温熱療法(ハイパーサーミア)は保険で受けられる?がんの条件と試験の結果

がんの温熱療法(ハイパーサーミア)のイメージ

がんの温熱療法は保険で受けられますが、保険で受けられる範囲は、比較試験で確かめられた範囲より広く決められています。

温熱療法(ハイパーサーミア)は、がんのある場所を電磁波で温める治療です。放射線や抗がん剤と組み合わせる形では、くじ引きで治療を分けた比較試験が一部のがんで行われ、生存の差が報告された試験も、差がはっきりしなかった試験もあります。この記事では、保険で受けられる条件と費用、試験で示されたこと、副作用、自費で受ける前に確かめることを、厚生労働省の点数表と査読論文から整理します。

がんの温熱療法(ハイパーサーミア)とは何ですか?

がんのある場所を体の外から電磁波で温め、放射線や抗がん剤の効き目を高めることを主な狙いとする治療です。

国内の保険診療で使われるのは、電磁波を使って体の一部を温める方法です。厚生労働省の点数表では「電磁波温熱療法」という名前で載っています。体を挟むように電極を当て、その間の部分を温めます。

温める温度は、試験によって違いますが、おおむね40度台前半です。日本の子宮頸がんの比較試験では、測った温度は、平均温度の平均が41.1度、毎回の最高温度の平均が42.2度でした(Harima Y, et al. Int J Hyperthermia 2016)。この論文は、42.5度前後より高い温度では熱そのものでがん細胞を傷め、それより低い温度では放射線や抗がん剤の効き目を高める働きが主になると説明しています。

温熱療法でよく使われる言葉は、次のとおりです。

  • 局所温熱療法・領域温熱療法:腫瘍のある場所やその周り(骨盤全体など)を温める
  • 深在性・浅在性:腫瘍が体の深いところにあるか、浅いところにあるか。保険の料金が変わる
  • 一連:保険の点数表で使われる、1コースの治療を指す言葉。料金はこの単位で数える

日本ハイパーサーミア学会は、2023年に「ハイパーサーミア診療ガイドライン 2023年版」を出版しています(金原出版)。Minds(日本医療機能評価機構の診療ガイドライン情報サービス)は、このガイドラインを作成方法の観点から質が高いと評価しています(Minds ガイドラインライブラリ 2023年)。どのがんでどう推奨されているかは、受ける前に担当医に確認できます。

温熱療法は保険で受けられますか?

受けられます。悪性腫瘍に対して電磁波で温める治療は、機器や腫瘍の深さなどの条件に合えば、がんの種類を限らず、放射線と組み合わせない場合でも保険で算定できます。

厚生労働省の点数表と、その使い方を定めた通知(留意事項通知)は、次のように決めています(厚生労働省 医科診療報酬点数表 第12部 放射線治療、同 留意事項通知 別添1)。

区分 対象 点数(1コースにつき)
深在性悪性腫瘍に対するもの 頭の中やおなか・胸の中にあり、腫瘍の大半がおおむね皮膚から6cm以上深いところにあるもの。100MHz以下の高出力の機器で温める 9,000点
浅在性悪性腫瘍に対するもの 上の条件に当てはまらないもの。手足や首の腫瘍、器具を体の中に入れて内側から温める場合は、場所や機器にかかわらずこちら 6,000点

出典:厚生労働省「医科診療報酬点数表」M003 電磁波温熱療法、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1。

通知には、ほかに次の決まりがあります。

  • 放射線治療と組み合わせない場合(抗がん剤と組み合わせる場合、温熱療法だけを行う場合)でも算定できる
  • 治療する部分の温度を測り、十分に温まっていることを確かめる
  • 温度センサーなどの消耗品の費用は点数に含まれ、別に請求できない

点数表に書かれた対象は「悪性腫瘍」で、がんの種類による区別はありません。この点は、あとで説明する比較試験の範囲と比べると意味がはっきりします。

保険の料金は、何回分かかるのですか?

