抗がん剤のしびれはいつまで続く?治療後も残る不安と回復の目安

抗がん剤のしびれは、治療が終われば消えるとは限りません。治療後6か月以上たっても、30.0%の人に残っていたという解析があります。

この記事では、しびれを起こしやすい抗がん剤、オキサリプラチンに特有の2種類のしびれ、治療を終えたあとに悪化する「コースティング」、そして回復の見通しを、学会のガイドラインと論文の数字で整理します。

あわせて、しびれをいつ主治医に伝えるかが、なぜ見通しに関わるのかを書きます。

しびれは、いつまで続くのですか?

使った薬と量によって大きく違い、治療が終わってから数か月から1年以上続く人もいます。

抗がん剤のしびれがいつまで続くかを示す図。しびれが残っている人の割合は治療終了から1か月以内68.1%、3か月60.0%、6か月以上30.0%

国立がん研究センターは「人によってはがんの薬物療法が終了してから、数カ月から1年以上の長期間にわたって症状が続くこともある」としています(がん情報サービス「しびれ」2025年)。

割合で見ると、31の研究・4,179人を統合した解析では、しびれがある人は治療終了から1か月以内で68.1%、3か月で60.0%、6か月以上で30.0%でした(Seretny M, et al. Pain. 2014)。時間とともに減っていく一方で、半年を過ぎても残る人が一定の割合でいます。

日本がんサポーティブケア学会のガイドラインも、多くは月あるいは年の単位でしか改善せず、生涯何らかの障害が残ることが稀ではないと書いています(日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』)。

しびれが出やすいのは、どの抗がん剤ですか?

白金製剤、タキサン系、ビンカアルカロイド系、ボルテゾミブ、サリドマイドが代表的です。

ガイドラインは、各薬の添付文書に記載されたしびれ(末梢神経障害)の頻度を一覧にしています。

系統 主な薬 添付文書上の頻度
白金製剤 オキサリプラチン 96.60%
白金製剤 シスプラチン、カルボプラチン 1〜10%未満
タキサン系 パクリタキセル(アルブミン懸濁型) 60.80%
タキサン系 パクリタキセル 43.80%
タキサン系 カバジタキセル 13.30%
タキサン系 ドセタキセル 頻度不明
ビンカアルカロイド系 ビンクリスチン 25.50%
そのほか サリドマイド 37.80%
そのほか ボルテゾミブ 28.20%
免疫チェックポイント阻害薬 ニボルマブ 18.80%

出典は日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』の表2です。同じ薬でも、使う量で出方は変わります。たとえばパクリタキセルのしびれについて、ガイドラインは1回の投与量と総投与量に相関するとしています。

どんな症状が出るのですか?

手足の先のビリビリ、ジンジンとした感覚の異常が中心で、指先の細かい動作や歩くことにも影響します。

国立がん研究センターの資料に挙がっている困りごとは、次のようなものです(がん情報サービス、国立がん研究センター東病院 薬剤部)。

  • ボタンがかけにくい
  • 文字が思うように書けない
  • リモコンが操作しにくい
  • つまずきやすい、靴が履きにくい
  • 水仕事で冷たさを強く感じる
  • 熱さを感じにくく、やけどに気づきにくい

しびれの原因は、抗がん剤だけではありません。がんによる神経の圧迫や、転移による神経の障害でも起こります。がんやがんの治療とは別の原因で起こったり、悪化したりすることもあります(がん情報サービス)。

オキサリプラチンのしびれは、ほかと何が違うのですか?

投与の直後に出て数日で消える急性のしびれと、回数を重ねるうちに残っていく慢性のしびれの2種類があります。

急性のしびれ 慢性のしびれ
出る時期 投与の直後から 投与を重ねてから
特徴 冷たいものに触れると強くなる。手足の先や口のまわりに出る 量が積み重なるほど出やすい。総投与量が800 mg/m²を超えると、感覚の機能障害を伴う頻度が高くなる
続く期間 数日以内でほとんど消える 数か月から数年続くこともある

出典はいずれも日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』です。急性のしびれは毎回の投与のたびに出て、数日で引いていきます。一方、慢性のしびれは回数を重ねるうちに積み上がっていきます。

治療が終わったのに、しびれが強くなることはありますか?

