BRAIN and NERVE(医学書院)2021年12月号に院長新見正則の総説が載りました。 以下は初稿の抜粋です。
免疫が関係するかもしれない「難病」や「難症」にフアイア 漢方薬や生薬に1000例規模の大規模臨床試験はありません。特にがんの生存率をエンドポイントにした大規模臨床試験は存在しませんでした。
しかし、2018年にフアイアと言う生薬が、肝臓がん手術後の患者さん約1000人を集めてランダム化比較試験を行い、生存率と無再発生存率で内服群が非内服群を、統計的有意差を持って上まわりました。
フアイアはエンジュの老木に生えるキノコのひとつで、以前から抗がん作用をあると思われていました。そのTrametes robiniophlia murrの菌糸体を培養して、現在はエキス剤として流通しています。
現在、他のがん種に対してもフアイアの大規模臨床試験が進行中です。フアイアは世界初の抗がんエビデンスを得た生薬になりました。中国ではいろいろながん種にすでに保険適用されています。つまり、免疫力を上げる免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボやキートルーダの生薬バージョンといったイメージです。
一方で副作用は大量投与の時の軽い下痢のみです。免疫チェックポイントの阻害剤の投与で生じる免疫反応の過剰亢進による自己免疫疾患様の副作用は皆無です。
さらに、面白いことは、免疫力が亢進して生じると思われる病態である喘息や乾癬、そしてIgA腎症にも有効性が示されています。つまり、免疫を中庸に保つ効果があるのです。
そこで、他の治療で軽快しない「難病」や「難症」として僕の外来を受診する人には、免疫系の異常の関与が少しでも考えられる場合には、フアイアを1年内服して頂いています。そして症状が軽快する人が少なくありません。
免疫力を中庸に保つという多成分系の生薬だからこそ可能な治療方法です。フアイアは大規模臨床試験を勝ち抜いていますが、本邦では保険適用ではありません。症状緩和の可能性とある程度の経済的負担のバランスで患者さんに選んでもらっています。