1コース(点数表の言葉では「一連」)で1回分です。コースの中で何回温めても、保険で算定する料金は変わりません。

保険の温熱療法の料金の数え方の図。子宮頸がんの比較試験では、放射線を平日に毎日当てる5週間ほどの間に温熱療法を週1回行った。この1コース全体で、保険で算定するのは1回分(深いところ9,000点、浅いところ6,000点)で、コース中に何回温めても料金は同じ

通知は「一連」を、その病気に対して目的を果たすまでに行う一続きの治療の過程と定めています。数か月にわたるコースの中で何回温めても、算定は1回分だけで、残りの回の費用は点数に含まれます(厚生労働省 留意事項通知)。コースを終えたあとに改めて行う場合の扱いは、通知の版によって定めがあるため、受ける医療機関で確かめてください。

診療報酬は1点10円で計算します(厚生労働省「診療報酬制度について」)。温熱療法そのものの点数を金額にすると、次のとおりです。

区分 1コースの金額 3割負担の場合
深在性(9,000点) 90,000円 27,000円
浅在性(6,000点) 60,000円 18,000円

出典:厚生労働省「医科診療報酬点数表」M003 から計算(1点10円)。診察料、検査料、一緒に行う放射線治療や抗がん剤の費用は別にかかる。

1コースの中で何回、どの間隔で温めるかは、医療機関と治療の組み方によって違います。日本の子宮頸がんの比較試験では、放射線の期間中に週1回温め、92.2%の人が4〜6回受けていました(Harima Y, et al. 2016)。インターネットでは「2か月で8回まで保険」のような説明も見かけますが、受ける医療機関で、1コースの回数と期間、コースを終えたあとにもう一度受ける場合の扱いを確かめるのが確実です。

放射線や抗がん剤と組み合わせると、どんな結果が出ていますか?

軟部肉腫と子宮頸がんでは、くじ引きで分けた比較試験があり、上乗せで生存が延びたと報告された試験も、差がはっきりしなかった試験もあります。

主な試験を、比べた相手、規模、何を測ったかで並べると次のようになります。

がん 比べたもの 規模 主な結果
軟部肉腫(再発の危険が高い) 手術の前後の抗がん剤+領域温熱療法 対 抗がん剤だけ 341人を割り付け、9施設(欧州・北米) 局所無増悪生存のハザード比0.65。全生存のハザード比0.73。5年生存率62.7% 対 51.3%、10年生存率52.6% 対 42.7%(解析対象329人)
子宮頸がん(局所進行) 放射線+温熱療法 対 放射線だけ 比較試験6件のまとめ(システマティックレビュー) 3年時点の局所再発のハザード比0.48、3年時点の全生存のハザード比0.67(p=0.05)
子宮頸がん(局所進行、日本) 化学放射線療法+温熱療法 対 化学放射線療法だけ 101人、多施設 完全奏効88.0% 対 77.6%(年齢などで調整した解析で差あり p=0.047、調整しない比較ではp=0.192)。5年全生存率77.8% 対 64.8%(p=0.141)で、生存は統計的にはっきりした差ではなかった

出典:Issels RD, et al. JAMA Oncol 2018/Lutgens L, et al. Cochrane Database Syst Rev 2010/Harima Y, et al. Int J Hyperthermia 2016。

軟部肉腫の試験

手術の前後に行う抗がん剤(3種類の組み合わせ)に、42度・60分の領域温熱療法を加えるかどうかで分けた試験です。主な評価項目は局所無増悪生存(その場所でがんが大きくならずにいる期間)で、ハザード比0.65(P=0.002)と差が出ました。追跡期間の中央値11.3年の報告では、全生存にも差が出ています(Issels RD, et al. JAMA Oncol 2018)。この報告の全生存は、病気か治療による死亡を数えたもので、ほかの原因による死亡は数えていません。

子宮頸がんの試験

放射線に温熱療法を上乗せした比較試験6件をまとめたコクランのレビューは、局所の制御と生存がよくなることを示唆するとしています。一方で、患者数が少ないこと、試験の方法に欠点があること、ステージIIIBの人に偏っていることから、確定的な結論は出せないとも書いています(Lutgens L, et al. Cochrane Database Syst Rev 2010)。

現在の標準である化学放射線療法(放射線と抗がん剤のシスプラチン)に上乗せした日本の試験では、101人を分けて比べ、完全奏効は温熱療法を加えた側で多く、年齢・病期・組織型で調整した解析では統計的な差がありました(p=0.047。調整しない比較ではp=0.192)。5年全生存率は77.8%と64.8%で、統計的にはっきりした差にはなりませんでした(Harima Y, et al. 2016)。

「差が出なかった」が意味する範囲

日本の試験で生存の差がはっきりしなかったのは、101人という規模で、化学放射線療法に上乗せした子宮頸がんでの結果です。温熱療法そのものに意味がないと示したものではありません。逆に、軟部肉腫で生存が延びた結果も、その抗がん剤の組み合わせ、その温め方、その病状での結果で、ほかのがんや温熱療法だけの治療に当てはまるとは限りません。

