は本人であり、本人が納得して選べるよう、家族も含めて担当医と話し合うことが大切だとしています(がん情報サービス「家族ががんと診断されたとき」2023年)。家族が冷静に同席することが本人の助けになる一方、感情が先に立つと本人の希望より家族の思いが前に出て、衝突の原因にもなるとしています(同)。
説明の前にやること
面談の前に、不安なことや聞きたいことをメモにまとめておくと役に立ちます(冊子「家族ががんになったとき」2023年)。冊子は、医療者に聞いておくとよいことの例として、診断から治療を選ぶまでの時期に次を挙げています(同)。
- 医学的な診断名
- 治療の狙い
- 治療の選択肢と、それぞれの長所・短所・スケジュール
- 外来か入院か、治療の期間
- 費用の目安と、保険や各種制度の手続き
- 休職などの手続きと、復帰の見通し
- 希望があれば、セカンドオピニオン
説明の場でやること
冊子には、担当医との話し合いについて本人と家族の声が載っています。本人の側からは、家族の心配が強く感情的になりすぎた、治療の希望が家族と違い家族の希望を強く主張された、面談で家族が要領を得ない質問を繰り返した、といった声です(同)。
家族の側が工夫したこととしては、次が挙がっています(同)。
- まず本人の意見を尊重するよう心がけた
- 診断や治療の説明はできるだけ同席した
- 面談の前によく話し合い、本人がどうしたいかを一緒に考えた
- 面談ではメモをとり、本人が言いにくいことは代わりに意見を添えた
- 本人が治療をゆっくり考える時間をつくった
家族の役目は、本人の代わりに質問することではなく、本人が聞きたいことを聞けるように支えることだと読み取れます。
治療は、家族が決めてもいいですか?
治療を選ぶのは本人です。家族は、本人が納得して選べるよう、一緒に考え、決断を急がせない役に回ります。
がん情報サービスは、診断から治療が始まるまでの間に、病名や病院、治療の基本などの情報を集めて準備する時間があるとしています(がん情報サービス 2023年)。ただし、その時間は長くありません。2021年にがんと診断された人への調査では、確定診断から治療開始までが1か月未満だった人は57.5%でした(国立がん研究センター「令和5年度患者体験調査」2025年)。
家族の間で方針が食い違うこともあります。がん情報サービスは、具体的な方針は違っても、本人を大切に思う気持ちは同じだと確かめ合って話し合うこと、本人を含めて意見が合わないときは第三者に入ってもらう方法もあることを挙げています(がん情報サービス 2023年)。
本人の立場から、告知の直後に何をするかは「がんと言われたら、まずやること」にまとめています。治療が進んだ先で延命治療をどうするかという話は、「延命治療とは」で扱っています。
本人には、どんな言葉をかければいいですか?
特別な言葉を用意する必要はありません。ふだんどおりに接し、本人が話したいときに話を聞くことが支えになるとされています。
がん情報サービスは、家族以外の身近な人に向けて、これまでとできるだけ同じように接すること、相手が話し出すまで待つことも必要な場合があることを挙げています(がん情報サービス「身近な人ががんになったとき」2019年)。相談されたら話に耳を傾けること、相手はアドバイスや情報を求めているとは限らず、「いつでも話を聞くよ」と伝えるだけでも支えになること、得た情報を積極的に本人へ教える必要はないこと、も書かれています(同)。
家族向けのページも、過度に気を使ったり無理に何かを言ったりする必要はなく、本人の気持ちを想像しながら、手探りでもやりとりを重ねることが支えになるとしています(がん情報サービス 2023年)。
本人の側にも、家族への気持ちがあります。2021年にがんと診断された人への調査では、がんになったことで家族に負担(迷惑)をかけていると感じる人は57.7%でした(令和5年度患者体験調査 2025年)。
子どもなど、ほかの家族に何をどこまで伝えるかについては、本人の希望を聞いて対応したという家族の例が、冊子に載っています(冊子「家族ががんになったとき」2023年)。
家族として、仕事を休める制度はありますか?
看病や通院の付き添いには、介護休暇や介護休業を使える場合があります。治療が始まる前に、勤務先の制度を確かめておきます。
がん情報サービスは、治療が始まるまでに、治療費や仕事、家事、育児、介護などの生活面をある程度考えておくことを勧めています(がん情報サービス 2023年)。家族が使える国の制度は次のとおりです(厚生労働省「介護休業」、厚生労働省「介護休暇」)。
| 制度 | 内容 |
| 介護休暇 | 対象家族1人につき1年に5日まで(2人以上なら10日まで)。1日単位か時間単位で取れる |
| 介護休業 | 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できる |
| 介護休業給付金 | 介護休業中、休業開始時賃金日額の67%相当額が支給される(条件はハローワークで確認) |
| 対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母 |
どちらの制度も、対象家族が「要介護状態」であることが条件です。要介護状態は、負傷や疾病などにより、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態と定められています(同)。がんの治療中の家族がこれに当たるかは、病状によって変わります。勤務先の人事・労務担当に確かめてください。
介護休暇は2025年4月から、継続雇用6か月未満の労働者を労使協定で対象外にする仕組みがなくなりました(厚生労働省「介護休暇」)。本人の治療費の負担については、高額療養費制度などの公的な制度があり、窓口は加入している公的医療保険です(冊子「家族ががんになったとき」2023年)。
家族自身がつらいときは、どこに相談すればいいですか?