あります。投与を終えたあとに症状が悪化する現象を「コースティング」と呼びます。

起こりやすさは薬によって違います。ガイドラインが引用している一覧では、次のように整理されています。

薬 コースティング(投与終了後の増悪)
シスプラチン +++
オキサリプラチン ++
カルボプラチン ++
ビンクリスチン +
パクリタキセル −/+
ドセタキセル −/+

+が多いほど多く報告されていることを示します(日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』、表1。原典はCavaletti G, 2011)。シスプラチンについては、蓄積性があり、投与を中止したあとも長期間症状が続くことが多いとされています。

つまり、最後の投与の日が、しびれの一番軽い日とは限りません。終わってから強くなったときも、これまでと違う感覚や変化があれば、すぐに担当医に伝えるよう、がん情報サービスは勧めています。

しびれは、元に戻るのですか?

戻る人は多いものの時間がかかり、一部の人には残ります。

ガイドラインは、オキサリプラチンによるしびれでも80%の患者は回復し、40%の患者は8か月後には完全に回復したという報告を引いています(Argyriou AA, 2012)。「回復した」と「完全に元どおりになった」は、別々に数えられています。

一般論としても、薬の中止により徐々に回復するが、不可逆的な障害を残すこともあるとされています(日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』)。国立がん研究センター東病院も「一度出現するとその回復には時間がかかります」と説明しています(国立がん研究センター東病院 薬剤部)。

減量や休薬を相談するのは、どんなときですか?

しびれが我慢できない、あるいは生活の動作に支障が出たときは、投与の延期・減量・中止を検討するよう、国内外のガイドラインが示しています。

しびれは、積み重なった量で決まります

オキサリプラチンもパクリタキセルも、しびれは使った量の合計と関係します。ここから言えることがあります。すでに体に入った量は減らせません。調整できるのは、これからの量だけです。

量の差がどれだけ効くかを示した試験があります。ステージⅢの大腸がんの術後にオキサリプラチンを含む治療を3か月行うか6か月行うかを比べた、6つの第Ⅲ相試験・12,834人の統合解析です。グレード2以上の神経毒性(治療中と終了後1か月)は、FOLFOXで3か月16.6%、6か月47.7%、CAPOXで3か月14.2%、6か月44.9%でした(Grothey A, et al. N Engl J Med. 2018)。

ただし、この解析では全体として「3か月は6か月に劣らない」ことは確認されませんでした。CAPOXでは3か月で6か月と同等の効果でした。量を減らすことは、治療の効果とのかね合いになります。だから一人で決めるものではなく、主治医と決めるものです。

ガイドラインは何と言っていますか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインは、耐えられない神経障害や機能障害が出た患者では、投与の延期、減量、別の薬への切り替え、中止が適切かを評価するよう医師に求めています(Loprinzi CL, et al. J Clin Oncol. 2020)。日本のガイドラインも、被疑薬の延期、減量、中止を検討するとしています。

しびれの「重さ」は、生活の動作で測ります

医療者がしびれの程度を記録するときに使う基準(CTCAE)では、グレードを日常生活への影響で分けています(日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』。生活の中での例はJCOG「CTCAE v5.0 日本語訳JCOG版」の定義)。

グレード 状態 生活の中での例
1 症状がない —
2 身の回り以外の日常生活動作が制限される 食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理
3 身の回りの日常生活動作が制限される 入浴、着替え、食事、トイレ、薬を飲むこと

ここに落とし穴があります。ガイドラインは、医療者による評価には評価者の裁量が反映されやすく、患者の自覚症状とずれることが指摘されていると書いています。診察室で指を動かして見せられる程度でも、家で財布から小銭が出せなくなっているなら、それは伝えないと記録に残りません。

しびれを防ぐ薬や、治す薬はありますか?