保険の範囲と、試験の範囲

保険の点数表は、機器や腫瘍の深さなどの条件に合えば、がんの種類を限らず、放射線と組み合わせない場合や温熱療法だけの場合にも算定を認めています。一方、この記事で取り上げた比較試験は、どれも特定のがんで、放射線や抗がん剤に上乗せした試験です。保険で受けられることは、自分のがんと治療の組み合わせで効果が確かめられていることと同じではありません。

縮小した人の割合(奏効率)と、長く生きられるかどうかは別の物差しです。数字の読み方は奏効率とは何かを説明した記事で扱っています。また、1つの医療機関が自院で温熱療法を受けた人だけを集計した生存期間は、比べる相手がいないうえ、治療を続けられるほど体力のある人が多く残りやすいため、比較試験の結果と同じ重さでは読めません。

9,000点

腫瘍が体の深いところにある場合の、保険の温熱療法の点数(1点10円で90,000円)。1コース(一連)につきこの1回分で、コースの中で何回温めても変わりません。浅いところは6,000点。

出典:厚生労働省「医科診療報酬点数表」M003 電磁波温熱療法、留意事項通知

温熱療法の副作用は何ですか?

温めている部分の痛み、電極の水袋による圧迫感、皮膚のやけどが主なものです。多くは軽い〜中くらいの程度でした。

軟部肉腫の比較試験で、温熱療法を受けた人に出た温熱療法に関係する副作用は次のとおりです(Issels RD, et al. Lancet Oncol 2010)。

副作用 軽い〜中くらい 重い
痛み 40.5% 4.3%
水袋(ボーラス)による圧迫感 26.4% 4.9%
皮膚のやけど 17.8% 0.6%

出典:Issels RD, et al. Lancet Oncol 2010。

同じ試験では、重い白血球の減少(グレード3〜4)も、温熱療法を加えた側で多く出ています(165人中128人 対 167人中106人)。抗がん剤と組み合わせる場合は、抗がん剤の副作用が強まることも考えておく必要があります。

一方、日本の子宮頸がんの試験では、温熱療法を加えた51人に水ぶくれや皮下脂肪の壊死は見られませんでした(Harima Y, et al. 2016)。子宮頸がんの比較試験のまとめでも、重い副作用(グレード3〜4)は、治療直後も後になってからも、温熱療法を加えても増えていませんでした(Lutgens L, et al. 2010)。副作用の出方は、温める場所、温度、組み合わせる治療で変わります。

自費の温熱療法を受ける前に、何を確かめればよいですか?

自分のがんと治療の組み合わせで、比較試験の結果があるか、保険で受けられないか、費用の総額はいくらかを確かめます。

保険の条件の外で温熱療法を受ける場合、費用は全額が自己負担です。負担が大きい治療ほど、根拠を厳しく確かめてから決めることが大切です。確かめる項目は次のとおりです。

  • 自分のがんで、その組み方(放射線や抗がん剤との組み合わせ、温める場所と温度)の比較試験があるか
  • 結果は、縮小した人の割合か、生存期間か
  • 同じ治療を保険で受けられないか。受けられないなら、なぜか
  • 1回の料金、予定の回数、総額
  • 副作用が出たときに、どこで診てもらい、その費用は誰が負担するか
  • いまの治療を担当している医師に伝えてよいか

がん情報サービスは、自由診療として行われる免疫療法について、副作用の治療費も全額自費になること、効果が期待できるかわからない場合は受けないという選択も大切であることを挙げています(がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」2025年)。温熱療法の自費部分を考えるときにも、同じ確かめ方が役立ちます。

選べる道は、温熱療法を受けるかどうかだけではありません。標準治療の続け方、がんの治験に参加する方法、ほかの医師の意見を聞くセカンドオピニオン、がん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」への相談も、あわせて確かめられます。保険の治療と自費の治療を並行して受ける場合は、費用の扱いを両方の医療機関に確認しておきます。

温熱療法は、保険の点数表に名前があり、一部のがんでは比較試験で上乗せの結果も出ています。その一方で、保険が認めている範囲は試験で調べられた範囲より広く、同じ「温熱療法」という言葉でも、温め方も組み合わせる治療も施設ごとに違います。説明を聞くときは、「保険が効くかどうか」と「自分の場合に試験の裏付けがあるかどうか」を、別々の質問として尋ねてみてください。

新見正則医院院長 新見正則

監修

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年、英国オックスフォード大学にて移植免疫学の医学博士(Doctor of Philosophy)取得。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。外科医、免疫学者、漢方医として臨床と研究の両方に携わる。

日本外科学会 外科専門医・指導医/日本消化器外科学会 消化器外科指導医/日本東洋医学会 漢方専門医/アメリカ外科学会フェロー(FACS)

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よくある質問

Qがんの温熱療法(ハイパーサーミア)は保険適用ですか?

