保険診療では新しいものは生まれない!

標準治療は多くの専門家が語るように「今ある最良の治療」です。そして今ある最良の治療は、ほぼほぼ保険診療です。

世の中も、医療も日々進歩しています。医療は特にこの50年、そして21世紀に入ってからの20年超で格段の進歩を遂げました。そして標準治療はどんどんと改良されています。

標準治療は『今ある』最良の治療なので、将来の最良の治療は含まれていません。将来の最良の治療の模索は標準治療ではなく、そして保険診療ではないのです。ですから新しい臨床試験は『治験』と称して、患者さんの金銭的負担が少なく行われることがほとんどです。

さて、漢方薬は1967年から保険適用とされ、現在では148種類の漢方製剤が保険適用されています。ところが漢方薬は西洋薬剤では必須とされる臨床試験を経ていません。歴史的に、経験的に有用と思われているという根拠を基に超法規的に保険適用されています。そして60年近くが経過し現在に至っています。

漢方薬を進化させるには工夫が必要です。

●既存の漢方薬が新しい領域、効能・効果に使えるのではない?
●漢方薬の飲み方を工夫すればもっと効くのではないか?
●漢方薬の量を増やせば効くのではないか?
●新しい生薬を加えると効果が増すのではないか?
●ある生薬を抜くと副作用が減るのではないか?

これらの疑問を解決するには保険適用で漢方薬を使用できません。すべて自費診療になります。保険適用の建前は、決められた効能効果に沿って、用量・用法を守って使用するというシバリがあるのです。これを逸脱する場合は自費診療になるのです。

漢方薬には超法規的に保険適用とされたという特殊事情があります。保険適用とは最大でも3割を患者さんが負担し、残りの7割以上は税金や社会保障費で補填されています。そうであれば、使用方法にシバリがあるのは当然で、むしろ臨床試験を経ることなく保険適用されている漢方薬の存在自体が保険診療との整合性からすると矛盾するものになります。

もちろん、現代に則した臨床試験があれば、漢方薬の保険適用としての存続に追い風になるでしょう。しかし、企業も大学の漢方講座もそんな努力を行わないのであれば、将来的に漢方薬は保険収載から除外される可能性は否定できません。

新見正則医院で扱っている生薬フアイアには、肝臓がん手術後の患者さん約1000人をクジ引きで(ランダム化して)生存率で勝ち抜いた大規模臨床試験の実績があります。しかし、保険適用ではありません。フアイアに漢方薬を加えることも保険適用ではできません。でも進歩とはそんなもので、最初は保険適用ではないのです。

標準治療は今ある最良の治療です。将来の、そして近い将来の最良の治療は保険適用でなないのです。

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