予防として推奨できるものはなく、治療として強く推奨できるものもありません。

日本がんサポーティブケア学会のガイドライン(2023年版)の推奨をまとめると、次のとおりです(日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』)。

方法 予防として 治療として
デュロキセチン(薬) — 状況に合わせて投与することを提案
運動 状況に合わせて実施することを提案 実施することを提案
冷却 タキサン系に限り、実施することを提案 —
圧迫 推奨なし —
牛車腎気丸 白金製剤によるしびれに対して、投与しないことを提案 —
プレガバリン 投与しないことを提案 推奨なし
ミロガバリン — 推奨なし
鍼灸 実施しないことを提案 推奨なし
ビタミンB12 — 推奨なし
アミトリプチリン(薬) — 投与しないことを提案
アセチル-L-カルニチン タキサン系に対して、投与しないことを推奨 —

ASCOのガイドラインも、予防に勧められる薬はないことを再確認し、すでに痛みを伴うしびれがある人に使う根拠があるのはデュロキセチンだけで、その効果の大きさは限られているとしています(Loprinzi CL, et al. J Clin Oncol. 2020)。予防のための冷却・圧迫・運動については、ASCOは推奨を出していません。

牛車腎気丸は、オキサリプラチンを含む治療(FOLFOX)を受ける人を対象に、偽薬と比べる二重盲検の第Ⅲ相試験で調べられました。グレード2以上の神経障害は牛車腎気丸の群で50.6%、偽薬の群で31.2%となり、試験は途中で中止されています(Oki E, et al. Int J Clin Oncol. 2015)。

一方で、デュロキセチン、プレガバリン、ミロガバリン、ビタミンB12、漢方薬などは、しびれを和らげる目的で補助的に使われることがあります(がん情報サービス)。ガイドラインの推奨と実際の処方は、必ずしも一致しません。使っている薬の目的は、処方した医師に確かめてください。

日常生活では、何に気をつければよいですか?

冷やさない、締めつけない、けがとやけどを防ぐ、の3つが基本です。

がん情報サービスと国立がん研究センターの資料から、主なものを挙げます(がん情報サービス、国立がん研究センター中央病院 看護部、同 東病院 薬剤部)。

  • 手袋や靴下で手足を温める。入浴で湯船にゆっくり浸かる
  • きつすぎる衣服や靴下を避ける(血行を妨げて悪化させることがある)
  • 熱さを感じにくいので、熱いお湯やカイロでのやけどに注意する
  • 床につまずきそうなものを置かない。階段では手すりを使う
  • 家事や園芸では手袋を使う
  • ボタンを面ファスナーに替えるなど、便利な道具を使う
  • 指を握ったり開いたりして、手足を動かす

温めることが基本ですが、炎症が原因のしびれには冷やすほうがよい場合もあり、冷やしすぎて悪化することもあります。どちらがよいかは担当医に確認するよう、がん情報サービスは書いています。

主治医には、何をどう伝えればよいですか?

どんなしびれで、生活のどこで困っているかを、具体的に伝えます。

がん情報サービスは、しびれの症状が出たら、その時点ですぐに担当医に詳しく伝えて相談するよう勧めています(がん情報サービス)。「しびれます」だけでは、程度が伝わりません。上のグレードの表に合わせて、たとえば次のように伝えると、記録に残る形になります。

  • いつから、手と足のどこが、どんな感じか(ビリビリ、ジンジン、感覚がない)
  • 前回の投与のあとに消えたか、残っているか
  • できなくなったこと(ボタン、字を書く、箸、小銭、つまずき)
  • 治療が終わってから強くなったかどうか

医師に話しにくいときは、看護師や薬剤師に伝えてもかまいません。

しびれがいつまで続くかは、治療を終えた時点ではまだ決まっていません。ただ、その長さに関わる投与量は、治療の途中でなら主治医と調整できます。

「いつまで」に、個人ごとの答えはまだない

この記事の数字は、多くの研究をまとめた平均です。6か月以上たってからの30.0%は、95%信頼区間が6.4%から53.5%と広く、どの薬を、どれだけの量で使ったかによっても変わります。糖尿病などはしびれの起こりやすさに関わるとされていますが、ガイドラインは、発症に関わる個々のリスク因子はまだ確立されていないとしています。あなたのしびれがいつ治まるかを、事前に言い当てる方法はまだありません。

30.0%

抗がん剤治療を終えて6か月以上たっても、しびれが残っていた人の割合。
治療が終われば治る、とは言えない数字です。

Seretny M, et al. Pain. 2014;155(12):2461-2470(31研究・4,179人の統合解析)

僕が「しびれ」を大問題だと考える理由

「しびれ」は大問題なのです。その理由は医療サイドが抗がん剤の副作用として説明する「しびれ」と、患者さんがその説明から受け取る「しびれ」に歴然とした差異があるからです。