保険適用です。厚生労働省の点数表には「電磁波温熱療法」として載っており、悪性腫瘍に対して行う場合、機器や腫瘍の深さなどの条件に合えば、がんの種類を限らず、放射線治療と組み合わせない場合や温熱療法だけの場合でも算定できます。

Q温熱療法の費用はいくらですか?

保険では、腫瘍が深いところにある場合は1コースにつき9,000点(90,000円)、浅いところは6,000点(60,000円)で、3割負担ならそれぞれ27,000円と18,000円です。コースの中で何回温めても変わりません。診察や検査、組み合わせる放射線や抗がん剤の費用は別にかかります。自費の場合の料金は医療機関ごとに確認します。

Q温熱療法はどのがんに効果がありますか?

くじ引きで分けた比較試験で結果が出ているのは、手術前の軟部肉腫(抗がん剤への上乗せで全生存のハザード比0.73)や、局所進行の子宮頸がん(放射線への上乗せ)などです。日本で化学放射線療法に上乗せした子宮頸がんの試験では、生存に統計的にはっきりした差は出ませんでした。結果は、がんの種類と組み合わせる治療ごとに読む必要があります。

Q温熱療法の副作用は何ですか?

軟部肉腫の試験では、温めている部分の痛み(軽い〜中くらい40.5%、重い4.3%)、水袋による圧迫感、皮膚のやけど(軽い〜中くらい17.8%、重い0.6%)が報告されています。子宮頸がんの試験のまとめでは、重い副作用は温熱療法を加えても増えていませんでした。

Q温熱療法だけでがんの治療ができますか?

保険の点数表は、温熱療法だけを行う場合も算定できるとしています。ただし、この記事で取り上げた比較試験は、どれも放射線や抗がん剤に上乗せした試験です。温熱療法だけで治療する場合の根拠は、担当医に確認してから判断します。

参考文献

  1. 厚生労働省「医科診療報酬点数表 第2章第12部 放射線治療」M003 電磁波温熱療法(平成24年度/2026年10月21日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-14.pdf
  2. 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(保医発0305第1号)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項 その5(平成24年/2026年10月21日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-25-5.pdf
  3. 厚生労働省「診療報酬制度について」(2026年10月21日確認)
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01b.pdf
  4. Issels RD, Lindner LH, Verweij J, et al. Effect of Neoadjuvant Chemotherapy Plus Regional Hyperthermia on Long-term Outcomes Among Patients With Localized High-Risk Soft Tissue Sarcoma: The EORTC 62961-ESHO 95 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2018;4(4):483-492.
    https://doi.org/10.1001/jamaoncol.2017.4996
  5. Issels RD, Lindner LH, Verweij J, et al. Neo-adjuvant chemotherapy alone or with regional hyperthermia for localised high-risk soft-tissue sarcoma: a randomised phase 3 multicentre study. Lancet Oncol. 2010;11(6):561-570.
    https://doi.org/10.1016/S1470-2045(10)70071-1
  6. Lutgens L, van der Zee J, De Ruysscher D, et al. Combined use of hyperthermia and radiation therapy for treating locally advanced cervix carcinoma. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(3):CD006377.
    https://doi.org/10.1002/14651858.CD006377.pub3
  7. Harima Y, Ohguri T, Imada H, et al. A multicentre randomised clinical trial of chemoradiotherapy plus hyperthermia versus chemoradiotherapy alone in patients with locally advanced cervical cancer. Int J Hyperthermia. 2016;32(7):801-808.
    https://doi.org/10.1080/02656736.2016.1213430
  8. Minds ガイドラインライブラリ「ハイパーサーミア診療ガイドライン 2023年版」(日本ハイパーサーミア学会 編、金原出版、2023年/2026年10月21日確認)
    https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00791/
  9. 国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法 もっと詳しく」(2025年11月6日更新・確認)
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html

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