全国のがん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」は、家族も無料・匿名で利用できます。相談した内容が、同意なしに本人の担当医に伝わることはありません。
がん情報サービスは、家族は、がんになった本人と同じかそれ以上に精神的な負担がかかる「第二の患者」ともいわれるとしています(がん情報サービス 2023年)。冊子は、つらい気持ちをひとりで抱えないことが重要だと書いています(冊子「家族ががんになったとき」2023年)。
がん相談支援センターは、患者さんだけでなく、家族や、その病院に通っていない地域の人も、無料・匿名で利用できる相談窓口です。面談か電話で相談でき、診断や治療、療養生活、お金や仕事、家族や医療者との関係などを相談できます。相談したことが、相談した人の同意なしに、担当医や病院のスタッフを含むほかの人に知られることはありません(がん情報サービス「がん相談支援センターとは」2022年)。一方で、担当医に代わって治療について判断する場所ではありません(同)。
がんの診断のときから受けられる緩和ケアも、体の痛みだけでなく心のつらさを対象にしていて、家族も支える対象に入っています(がん情報サービス 2023年)。いつから受けられるかは「緩和ケアはいつから受けられる?」で扱っています。
冊子は、日常生活でのつらい気持ちへの対処の例として、次を挙げています(同冊子)。
- 信頼できる人や医療者、同じ立場の人に話す
- 一度に解決しようとせず、いちばん大切なことから手をつける
- 無理をしない、断る勇気を持つ
- 睡眠時間をしっかりとるなど、体を休める
- 自分を責めない
44.1%
がん患者の家族の悩みや負担を相談できる支援・サービス・場所が、十分にあると思う人の割合。
半数に届いていません。
国立がん研究センター「令和5年度患者体験調査」2025年7月公表
同じ調査で、がん相談支援センターを知っている人は55.1%でした。知っている人のうち、利用した人は21.1%です(同)。窓口はあっても、知られていない、使われていないという状態が数字に出ています。
この調査で答えているのは、家族ではありません
患者体験調査の対象は、2021年にがんと診断された18歳以上の患者さんです。32,716人に送り、14,797人から回答があり(回収率45.2%)、11,169人を解析しています。結果は重みづけという手法で補正されています。「家族の悩みや負担を相談できる場所が十分にある」の44.1%も、家族自身に聞いた数字ではありません。家族の負担を家族に直接たずねた全国規模の数字は、この記事では示せていません。
家族ができることの多くは、本人が自分で決められるように材料をそろえることです。病状の説明を誰が聞くかを本人に確かめるところから、その役目は始まっています。
セカンドオピニオン外来で、僕が学んだこと
セカンドオピニオン外来でたくさんの方の相談に乗ってわかったことの一つは、理解力が相当ある方でも、実は医者から聞いたことを、100%は理解出来ていないということです。
患者さんが持ってくる書類、医師が説明に使用した絵などを見ても、本当に適切に、正しく説明されていながら伝わらないのです。結局、いくら話しても、多くの患者さんではその内容のほんの少しの部分しか伝わらないということが腑に落ちました。
患者さんや患者さんの家族は、すべてのお話のストーリーを覚えていません。当然当方の診療を録画も録音もしていませんので、帰宅して聞き直すこともありません。つまり記憶に残る言葉だけが、認識されていくのです。
「がん」と言われたらまず落ち着いて下さい。ひとりで考え込まないで、誰かに相談してください。

新見正則(にいみ まさのり)
新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。
日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)
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よくある質問
家族ががんと告知されたら、まず何をすればいいですか?
本人がどう感じていて、何を望んでいるかを確かめることから始めます。病状の説明を誰が聞くかは本人に確認するのが望ましいとされているので、説明を聞く家族を本人から病院に伝えてもらい、聞きたいことをメモにまとめて説明に同席します。
家族だけにがんと告知された場合、本人に伝えないこともできますか?
診断結果を家族に伝えるには、原則として本人の同意が必要です。病状を説明すると本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療に悪影響を及ぼす場合などは、本人より先に家族へ説明することもできますが、本人との関係でも慎重に判断すべき例外とされています。伝えるかどうか、いつどう伝えるかは、家族だけで抱えず担当医やがん相談支援センターに相談できます。
がんの病状説明は、家族なら誰でも聞けますか?
病院は、説明する家族を本人に確認し、同意を得ることが望ましいとされています。本人の申し出で、世話をしている親族を説明の相手に加えたり、特定の家族に限ったりできます。意識がない場合などは、本人の同意なく家族に説明できる場合があります。
家族ががんになったら、仕事を休める制度はありますか?
介護休暇(対象家族1人につき年5日、2人以上なら10日、時間単位も可)と介護休業(対象家族1人につき3回・通算93日まで)があり、介護休業には休業開始時賃金日額の67%相当の給付金があります。家族が2週間以上常時介護を必要とする要介護状態であることが条件なので、勤務先に確かめてください。
がん患者の家族は、どこに相談できますか?
全国のがん診療連携拠点病院などにある、がん相談支援センターに相談できます。家族や、その病院に通っていない人も、無料・匿名で利用できます。相談した内容が、同意なしに担当医を含むほかの人に知られることはありません。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」2023年4月5日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/index.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったときに知っておきたいこと」2023年4月5日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/fam01.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんと診断されたとき」2023年4月5日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/fam02.html - 国立がん研究センター がん情報サービス編集委員会 編『家族ががんになったとき』第4版 2023年4月
https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/201.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「身近な人ががんになったとき」2019年2月19日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/support/family/familiar.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」2022年11月7日更新・確認
https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/cisc/cisc.html - 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」令和8年4月一部改正
https://www.mhlw.go.jp/content/001470633.pdf - 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関するQ&A Q4-2
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq3-qb4-2 - 国立がん研究センター「令和5年度患者体験調査」結果公表 2025年7月3日
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0703_1/index.html - 厚生労働省「介護休業」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/ - 厚生労働省「介護休暇」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shorttime-leave/ - 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」2026年7月14日更新・確認
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html