患者さんは「しびれ」と説明されると、正座の後のピリピリ感や、肘をどこかにぶつけたときのビリビリ感を連想します。そこにはちょっと大変でも直ぐに治るというイメージがあるのです。ところがプラチナ製剤やタキサン製剤の抗がん剤によるしびれは神経への蓄積毒性のために、長期間に亘ってしびれ感が残るのです。

しびれによる不自由さは個人差が大きいのがまた問題で、相当困るしびれが継続しても日常生活にまったく問題ないとへっちゃらな人もいれば、一方でとっても軽いようなしびれなのに、日常生活がとっても困ると訴える人もいます。本当に医療サイドの説明では想像できないことが起こるのがしびれなのです。

新見正則医院院長 新見正則

新見正則(にいみ まさのり)

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2020年まで帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。漢方JP主宰者。

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よくある質問

抗がん剤のしびれは、治療が終われば治りますか?

終われば治るとは限りません。31研究の統合解析では、治療終了から6か月以上たっても30.0%の人にしびれが残っていました(Seretny M, et al. Pain 2014)。シスプラチンやオキサリプラチンでは、投与を終えたあとに悪化する「コースティング」も知られています。

オキサリプラチンで冷たいものに触るとしびれるのは、ずっと続きますか?

冷たさで強くなる急性のしびれは、数日以内でほとんど消えるとされています。注意が要るのは、投与を重ねるうちに残っていく慢性のしびれで、総投与量が800 mg/m²を超えると頻度が高くなります(日本がんサポーティブケア学会ガイドライン2023年版)。

抗がん剤のしびれに効く薬はありますか?

強く推奨できる薬はありません。痛みを伴うしびれに対して、デュロキセチンが状況に合わせて提案されています。ASCOのガイドラインも、根拠があるのはデュロキセチンだけで、効果の大きさは限られているとしています(2020年)。

牛車腎気丸は、しびれの予防に使えますか?

日本のガイドライン(2023年版)は、白金製剤によるしびれの予防に牛車腎気丸を投与しないことを提案しています。FOLFOXを受ける人を対象にした二重盲検の第Ⅲ相試験では、グレード2以上の神経障害が牛車腎気丸の群で50.6%、偽薬の群で31.2%となり、試験は中止されました(Int J Clin Oncol 2015)。

しびれを伝えると、抗がん剤の治療が止まってしまいませんか?

止まるとは限りません。投与の延期、減量、薬の切り替え、中止は「検討」されるもので、治療の効果と生活への影響のバランスを見て決めます。ただ、伝えなければ検討もされません。

参考文献

  1. 日本がんサポーティブケア学会『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』(金原出版、2023年)
    https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00781/
  2. 同ガイドライン 本文PDF(日本がんサポーティブケア学会)
    http://jascc.jp/wp/wp-content/uploads/2024/10/91eafc78cda9babc6d3ca25912c0e28d.pdf
  3. Loprinzi CL, et al. Prevention and Management of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy in Survivors of Adult Cancers: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2020;38(28):3325-3348.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32663120/
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「しびれ」(更新・確認日2025年9月17日)
    https://ganjoho.jp/public/support/condition/peripheral_neuropathy/index.html
  5. Seretny M, et al. Incidence, prevalence, and predictors of chemotherapy-induced peripheral neuropathy: A systematic review and meta-analysis. Pain. 2014;155(12):2461-2470.
    https://doi.org/10.1016/j.pain.2014.09.020
  6. Grothey A, et al. Duration of Adjuvant Chemotherapy for Stage III Colon Cancer. N Engl J Med. 2018;378(13):1177-1188.
    https://doi.org/10.1056/NEJMoa1713709
  7. Oki E, et al. Preventive effect of Goshajinkigan on peripheral neurotoxicity of FOLFOX therapy (GENIUS trial): a placebo-controlled, double-blind, randomized phase III study. Int J Clin Oncol. 2015;20(4):767-775.
    https://doi.org/10.1007/s10147-015-0784-9
  8. JCOG「有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版」
    https://jcog.jp/doctor/tool/ctcaev5/
  9. 国立がん研究センター東病院 薬剤部「末梢神経障害」
    https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/pharmacy/houshasen/houshasen_Specifics/peripheralneuropathy.html
  10. 国立がん研究センター中央病院 看護部「抗がん剤によるしびれがあるときには」
    https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/power/010/020/index.html

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